第146回日商簿記1級・リアル詳細解説(商業簿記)

第146回日商簿記1級・商業簿記

昨日受験した日商簿記1級試験の全問題を解き直したので、詳細解説を公開します。まずは商簿からです。なお、綺麗事ではなくて、実際に解きながら何を考えて、どういう順番で解いていったのかを紹介します。なお、商業簿記以外の科目については、以下をご参照ください。

まずは答案用紙を見る

何しろ最初にやることは答案用紙を見ることです。問題文なんて見てはいけません。この問題で自分は「何を聞かれているんだろう」ということを答案用紙からしっかり把握してください。

本問は、ドーンと損益計算書が聞かれています。なので、とにかく損益に関係することが最優先だな、それだけで合格点いくな、というイメージを持ってください。

問題文を見てどこから解くべきか戦略を考える

問題文もいきなり冒頭から読み始めてはいけません。まずは設問から確認します。問1は損益計算書を作りなさい、です。これは先に答案用紙を見ているので分かってます。

続いて問2です。注記すべき金額ということで、減価償却累計額その他が聞かれています。まあこれは最後にやればいいな、というイメージです。

そしていよいよ問題文を読みます。ここで最初にやるべきことは「期中処理」とか「未処理」があるかどうかです。それがあるなら、最優先で処理しなければならないからです。本問はありませんでした。「決算整理事項」だけが11項目あります。

決算整理事項は、どこから手を付けても構いません。頭からやっていく必要など全くありません。ですので、コストベネフィット優先(少ない手間ひまで確実に得点出来るという意味)で解いていくべきです。この戦略はとても重要です。

このあたり、良く分からなければ、とにかくお尻から解いていく、というのがお勧めです。たいてい最初の方は商品売買で面倒です。特に特殊商品売買なんかが入ってくると手間も掛かりますし時間も掛かります。得点しにくい論点です。仮に正解できても埋没する可能性すらあります。こういうのは、後に回すべきです。

一方で、最後の方にあるのは、法人税の計上とか見越し繰延べ、ストック・オプションとか退職給付会計です。法人税の計上に至ってはたいてい問題文の数値を答案用紙にコピーするだけです。見越し繰延べも2,3級レベルです。ストック・オプションとか退職給付会計もパターン化されていますし、計算量も少ないので短時間で確実に得点できます。

ということで、お尻から解いていく、というのは実戦的かつ有効な戦略と言えます。

実際に解いていく

11.法人税等関連

では、一番最後の第11項目からいきます。まず、「当期の法人税、住民税及び事業税27,000千円を計上する」とあります。計上する、と言っているのですから、素直に答案用紙に書き入れます。これだけで1点ゲットです。

以降は税効果会計です。手間が掛かるし埋没可能性も高いのでこれは後回しです。

10.見越・繰延

続いて見越し繰延べです。販売費2,000千円を繰り延べるとありますから、前T/Bの販売費20,000千円から2,000千円を引きます。18,000千円です。さっそく答案用紙に書きましょう。

相手勘定は前払費用ですが、本問はB/Sは聞かれていないので、そんなことは考える必要もメモする必要もありません。こういうのをいちいち下書き用紙に書いていると、それだけで時間掛かります。総合問題を解くのに時間が掛かる人はそういうことをしているからです。

また配当金領収書1,000千円が未処理とあるので、受取配当金1,000千円を答案用紙に書き入れます。これも相手勘定はB/S科目ですので無視です。

9.ストック・オプション

ひねりの無いシンプルなストック・オプションの問題です。前期(前期末の半年前)にストック・オプションを交付しています。期間は3年ですから、前期末B/Sの新株予約権は、次の式で計算されるはずです。

2,400個×4.5千円×6ヶ月÷36ヶ月=1,800千円

これを前T/Bで確認します。確かに1,800千円です。そこで、自分の考え方が合っていることを確認するのです。そして、当期末においては、次の式で計算されるはずです。

2,200個×4.5千円×18ヶ月÷36ヶ月=4,950千円

1,800千円が4,950千円になるのですから、差額3,150千円が株式報酬費用です。さっそく答案用紙に書きましょう(これ、後に修正する羽目になるのですが、まあ、そんなことは気にせず答案用紙に書きましょう)

8.退職給付会計

聞かれているのはP/Lですから、とりあえず退職給付費用さえ出せればいいわけです。ですから、次の式さえ理解出来ていれば、瞬殺できるはずです。

退職給付費用=勤務費用+利息費用−期待運用収益±差異の償却

で、勤務費用は問題文に15,000千円、利息費用は400,000千円×2%=8,000千円、期待運用収益は280,000千円×2.5%=7,000千円と、すぐに分かります。注意点は未認識数理計算上の差異の償却です。これは慎重にやりましょう。発生時から償却と発生年度の翌年からの償却の2パターンあるからです。

