日商簿記1級合格マップ概要

日商簿記1級の合格に必要なこと

日商簿記1級に合格するためのメソッドを紹介する。簿記1級に限らず、ある程度の難関試験であれば、およそすべてに共通するメソッドだと思う。小手先のテクニックではなくて、勉強に対する考え方、向き合い方だ。

後半では、日商簿記1級に限定して、合格するために必要なスキルをステップバイステップで紹介する。どの道をどの順序で進めば良いのか、どのあたりが険しいのか、地図をイメージして読んで欲しい。いわゆる合格マップだ。

勉強に対する考え方

勉強量=質×時間×集中力

勉強量は、学習時間のことじゃない。「」と「時間」と「集中力」を掛けたものだ。

この3つの要素の中でも、もっとも差がつきにくいのが、学習時間だ。どんなに優秀な人でも毎日8時間以上の勉強は困難だ。実際にやってみると分かるけど2〜3日しか続かない。4日目には力尽きる。それに8時間なんて集中力が続かない。後半は集中力が落ちてダラダラしてくる。(公認会計士試験は1日10時間以上は勉強し続けないと受からないと言われている。本当にすごいと思う)

実際のところ、1週間で30時間勉強出来たら相当すごい。働いている人なら、1週間で15時間勉強出来れば上出来。学習時間はだいたいこんなところだろう。時間が取れる人と取れない人の差は最大でも2倍くらい。

だから、学習時間は言うほど差がつかない

じゃあ、どこで差がつくのか。質と集中力だ。特に学習の質は、やり方によって4〜5倍はゆうに変わる。集中力があればさらにその倍くらいは変わる。何回受けても受からない人と短期間で受かる人の差は、ここにある。時間じゃない。学習の質と集中力だ。

質の高い学習をするには

では、どうすれば質の高い学習が出来るのか。これは「腹落ちすること」だ。

  • 腹落ちすると「あ、分かった」という瞬間に快感がある。だから勉強が苦痛じゃなくなる。むしろ楽しい。集中力も続きやすい。
  • 腹落ちすると一度は忘れてもすぐに思い出せる。だから2周目がとても楽。3周目なんて、鼻歌まじりですよ。
  • 腹落ちすると、似た論点を学習するとき「あ、結局、あれと同じことだよね」と気付きやすい。それだけで学習時間が半分以下になる。腹落ちしていないと似ていることに気付かない。結局、暗記量が増える。

質の高い学習とは誤解を恐れずに言えば、暗記しなくてもすむようにすることだ。本質は何かを意識すると、腹落ちしやすく、それが質の高い学習につながる。

集中力を高めるには

  • オンとオフを切り替えよう。やるときはやる。やらないときは積極的に休む。
  • 睡眠は大事だ。睡眠不足の日の1時間は、冴えているときの15分くらいの価値しかない。
  • 何かをしながら、気になりながらの学習は集中力を下げる。気になることを片付けてから勉強しよう。多少学習時間が減っても集中力が高まるメリットの方が大きい。

資格試験は山登りに似ている

2級という山

山のふもとから、頂上を見上げる。あそこからの景色は素晴らしいだろうと思う。頂上に着けば、きっと、新たな展望が開けるのだろうと思う。よし、がんばるぞと登ってみる。

この山はそれほど高くなかった。山道も比較的歩きやすかった。初めてなので正しい登り方は分からなかったけれど、ただ、ひたすらにがんばった。そうしたら頂上に着いた。いい景色だ。気持ちがいい。

ふと見ると、となりにもっと高い山が見えた。よし、次はあの頂上を目指すぞ。

1級という山

今度の山は、なかなか厳しかった。とにかく遠い。いくら歩いても着く気がしない。それに道も険しい。道なき道を歩むような登山だ。一生懸命に歩いているけど、同じところをぐるぐる回っている気もする。ふと入った道は、獣道だった。もう相当な時間、歩いている。だけど一向にゴールにつかない。

こんなときラジオが聞こえてきた。「山登りを励ます会」というらしい。「あきらめなければいつか着く」そんなアドバイスをもらった。本当にそうだろうか。もっと時間をかけて、もっと頑張ればいいのだろうか。まだ頑張りが足りないのだろうか。

そうじゃない。今必要なことは、自分は今どこにいて、頂上はどの方向で、そこまでの道はどうなっているのか。それを知ることだよ。だから、まずは闇雲に歩き回らないで、地図(合格マップ)とコンパス(講師のアドバイス)を手に入れよう。目的地も分からず道具も持たずに闇雲に頑張ってもダメだよ。そこに気付いていない人が多すぎるよ。

ゴールから逆算する

あとどれくらいの距離があるのか

地図とコンパスを手に入れたら、まずは、ゴールまであとどれくらいの距離があるのかを確認しよう。懸命に歩いてきたけど、思ったほど進んでいないかもしれない。逆に、案外ゴールはすぐそばかもしれない。

