講師の第146回日商簿記1級受験体験記

146回日商簿記1級試験受けてきました

日商簿記1級試験受けてきました。講師という立場だけではなく、受験生の立場として、同じ緊張感を味わいたかったからです。なかなか楽しかったです。(とは言え、合格するのが当たり前のポジションですので、それなりに緊張もありましたが)

ちなみに、試験会場と事務所の直線距離が20mくらいという奇跡的な距離の会場でした。同じビルに商工会議所があるのです。フロアは違いますが。

商簿

比較的ノーマルな問題でした。少しだけひねりがありましたが、まあ、それほどでもないでしょう。

私は「投資有価証券売却益」と「法人税等調整額」、問2の④の3箇所間違えました。後は完答できて22点でした。

これ、何が厳しいって、ソフトウェアの原価に振り替えるところをきちんと処理できないと、壊滅的な状態になることですね。影響が計り知れません。

私は、お尻から解いていきました。順調でした。正直、簡単だなぁ。こんなに簡単でいいのかなぁ。おかしいなぁ、と思っていました。そして、[資料2]1④です。減価償却費やらソフトウェア償却やら支払リース料やらその他給料とか株式報酬費用など、いろんなものをソフトウェア売上原価に振り替える、という文言を見て発狂しそうになりました。

はぁ。やりなおしかよ、と。

でも、しょうがない。淡々と処理するしかありません。で、実際やってみると全然たいしたことはなくて、答案用紙に既に書いていた解答の修正をちょちょっとやるだけでした。3分も掛からず済みました。まあ、20%とか30%を振り替えるだけですからね。

むしろ、これ、頭から順に解いていったら「うわぁ、減価償却費、退職給付費用、その他もろもろ、計算したあとに、この[資料2]1④に戻って振替なきゃいけないのか、面倒だなぁ、やだなぁ」みたいな感じで精神的に圧迫を受けて焦りが出たかもしれません。結果的にお尻から解いていって正解だったと思います。

なお、私は、税効果関係は、捨てました。今見ると集計が多少面倒そうですが、難易度は高くなさそうにも見えますので、やればよかったかもしれません。

(2017.6.12追記です)
税効果関連、やってみました。難しいんじゃないでしょうか。1つ1つの処理はそれほどでも無いのですが、1つのミスも許されないプレッシャーと、回収可能性が論点になっているので(初かな?)取れた人は少なそうです。一応解説書いてみます。

  • 当期末の貸倒引当金:[資料2]4より2,500
  • 商品の評価損:[資料2]2より3,800
  • 建物の耐用年数について、税務上は25年なので、損金算入出来る減価償却費は900,000÷25年=36,000、他方、当期の減価償却費は[資料2]6より63,750で、一時差異は27,750、過年度の累計が27,000なので、合計して54,750
  • 退職給付引当金は、[資料2]8より、退職給付費用20,000、掛金拠出10,000なので前期残高84,000+20,000−10,000=94,000

以上を正確に集計することがまず第一歩です。そして、これらを合計して将来減算一時差異155,050千円を算出し、税率30%を掛けて、繰延税金資産46,515千円を算出します。

一方で、回収可能性のある将来減算一時差異は100,000千円なので、繰延税金資産の正味価値は、100,000千円×30%=30,000千円しかありません。よって、差額の16,515円が繰延税金資産に係る評価制引当額となります。これが問2の④です。

また、繰延税金資産は、正味30,000千円の価値しかないのに、前T/Bには34,200千円計上されているため、4,200千円過剰に計上されています。これを取り崩さなければなりません。よって、

(借)法人税等調整額4,200 (貸)繰延税金資産4,200

という仕訳を切ります。これは、知らないと出来ませんね。まあ、パスして正解だと思います。

それから、投資有価証券売却益を間違えたのは痛かったです。問題文の[資料2]5を読んでいって、その他有価証券は再振替仕訳していないということだったので、ああ、取得原価は、37,000−5,000=32,000なんだなと判断したわけです。

そして前期末が37,000で当期末40,000なら、ずっと上がり続けているから、損益関係ないね、ってことで、以下の文章をダミーだと思ったんですね。そして、最後に、自己株式売却益3,000が含まれているを読んで、8,000−3,000=5,000としました。これは間違いでした。

よくよく読むと、これは、誤処理をしていて、修正しなければいけないのですね。
まず、売却益が5,000出ているということは、売却価額は42,000ですよね。(簿価が37,000なのですから)

そして、期首に半分売っているということは、売却前は、37,000×2=74,000あったわけですね。で、本来は再振替仕訳をやらないといけないので、74,000−5,000=69,000にしないといけないわけです。この半分69,000÷2=34,500を42,000で売ったわけですから、7,500が正解ですね。これは間違えました。これは、ちょっと難しかったかもしれませんね。

あと、退職給付の未認識数理計算上の差異(問2の②)も難しかったかもしれませんね。難しいというか、計算が煩雑というか。まあ、丁寧にやればどうってことはないのですが。気持ちが浮ついているとやられそうな問題です。

