日商簿記1級に繰り返し落ちる人は傾斜配点のワナを知らない

頑張るだけでは受からないのが1級

最初に厳しいことをいう。もし、あなたが「試験に受かるためには、とにもかくにも頑張って勉強すること。そうすれば、それだけで受かる。」と思っているのなら、多分あなたは受からない。そんなに甘いものではない。

日商簿記1級は、知る人ぞ知る相対評価という採点方法を採用している。その採点方法において有利になるような点数の取り方をすること、それがとても大事だ。それを知らずに、ただ闇雲に頑張るだけでは、よほどの実力の持ち主でないと上位10%には入れない。

1級の合格率は安定し2級の合格率はばらつく

日商簿記1級の合格率はおよそ10%だ。開催回によって多少の前後はあるものの、それでもおおむね8%〜12%におさまっている。過去15年分、29開催分のデータを見てみよう。(データソースは日商のサイト)

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113回に過去最高の合格率13.9%を叩き出したものの、その直後の114回は3.5%と最低になってしまった。まあ、このあたりは例外と思っていいだろう。基本的には極めて10%に近い合格率で推移している。

これ、2級や3級と比べると大きく異ることが分かる。2級の合格率など、直近5回だけを見ても次のとおりだ。安定していないことが分かるだろう。

143 142 141 140 139
合格率 25.8% 14.8% 11.8% 34.5% 21.8%

たった5回なのに34.5%のときもあれば、11.8%のときもある。なぜ、2級はこれほどばらつくのに1級は安定しているのか。そこに合格のための秘密が隠されている。

1級は相対評価、2級は絶対評価

簿記2級は絶対評価だ。これは、あらかじめ問題ごとに配点を決めておき、70点に達したら合格とする評価方法だ。なんだ当たり前じゃないかと思われるかもしれない。ただし、この評価方法にはデメリットがある。それは、合格率が安定しないことだ。問題が易しければ70点を超える人が多数となり合格率は上がるし、逆に問題が難しければ合格率は下がる。当然、難易度が易しいときに受けた方が得だ。つまり、受験生は、運にも左右されてしまうのだ。

これに対して簿記1級は相対評価だ。問題ごとに配点を決めておくものの、いくつか少数のサンプルを採点し、あまりに平均点が低かったり高かったりしたときは、配点そのものを変えてしまうのだ。そうして、70点超えの人が10%前後になるように調整する。

例えば、ある科目がとても難しく、当初配点では10点未満(25点満点)多数で、ほとんどの人が不合格になってしまうとする。このままでは合格率が1%とか2%だ。まずい。そんなときには調整が入るようだ。この点数調整のことを傾斜配点という。

傾斜配点の多くは底上げ方向に行われる

傾斜配点は平均点を上げる方向にも下げる方向にも行われる可能性があるが、多くは、平均点を上げる方向に行われる。つまり、試験委員が思ったほどには受験生の出来が良くなくて、平均点が低すぎるので、配点を変えてかさ上げするのだ。

具体的には、どのようにして配点調整をするのだろうか。
簡単だ。みんなが出来た問題の配点を上げて、みんなが出来なかった問題の配点を下げるのだ。つまり、基本問題の配点を高めに調整して、難問にはほとんど配点しないように調整する。これが傾斜配点の基本的な仕組みだ。

いくつかの実例を紹介しよう

私個人の経験談だ。123回日商簿記1級を受験したときの話。受験前から商業簿記で「特殊商品売買」が出たら捨てようと思っていた。なぜなら、ここ、多くの人の不得意論点なので、どうせ、みんな出来ないだろうと思っていたからだ。つまり、配点調整が入ったらほとんど配点来ないだろうと確信していたのだ。

さて、実際に試験を受けてみたところ、本当に「特殊商品売買」が出題された。それほど面倒そうでも無かったし、やれば出来そうだったけど、最初の方針通り完全に切った。やらないと固く誓った。その代わり、他の論点はミスなく全力を尽くせるよう頑張った。結果、各スクールの採点では18点前後(25点満点)だったけど、実際の点数は22点だった。やはり配点調整が入ったものと思われる。

