第146回日商簿記1級・リアル詳細解説(工業簿記)

第146回日商簿記1級・工業簿記

続いて工業簿記の解説を公開します。こちらも、綺麗事ではなくて、実際に解きながら何を考えていたのかを含めて紹介します。なお、工業簿記以外の科目については、以下をご参照ください。

まずはざっと全体を見渡す

第1問が計算問題、第2問が理論問題です。答案用紙を見ると、理論は用語選択です。これは簡単でしょう。先にちゃちゃっと片付けちゃいましょう。

第2問

①は、補助部門費の配賦において、固定費と変動費を別個の基準で、と言っているのですから、「複数基準配賦法」ですね。これは瞬殺しないといけません。

②は、固定費を何の基準で配賦するか、ということですが、語群を見ると該当するのは「能力」しか無いですね。

③は、変動費を何の基準で配賦するか、ということですが、これも語群を見ると該当するのは「実際消費」しか無いですね。悩む余地がありません。

④と⑤は、基準34ですね。結構マイナーな箇所だと思います。正直、これは、原価計算基準講義などを受けていないと厳しいかもしれません。ただ、勘を働かせれば、製造間接費と分離出来ない原価要素って何だろうと考えれば「直接労務費」は出てくる可能性は十分あると思います。

また、製造間接費と直接労務費が分離出来ないとなると、これらを合わせて取り扱うことになるのだけれど、それって何だろうと考えれば「加工費」も出てくる可能性は十分あると思います。このあたりの発想が出来たかどうかが分かれ目だと思います。

第1問

雑感

ざっと全体を見渡します。おお、部門別計算ですね。これは珍しい。がっつり部門別計算が出たのは98回以来、16年ぶりじゃないですかね。

部門別計算は、講義ではメインどころから外していました。これは、しまったかなぁと思いました。(複数基準配賦法による予定配賦のみは補講をしたんですけどね。)

しかし、問題文を読み進めていくと、何のことはない2級で学習済みの相互配賦法じゃないですか。しかも、単一基準配賦だし、実際配賦。もっとも簡単なパターンです。

(ちなみに、問題文に「製造工業原価計算要綱」と書かれていますが、これは、原価計算基準が制定される前に戦時下で使われていた基準のことです。)

これなら、ケアレスミスさえしなければスムーズに得点出来そうです。みんな、これなら大丈夫だよね、と一安心しました。(実際はそうでもなかったんですが)

問1

まずは軽いジャブです。製品Aへの正常配賦額の計算です。予定配賦率@750円の第1製造部が1,190時間、@800円の第2製造部が810時間なのですから、掛けて足すだけです。

@750円×1,190時間+@800円×810時間=1,540,500円

問2

いよいよ部門別計算です。とはいえ、2級レベルですから落ち着いて計算すればどうってことありません。

  第1製造部 第2製造部 修繕部 動力部 事務部 合計
部門費 1,113,808 1,040,792 242,000 195,500 207,900 2,800,000
事務部門費配賦 83,160 62,370 41,580 20,790 -207,900 0
動力部門費配賦 69,000 103,500 23,000 -195,500 0
修繕部門費 44,000 176,000 -242,000 22,000 0
1次配賦 1,309,968 1,382,662 64,580 42,790 0 2,800,000
動力部門費配賦 17,116 25,674 -  -42,790 -  0
修繕部門費 12,916 51,664 -64,580 -  -  0
2次配賦 1,340,000 1,460,000 0 0 0 2,800,000

以上より、第1製造部の実際発生額は、1,340,000円です。ここまでは簡単ですよね、と思っていたのですが、受講生からの声を聞く限り、すでにここで間違えてしまっている人も少なくないようです。

どうやら、動力部費の配賦基準である動力消費量(kw時間)を計算しそこねたようです。確かに、問題文資料3の配賦のためのデータには、動力消費量が書かれていません。これは、動力定格出力(kw)と当月実際動力運転時間(時間)を掛けて計算します。そこに気付かなかったようです。

うーん、まあ、確かにこれは簿記の論点ではありません。しかし常識の範疇のような気もするし微妙です。1つ試験委員は優しいなと思ったのは、わざわざ単位を(kw時間)と明記している点です。ここで気付いて欲しかった。それから、動力定格出力(kw)と当月実際動力運転時間(時間)のどちらかしか使わないと、データが余りますよね。さらに、実際に計算してみたけど、割り切れないですよね。そこでも気付くチャンスはあった。

ということで、これは出来なかった人、残念でした。あと、出来なかった人は、多分、精神的に焦っていて、単位の(kw時間)が目に入って無かったんじゃないかな、とも思います。