本問は、発生年度の翌年からのパターンです。ということは、20×3年度の翌年である20×4年度の1回しか償却していません。つまり残り9回償却します。したがって、36,000千円÷9回=4,000千円です。

なお、この未認識数理計算上の差異が有利差異か不利差異かの判断ですが「割引率の引き下げによる」という問題文からも判断できますが、一番簡単なのは、期首退職給付債務と年金資産と未認識数理計算上を加減してみて、前T/Bに一致するかどうかを見ればいいのです。

本問の場合、期首退職給付債務400,000千円−年金資産280,000千円−未認識数理計算上36,000千円=84,000千円となり、前T/Bと一致します。よって、不利差異であることが分かります。要するに償却分は費用処理すればいいのです。以上より、

退職給付費用:15,000千円+8,000千円−7,000千円+4,000千円=20,000千円です。

さっそく答案用紙に書きましょう(これも、後に修正する羽目になるのですが、まあ、そんなことは気にせず答案用紙に書きましょう)

あと、年金基金への拠出額10,000千円は、本来であれば退職給付引当金を減らすものですが、間違えて、給料手当勘定に算入しちゃったとあります。ですから、前T/Bの給料手当勘定47,000千円から10,000千円を引いた37,000千円を答案用紙に記入します。

7.オペレーティング・リース

オペレーティング・リースですから、支払額がそのまま費用です。18,000千円をそのまま答案用紙に書きます。(このあたりで、どうも問題が簡単過ぎるなとちょっと疑心暗鬼になっていました)

6.減価償却費

建物しかありません。シンプルな問題です。一応確認します。取得原価900,000千円で、20年で定額法で償却ですから、減価償却費は45,000千円です。3回償却済みですので、累計額が45,000千円×3=135,000千円のはずです。これを前T/Bで確認します。OKですね。こういう手間を惜しんではいけませんよ。ケアレスミス対策になります。

問題は、この未償却分(900,000千円−135,000千円=765,000千円)をあと12年で償却することにした、とあるのですから、素直に765,000千円÷12=63,750千円を減価償却費とすればいいのです。答案用紙に書きます。

5.投資有価証券

その他有価証券の問題ですね。これは、私は間違えました。というか早とちりです。私は、次のように思考しました。

まず、前T/Bの投資有価証券は37,000千円です。で再振替仕訳をしていないと書かれていて、繰延税金負債1,500千円とその他有価証券評価差額金3,500千円が貸方に計上されています。ということは、取得原価は、32,000千円のはずです。(37,000千円−1,500千円−3,500千円=32,000千円)

つまり、取得 32,000千円 → 前期末 37,000千円 → 当期末 40,000千円 という動きです。このようにずっと上昇を続けている場合、全部純資産直入法だろうが部分純資産直入法だろうが損益には影響しません。純資産直入ですから当然です。よって聞かれているのはP/Lなので、これは関係ない、と判断してしまったのです。

で、問題文の後半に自己株式の売却益(これは資本取引なので損益算入してはいけない)3,000千円を投資有価証券売却益に算入していると問題文にあったので「ああ、それが引っ掛けなわけね」と思って、前T/Bの8,000千円から3,000千円を引いて5,000千円を答案用紙に書いたのです。結果、間違いでした。

一応正解を書いておくと、本問は、誤処理をしているので、修正しなければいけないのです。まず、売却益が5,000千円出ているということは、売却価額は42,000千円です。(簿価が37,000千円なのですから)

そして、期首に半分売っているということは、売却前は、37,000千円×2=74,000千円あったわけです。そして本来は再振替仕訳をやらないといけないので、74,000千円−5,000千円=69,000千円にしないといけないわけです。この半分69,000千円÷2=34,500千円を42,000千円で売ったわけですから、7,500千円が正解です。

4.貸倒引当金

問題文に「1.の前受金控除後」と書かれていて、どうも1を先にやらないと解けなさそうなので、後回しにします。

3.自社利用ソフトウェア

ちょっと面倒ですね。前T/Bを見るとソフトウェアは80,000千円となっています。で、このうち20,000千円は、当期中に取得しています。半年経っていますね。そして残り60,000千円は、20×3年1月取得ですから、2回償却が終わって、あと3回償却です。よって、次の式で計算します。

