ちょっと簿記クイズ(付随費用はなぜ取得原価に入れる?)

付随費用はなぜ取得原価に入れるの?

アシスタントの弟子1号君に「ねえ、1級受けてみたら?教えてあげるよ」と何度も口説いていたのですが、その都度断られてきました。「無理」その一言で。でも、粘り強く口説いたら「そこまで言うのならやってみようかな・・・」と。おお。応援するぞ。で、今日から勉強しています。そうしたら早速質問が飛んできました。

「商品を販売したときの運賃は運送費として処理するのに、商品を仕入れたときの運賃はなぜ運送費にしないで、付随費用として取得原価に入れちゃうの?これ運送費としちゃうと、具体的にどういう問題が生じるの?」

おぉ。これは良い質問だ。いいですねぇ。みなさん分かりますか?自分の言葉で説明できますか?分かった人、コメント欄に書いてね。

何が問題か

具体的に数値を使って考えてみよう。

前提条件

話をシンプルにするために、期首に商品在庫はないものとする。当期、@1万円の商品を100個仕入れた。そのときの送料は2万円。この商品は@1.6万円で売れる。当期に仕入れたうちの半分の50個が売れた。翌期には残り半分の50個が売れた。

送料を取得原価に算入しないで運送費としたとき

当期

当期の売上(収益)はいくらだろうか?
@1.6万円×50個=80万円だ。

当期の費用はいくらだろうか?
まず、売上原価が、@1万円×50個=50万円、それから運送費が2万円なので、52万円だ。

では、当期の利益はいくらだろうか?
収益80万円−費用52万円=28万円だ。

翌期

さて、翌期。売上(収益)はいくらだろうか?
@1.6万円×50個=80万円だ。

翌期の費用はいくらだろうか?
売上原価が、@1万円×50個=50万円だ。

では、翌期の利益はいくらだろうか?
収益80万円−費用50万円=30万円だ。

まったく同じ商品を、同じ条件で販売しているのに当期の利益は28万円で、翌期の利益が30万円っておかしくない?

送料を取得原価に算入したとき

当期

当期の売上(収益)はいくらだろうか?
@1.6万円×50個=80万円だ。

当期の費用はいくらだろうか?
仕入は、@1万円×100個+送料2万円=102万円、よって1個あたり@1.02万円なので
売上原価は、@1.02万円×50個=51万円

では、当期の利益はいくらだろうか?
収益80万円−費用51万円=29万円だ。

翌期

さて、翌期。売上(収益)はいくらだろうか?
@1.6万円×50個=80万円だ。

翌期の費用はいくらだろうか?
売上原価が、@1.02万円×50個=51万円だ。

では、翌期の利益はいくらだろうか?
収益80万円−費用51万円=29万円だ。

まったく同じ商品を、同じ条件で販売したので、利益も同じになった。理にかなっているよね。

適正な期間損益計算

これは、コメント欄のファイティンさんとmatsunoさんの回答が素晴らしい。

1番大事なキーワードは、「適正な期間損益計算」だ。本問の場合、仕入れた分を全て売ってしまえば、送料を運送費として別建てにしようが、付随費用として取得原価に入れようが、利益は変わらない。どちらも58万円だ。つまり「損益計算」自体は問題ないんだ。

でも、当期に全て売れないなら、運送費として別建てにしてはまずい。期間損益がおかしくなるからだ。上記のとおり、当期と翌期で同じ商品を同じ価格で半分ずつ売っているのに、当期の利益が28万円で翌期の利益が30万円になってしまう。

これ、送料を付随費用として取得原価に入れておけば、当期も翌期も利益が29万円となって、「適正な期間損益計算」が果たされるわけだ。

なぜ、運送費として別建てにすると、適切な期間損益計算が出来ないのか。それは、「費用収益対応の原則」に沿ってないからだ。費用は、実現された収益に対応した分しか計上してはいけない。これが大原則だ。

つまり、当期に半分しか売れてないなら、送料も半分しか計上しちゃあいけないのだ。つまり、送料っていうのは、商品売上という収益に個別対応しているのだから、商品の仕入れ代金とセットにしておかなければまずい。