問3

第2製造部門の予算差異と操業度差異が問われています。予算方式に関わらず、総差異は常に一定ですから、それを先に計算してしまいましょう。

予定配賦額:@800×(810時間+195時間)=138万円
実際発生額:問2より、146万円
総差異:△8万円

さて、問題はここからです。ここで、予算方式が、固定予算か公式法変動予算か、実査法変動予算かが書かれていないので、どうしていいいのか分からないとか、というようなレベルではいけません。

いいですか、予算差異というのは、どのような予算方式であれ、実際発生額が予算許容額をいくら上回っているのかで計算します。で、実際発生額は146万円と分かっているわけですから、あとは、予算許容額が判明すれば計算できるのです。

予算許容額ってどうやって計算すればいいのでしょうか。いくつか方法があります。大きく分ければ、固定費+変動費で計算する方法と、操業度に関わらず一律固定とする方法です。前者が変動予算、後者が固定予算です。本問は変動費率も固定費額も何も書かれていませんから前者では計算のしようがありません。よって、後者で計算するしかないのです。

基準操業度(年間正常直接作業時間)が20,400時間ということは、月間に直せば12ヶ月で割って1,700時間です。これが月間における正常直接作業時間だ、と言っているわけです。

そして、予定配賦率が@800円なのですから、正常な金額は、@800円×1,700時間=136万円です。これが予算許容額です。(なお、余談ですが、ここで正常とは、おおむね”過去数年の平均値”という意味で捉えてください。計算問題では関係ありませんが、理論問題で出る可能性はあります)

つまり、予算として許せる額は、136万円なのに、実際は146万円掛かってしまったわけです。よって、予算差異は△10万円です。そして、操業度差異は、総差異が△8万円なのですから、差引で+2万円です。このように操業度差異は常に総差異からの差額で計算できます。(なお、結果としてこれは固定予算による予算方式で計算しているのと同じです)

ここに紹介した差異の計算手順は、予算方式に関係無く通用します。公式法変動予算でも固定予算でも、実査法変動予算でも、上記の手順で計算できます。変化するのは予算許容額のみです。知っておくと役立つと思います。

問4

勘定分析の問題です。どこから手を付けるかに気付けば易しい問題と言えますが、若干パズルチックなので、気付かないと難しいと感じるかもしれません。

仕掛品
前月繰越 199,750 完成品原価   ②  
直接材料費 900,000 次月繰越   ③  
直接労務費 704,000    
製造間接費    
製造間接費
間接材料費 250,000 予定配賦額
間接労務費 配賦差異   ①  
間接経費    

① 製造間接費勘定の配賦差異

実際発生額と予定配賦額の差から計算します。

実際発生額:[資料]4の合計額から280万円(問2からも判明)
予定配賦額:@750円×(1,190時間+605時間)+@800円×(810時間+915時間)=2,726,250円
配賦差異:2,726,250円−280万円=73,750円

x 仕掛品勘定の製造間接費

上記製造間接費の予定配賦額2,726,250円が入ります。

③ 仕掛品勘定の次月繰越

[資料]6の月末仕掛品原価から、120,000円+213,000円=333,000円です。

② 仕掛品勘定の完成品原価

仕掛品勘定の貸借差額から4,197,000円です。

④ 売上原価勘定の製品、⑤売上原価勘定の原価差異

製品
月初製品 333,800 当月販売 4,223,000
当月完成 4,197,000 月末製品 307,800

月初製品・月末製品は、[資料]6より。
当月完成は、上記②の仕掛品勘定の完成品原価より。
当月販売は貸借差額より。

売上原価
製品   ④   月次損益 4301,550
原価差異   ⑤      

④の売上勘定の製品は、製品勘定の当月販売なので、4,223,000円
⑤は貸借差額より、78,550円

問5

連立方程式法です。それは分かるのですが、問題文に示された数値の意味がさっぱり分かりません。Xの係数が-22や-68なのですが、これが何を意味するのやら…。

どうせ埋没かな、と思い試験本番当日はスルーしてしまいました。事務所に帰ってから考えてみたらすぐに出来たのですが、ただ、問題としては、どうなんだろうというちょっとモヤモヤした感触が残りました。というのも、もはやこれは中学1年生レベルの数学の式変形の問題だからです。簿記の試験と言っていいのやらどうやら。

一応解説を付記しておきます。まず、素直に連立方程式法での立式をします。次の3元連立方程式になります。

  • 5/105x+207,900=x
  • 10/105x+2/22z+195,500=y
  • 20/105x+10/85y+242,000=z

問題文に所与されている45,160,500やら86,394,000をヒントに上記の式を変形します。変形した後の式を書いておきます。

  • (単に上記式を解きます)x=218,295
  • (上記式の両辺に231を掛けます)22x+21z+45,160,500=231y
    (問題文に合うように移項します)-22x+231y−21z=45,160,500
  • (上記式の両辺に357を掛けます)68x+42y+86,394,000=357z
    (問題文に合うように移項します)−68x−42y+357z=86,394,000

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