気になったのは、そのあたりでしょうか。他は、講義でやった内容の範囲内で解けたのではないかなと思っています。感触としては、最低18点、出来れば20点は欲しいですね。

会計学

第1問は、まあ、できれば全部取ってほしい。外すとしても(イ)くらいかなぁ。

第2問は、まさかのオプション取引でした。これは、難しい。埋没しそうです。ちなみに、私は、設問3が出来ませんでした。よくわからんです。

第3問は、これもまさかの事業分離と逆取得でした。しかし、日商は逆取得好きですね。またか、という感じ。

あれだけ、口酸っぱく”逆取得の場合は、時価じゃなくて持分プーリング法(簿価)だからね”、と人に言っておきながら、自分はパーチェスでやるというとんでもないミスを犯しました。恥ずかしい。設問1と2を間違えました。ありえんですよ。

これ、分かりますか?S社発行の250株のうち150株持っているので、逆取得ですよね。そのときは、簿価で処理するんですよ。グループ内の取引ですからね。つまり、甲事業の時価とかは関係なくて、簿価で計算します(資産15,000千円と負債2,000千円)

そして、対価としてもらった株式も、時価は関係なくて甲事業の簿価です。よって、13,000千円の株をもらったわけですね。これが設問1ですね。そして、S社は、13,000千円の40%を資本金に算入しているので、13,000千円×0.4+7,000千円=12,200千円 が設問2です。

設問3は、なぜかのれんと資本剰余金を間違えました。あとは全部合ってました。15点/25点という講師としては論外の恥ずかしい点数でした。

みなさんが合格を目指す時は、これは、12点以上獲得出来ればまあよし。15点取れれば上々という感じではないでしょうか。

工業簿記

これも、まさかの部門別計算でした。ただ、部門別といっても、その2次集計の計算方法は、簡易なものでした。また、予定配賦するわけでもなく、複数基準配賦するわけでもなくとひねりがありませんでした。問1から問3までは出来ないといけません。2級レベルです。

問4は、勘定分析ですが、これ、出来たでしょうか。これも勘定連絡を分かっているかどうかだけの問題で、2級レベルです。

ただ、②が出せたかどうかでしょうね。これ、仕掛品勘定の借方の製造間接費の欄に予定配賦額2,726,250を入れて、貸方の次月繰越(③)に、資料6より333,000を入れます。で、その貸借差額で出します。そこができれば、あとは大丈夫だったと思います。そこで、つまづくと、④も⑤も落とすのでちょっと厳しいかもしれませんね。

問5の連立方程式法は、ごめんなさい、よく分かりませんでした。なんでしょうね、これ。ちょっと事務所に帰ってからよく考えてみます。

(2017.6.12追記です)
連立方程式法の問題は、普通に式作って、それを問題文の数値になるように倍率を掛けたらあっさり解けました。いや、これは、なんというか簿記なの?数学なの?って感じの問題ですね。
一応、解き方書いておきます。

まず、素直に連立方程式法での立式をします。次の3元連立方程式になります。

  • 5/105x+207,900=x
  • 10/105x+2/22z+195,500=y
  • 20/105x+10/85y+242,000=z

問題文に所与されている45,160,500やら86,394,000をヒントに単にこの式を変形するだけの問題です。中学1年生の数学ですね。一応、変形した後の式を書いておきます。

  • (単に上記式を解きます)x=218,295
  • (上記式の両辺に231を掛けます)22x+21z+45,160,500=231y
    (問題文に合うように移項します)-22x+231y−21z=45,160,500
  • (上記式の両辺に357を掛けます)68x+42y+86,394,000=357z
    (問題文に合うように移項します)−68x−42y+357z=86,394,000

まあ、 埋没でしょうね。

第2問は全部出来て欲しいです。まあ、語群選択なので、なんとかなったのではないでしょうか。④と⑤は、原価計算基準講義でやったんだけど、みんな覚えてくれてたかなぁと思いながら解いていました。

ちなみに、私は、連立方程式法以外全て正解で、22点/25点でした。みなさんが合格を目指す時は、これは、連立方程式法は出来なくてもいいですが、ほかは出来て欲しいです。最低20点は欲しいところです。

原価計算

第1問はまさかのABC。とはいっても、死ぬほど簡単でした。これ、大丈夫ですよね。落としてないですよね。ここ、落とすと終わりますからね。

第2問は、どうなんでしょう。こういうテキストに載ってないようなものって、みなさん、結構、苦手なのかな。特に①とか経営学とかやっていると典型問題なんですけどね。でも簿記の問題としてはいかがなものかと思いました。

それから、②と③のどちらかが×になるのは、すぐ気付くはず。で、第1問がABCだから、第2問は目標原価計算のことを言っているのかなと勘を働かせた人は、素晴らしいです。

④と⑤、これはさすがに大丈夫ですよね。ちょっと気になると言えば、マークアップ率という言葉に翻弄されなかったかどうかくらいです。これも、どこかの掲示板で、質問があって答えたんですよね。みんな出来たかなぁと思いながら解いていました。

