なぜ1級は独学がつらいのか(テキストの表の顔と裏の顔)

日商簿記1級の独学者が頼るのは基本的に市販されているテキストと問題集、それに過去問や予想問題集くらいしかない。確かに、これらを完全マスターすれば独学でも合格するのだが、これがなかなか難しい。なぜなら、このテキストや問題集には、表の顔と裏の顔があるからだ。

たとえば、手元に予想問題集なんかがあったら、商業簿記の解説を見てもらいたい。たいてい、全ての取引の仕訳が切ってあって、それを集計して答え出ました、みたいに書いてある。これが表の顔。

正しい。確かにそのとおりだ。それが本筋だ。簿記的には。

でも、試験勉強としては、どうなんだろう。そもそも知りたいのは、なぜ、こういう取引のときにこういう仕訳をするのか?じゃないだろうか。ただ単にこういう仕訳になります、ということだけを示されても・・・これじゃあ暗記するしかなくなっちゃう。

それから、本当にすべての仕訳を切らないといけないのだろうか。そんなことはないだろう。実際には、省略できる仕訳はたくさんある。利払日が期中の有価証券。キチンと仕訳を切るなら未収収益も考慮しなければいけない。超面倒。でも、解答要求が有価証券利息なら、仕訳なんか切らなくても、額面×利率の一発で答え出せる。この方が断然速いしミスもしない。こんなちょっとしたテクニックなんていくらでもある。でも書いてない。

つまり、試験的に考えれば、全ての仕訳を切る必要なんてないし、事実、その解説を執筆している本人が、そんな解き方をしていない。テクニック使ってショートカットで解いている。これが裏の顔。

でも、多くのテキストや問題集には、考え方のコツとか、ショートカットが載っていない。それはなぜか。1つは、執筆が難しいからだ。特に「考え方のコツ」というのは文章で表現するのが難しい。講義などで口頭プラス身振り手振りも交えてなら伝わるかもしれないけど、文章だけで表現するのは困難だ。かなりの文章力を要する。

それから、ショートカットを書かないのは、突っ込まれるのが面倒だからだ。「それは正しい手順ではないですよね」と突っ込まれたりすると、たしかに正しい手順ではないので、答えに窮する。これも、講義なら口頭で細かいニュアンスも伝えられるけど、書籍に書くとなると結構勇気が必要だ。

ということで、安全なのは、表の顔である「全ての仕訳を記載して、それを集計する」という文句の付けようのない手順を記載すること。これなら誰からもクレームが来ないし、なにしろ執筆が楽だ。

ということで、テキストや問題集は「間違ってはいないけど、受験を考えたら最善ではない」ということを知っておこう。独学者は、単にテキストや問題集をこなすだけではなく、そこから考え方のコツをつかんだり、自分なりの解法を見つけ出すことが合否につながると心得た方がいいだろう。

それからもう1つ。独学者が辛いのは、どの論点が大切で、どの論点は切るべきかの判断がつかないことだ。たとえば、およそ20年以上出題されていない論点など、突然出されても、ほとんどの受験生は出来ない。結果、傾斜配点によって埋没する。そんな論点は切るべきだ。やってはいけない。だけどそれは過去問を何十年分も分析している講師だからこそ知っていることで、一般の受験生には分からない。そういった意味でも独学者は辛いかもしれない。


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なぜ1級は独学がつらいのか(テキストの表の顔と裏の顔)” に対して1件のコメントがあります。

  1. ひろりん より:

    こんにちは。

    自分も独学ですが、実査法や減損の安定的発生や最小自乗法とか、どの程度大事なのか、また過去に出題されてるのか、全くわからないので、この直前期に迷います。

    ただ最近の過去問に収録されてないところを推測すると、出されてもみんなできずに埋没、その他で挽回できる問題も用意されてるはず、と思ったりしてます。
    それが理論問題だったり、とか考えてますが、合ってますかね?

    1. pro-boki より:

      >実査法や減損の安定的発生や最小自乗法

      そうですね。これらは全て切っても大丈夫でしょう。
      ただ、実査法は理屈が分かってしまえば、普通の公式法変動予算とさほど変わりません。また減損の安定的発生も面積図による解法などを知っていれば、普通の総合原価計算とそう変わりません。ですので、時間があって本質から学ぶ余裕があるなら、ついでに学んじゃった方がいいかもしれませんね。ただ、今からだと試験まで2週間を切ってますから、暗記に走らざるを得ない状況もあると思います。それなら切ってしまったほうがいいと思います。

      >ただ最近の過去問に収録されてないところを推測すると、出されてもみんなできずに埋没、その他で挽回できる問題も用意されてるはず、と思ったりしてます。それが理論問題だったり、とか考えてますが、合ってますかね?

      ここ数年の理論問題出題ラッシュを考えると、ほとんどのスクールは理論対策をしてきているはずです。ですので、出来る人が多いと思います。そのため配点も高めになると予想されます。最後は理論で合否が決まるというくらい大事だと思います。実際、そういう回もありました。理論はしっかり対策しましょう。

  2. きゃろる より:

    こんにちは
    私はTACのスッキリのテキストから1年掛けてノートを作り、スッキリについている問題をやり、TACの過去問題集をやる。という方法を半年。去年の6月に初めて試験を受けて、今度で4回目です。
    3回目を受けた時にもう落ちたのが分ったので、これは独学では無理だと思い、授業を受けることにしました。

