商業簿記の総合問題がなかなか伸びなくて困っている人へ

1級合格者は2級問3を25分以内に解く

日商簿記2級の総合問題、問3。覚えているだろうか。いわゆる財務諸表作成問題や精算表作成の問題だ。これ、どれくらいの時間で解けるだろうか。満点は取らなくていい。8割以上取るのに必要な時間を計測してみよう。

もし、あなたが2級受験生なら・・・

  • 60分以上
    練習不足だ。基礎からしっかりやろう。
  • 45〜60分
    遅い。うろ覚えの仕訳があるはずだ。まだ2級合格には少し厳しいかもしれない。
  • 35〜45分
    標準的だ。本試験にも十分対応できだろう。
  • 35分未満
    速い方だ。自分なりの効率のいい下書きを会得しているのだろう。2級合格者レベルだ。

もし、あなたが1級受験生なら・・・

  • 45分以上
    厳しい。うろ覚え仕訳があるはずだ。2級からの勉強が必要だ。
  • 35〜45分
    遅い。このスピードだと1級の問題では間に合わない。
  • 25〜35分
    1級受験生の標準的レベルだ。
  • 25分未満
    速い方だ。1級合格者レベルだ。

*標準的な難易度を想定。難易度の高い回は、上記にプラス5〜10分加算

1級受験生で、よく聞かれるのが。個別論点の例題は解けるのに、過去問のような総合問題になると解けない、という声だ。これは、スクールの講義が、個別論点の解説と例題演習が中心であることが原因だ。これだけやっていても総合問題は解けるようにならない。

総合問題は、個別論点の集合とはいえ、やはり解き方のコツというか、効率の良い解き方というのがある。自己流の解き方では、2級では通用しても1級では通用しないだろう。難易度もさることながら、量も多く複雑だからだ。

どうすれば、効率の良い解き方が身につくのか。その試金石となるのが、2級の問3だ。これを25分以内でミス無く解けるくらいの力がつけば、自然と1級の総合問題も解けるようになる。ここでは、その方法を紹介しよう。

総合問題の解き方は3つある

総合問題の解き方には次の3つの方法がある。それぞれを見ていこう。

  1. 仕訳を書いて集計
  2. T勘定で集計
  3. 残高試算表(T/B)に直接集計

まずは「1.仕訳を書いて集計」する方法だ。やり方は非常にシンプル。取引に応じて全ての仕訳を起こし、それを集計するだけだ。テキスト通りの解き方なので、オーソドックスであり自然な解き方だろう。3級受験者の多くはこの方法を採用している。

これに対して「2.T勘定で集計」は効率を重視した方法だ。下書き用紙にT勘定を作り、残高試算表の勘定名と残高を書き写しておく。そのうえで、取引を頭の中で仕訳し、数字だけをT勘定に書き入れていく方法だ。2級あたりから、この方法を採用する人が増えてくる。

さらに上級になってくると「3.残高試算表(T/B)に直接集計」という方法が考えられる。1級ではこの方法を採用している人が多いだろう。

総合問題を解く方法には、上記3つがあることを知っておこう。あなたはどの方法で解いているだろうか。

仕訳による解き方のメリットとデメリット

まず、仕訳による解き方について紹介する。はじめに言っておく。この方法は、1級受験生には全くおすすめしない。いまだにこの方法を中心にしているなら、今すぐやり方を変えるべきだ。何しろ記述量が多く圧倒的に時間が掛かり集計でもミスしやすい。総合問題の解き方としては、デメリットが多すぎる。

ただし、悪いことばかりでもない。複雑な取引(例えば、期中における有形固定資産の買い換えなど)では、仕訳は有効だ。考えが整理されるし、ミスしにくいからだ。だから、複雑な取引のみ仕訳を起こすという使い方は悪くない。

余談だが、かつて、某社に在籍していたとき、会計士受験生で、全ての取引の仕訳を書いて集計している人を見たことがある。きっと3級時代からずっとそうしてきたのだろう。なんというか、すごい精度だった。まず、下書きがきれい。ピシッと科目が並んでいる。位置がズレると集計ミスするから揃えて書いているのだろう。それから、字がきれいで書くのが速い。あと、電卓打つのも速くて正確。もうね、どれだけ鍛錬を積んできたのか伝わってくる感じだった。

ここまでするなら、この仕訳を書いて集計という方法もいいかもしれない。でも、これから、そのレベルに達するまでの練習をするくらいなら、他の方法を練習した方がはるかに効率がいいだろう。

T勘定による解き方のメリットとデメリット

2番めのT勘定による解き方は、2級時代で覚えたという人が多いようだ。これは悪くない方法だ。少なくとも仕訳を書くよりはスピーディだし集計もしやすい。ただし、下書き用紙いっぱいに書く必要があるのと、それなりに時間が掛かるのがデメリットと言えばデメリットだろう。

