見越・繰延べ表現問題

見越・繰延べという表現は難しいから使わない

2019年から、日商簿記3級では極力「見越・繰延べという表現」を使わないことにしたそうです。いや、これは何というか違和感ありまくりです。

こちらの資料のP11には次のように書かれています。

商工会議所簿記検定試験出題区分表などの改定について
繰延と見越は3級受験者にとって考え方を理解しにくい論点である。また、特に見越という用語の使い方が受験者の理解を妨げる一因になっていることが危惧される。そこで、項目名の記載を改めることとした。今後の出題においても見越という表現を極力避けることとする。

いや、これね、確かに分かりにくいとは思いますよ。私も3級受験生だった当時はご多分に漏れず見越し、繰延べは苦手でした。気持は分かります。そこで「くまのみみ」なんていう語呂合わせまで使ったりしていました。まあ、確かに3級受験生にとっての壁の1つであることは間違いないでしょう。

でもですよ。だからといって、じゃあ表現をやめますって。さすがにこれは悪手じゃないでしょうか。

会計用語はそもそも分かりにくい

会計用語なんていうのはそもそも分かりにくいんです。そんなのは、いくらでもあります。

まず借方と貸方はどうよってところからです。なんで、貸付金は借方で借入金は貸方?こっちの方が分かりにくいわ!

以前、東京池袋の東口には西武デパートがあって、西口には東武デパートがあるってことを知った時と同じくらいの衝撃ですよ。これも分かりにくいから、東口と西口を逆にしたほうがいいんでしょうかね。(←意味わからない)

難しい表現だからやめておこうね。ほら、親切でしょっていう目先の親切は、結局受験生をより過酷な道へ進ませることになると思うのです。

まあ、簿記の勉強は3級でやめて、会計の仕事にもつかない、っていうならいいですよ。別に見越し繰延べなんて知らなくても問題ないでしょう。

でもですね。もっと会計を勉強したいと3級から、2級、1級と進めていけば、テキストには当たり前のように見越し繰延べが出てくるわけです。そこで「この見越し繰延べってどういう意味?」となるわけです。テキストでつまずく。

企業で経理など会計関連の仕事につけば、当たり前のように見越し繰延べという言葉は使われているわけです。「え?見越し繰延べを知らないの?3級受かっているのに?」って言われるわけですよ。

これ、本当に、難しい表現をなくしたからハッピーだね、って言えるんでしょうか。

ことわざ?格言?なんかそういうのに「地獄への道は善意で舗装されている」っていうのがあるんですね。ちょっと頭をよぎりました。なんか違う気もしますが。

1級受験生向けの会計的な側面からの批判

さて、1級受験生向けにもう少し会計的な側面で、この見越・繰延べ表現問題を批判したいと思います。

上記の商工会議所の弁によれば、繰延べは分かりにくいから前払いという表現に変えるそうです。これ、単なる表現だけの問題ではなくて、簿記の本質に関わる問題だと思うのです。

繰延べ処理というのは、例えば、計上されている費用のうち、来期に帰属する部分を資産に振り替える処理です。具体的には「前払費用/なにかの費用」という仕訳です。

この処理をすることで、借方に注目すれば前払費用という資産がB/Sに計上され、他方、貸方に注目すれば、費用が減額されます。

さて、このB/S計上とP/L修正。どちらに重きがあるのでしょうか?そんなもん明確です。これ、分からないなら、顔洗って企業会計原則を読み直してこいって話です。

繰延べ処理は、適正な期間損益計算のためにやっています。要はP/Lのためなんです。B/Sに前払費用が計上されるのは副次的な効果であってメイン目的ではありません。

当期に費用計上しちゃった額に翌期分が含まれていると損益計算がおかしくなる。それはマズイから繰り延べ処理をしているのです。適正な期間損益計算のためです。決して、前払費用を計上したいからやっているわけではありません。

繰延べ」という用語には、適正な期間損益計算をするためという企業会計原則の思いが詰まっています。それを「前払い」に変えてしまったら、まるでB/Sに前払費用を計上するのが目的のように思えてしまいます。B/Sのためにやっているわけではないのに。

私が、最初に見越・繰延べ表現問題を聞いた時に抱いた違和感はこういうことなんです。

まあ、でもやっぱり言いがかりなのかな。

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