    独学では無理だと思った点は、以下の通りです。
    ・スッキリについている問題はテキストについている内容の簡単なエクササイズなのでできる。
     が、過去問をやるとなぜかできない。
    ・TAC、ネットスクール、他社のテキストではそれぞれ説明範囲やページ数が異なる
     スッキリのテキストに書いてない内容が出題されたが、他社のには書いてあったらしい。
    ・出題範囲が広く、何が重要で何が重要でないのかわからないから、とりあえず全部覚えようとするが
     覚えられない。
    ・日商のホームページに出題範囲の改定に関して書いてあるが、時期や改定内容の詳細に関して
     読んだだけでは理解できない。⇒何がどう変わったのかがわからないから、結局全部やる
    ・弥生会計の無料動画を全部みたが、よくわからない
    ・富久田先生のように独学で勉強した人のサイトがいくつかあるが、
     全範囲を網羅しているわけではないし、人によって説明が違うと余計混乱する。
    ・2級と3級は過去問題が解ければ、出題パターンが同じで数字が変わるだけだから、
     暗記で乗り切れる。1級は本質(根本)を理解しないと解けない。
     でも、テキストから本質を理解するのは難しい。

    といったところです。
    先生のお陰で工原は少しづつではありますが、進歩している感じがしますが、商会が・・・
    まず、仕訳と理論が覚えられない
    でも、理論(理屈)がわかれば、仕訳もできる気がするのですが、覚えられない・・・。
    ということで、11月に落ちることがほぼ確定なので、
    6月の試験を目指し、商会の方も宜しくお願いします。

    1. pro-boki より:

      いくつかアドバイスさせていただきますね。

      >TAC、ネットスクール、他社のテキストではそれぞれ説明範囲やページ数が異なる。スッキリのテキストに書いてない内容が出題されたが、他社のには書いてあったらしい。

      こういう論点は結構たくさんあります。ただ1つ言えることは、そういう論点が合否の決め手になることはまず無い、ということです。どの本にも載っている論点だけで十分です。それだけで必ず合格点にいきます。自分のテキストに特定の論点が載っていないからといって焦る必要はないです。

      >出題範囲が広く、何が重要で何が重要でないのかわからないから、とりあえず全部覚えようとするが覚えられない。

      そうですね。この濃淡の付け方は、独学だとつらいですよね。これは講座受講のメリットですね。きゃろるさんは講座受けているんですよね?経験者コースですか?商会のカリキュラムは知らないのですが、論点ごとに、最重要、そこそこ重要、普通、切っていい、という感じのアドバイスは無かったですか?

      >富久田先生のように独学で勉強した人のサイトがいくつかあるが、全範囲を網羅しているわけではないし、人によって説明が違うと余計混乱する。

      私もいくつか見ていますが、受験途中もしくは1級合格者の人のサイトはやめておいた方がいいかもしれません。間違い・勘違いが散見されます。会計士に受かっている人のサイトは結構信用できます。(それでも若干の齟齬はあります)。それから、ここ数年で会計基準が結構変わっています。記事が古いままの可能性もあるので、注意した方がいいです。

      最後にちょっときついこと言います。ごめんなさい。でも大事なことなので書きます。3回以上落ちているということは、今の勉強方法を継続しても受かりません。勉強量の問題ではなく、勉強の仕方そのものを変えないといけないと思います。
      結局、腑に落ちた論点しか本試験では点数にならないのです。テキストの練習問題が出来ても、それが腑に落ちてないなら、本試験では通用しません。どれだけ腑に落ちたかが大事。目安としては、その論点を人に説明できるかどうかです。

  3. きゃろる より:

    ご指摘ありがとうございます。

    説明が悪くて申し訳ありません。
    上記は、独学では無理だと思った点、つまり、なぜ独学をやめて受講することにするかの理由を述べたまででして・・・。
    3回落ちたのでいろいろな人の無料講義を受けて、わかりやすい先生を探して
    富久田先生が経験者コースの講師だったので、経験者コースを受講しました(しています)。
    もし、私と同じように独学で頑張っているけど、何回も落ちている方がいたら、
    こういう問題があると参考になればと思い投稿いたしました。

    以前、先生が経験者コースの問題点(基礎がわかっていないのに、受験経験があるだけで、経験者コースを勧められる)を指摘されていましたが、先生のご指摘どおり、経験者コースは基礎がわかっているのが前提なので、毎回ライブで授業の前に確認テストをやって解説みて、かかさず授業を受けても、ついていけていない感じはしました。
    でも、こうして富久田先生に出会えたので、経験者コースを受講して本当によかったと思っています。

    >論点ごとに、最重要、そこそこ重要、普通、切っていい、という感じのアドバイスは無かったですか?
    アドバイスはありました。あと、日商の出題範囲の改定の詳しい説明や、テキストに書いていないIFRSに関しての情報(どうしてこういう処理をするようになったのか)がわかり、受講して本当によかったと思っていますが、次回受講はしません。
    経験者コースでは標準コースの授業をオンデマンドですべて観ることができます。
    商会・工原すべてみましたが、言っていることはわかるし、途中に3分間で問題を解くみたいな時間があり、それも大丈夫。
    だけど、過去問や模試みたいな問題になると、とたんにできない。
    先生のおっしゃる通り、腑に落ちていないからだと思います。
    経験者コースを受講して、今までの勉強方法が悪かったのはわかった。
    でも経験者コースは今の私にはレベルが高い、じゃあ何からどうやったらいいのかを模索してたら、試験まであと10日みたいな・・・。
    だから、もう諦めて6月に受かるようにしようとは思っているのですが、
    何をどうしたらいいのか未だにわかりません。
    いい勉強方法はありませんか?
    先生はどのような勉強をしましたか?
    きっとみんなも知りたいはず!?
    教えてください。

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