簿記1級って取る意味あるの?

「簿記1級って取る意味あるの?」
よく聞かれる質問だ。なんと言えばいいのだろう。あるとも言えるしないとも言える。そんな本音部分を語りたいと思う。

本試験まであと1カ月を切った。いま、みなさんは「合格したい」という思いが頭の中のほとんどを占めていて、合格後のことなんてなかなか想像できないと思う。でもね。今、このタイミングだからあえて言いたい。資格って合格自体よりも、合格後の方がはるかに大事ということ。

たしかに日商簿記1級合格っていうのはすごいことだ。受験者のほぼ全員が2級合格者であり、そのさらに上位10%しか合格しないわけだから、それはそれは大したもの。簿記を勉強している人全体の母数、つまり、これから3級やりますみたいな人も含めて母数と考えれば、多分上位1%くらいには位置していると思う。本当にすごいことだ。

でもね、それが、具体的に何の役に立つのかと言えば、実は大したことなかったりする。

若ければ就職で評価されるのは間違いない。あと、若くなくても経理事務の経験あるなら転職で間違いなく評価される。(大企業もしくは上場企業の子会社に評価されやすい。中小企業、零細企業はむしろオーバースペックに思われる可能性あり)

それから既に社内で経理関係の仕事しているなら、社内で一目置かれるのも間違いない。
あとは、税理士になりたいけど受験資格が無い場合かな。

このあたりは明確に実利だろう。でも、それくらいだと思う。それ以外の人は、申し訳ないが、簿記1級を取ったからといって実利はあまり無いと思う。

たとえば、30歳前後で経理職未経験で就職のために簿記1級を目指しているなら、すぐにでも方向転換した方がいい。1級なんかより、PCスキルと面接対策の方が数倍大事だ。簿記の資格は2級で十分。それよりもPC出来て、やる気見せて、何でも学ばせて頂きます!みたいな雰囲気で面接に臨んで、派遣でも何でもいいから経理実務に潜り込むべきだ。中小零細企業なら経理といっても総務や雑用係も兼務している場合が多い。だから、下手に1級持っていると扱いにくいと思われる。それより、資格は2級で十分で、それに加えてバイタリティだったり人柄重視で採用が決まったりする。とにかくなんでもいいから、実務経験者になってしまうこと。そうすると、その後の人生の選択肢がものすごく増える。

ちょっと横道に逸れてしまった。
もちろん、何を実利と感じるのかは、その人の置かれたシチュエーションにもよるから一概に言えない。だけど総じて、簿記1級は、その難易度の割にはそう大きな実利はないかな、と個人的には思う。あくまでも直接的な実利だけを見ればの話だけど。

でもね。1級を勉強してきたことで、会計の本質的な考え方が身に着いたなら、これは実はものすごく価値のあることだと思う。直接的な実利ではないけど、素晴らしい価値。ほんと一生の価値。あらゆるところで役に立つ。

経理職以外でもあらゆる職種で、会計の素養があるというのは強い。個人的にはIT系と相性がいいと思う。システム開発していて顧客から勘定系との連携の話というのはよく出るんだけど、ほとんどのSEやプログラマは、会計が分からない。そんな中で会計が分かるというのはすごい強みだ。それで取れた仕事はたくさんある。

営業やマーケだってそう。帳簿が読めることは、間違いなく社内外での評価を高める。会議のときでも「あいつ出来るなぁ」と思われる。ニュースで東芝の不正会計が・・・とかやっていて「ここが問題だよね。こういう社会的影響あるよね」なんて話せば、「すごいね、よくそんなこと知ってるね」なんて言われる。

さらにプライベートでもローンを組むときとか、現在価値の計算が出来ると一目置かれる。色々な局面で「◯◯さんは会計に詳しくて信頼できる」という評価がつく。これが人生においてどれほど素晴らしいことか。