一方、メリットは、推定問題に圧倒的に強いことだ。取引の流れから逆算したり推定する問題は、T勘定は抜群に効力を発揮する。まあ、時と場合によるということだ。

残高試算表(T/B)に直接集計する解き方のメリットとデメリット

正直、1級を目指すなら、この方法一択と言っていいだろう。1級受験生で、この方法を使っていないのなら、いますぐ練習すべきだ。この方法を使いこなせないと、いくら個別論点を学習しても、総合問題で得点出来ない。つまり過去問が解けないということだ。

やり方は、シンプル。まず、取引を頭の中で仕訳する。その上で、直接T/Bの数値を加減する。それだけ。どこかが減ってどこかが増える。それをT/B上にいきなり書き入れて、最後に集計しておしまいだ。とにかく速い。

ただし、複雑な取引の場合はいきなりT/B上には書かない方がいい。混乱しやすいからだ。一旦、仕訳を起こしたり、ボックス図を使って数値を算定してから、T/B上に書き入れた方がいい。このように部分的に他のテクニックを併用すると効果的だろう。

まずは2級の問3で練習する

繰り返しになるが、今現在「残高試算表(T/B)に直接集計」を採用していないのなら、いますぐ練習すべきだ。ただし、いきなり1級の過去問で練習すると、個別論点自体の難易度が高く練習にならないので、まずは2級の問3を使って練習しよう。

目標は25分以内だ。多分、最初は厳しいだろう。30分をなかなか切れないのではないだろうか。どうすれば30分を切れるか、それを考えること自体が練習だ。

25分を切るために

25分を切るためのヒント。それは、最終的に答案要求されていないものは一切無視することだ。例えば貸借対照表作成問題なら、P/L科目の動きは全て無視する。関係無い数値を追うと時間も無駄だし余計なミスをする。

例えば「期首に前払費用が◯◯円あって、再振替仕訳をしておらず、当期の費用は△△円で、このうち××円は、来期に繰り延べる」と問題文に、書かれているとする。これ、最終的にB/Sに関係するのって何だろう?××円だけだよね。他は一切関係ない。こういうのをすぐに読み取れるかどうかが大事。

同様に、損益計算書作成問題だったら、基本、B/S科目の動きは無視する。ただし、この場合、全て無視するのは多少危険だ。売掛金や受取手形が動くと貸倒引当金繰入額が動くからだ。また、有形固定資産に動きがあると、減価償却費が動く。こういうのは、何回か練習しているとコツがつかめてくる。つまり、ここは動くから、先にやっておこうとか、そういうコツがつかめてくるのだ。このあたりは練習するしかない。

一番大事なことは5要素の動きを瞬間的に判断できること

あと、もっとも大事なことは、取引を見た瞬間に、T/B上のどこがどう動くか、すぐにピンと来るようになることだ。これ、勘定科目名を覚えるのではなく、取引を見て、5要素(資産、負債、純資産、費用、収益)の何がどう動くのかを瞬間的に判断できるかどうかが肝心だ。

例えば、何かを償却した、といえば、資産が費用に振り替わるわけだ。つまり、借方の中だけの話であり、資産をマイナスして費用をプラスすればいい。例えば、引当金を設定した、といえば、費用と負債が同時に増えることだ。つまり、借方と貸方が同額増えるのだ。例えば、費用を繰り延べた、といえば、費用の一部を資産に振り替えることだ。つまり、これも借方の中だけの話で、費用をマイナスして、資産をプラスすればいい。

こういった感じで、細かい勘定科目を覚えるのではなく、おおざっぱに、「引き当てた」「償却した」「見越した」「繰り延べた」といった会計の基本処理が、T/Bにおいて、どこがどのように動くのか、それをイメージとして持っておくことが肝心だ。

実際に講師がやってみる

ここまで偉そうに書いて、実際に講師が解いてみて出来ないんじゃみっともないので、今さっき、解いてみた。手持ちにあった2級の過去問の最新が138回だったから、138回と137回の2問を解いてみた。

138回は貸借対照表作成、137回は損益計算書作成問題だった。昔より(私が2級を受験したのは121回)少しだけ難しくなっているかもしれない。特に減価償却費を月次で処理しているとか、商品売買が少しだけヒネってあったりして、へぇ〜って感じだった。まあ、それ以外は普通かな。

で、実際にやってみた。138回は16分、137回は19分だった。

ちなみに138回は、あえて繰越利益剰余金は捨てた。これ、どういうことかと言うと、答案用紙を最初に見て、貸借対照表作成問題だと確認したので、最初から、損益に関する動きは全て無視して解いていったのだ。つまり、繰越商品にしても「しいくりくりしい」なんて一切やらない。最終的にB/Sの商品がいくらかが分かればいいのだから、実地棚卸の数値だけしか計算しないわけだ。

同様に前払費用も、途中経過は一切無視。最終的に繰り延べた費用(つまり資産)のみを集計した。このように、無駄なことは一切しないと決めたから早くてミスなく解けるわけだ。それだけで、90%は得点できる。この方法で算定出来ないのは最終的な利益(と未払法人税)だけだ。

