第146回日商簿記1級・リアル詳細解説(原価計算)

第146回日商簿記1級・原価計算

最後に原価計算の解説を公開します。こちらも、実際に解きながら何を考えていたのかを含めて紹介します。なお、原価計算以外の科目については、以下をご参照ください。

まずはざっと全体を見渡す

第1問が計算、第2問が理論、第3問も計算です。答案用紙を見ると、理論は用語選択です。

ぱっと見た感じ、第1問はABC(活動基準原価計算)のようです。これが来たか。

そして、第3問に「チョコ停ロス」の文字が。えぇぇぇぇ。まさかのチョコ停ロスですよ。皆さんご存知ですか、これ。10年位前の簿記のテキストには載っていたんです。と、言っても当時ですら、参考程度に1,2ページですけど。

しかし、あまりに試験に出ないので、改訂のときに切られてしまった論点なんですね。日商の試験では初出かもしれません。驚きました。まあ、これは、第1問目から順に行きましょう。

第1問

まずは設問から読んでいきます。①から③までは理論問題というか用語を埋める問題のようです。というか、なんでしょうね、これ。かなり違和感のある問題です。

①は活動基準原価計算が答えですよ。テキストなら、もうそれは章の名前です。それ自体が答えなのです。この違和感、何と言ったらいいのでしょうか。例えば、数学の試験で「連立方程式」という用語自体を答えさせる感じでしょうか。それって数学の問題としてどうなの?みたいな。

まあ、いいです。で、②は、営業費とは、◯◯と一般管理費のことである、です。答えは販売費なのでしょうけど。やはり、どういうことなんでしょうか。違和感が止まりません。

③にいたっては、活動基準原価計算の配賦基準を何と言うか、という問題なのですが、もう、同じページに答が書いてあります。中段にコスト・ドライバーって書いてあります。すごいです。斬新です。

ようやく④から計算問題が始まります。答案用紙を見ると⑩まであります。早速計算しましょう。と、言ってもやることは資料2の営業費のデータを資料3の配賦基準で按分するだけです。7回ほど、全く同じ計算を繰り返すだけ。ひたすら按分。で、タテに集計するだけ。大げさではなく小学生でも出来ます。いいのか、こんなことで…

結果、営業費は、X:68,500千円、Y:137,000千円、Z:97,000千円、になりました。資料1には売上高と売上原価が提示されていますので、P/Lを完成させます。

  X Y Z
売上高 342,500 342,500 485,000
売上原価 191,800 171,250 266,750
営業費 68,500 137,000 97,000
営業利益 82,200 34,250 121,250

さて、何をすればいいのでしょうか。えーと、営業費率だそうです。計算しましょう。X:20%、Y:40%、Z:20%です。最も高いのは40%ですね。…って、これで④と⑤おしまい?すごいな。

今度は、売上高営業利益率だそうです。計算しましょう。X:24%、Y:10%、Z:25%です。これを…大きい順に並べろ?はぁ?小学生か!それが⑥と⑦と⑧です。Z、X、Yの順ですね。

そして、YとZの営業利益の差と営業利益率の差を聞かれています。営業利益の差は、121,250-34,250=87,000円です。営業利益率の差は25%−10%=15%ポイントです。

これで第1問おしまいです。いいんでしょうか。本当にこれで。日商簿記1級っていうのはこういうレベルなんでしょうか。

第2問

理論問題です。誤っているものを選べと。

まず、①です。これは、経営学でよくみる問題ですね。要するにトップシェアを持つような強い企業(価格決定権のあるような企業)は、原価に必要な利益を乗っけて価格を決められるよね、という話です。そのとおりです。マーケットで主導権を持たない企業は、ライバルの動向を気にしながら、顧客の受け入れてくれそうな販売価格が先にありきで、それに従って、原価を削るなり、利益を削るなりするしかありません。しかし、主導権を持つ企業は、掛かったコストに利益を載せた販売価格を提示できます。①に書かれているのは、そういうことです。

②と③は、一部をのぞきまるで同じ文章で、②は標準原価、③は目標原価がキーワードになっています。ということはどちらかが×ですね。話の流れから言って(第1問はABCで、第2問の①が目標原価の話なのですから)これは、③が正解で、②が×ですよね。

④は、販売単価が1,680円で営業利益率が20%なら、総原価は1,400円である。◯か×かという話です。低レベル問題の第1問をまた繰り返しますか。どうしちゃったんでしょうか。計算すれば分かります。違いますね。×です。

⑤も計算すれば分かります。◯です。ちょっと、いい加減にしてほしいです。

第3問

チョコ停ロスですよ。驚きました。

冒頭にも書きましたが、数十年前からテキストに載っていて、あまりに試験に出ないので10年位前に切られた論点なんです。日商の過去問では初出かもしれません。

この問題、用語にビビって、手がつかなかった人も少なくないかもしれません。そういう意味ではこれはいい問題です。こういう事前に勉強していない問題をいかに現場対応力で何とかするかが、合否の分かれ目なんです。