直接的な実利じゃないけど、会計を1級レベルで理解している、というのはプライスレスな価値だと思う。

ちょっときついことを言わせてもらえば、資格を、寄らば大樹の陰のごとく、これを取ればあとは安心的なツールとして使おうと思うなら、1級はかなり期待はずれだと思う。

だけど、人生を豊かにするツールと考えればかなりコストパフォーマンスのいい資格だと思う。

ここで、最初の話に戻る。今やっている1級の勉強が生きてくるかどうかは、合格するかどうかではなくて、合格した後に、あなたがその資格をどう使いたいかに掛かっているんだ。

無理やりの暗記でも何でもいいから、合格したいという気持ちも分からないでもない。ここまで勉強してきたんだもん、意地でも1級というタイトルが欲しいよね。

でも、仮にそうやって合格して、それって意味あるんだろうか。例えば1級というタイトルを引っさげて、経理事務職の面接に行ったとしよう。正直5分も話せば、この人、どの程度会計を理解しているかなんてはっきり分かるよ。暗記で受かって来た人は、ああ、その程度かとすぐにバレちゃう。面接では「1級持ってて、この程度?」と逆効果になりかねない。

簿記1級の本質を学習してきた人と話すと、ああ、この人は会計が分かっているねぇ、という感じ伝わってくる。会計に限らず、経営だったり、経済だったり、組織に関することだったりと、色々な面でこの人の見方は、本質をついている、という感じがするんだ。これはものすごくポイントが高い。結果、ビジネスでとても有利に働くことは間違いない。そういう人が取引先の担当なら是非取引をしたいと思うし、新人税理士ならお付き合いしたいと思う。うちの面接に来てくれたら採用したいと思う。別に1級というタイトルを持っていなくてもだ。

何が言いたいのかというと、せっかく1級まで勉強するなら、やっぱり本質を勉強して欲しいんだ。ただ合格すればいい、という勉強はもったいない。

一般にスクールは、まあ、企業なので営業活動もしなければいけないし、ある程度しょうがない面はあるとは思うものの、資格に夢を見させすぎていると思う。実利がありそうに言い過ぎる。この部分はもう少し本当の意味での誠意を持った対応をすべきだと思う。自社の利益最優先の考え方をしているのに、表面的に「受講生のため」と言いうのは、それが剥がれ落ちたときに何倍もの信頼を失う。

受講生がそれを信じてしまって、資格ビジネスにハマってしまって一番怖いのは、お金を失うことじゃない。怖いのはお金よりも時間だ。その時間に違うアクションをしていれば人生が大きく開けた可能性もある。それを機会原価として意識して欲しいと思う。


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簿記1級って取る意味あるの?” に対して1件のコメントがあります。

  1. ひろりん より:

    いつもありがとうございます。

    自分はアラフォー、経理未経験ですが、1級まで勉強してきて良かったです。
    いろんな本を読んでも会計に関することは全くわからないということはなくなりましたね。
    経営にも興味あるので、何かニュース見たりしてもすごく面白くなりました。
    企業が開示してる財務諸表もある程度読めるようになりましたし。

    まだ合格してませんが、意思決定のところはすごく面白いし、なんだかワクワクしますね(笑)
    とりあえず来月の試験に向けて頑張りますので、引き続きこちらでお世話になります。宜しくお願いします。

    1. pro-boki より:

      >自分はアラフォー、経理未経験ですが、1級まで勉強してきて良かったです。

      私も簿記の学習を始めたのは40歳を過ぎてからでした。会社経営していて税理士さんの説明がさっぱり分からないので、ちょっと簿記でも勉強しようかな、と思ったのがきっかけでした。それで面白くなってきてハマった感じです。

      >いろんな本を読んでも会計に関することは全くわからないということはなくなりましたね。

      そうですよね。私も簿記勉強する前は、新聞に「◯◯の経常利益がどうした」とか「減損がどうした」みたく載っていてもまるで意味不明でした。こういう経済ニュースが分かるようになったのも大きいです。多分同年代くらいでこのあたり実はさっぱり分からないって人も多いと思います。