ここまでの理屈がわかっていれば、十分だ。で、もし、理論問題でこの問題が出題されたら、「適正な期間損益計算」と「費用収益対応の原則」という2つのキーワードをおさえつつ、「私、分かってますよ」ということをアピールする文章を付け足しておけば、まず満点近くもらえる。学者が使うようなカッコイイ言葉を使う必要は全くない。逆に分かってないからごまかしてるでしょ?という印象すら受ける。こういう風に具体的な数値を出しも構わない。とにかく、私は本質が分かっていますよ、というアピールが大事だ。ちょっと余談でした。

もしも運送費を別建てにしちゃったら

もう1つ、これはファイティンさんへの宿題にしておいたのだけど、もし、間違えて、運送費を別建てにしちゃってたら、どうすればいいのだろうかという問題。

何も考慮しないと、上記のように当期の利益が28万円で翌期が30万円というおかしなことになるので、少し会計処理で工夫をしなければいけない。どうすればいいか。決算のとき、運送費2万円を当期の売上原価(50万円)と期末商品(50万円)に1万円づつ費用配分して、期末商品に配分した分は、翌期に繰り延べればいいわけだ。

つまり、運送費のうち1万円を繰り延べるための資産勘定に振替えればいいわけだ。で、翌期に再振替仕訳をすればいい。

注意:基準では、運送費などの引取費用は取得原価に算入しないといけないことになっている。別建ては認められていない(保管費などの内部副費は別建てが認められている)。だからこの処理は、考え方としては合っているけど、会計処理としては正しくない。注意して欲しい。

こういう会計処理って見たことあるでしょ。例えば委託販売で、積送諸掛って覚えている?あれなんか全く同じ意味だよね。

こういう風に、一見するとまるで違う論点のようで、実は根底にある考え方はまるで同じという会計処理はたくさんある。そういうのをひとまとめにして覚えると、とても効率がいい。覚える量が減るし、記憶に深く刻まれるから忘れにくい。単にテキストに書いてある会計処理を「ふーん、そういうものか」と軽く流さないで、「なぜ、こうするのか」を常に意識すると、一気に合格に近づくよ。


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ちょっと簿記クイズ(付随費用はなぜ取得原価に入れる?)” に対して1件のコメントがあります。

  1. sky より:

    先生こんにちは。
    自信がないですが書いてみます。

    会計で大切なことのひとつは、利益を正しく計算することです。

    仕入れの時点では、商品の本体価格だけではなく、付随費用も含めた総額が、それを売って利益を得るためにかかる「費用」と考えます。

    一方、当期に仕入れたものが全て当期に売れるわけではなく、売り上げに付随費用を含めてしまうと、(付随費用をどこまで認めるかの線引きも難しく)売上原価が過大になってしまう可能性があり、正確な損益の計算が出来ません。

    そのため売り上げの場合には、仕入れ価格に利益を上乗せした売価のみを計上し、付随費用は別建てで把握します。

    最終的には「適正な損益計算をするため」「未実現損益を算入しないため」ということでいかがでしょうか。

    1. pro-boki より:

      正解!という箇所と、うーんそれは違うかなという箇所、それから、微妙だなという箇所が混在しています。もし、これが理論問題だとすると、

      1.全般的に何となく理解していることは伝わってくる。
      2.しかし決定的に重要なキーワードが書かれていない。
      3.あと、明確に間違えたことを書いている。

      という感じで、採点に悩みます。特に3はもったいない。余計なこと書かない方がいいのにという感じです。ただ、全体的にイメージとしては、おおむね理解しているんだろうな、ということは伝わってきます。

      まだ、回答が付くかもしれませんので、正解はちょっと待って下さいね。

  2. ひろりん より:

    自信ないですが、

    収益と費用が混在してしまうから

    でしょうか?

    すごくシンプルな回答で自信ないです

  3. ひろりん より:

    追加ですが、

    取得原価は費用なので、そこに付随費用をプラスするのは問題ない
    ただし、売上に運送費を含めてしまうと、本来マイナスとなる費用が収益に計上されてしまう

    ということでしょうか?

    1. pro-boki より:

      >ひろりんさんへ
      ちょっと追記してみました。ぜひ、考えてみてください。

    2. ひろりん より:

      仕入時に付随費用を運送費にしてしまうと、商品を売ったときに、売上原価に含まれないから、でしょうか?