当期取得分:20,000千円×0.5÷5=2,000千円
既存取得分:60,000千円÷3=20,000千円
合計:22,000千円

答案用紙に書きます。

2.商品評価損

これ、大丈夫でしたでしょうか。私は、商品ボックスを書こうとして、えーと繰越商品はいくら?と思ったら、前T/Bに無いんですよ。あれ?って感じ。で、よく見ると仕入勘定もない。その代わりに「商品売上原価」勘定がある。ああ、3分法じゃないんだ、と気付いたわけです。要するに決算整理仕訳(しぃくりくりしぃ)をしなくても、もうそれは終わっているということです。「商品売上原価」勘定がそのままP/Lに載るわけです。

ただし、商品評価損を商品売上原価に含めて表示せよ、と問題文にありますから、商品評価損を計算しなければいけません。これは、1,800千円の販売費を要してようやく30,000千円で販売できるのですから、正味28,200千円の価値しか無いわけです。それが帳簿上32,000千円になっているので、その差額3,800千円が商品評価損です。これを商品売上原価460,000千円に加算して、463,800千円を答案用紙に記入します。

1.ソフトウェア(その1)

ソフトウェアの売上は工事進行基準によるとあります。「こういう出題の仕方をするんだ、へぇなるほど」という感想を持ちました。良問ですね。

まず①で、ソフトウェア仮勘定(建設仮勘定と同じと思えばいいですね)に研究開発費5,000千円を算入しちゃっているとありますから、ソフトウェア仮勘定から研究開発費に5,000千円を振り替えなければいけません。前T/Bの研究開発費20,000千円に5,000千円を加算してあげて25,000千円を答案用紙に書きます。

続いて②で、工事進行基準による収益計算を行います。800,000千円×60%−220,000千円=260,000千円ですね。簡単です。答案用紙に書きます。

続いて③で、前受金50,000千円を計上しちゃっていますが、これ、ソフトウェア受注制作の入金額であり、既に工事進行基準によって売上が立ってますので、売掛金と相殺しないといけませんね。よって、次の式で売掛金を計算しておきます。(本来、答案要求がP/LなのでB/S科目である売掛金は計算する必要は無いのですが、貸倒引当金繰入額の計算で必要になるので計算せざるを得ません)

前T/B 40,000千円+売上260,000千円−前受金50,000千円=250,000千円

これが出てしまえば、先程スキップした貸倒引当金繰入額が出せますね。1%を貸倒引当金として計上するとありますので、貸倒引当金繰入額は次の式で計算できます。

売掛金250,000千円×1%−前T/B貸倒引当金2,000千円=500千円

さっそく、答案用紙に書きましょう。

1.ソフトウェア(その2)

最後に④です。次の費用は、ソフトウェアの受託制作に関連するものだから、ソフトウェア仮勘定に振り替えなさいとあります。

  • 当期に発生した減価償却費、ソフトウェア償却額、支払リース料の20%
  • 給料手当、退職給付費用、株式報酬費用の30%

えぇぇええええですよ。まじですか。

一瞬発狂しそうになりましたが、冷静に考えれば、これらの答えはもう全て出ているのですから、機械的な作業です。冷静になって淡々と進めます。日商簿記1級がボールペンじゃなくて鉛筆で良かったです。3分くらいで出来ました。焦りましたよ。まったく。

  答案用紙に
記入済み
ソフトウェア
原価に振替
あらたに
書き直し
減価償却費 63,750 12,750 51,000
ソフトウェア償却額 22,000 4,400 17,600
支払リース料 18,000 3,600 14,400
給料手当 37,000 11,100 25,900
退職給付費用 20,000 6,000 14,000
株式報酬費用 3,150 945 2,205
合計   38,795  

最後にソフトウェア原価を集計しなおします。

前T/B 100,000千円−研究開発費に振替分5,000千円+38,795千円=133,795千円

一旦確認する

ここまでで、一旦確認します。あと、出来ていないのは、法人税等調整額くらいですよね。P/Lでそれ以外の箇所は全て埋まっているはずです。ケアレスミスが無いかよく確認しましょう。ここまでパーフェクトなら、20点近くは取れているはずです。

問2にトライ

① 減価償却累計額

これは、どうってことないですね。前T/Bの減価償却累計額が135,000千円で、当期の減価償却費が63,750千円なのですから、単に足すだけです。

135,000千円+63,750千円=198,750千円

② オペレーティング・リースの解約不能に係る未経過リース料

一瞬、何のこと?と思うかもしれませんね。1級レベルですと、注記についてそれほど深くは学習しませんからね。しかし、問題文に丁寧に「割引前の貸借対照表日後1年を超えるリース期間に係るもの」との説明がありますので、素直に従えばできますね。

オペレーティング・リースは、20×8年12月31日に終了する、と問題文にありますから、あと3年間に渡って、毎年18,000千円を支払うわけです。そして「貸借対照表日後1年を超える」とありますから、注記に記載すべき分は残り2回分です。