      >とりあえず来月の試験に向けて頑張りますので、引き続きこちらでお世話になります。宜しくお願いします。

      こちらこそよろしくお願いします。

  2. クールボーイ より:

    私は税理士を目指しているので、企業の経理職希望ではないのですが、アラサーなので、耳が(>_<)話です(笑)
    私が日商簿記1級を合格したい理由は二つあります。
    一つは、税理士受験資格として取得した全経上級ですが、いくぶん知名度が低い為、アピールにならない(笑)もっと言えば日商簿記1級の方が求人登録などでも上級より良いということ。
    もう一つは、日商簿記1級を持っていなくても税理士になれるだろうけれど、税理士になれる能力がある人が、日商簿記1級取れないってのは、多分、無いだろう(笑)と思うからです。

    資格があれば仕事ができるわけでも、無敵なわけでもありませんが、一定の客観的能力の証明という点で、取得可能なら取得したいです。

    1. pro-boki より:

      クールボーイさんは税理士を目指されているのですね。うちの顧問税理士さんがちょうど30歳のときに税理士を目指して勉強を始められ、35歳のときに税理士登録されています。私が顧問をお願いしたのが37歳のとき。依頼、18年の付き合いです。彼女を見ていても素晴らしい職業だなと思います。

      >日商簿記1級を持っていなくても税理士になれるだろうけれど、税理士になれる能力がある人が、日商簿記1級取れないってのは、多分、無いだろう(笑)と思うからです。

      うーん、そうでもないと思いますよ。工原が不得意な人で、1級の方が難しいと断言される方もいますし。逆に工原が得意な人は、税理士試験は難しいと思っている傾向にありますね。
      ちなみに、私もいっとき、税理士を目指して某予備校に50万円払って2年コースを申込んだことあります。そして1年くらい勉強して思いました。これ、無理だと。簿財は問題なかったのですが、税法が無理でした。何が無理ってこの暗記って意味あるの?と一度でも思ってしまうともう勉強する気なくなっちゃうんです。色々工夫したのですが、どうやっても暗記が楽しいと思えない。楽しくないことはやりたくない。その1点で、税理士は自分には無理、と結論を出して、撤退を決めました。
      某予備校に少しでいいからお金返してってお願いしたら20万円くらい返ってきました。言ってみるもんです。

      >資格があれば仕事ができるわけでも、無敵なわけでもありませんが、一定の客観的能力の証明という点で、取得可能なら取得したいです。

      そうですね。私の中小企業診断士もそんな感じです。そもそもコンサルなんて資格なくても出来ますし。でも、客観的能力の証明という点では有効ですよね。

  3. ブレイク より:

    私は、人生を豊かにするツールという考えかな?
    ちょっと前にネットで本を読むと見える世界が変わるという風刺画が話題になりましたが、簿記1級を勉強しているのは、これに近いですね。
    逆に無理やり暗記して簿記1級に合格すれば大したものだ、と思います。
    あとは、布団に入ってすぐに寝れるという効果ですね(笑)。

    1. pro-boki より:

      >私は、人生を豊かにするツールという考えかな?

      私もそうですね。資格は人生を豊かにするための便利ツールだと思っています。でもツールって、使ってこそ意味が出て来る。持ってるだけじゃ意味がない。取ったあとの行動でその価値が決まると思うんですよ。だからこそ、取る前に、取ったあとどうしたいのかを見据えて欲しいなと思います。

      >逆に無理やり暗記して簿記1級に合格すれば大したものだ、と思います。

      同意ですね。これはこれで大したもんです(笑)

  4. きゃろる より:

    何故、簿記1級が必要なのか?もう40過ぎでこのまま一生独身なんだろうな~。
    と思ったら、一生長く働ける仕事を探さなければ。
    と考えたとき、どこの企業にも存在し、一番必要で重要なのは経理。
    と思って、簿記2級まで取りました。