難解論点にハマってはいけない

それから、獣道(難解論点)に注意しよう。この道に入ると大変な労力を使う割に一向にゴールに近づかない。獣道は、さっさと避けるのが大切だ。

ゴールに到着する時間を予測する

地図をよく見て、どのルートをどう歩くのかを計画しよう。到着までの時間予測も大切だ。自分の歩く速度とゴールまでの道のりから冷静に計算しよう。もし日没(試験日)に間に合わなそうなら、無理はしない。日没に間に合うように計画を見直そう

計画はいつも見直す

計画を立てたからといって、立てっぱなしはよくない。定期的に見直そう。獣道に入っていないか、予定の時間通りに進んでいるか、定期的に確認しよう。予定通りでないなら、計画修正を恐れてはいけない

これが、険しい山の正しい登り方だ。正しく計画を立てて、正しく登れば、ゴールには自然と着く。常に地図とコンパスを使って道を確認することも大切だ。根性で歩き続ければいいってものではない。あきらめずにがんばれば、いつか着くというものではない。勘違いしないでほしい。

日商簿記1級合格マップ(概要)

ここからは、日商簿記1級に限定して、合格マップ(の章立て)を紹介する。

合格に必要な4ステップ(商業簿記・会計学)

腹落ちするには、次の4つのレベルを積み上げていく必要がある

  • レベル1 会計の基本となる考え方の理解
  • レベル2 各論点の本質理解
  • レベル3 各論点の会計処理と問題演習(テキストの例題が解けるレベル)
  • レベル4 総合問題でも解ける力(過去問が解けるレベル)

ところが、多くの受講生はこの積み上げが出来ていない。これは、スクールのカリキュラムにも原因があるようだ。一般にスクールの講座はレベル3に力点が置かれる一方でレベル1と2が手薄だ。

そしてレベル3の講義を受ければ、腹落ちはしていなくとも、テキストの例題レベルは出来るようになる。つまり何となく分かった気になれるのだ。だけど、本質が分かっていないから、いざ過去問レベルを解いてみるとお手上げになる。

そこで、スクールはどうするか。レベル4の問題を解き方講義や答練で回す講座を行うのだ。すると多くの人は暗記に走るようになる。誰だって意味が分からないなら暗記するしかないからだ。しかし、それでは本試験で同じ問題が出ればいいけど、ひねられたらおしまいだ。そして、単純な暗記だから、すぐに忘れる。そしてまた振り出しに戻るわけだ。同じところをいつまでもぐるぐる回ることになる。

どうすればいいのか。インプット講義でレベル3を学習したのはいいとしよう。問題はその次だ。レベル4に行かずにレベル1とレベル2がしっかり出来ているかどうかを確認して欲しい。レベル3を繰り返しても意味は薄い。とにかく大事なのはレベル1とレベル2だ。

レベル1は、どの論点のためというよりも、そもそも1級を学習するなら、必ず必要になる前提知識だ。これが分かっていないと、後々、大きく遠回りをすることになる。

以下に、レベル1の具体的な例をいくつかあげてみた。自分の知識を確認してみてほしい。大事なことは、正しい会計用語とかどうでもいいから(とりあえず今はね。試験前には必要だよ)、会計を知らない人に理解してもらえるように説明できるかどうかだ。奥さん、旦那さんがいる人は、ぜひ、説明してあげてみてほしい。相手が「へぇ会計ってそういう仕組なんだ」って理解してくれたらOKだ。お話する人がいない人は、ぬいぐるみを相手に説明してあげて欲しい。

とにかく誰かに話しかける、このレベル1を人に説明するというのは、本当に力が付く学習法だ。

次に必要なのが、個々の論点について、そもそもなぜ、そのような会計処理をするのか、誰のため何のためにやっているのかを説明できるかだ。つまりレベル2の説明だ。これは、たいていレベル1に関係してくる。つまりレベル1が分かっていないとレベル2は説明できないのだ。

そうして、あらためて、レベル3をやってみて欲しい。まったく新しい世界が開けるだろう。

レベル1.会計の基本となる考え方の理解

  1. そもそも会計とは何か、誰に何を何のために知らせたいのか、自分の言葉で説明できる?
  2. 発生主義と実現主義とは何か。費用収益対応の原則とは何か。損益計算書原則に用いられている用語ではなく、自分の言葉で噛み砕いて説明できる?
  3. 資産と費用は、極めて似ていることを理解している?どこが似ていてどこが違うの?
  4. 負債と資本って、何が違うの?負債は嫌なもので資本って嬉しいものってイメージであってるの?
  5. 会計公準を自分の言葉で説明できる?発生主義を採用するのは会計公準のどれのせい?
  6. 資産に計上されている現金って誰のもの?経営者?債権者?株主?それとも・・・それを説明するのは会計公準のどれ?
  7. 論点の多くは「いつ」認識するか、「いくら」で測定すべきかをテーマにしているということを分かっている?
    では、発生主義と実現主義というのは、「いつ」と「いくら」のどちらの話をしている?
  8. 取引を思い浮かべたとき、T/Bのどことどこが減ったり増えたりするかイメージしている?
  9. 表示科目と勘定科目の違いを理解している?覚える必要のないものを覚えようとして無駄な労力を使っていない?