次の例は、同僚から聞いた話だ。彼女は125回の試験を受験した。彼女はとにかく工原が苦手で苦労していた。それにも関わらず、125回の原価計算は史上最難関と言われるほどの難易度で彼女は絶望した。問1は非常に簡単で10分くらいで出来る、問2はまあ普通、問3がそこそこ難しくて、問4が絶望的な難易度という感じだった。彼女は問1と問2だけを解いて、あとは全然分からなかったので仕方なく捨てた。そして工業簿記に専念した。正直、落ちたと覚悟したそうだ。

結果、彼女は受かっていた。確か原価計算は16点か17点だったと言っていた気がする。ということは、問3と問4で8点以下しか配点が無かったということだ。問4は設備投資の問題で4問あった。これだけでも30分から1時間くらい掛かるほど難しいし計算量も多かった。しかし、ほとんど配点は無かったようだ

設備投資をしっかり学習してきて自信のあった受験生は、多分、問4に手を出したことだろう。そして大量の時間を消費したあげく撃沈したことだろう。彼女がラッキーだったのは、設備投資は得意ではないので、早々に捨てると決断したことだ。結果、傾斜配点に救われて合格した。

基本問題を落とすことほど大きな罪はない

何が言いたいか。もし、あなたが簿記1級の受験経験者で過去に60点代で落ちていたとしよう。そうすると「もう少しだ」と思ってしまう。「あと1問あの問題が出来ていたなら・・・」と思ってしまう。そうして応用論点に力を注ぎ始める。

結論から言えば、方向性が間違えている。1級は基本問題をきちんと取れば間違いなく80点以上取れる。60点代しか取れないというのは、何か基本問題を落としているのだ。だからやるべきことは、次こそは基本問題を落とさないようにすることだ。応用問題を取れるようにすることではない。

本試験では、まれにテキストにすら載っていない論点が出題されることがある。すると動揺してしまう。そして、そのときに落ちたりすると次は、その応用論点も勉強しないといけないと焦る。でも、実際は、ほとんどの受験生がその論点を得点出来ない。そこに大きく配点したら合格率がとても下がるのでほとんど配点が来ない。だから、そんな論点をとってもしょうがないのだ。

それよりも、基本問題でどこか落としているところがあるはずだ。それがケアレスミスだろうが、読み落としだろうが、本当に知らなかった論点だろうが関係ない。基本問題を落とすことは、とても大きな罪なのだ。そこに思いを寄せなければいけない。

まあ、スクールや資格予備校にも罪はある。そういう応用論点を予想問題に出して煽るからだ。焦りを誘発する。そして、スクールや資格予備校への依存度を高める。そんなワナにはまっていたらいつまでも受からない。

基本問題を通して本質を理解することが合格への一番の近道

公認会計士試験では有名な話がある。「正答率50%以上の問題を全て正解すれば合格」という話だ。つまり半数以上の人が答えられる問題を全部正解すればそれだけで合格するということだ。応用論点なんて全て落としても大丈夫。

ただし、基本論点であるなら、多少目先が変わったり、ひねられても正解できる実力は必要だ。これは本質が分かっているかどうかに掛かっている。計算方法だけは知っているけど、なぜ、そう計算するのかの理由が分からない論点は要注意だ。「なぜ、そう計算するのか」これを他人に説明できるレベルにするのが結局本質を理解するということだ。これが、本当に合格への一番の近道なんだ。

日商簿記1級に繰り返し落ちる人は、応用論点や予想問題の難問は解けるのに、基本論点をひょいと落としてしまうことがある。そして、傾斜配点のワナに引っ掛かって、ギリギリ70点に届かない。

もう同じあやまちを繰り返さないようにしよう。どう点数を取れば合格するのか、ただガムシャラに勉強するだけではなく、合格のための点数の取り方、学習の仕方にも目を向けてほしいと思う。


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