      なんだか混乱してきました(笑)

    3. pro-boki より:

      はい、ひろりんさん、そのとおりです。
      もう少し正確に言うと、仕入時と販売時が同じ期間なら問題ないのですが、もし、期間が異なると問題が生じるのです。

    4. ひろりん より:

      費用収益対応の原則、期間費用?収益?とかワードは始めに思い浮かんでいたんですが、それをどう説明して、説明のどこに組み込めばいいのか、わかりませんでした。。

  4. ファイティン より:

    先生の追記の前に下記考えていたのですが・・

    費用収益対応の原則より、
    仕入れは発生主義なので、まだ全額売れると確立してない段階で計上していいので。
    それに対し、売上は実現した収益(売上)に対応して発生した費用を明確にするため、
    つまり、売れた分だけの商品に対して当期の費用(運賃等)を
    明確にしなければならないので・・・かなと思ったのですが。。
    追記の「具体的にどういう問題が生じるか・・」についてまた考えてみます。

    1. pro-boki より:

      ファイティンさん

      先生は嬉しいよ。ほぼ満点の答えです。そうなんです。大事なキーワードは「費用収益対応の原則」なんです。それからもう1つ、大事なキーワードは「適正な期間損益計算」です。これ、skyさんがとてもおしい。
      「損益計算」と言ってしまったら、それは、運賃を運送費としようが取得原価に算入しようが、最終的に損益は同じになるので問題は起きないのです。でも「期間損益計算」はおかしくなる。そこがポイント。

      >追記の「具体的にどういう問題が生じるか・・」についてまた考えてみます

      これは、答えを書いてしまいますが、「期間損益計算」が不適切になるです。
      では、もし、仕入れ時の運送費を取得原価に算入しないで、運送費という費用の科目を使ったとして、どういう会計処理をすれば、適正な期間損益計算になるでしょうか。考えてみてください。

  5. きゃろる より:

    すみません。
    昨日の夜の時点でブログみて、ずっと考えていて、今見たら昨日の質問と違っていてちょっと混乱しています。
    現在の質問は、「仕入時に掛かった付随費用(運送費等)を取得原価に入れなかったら場合、どんな問題がありますか?」ですよね。
    では、ネタにされるのを覚悟して
    仕入時に掛かった運送費を取得原価に入れなかった場合、運送費は販売・一般管理費算入されてしまうため、売上総利益が高くなる。必然的に売上総利益率が高くなる。
    この売上総利益率を基に収益力や採算性を計ったりするので、運送費が高かった場合、
    本来の売上総利益が実際よりも高くなり、誤った収益性の分析を行ってしまうことになるから。
    でどうでしょう。

    1. pro-boki より:

      きゃろるさんへ
      ごめんなさい。ちょっと質問内容を変更しました。問の論点を明確にしました。
      財務分析の方向から来ましたね。うーん、確かにそれもありますよね。でも、営業利益以降(経常利益、純利益)は変わらないですよね。売上総利益率だけの問題ならそんなに大した問題じゃない。それよりももっと大きい問題があるんですよ。解答書きますね。ご覧になってください。

  6. matsuno より:

    もう一通り議論は終わっているようで、
    コメントもしっかりと読んでしまい、手持ちの参考書でも一通り調べてしまいましたが。
    アウトプットがてら一言書かせていただきます。

    「商品の仕入代金ならびに当該商品の仕入れに係る運送費は、
    当該商品の売上による収益と個別的に対応している。
    そのため、通常は当該商品の仕入代金と運送費をまとめて取得原価とする。

    容認規定として、仕入代金と運送費を別建てで処理することが認められているので、
    運送費を取得原価に含めないことで問題が起こるわけではない。

    この場合、適正な期間損益計算を行うためには、決算整理において
    売上原価と期末商品棚卸高に費用配分する処理を、
    仕入代金と運送費それぞれに対して行えばよい。」

    1. pro-boki より:

      「財表とかの理論問題でこういうふうに答えたら満点でしょう。」
      ・・・と最初は書いたのですが、ちょっと気になって調べてみました。

      会計基準と、連続意見書を確認しました。そこでは、次のように書かれています。連続意見書第四、第一企業会計原則と棚卸資産評価、五取得原価の決定の箇所です。

      「副費として加算する項目は、引取運賃、購入手数料、関税等容易に加算しうる外部副費(引取費用)に限る場合があり、外部副費の全体とする場合がある。さらに購入事務費、保管費その他の内部副費をも取得原価に含める場合がある。加算する副費の範囲を一律に定めることは困難であり、各企業の実情に応じ、収益費用対応の原則、重要性の原則、継続性の原則等を考慮して、これを適正に決定することが必要である。」