第3問、これは、内容もさることながら、不利差異の時の表記指示がないので、ダメ問題ですね。私、最初は△付けていたんですが、問題文のどこにも△つけろとは書かれていなくて、それを勝手につけるのも何かな、と思い、消しました。でも、不利差異って分かってるからね、をアピールするために薄く△が残る程度に消しました。なんというテクニック(笑)。

どうだったんですかね。まあ、これは△だろうと不利差異だろうと、符号を付けなくても正解になるんじゃないかと思いますが。

この第3問は、内容としては至って簡単なんですが、チョコ停ロスだとか速度低下ロスとかテキストでやってないですからね。(これは、数十年前のテキストに載ってた論点ですね。まさかリバイバルするとは…)問題文を素直に読めば、出来ます。現場対応力で出来たかどうかですね。

みなさんが合格を目指す時は、最低20点は欲しいところです。今回の原計は簡単でしたので。

ちなみに、私、原価計算は満点でした。ようやく講師の面目躍如です。ということで、22+15+22+25=84点でした。うーん、ちょっとと言うか、かなり恥ずかしいな。特に会計学はみっともなくてごめんなさい。まあ正直に書いてみました。

146回商簿のリアル解説を書いてみました

こちらもどうぞ。


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講師の第146回日商簿記1級受験体験記” に対して1件のコメントがあります。

  1. 西海 隆治 より:

    さすが講師の方だけあって簡単に合格できるですね。
    私は今年56です。昔20代の頃勉強し始めましたが、転職で忙しくなり断念した経緯があります。
    そのような経緯のなか、3年くらい勉強し、何かのサイトで公認会計士用の勉強したら合格したと記載があったので、TACの公認会計士短答用の問題集で対策しました。ベイシックでは簡単に感じられたので、アドバンスを使用。
    しかし、146回非常に難しく感じられました。
    勉強方法間違っているのか、向き不向きというのもあるのか悩んでメールしました。
    因みに、2級落ちるなら諦めようと思い3年前の2月受験しましたが、やっぱり1時間10分で解けるくらい簡単に感じました。

    1. pro-boki より:

      >しかし、146回非常に難しく感じられました。

      具体的にどこが難しく感じられましたか。
      感覚的ですが、146回は、商簿は普通、会計学は難しい、工簿は普通もしくは少し簡単、原計は極めて簡単、という感じだと思いました。
      どのあたりがどう難しく感じられたのかをお伝え頂ければアドバイスできるかと思います。

      >勉強方法間違っているのか、向き不向きというのもあるのか悩んでメールしました。

      会計士の短答用の問題集が簡単に感じられるのであれば、向いていないということは無いと思います。近年の日商の問題は、特に会計士の問題に近づいていますので、なかなか良い勉強法だと思います。
      ただし、簿記は論点の積み重ねの側面が大きいので、基礎が弱いままに、積み上げてしまうと、逆に混乱してしまう懸念もあります。

  2. 西海 隆治 より:

    いろいろ書いて,申し訳けありません。
    一読していたいただけたら、嬉しく思います。

  3. いっちー より:

    先生こんばんは。

    やはり先生の解説を見ていると、基礎を固めつつ、その場の対応力も必要なんだなと痛感しました。
    また、その基礎から解き方においても他の考え方と通じるところに気が付けるかも必要と思いました。

    最近、簿記のテキストや参考書を隙間時間に再度読み直したりしてますが、この論点はあの論点と考えが似ているなとか、疑問点がまた湧いたり、他の人からこういう質問きそうとか感じるようになりました。

    ちょっと簿記から遠ざかっていましたが、やはりやる気が復活してきました。

  4. 西海隆治 より:

    お世話になっています。
    こちらのコメントに回答があったことを知らずに、今日気がつきました。

    146回ですが、難しく感じたとういのは試験場で以下のような感じだったからです。

    まず、会計学から解きだして
    第1問 (1)遡及適用なんて書いた他は、合ってました。
    第2問 通貨オプションがでると思っていませんでしたので、焦ってしまいました。
        時間的価値って何だよって、パニクリました。できた箇所は設問1くらいです。
    第3問 先生のブログ読んでいたので、対応できました。

    次に商業簿記
    よく読めばそんなに難しい問題はそんなになかったのに、11の箇所でかなりビビりまし
    た。

    休憩はさんで
    原価計算 第1問 第2問は結構というより中学生の数学と思うくらい簡単に感じましたが
    解きながら、こんなに簡単な箇所は差がつかないんだろうなと思いつつ第3問へ。
    第3問は、速度低下ロス・チョコ停ロス・段取替ロス・故障停止ロス見たことないと思い
    ビビりました。
    情けないくらいすぐビビってしまいますよね。

    工業簿記 第2問は簡単でしたが、第1問の問4、問5の問題見てこんに難しい問題だすの。
    と考えても解らないのに時間食って、問4の勘定連絡に影響、すべて埋めることできません
    でした。

    という感じで非常に難しく感じました。

    因みに私山梨で受験ですが、やっぱり撃沈、山梨県受験者合格者0でした。

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