この利益と税金の算定は、B/Sの残りの箇所を全て確定させたうえで貸借差額を出して方程式から計算する方法と、P/L科目を全て集計しなおす方法の2通りが考えられたけど、どのみち配点来ても2点なので、こういうのは捨てるのが正解だろう。そんな時間があるなら、他をパーフェクトにすべきだ。それでも時間が余ったらやってもいいかもしれない。

こういう実践的な解く順番や捨てるテクニックも大切だ。特に1級だと傾斜配点が入るので重要だ。

商業簿記の総合問題がなかなか伸びなくて困っている人へ” に対して1件のコメントがあります。

  1. ミスター より:

    はじめまして、独学で学習をしている者です。
    独学なので仕訳を切りながらT勘定を使って解いていましたがこんな便利な方法があるなんて目から鱗です。
    しかし、日商の本試験前日の深夜に知ってしまったのは良いのか悪いのか…
    どちらにせよ全経上級も受ける予定なのでそれまでにはこのやり方で解けるように頑張りたいと思います。

    1. pro-boki より:

      >しかし、日商の本試験前日の深夜に知ってしまったのは良いのか悪いのか…

      思わず笑ってしまいました。

      >どちらにせよ全経上級も受ける予定なのでそれまでにはこのやり方で解けるように頑張りたいと思います。

      はい、練習次第でかなりスピードアップできますので、是非頑張ってください。応援しています。

  2. わか より:

    こんにちは、初めてメールさせて頂きます。O学校で社会人課程にて簿記講座を受講したものです。3級から2級を経て1級を勉強しました。2級のころにもう少し簿記を知りたくなり1級に挑んだのですが・・・この11月の試験で4回受験しましたが、全く点数が伸びません・・・今回も不合格は大体想像がつくので、期間があるので全経上級を薦められましたが、こんな状態ではだめだと思っています。こちらの学習をリアルタイムは難しいかもしれないのでオンデマンドを2ヶ月受講して、苦手論点を克服しようかと思案中です。

    1. pro-boki より:

      もう9年も前の話ですが、私も2級受験のとき、大原のDVDの通信講座を申し込みました。かなり高額の支払いをしましたので、何とか食いついて頑張ろうと思ったのですが、私にはあまり合わなかったようで、挫折しました。結局、そのDVDは全部廃棄して、独学に切り替え、その後2ヶ月で2級は満点合格しました。

      大原が私に合わなかった理由は以下2点です。
      1つはテキストが学校の教科書のようで遊びというか柔らかさがなく拒否反応を示してしまったこと。もう1つは、とにかく仕訳を覚えましょう的な感じで「なぜそうなるのか」の解説があまりなかったこと。私は理由の分からないものは覚えられない性格なので、この点でこの暗記的な学習が苦痛でした。

      そのため、その反動なのか、その後は「なぜそうなるのか?」を徹底的に突き詰める学習をしてきました。その結果、1年たらずで1級に合格しました。そして、その後さらに会計を極めたいと思いそれを仕事にしました。そして1級テキストの執筆、講師、そして現在プロ簿記の運営とつながってきています。

      そういった意味では、当プロ簿記の教え方は、大原の教え方の真逆と言えるかもしれません。解説は、硬い表現はなるべく避けてかなり柔らかいです。また、ひとつひとつの会計処理においていちいち「なぜそうなる?」を追求します。よって、暗記型での学習が得意な方には、合わないかもしれません。(遠回りに感じられるかもしれません)

      学習方法には個々人、合う合わないがあります。これは、学習を進める上で結構、大きな要素です。ご自分のタイプに合うかどうかをご確認頂ければと思います。オンデマンドのサンプルリンクを貼っておきますのでご覧になってください。
      https://vimeo.com/221729967

  3. わか より:

    こんばんは、サンプル動画拝見しました。すごく分かりやすいですね、標準の考えかたどうやら分かってなかったようです・・・実は今回の試験で、材料内部副費をどう扱うのだったか、引き取り費用は材料に含めるのだったか?でつまづきそこをつまづくと一気に点数が無くなってしまった事、連産品の副産物の扱い・・・会計学では、税効果で純額の意味が分からず、税率だけかけて解答したとか・・・反省点だらけで振り返るとやはり大事な事が抜けています。結構今になってこれはどうしてとか?疑問が多すぎて、テキストに戻っても書いてなかったりします。色々愚痴になるかもしれませんが、私が通学していた学校には1級商業簿記の講師がいません(私が基礎講義受講中はおられましたが受講者が減ってしまい中継クラスになりました)なので商会を質問出来る講師は身近にいない事、質問があれば中継校の講師に電話するか、メールするか(恐らく在籍されてる日も分からないので時間がかかると思われます)工業簿記の講師はおられるのでなんとかなりますが・・・そこを考えたりするとどうなのかなぁと。

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