      これ、もう少し分かりやすく言うと、要するに、倉庫代や購入事務費といった内部副費は取得原価に加算しないことも可能だよ、と言っています。なぜかというと、どの棚卸資産にどの内部副費がいくら対応しているのか、その測定が困難だからです。例えば、倉庫なんて、色々な材料とか商品が出たり入ったりするでしょ?倉庫代が月額10万円だとして、この商品が負担すべき倉庫代っていくら?というのって測定出来ないでしょ。こういうケースを想定しているのです。

      これに対して、外部副費(いわゆる引取費用のこと。運賃なんかが入ります)は、必ず取得原価に含めます。別建てすることは、容認されていません。なので、matsunoの「仕入代金と運送費を別建てで処理することが認められている」という記述ですが、これは認められていないと思います。(もし、私が見落としていて、どこかに容認規定が書かれているようなら、教えてください。)

      私のファイティンさんへの設問の仕方がよくなかったかもしれませんね。
      ちょっと誤解を招きかねない表記でした。

      一応、こういうことですので、間違えないようにしてください。基本的に付随費用は取得原価に算入です。内部副費の一部に限り、別建てが許されています。

    2. matsuno より:

      総括の記事まで読ませていただきました。
      連続意見書まで詳細に調べてくださって、ありがとうございます。
      費目別計算の材料副費の論点とも繋がっているとは思っていませんでした。

      質問の答えとして一言で済ますなら、個別的対応・期間的対応の話だろうと、
      それから運送費を別建てにするケースは積送諸掛の話だろうと
      当たりを付けられたところまでは一応良かったのだろうと思います。

      ただご指摘の箇所については、すみませんでした。
      余計なことを勘で書いてしまいました。

      質問の答えとして「別に問題はないよ」とも言っておこうとした手前、
      テキスト等や基準からはなかなか根拠らしい根拠が見つけられず、
      TACのB6変型判の小さい本(簿記論 完全無欠の総まとめ)の中に、
      仕入諸掛の処理の第一法として
      「仕入勘定または商品勘定に直接加算する」「(注1)第一法を原則とする」
      とあるのを見かけた程度でしたから。

      結局、原則でない方はもう容認で別にいいだろうと、
      ついそれっぽく言い切ってしまったということです。

      赤字の注意のところもしっかり気を付けていきます。

  7. ファイティン より:

    先生、ありがとうございます!
    ちょうど先週から企業会計原則を見直していたので。。
    でも発送費の疑問はまったく思いませんでした。
    アシスタントの弟子1号さんの質問のおかげで意味が深まりました。

    >では、もし、仕入れ時の運送費を取得原価に算入しないで、運送費という費用の科目を使ったとして、どういう会計処理をすれば、適正な期間損益計算になるでしょうか。考えてみてください。

    仕訳を考えてみました。
    まず当期首に仮に下記仕入をします。
    仕入 100 /買掛金 100
    運送費 50 / 現金 50

    当期は仕入した半分だけ売れたとします。
    決算時の仕訳で修正します。
    前払費用 25/ 運送費 25
    当期の費用は売れた分に対応した費用となります。
    繰り延べる仕訳しか思いつきませんでしたが・・どうでしょうか?

    1. pro-boki より:

      完璧です。

  8. ファイティン より:

    考えたあと、P/Lを作成してみて回答しました。よかったです。
    解説ありがとうございました。

    1. pro-boki より:

      ファイティンさんへ
      調べてみたところ、ちょっと間違いがあったのでmatsunoさんへのコメントと、記事を修正しました。
      まあ、仮定の話なので、間違いというわけでもないのですが・・・運送費は必ず取得原価に算入しないといけないという点で注意が必要です。別建てにすることは許されていません。(内部副費は別建てOKです)
      でも、もし別建てにしたなら、ファイティンさんの仕訳の考え方であってます。なお、仮に内部副費を別建てにした場合、繰り延べるときは棚卸資産勘定が適当であろうと、会計基準に書いてありました。前払費用ではないようです。ちょっと、調べが浅い段階で出題しちゃってごめんなさい。

  9. ファイティン より:

    なるほど・・内部副費または外部副費として考える必要があるんですね。。
    詳しい解説ありがとうございます。
    外部副費は必ず取得原価に含めるとおぼえておきます。
    「適正な期間損益計算」について具体的に考えることができて、
    よかったです。

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