18,000千円×2回=36,000千円

③ 退職給付に係る未認識数理計算上の差異の期末残高

難しくはありませんが、少し計算が煩雑ですね。丁寧に処理していきましょう。

まず、[資料2]8の後半部分に「当期末における年金資産の時価は250,000千円、退職給付債務からは新たな数理計算上の差異は生じていない」とあります。つまり、計算上の年金資産の額を算定して、この時価250,000千円と比較すればいいわけです。計算上の年金資産は次のとおりです。

期首280,000千円+期待運用収益7,000千円+年金基金への拠出10,000千円−年金支給額8,000千円=289,000千円

つまり、計算上は289,000千円のはずなのに実際は250,000千円しか無いわけですから、当期に計上される未認識数理計算上の差異は39,000千円です。

そして、従来から償却を続けている未認識数理計算上の差異の残高は、32,000千円(=36,000千円−4,000千円)ですから、これらを合計して解答します。

39,000千円+32,000千円=71,000千円

④ 繰延税金資産に係る評価性引当額

これは、比較的難しいと思います。先にスルーした法人税等調整額の算定と合わせて処理しましょう。まず、[資料2]11に示された一時差異を集計します。

貸倒引当金3,000千円+建物27,000千円+退職給付引当金84,000=114,000千円

この30%が繰延税金資産のはずですから、確認します。

114,000千円×30%=34,200千円

前T/Bの繰延税金資産の額と一致していますよね。こういうちょっとした確認が大切です。さて、この[資料2]11に示された一時差異の当期末残高を集計します。

  • 当期末の貸倒引当金:[資料2]4より2,500千円
  • 商品の評価損:[資料2]2より3,800千円
  • 建物の耐用年数について、税務上は25年なので、損金算入出来る減価償却費は900,000千円÷25年=36,000千円、他方、当期の減価償却費は[資料2]6より63,750千円で、一時差異は27,750千円、過年度の累計が27,000千円なので、合計して54,750千円
  • 退職給付引当金は、[資料2]8より、退職給付費用20,000千円、掛金拠出10,000千円なので前期残高84,000千円+20,000千円−10,000千円=94,000千円

以上を合計して将来減算一時差異155,050千円を算出し、税率30%を掛けて、繰延税金資産46,515千円を算出します。

一方で、回収可能性のある将来減算一時差異は100,000千円なので、繰延税金資産の正味価値は、100,000千円×30%=30,000千円しかありません。よって、差額の16,515円が繰延税金資産に係る評価制引当額となります。これが問2の④です。

また、繰延税金資産は、正味30,000千円の価値しかないのに、前T/Bには34,200千円計上されているため、4,200千円過剰に計上されています。これを取り崩さなければなりません。よって、

(借)法人税等調整額4,200 (貸)繰延税金資産4,200

という仕訳を切ります。これは、知らないと出来ませんね。まあ、パスして正解だと思います。

商簿を実際に解いてみて

以上で、答案用紙を全て埋めることが出来ます。(利益とかの単なる足し引きで出せる部分は自分で出してくださいね)

実際に掛かった時間は、正確に測定したわけではありませんが、60分以内です。

そして、特質すべきは、下書き用紙を一切使わなかった、という点です。全て問題用紙にメモ的に数値を書いていくだけで完答できています。

個人的な感想ですが、下書きの少なさと解く速度、そしてミスの少なさは比例します。たくさん下書きを書く人は、だいたい遅いし、そしてミスも多い。点数も取れない傾向にあります。

なぜ、下書きが少ないのか。必要の無いことをやらないからです。市販されている過去問題集や予想問題集を見ると、まあご丁寧に全ての仕訳を切ってそれらを集計しています。確かに、簿記の処理としては正統的な方法だと思います。

しかし、それを鵜呑みにして、同じように解こうとすると下書き用紙をいっぱいに使う必要が出て来るし、時間も掛かるし、結果、手数が多いのでミスも誘発されます。

どうすれば、スピーディに無駄なくミス無く商簿の総合問題を解けるのか。これは、練習するしかないと思います。ただ、闇雲に問題を解くだけでは伸びません。

無駄なことをしない。いちいち仕訳を切らないで済むものは、仕訳を切らない。本質的にP/LやB/Sはどうあるべきなのかを考える。そんな感じでしょうか。がんばりましょう。


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第146回日商簿記1級・リアル詳細解説(商業簿記)” に対して1件のコメントがあります。

  1. 二神サツキ より:

    先生が受けられての記事実感が出ていいですね
    この記事見てもう一回踏ん切りがつくまで受験勉強頑張ろうと思います
    工原もよろしくお願いします。

    1. pro-boki より:

      はい、工原も書きましたのでご一読ください。

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