レベル2.各論点の本質理解

  • その論点は何のためにやっているのか(その処理をしないと何が問題なのか)
  • 当事者は誰か
  • なぜ、そのように処理するのか(違う方法で処理すると何が問題なのか)

レベル3.各論点の会計処理と問題演習(テキストの例題が解けるレベル)

  • 会計処理方法(仕訳)
  • 計算方法

レベル4.総合問題でも解ける力(過去問が解けるレベル)

  • 総合問題の解き方
  • ケアレスミスせず時間を短縮するための集計テクニック

合格に必要なステップ(工業簿記・原価計算)

工業簿記と原価計算は、また商会とはちょっと異なる学習方法が必要だ。

工業簿記

まず、工業簿記は2級レベルの完全マスターが必須だ。特に勘定連絡はパーフェクトにしてほしい。2級レベルとは言え勘定連絡をパーフェクトに理解出来れば、1級論点の半分近くが終わったと言っても過言ではない。ここが幹で、他の論点は枝葉だ。幹がしっかりしていないと、計算は出来るけど、何の計算をしているのか分かっていない、ということになりかねない。

次に重要なことは、標準原価計算を徹底的に攻略すること。2級の標準原価計算を暗記で乗り越えた人は要注意だ。差異の計算方法なんていくら暗記しても1級では通用しない。数限りなくパターンがあるからだ。それよりも差異の本質的な考え方をマスターすることが大切だ。

最後に総合原価計算をおさえよう。特に、ボックス図が何を表しているのか、その本質的な意味を理解しよう。ボックス図に書かれる数値はそもそも何を意味しているのか。これが分かると、1級の複雑な総合原価計算がとても楽になる。標準原価計算でも応用が効く。

  • 最重要課題は2級レベルの勘定連絡の完全マスター
    費目別計算から部門別計算、仕掛品勘定、製品勘定、売上原価勘定の連絡をおさえ、最終的に財務諸表(特にP/LとC/R)が作れるようになること。原価差異がどこで把握されて、どのように財務諸表に反映されるかを理解できること。
  • 2番めに大切なのは2級レベルの標準原価計算と差異分析の本質をマスターすること
    まずはシュラッター図が何を意味しているのかを理解することが大切だ。各差異にはどんな意味があって誰に責任があるのか。そもそも基準操業度とは何なのか。基準操業度が変化すると、どの差異に影響が及ぶのか、など、本質的な意味の理解が大切だ。
  • 最後におさえたいのは、ボックス図の表す本質的な意味
    総合原価計算の問題を解くさい、ボックス図に数値を埋めていって機械的に解いていないだろうか。2級レベルでは通用するが1級になるとパターンが増えすぎて通用しない。対処方法としては、ボックス図の数値の意味を理解することだ。いろいろな考え方があるが、面積図を用いるとその意味を理解しやすい。

原価計算

原価計算は、一見すると、たくさんの論点があるように見えるけど、実は、根底にあるのはたった2つ論点であることを知った方がいい。

その1つは直接原価計算だ。CVP分析も予算実績差異分析も、事業部制も、業務的意思決定会計も、セールスミックスですら、根底にあるのは直接原価計算だ。直接原価計算イコール固定費調整みたいに思っている人、多いけど、そんなことはどうでもいい。そうじゃなくて、直接原価計算と全部原価計算の根本的な相違点、それぞれのメリットとデメリットは何なのか、それが腹落ちしているかどうかが超大事だ。

そして、もう1つは、設備投資意思決定会計だ。工原の全論点の中で、唯一、キャッシュフローを計算対象にしている論点だ。なぜなのか、その根本的な理由を知らずして、小手先の計算テクニックに走ると(例えば、営業NCF×0.6+減価償却費×0.4 なんていう公式を意味も分からず覚えると)ドツボにはまる。

このあたりの本質的な理解をした上で、段階的に問題レベルを上げていけば、たいていの人はスムーズに解けるようになる。出来ない人は、正しく学んでいないだけだ。工原は分かればとても面白い学問だ。この面白さを知って欲しい。

それから、原価計算は、どうしても数学の基礎力が必要だ。中学1年生レベルだけど、もう忘れちゃっている人もいるだろう。面倒がらずにそこから勉強しなおした方が早いかもしれない。(個別指導プログラム参加者には、ここの個別指導を予定しています)

個別指導プログラム参加者のみなさんへ

上記は合格マップの概要です。今後、これをより詳細に作成して配布します。

まずは、年内に少なくとも商会はレベル1を固めてもらいます。とりあえず、レベル3とかレベル4とかはどうでもいいです。レベル1と2がしっかりしていれば、そのへんはすぐクリアできますから。それより、レベル1と2があやふやな状態で、レベル3以降をいくら積み重ねてもすぐに忘れてしまいます。

工原は特に工業簿記の2級レベルの完全マスターを目指します。これは年内から来年1月中くらいを目安にします。まず、年内は勘定連絡を完全マスターしましょう。これには2級レベルの費目別計算からF/S作成まで一連に流れる総合問題を解くのが効果的です。作問して配布し、講座を行います。これが完全に出来るようになるまで個別指導します。


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