この問題、良く読むと、問題文にほぼ計算の仕方が書かれているようなものなんですね。用語の解説がとても丁寧です。ですから、難しくて出来ないかもみたいな気持ちじゃなくて、フラットな気持ちで問題文から計算指示を読み取れば、瞬殺出来る問題です。

解説してみましょう。まず問題文のポイントをまとめてみます。

  1. まず、勤務時間が12,800分あるけど、休憩などで停止している時間が800分あるということで、正味勤務時間は12,000分であることが分かります。
  2. 次に実際稼働時間は11,500分、そして稼働していない時間、つまり段取替ロス時間300分と故障・停止ロス時間200分があることが分かっています。合計すると12,000分で勤務時間に一致しますね。
  3. さらに、1個作るのに理論(標準)上は2分で出来るはずが、実際には2.05分掛かると書かれています。そして、当月は5,600個投入し仕損が無かったと。

以上の情報から、解いていきます。

問1 速度低下ロス差異とチョコ停ロス差異

ポイントは、能率差異を分析せよとの文言です。ですから、まずは、能率差異を計算してみましょう。

問題文には標準的には1個2分で作れるとあります。今月は、5,600個作りました。よって、掛け算すれば標準時間が分かります。11,200分です。一方で、実際稼働時間は11,500分です。この差の300分が能率差異であることは分かります。

これを、速度低下ロス差異とチョコ停ロス差異に分析せよと言っているわけです。ということは、勘のいい人なら、11,200と11,500の間に何か数値を挟めばいいんだな、と気付くはずです。そういう発想の出来る人が合格します。

ここで問題文に「速度低下ロス時間とは、設備が安定的に稼働したとしても設計値どおりに稼働しなかったために生じた時間」と書かれています。つまり、安定的に動いてはいるけれど、理論的な時間通りには動かなかったということです。なんか、聞き覚えありません?

そうです。理論的には1個2分で出来るはずが、実際には2.05分掛かるわけです。このことですよ。まあ、それっぽい情報はこれしか問題文に載ってないので、分かると思います。まとめると、次のようになります。

  • 理論上の稼働時間:1個2分×5,600=11,200分
  • 速度低下ロス時間を加味した稼働時間:1個2.05分×5,600=11,480分
  • 実際稼働時間:11,500分

見事に、11,200分と11,500分の間に11,480分という数値が挟まりました。これで能率差異を分離できました。

  • 速度低下ロス差異:@1,000円×(11,200分−11,480分)=△280,000円
  • チョコ停ロス差異:@1,000円×(11,480分−11,500分)=△20,000円

なお、能率差異は、標準配賦率を用いて計算するとあるので、あらかじめ標準配賦率を計算しておきます。変動費率@600円+月間固定費480万円÷12,000分=@1,000円です。

問2 段取替ロス差異と故障・停止ロス差異

ポイントは、操業度差異を分析せよとの文言です。ですから、まずは、操業度差異を計算してみましょう。

これ、何を基準操業度とするかが問題です。上記「問題文のポイント」の1と2から、勤務時間が12,000分が基準操業度のようです。そう仮定すると、実際稼働時間の11,500分との差異である500分が操業度差異となり、さらに、その500分の内訳が、段取替ロス時間300分と故障・停止ロス時間200分であると言っているのですから辻褄があいます。

そして、求められている答えは、段取替ロス差異と故障・停止ロス差異です。もう答えが書いてあるようなものです。

  • 段取替ロス差異:@400円×△300分=△120,000円
  • 故障・停止ロス差異:@400円×△200分=△80,000円

なお、操業度差異は、固定費率を用いて計算しますから、あらかじめ固定費率を計算しておきます。月間固定費480万円÷12,000分=@400円です。

最後に

ちょっと、原価計算は言いたいことがありすぎて、逆に何も言う気がしません。

1つだけ。これは言っておきます。第3問の速度低下ロス差異、チョコ停ロス差異などの解答ですが、これ、差異ですから本来であれば有利差異なのか不利差異なのかの明示は当然ながら必要です。実務でもそうですが、差異なんていうのは、細かい数値よりもそもそも有利か不利かが大事なんです。当たり前です。次にオーダーです。(オーダーというのは数値の桁数のことです)そして最後に数値そのものです。ですから、差異を問う問題で、有利か不利かを聞き忘れるとかは考えられないのです。

しかし、本問には一切の指示がありませんでした。借方差異と書けとか、Uという記号を付与せよとか、△を付記せよとか。

細かいことのように思われるかもしれませんが、普段作問している私からすれば、ちょっと考えられない出題ミスです。そして、さらにそれを校正で落としてしまう体制に驚きを禁じ得ませんでした。

それから、原価計算と会計学のレベル差です。試験委員が異なるのでしょうけれど。それにしてもどうかと思います。片や実務指針からの出題、片や小学生レベルの問題です。通しで解いてみてチェックする体制にないのでしょう。残念です。


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