    現在、社員数名の機械やプラントの設計会社で経理+CADオペをやっていて
    社長が高齢(73歳)で、あと数年で会社をたたみたいので、
    先のことを考えるように言われています。
    税理士は先生と同じで税法が絶対に覚えられないし、
    資格を取ったからと言って、仕事がすぐにあるわけではなく、
    資格を維持すのにもお金がかかるので最初から取る気はない。
    今住んでいる市内に、子会社や支店(海外にもある)を
    多く持つ大手企業の本社が2つ、在外子会社が1つある。
    そのうちのどれかで働けたら安泰かなと。
    そのうち2社は工場を持つメーカーで、
    2級レベルの本支店会計とCVPじゃだめだな。と思って1級の勉強を始めた
    けれど1級の商工全項目の中で連結会計が1番苦手という・・・。
    1級を取った後の事は、取れたら先生に相談しようと思っていましたが
    いい機会なので、今相談します。
    海外に関わる企業への就職を目指す上で、IFRSのさらなる進出を見越して
    米国公認会計士か国際会計検定(BATIC)のいずれかを取ろうかと
    と考えているのですが、これらの資格をどう思いますか?
    どちらが役に立つと思いますか?

    1. pro-boki より:

      ごめんなさい、USCPA、BATICともに周辺に取得者がいないので分からないです。
      それからUSCPAのメイン業務って監査でいいのでしょうか。一方でBATICは英語版の簿記って感じでしょうか。つまり、業務内容(監査をやりたいのか経理に転職したいのか)によって、取るべき資格が決まる気がするのですが、そういうものでもないのでしょうか。(よく分かってなくてすみません)

      また、いずれの資格にしても外資系企業への転職を前提としているということでよろしいでしょうか。私も外資(日本IBM)にいたのですが、転職は多くの場合ヘッドハンティングでした。(20年も前の話なので今はわかりませんが)
      そこでは、エージェントからピンポイントで「こういうスキルはあるか?」と聞かれた記憶があります。もし、そこでUSCPAやBATICが指定されるなら、有用じゃないかなと思います。

      イメージとしては、USCPAを持っているだけではなく、ネイティブの会話力があって、実務経験(プラスマネージメント経験)があるなら、CFO狙いで転職出来そうな気もします。あくまでもイメージですよ・・・。

      もしも、自分なら、とりあえず、入りたい所へ何らかの方法でコンタクトを取ってみると思います。求人募集しているなら応募するでしょうし、もし募集していなくても、転職サイトに登録していおいて、エージェントに「あそこって募集していないの?」って聞くと思います。それから、該当企業に、いきなり電話やメールでコンタクトとるのもありかもしれません。私は、入りたい企業にはほとんど、そうやってこちらから押しかけています。で、相手が何を要求しているかを確認してから、それが仮に資格であれば、その資格を勉強すると思います。でも、あまり資格が必要と言われたことは無いですね。どちらかというと実務経験やマネージメント経験が話題になることが多い気がします。

      いずれにしても、直接聞いちゃうのが早い気がします。すみません、無責任な回答で。

    2. きゃろる より:

      >すみません、無責任な回答で。
      いえいえ。大変参考になりましたありがとうございます。

      >いずれの資格にしても外資系企業への転職を前提としているということでよろしいでしょうか。
      日本の企業で海外に支店や子会社がある、または外資系企業の日本支店を考えています。

      >該当企業に、いきなり電話やメールでコンタクトとるのもありかもしれません。私は、入りたい企業にはほとんど、そうやってこちらから押しかけています。で、相手が何を要求しているかを確認してから、それが仮に資格であれば、その資格を勉強すると思います。

      確かにこの方が無駄がないですよね。
      1級取ったら行きたい企業を調べてから必要な勉強をします。
      ありがとうございました。

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