第168回日商簿記1級・詳細解説【原価計算】

問題1 理論問題とCVP分析
理論問題
①について
原価予測は、過去の実績データにもとづいて行うのが通常ですから、(イ)が該当します。
②について
過去の実績データにもとづいて固変分解を行う方法には、高低点法、最小自乗法、スキャッターチャート法、費目別精査法がありますが、理論的に洗練された統計的方法は、最小自乗法です。(ウ)が該当します。
③について
問題文に「原料価格の変化のような外的要因の変化を織り込むのみならず、計画されている設備投資、生産方法の変更など、( ③ )の結果を反映」とあります。設備投資の計画や生産方法の変更は、(イ)の意思決定が該当します。
④について
問題文に「利益計画のための原価概念としての変動費・固定費は、次の利益計画期間内に取りうる( ④ )な生産・販売量のもとで予定される原価総額の推定値を示すための概念である」とあります。この文章のみからは、語群の(ア)から(エ)までのどれが入っても矛盾はありません。
しかし、続いて「要するに、原価総額線は連続的な関数として表示されているが、それはシミュレーションを可能にするため」と書かれています。”要するに”とありますから、この文章は、前文を受けてその要点を説明していると考えると、(ア)の連続的が該当します。
一方で、続く文章の「事前的には複数の可能性が選択可能であったとしても、その中で実際に実現する生産・販売量は1点のみである」を受けていると考えると、(ウ)の代替的が該当します。
なお、③と④については、TAC社、ネットスクール社、CPAラーニング社で解答が割れています。
*2025年1月追記
2025年1月に公開された「第168回出題の意図・講評」によれば、(ウ)の代替的が正解のようです。
計算問題
⑤について
貢献利益が20万円増加する時、営業利益がいくら増加するか?という問です。貢献利益-固定費=営業利益であり、貢献利益が20万円増加しても固定費には影響しないため、営業利益も⑤20万円増加します。
⑥と⑦について
貢献利益率に変化がなく、固定費が10%削減されたとき、損益分岐点売上高がどうなるか?という問です。損益分岐点売上高=固定費÷貢献利益率です。貢献利益率が変化しない前提で、固定費が10%削減されれば、損益分岐点売上高も10%低くなります。
⑧について
貢献利益が100万円、営業利益が50万円の時の経営レバレッジ係数が問われています。経営レバレッジ係数=貢献利益÷営業利益であるため、100万円÷50万円=2です。
⑨について
経営レバレッジ係数が2のとき、売上高が10%増加すると、営業利益が何%増加するか?という問です。営業利益の増加率=売上高の増加率×経営レバレッジ係数ですから、10%×2=20%増加します。
なお、上記では、損益分岐点売上高の式や、経営レバレッジ係数の式から解答を導いていますが、これらの式を使わずに、適当な数値によって簡易的なPLを作成し、実際に問題文の条件にあわせてシミュレーションをして解答する方法も有効です。
問題2 業務的意思決定会計
情報の整理
現時点の余剰生産能力について
当工場の一般市場向け製品の生産能力は15,000個、現在13,000個生産していますので、2,000個の余剰生産能力があります。なお、臨時注文の製品は、通常の製品の半分の時間で生産できますので、もし臨時注文の製品を生産するのであれば4,000個の余剰生産能力があります。
製品単位あたり貢献利益について
通常製品:@2,000円-@1,000円=@1,000円
臨時注文製品:@1,500円-@1,100円=@400円
固定費について
臨時注文を受けたところで、追加の固定費などは発生しませんから、固定費は埋没原価です。本問を解くにあたっては考慮する必要がありません。
問1 臨時注文が2,000個の場合
臨時注文の製品の余剰生産能力は4,000個であるため、2,000個の臨時注文は通常製品の生産・販売に影響することなく、受けることができます。
したがって、差額利益は、@400円×2,000個=800,000円です。
問2 臨時注文が7,000個の場合
臨時注文の製品の余剰生産能力は4,000個であるため、7,000個の臨時注文を受けるのであれば、臨時注文の製品3,000個分の生産時間を通常製品の生産・販売の一部を断念することで確保しなければなりません。臨時注文の製品は、通常の製品の半分の時間で生産できますから、断念する通常の製品の数量は1,500個です。したがって、差額利益は次のように算定されます。
差額収益(臨時注文の受注による増分貢献利益):@400円×7,000個=2800,000円
差額原価(通常製品1,500個の断念による減額貢献利益):@1,000円×1,500個=1,500,000円
差額利益:2800,000円-1,500,000円=1,300,000円
問3 一部のみ臨時注文を受けられる場合のもっとも利益が大きくなる注文数
通常製品の1個あたりの貢献利益は@1,000円です。この通常製品の生産販売を1個断念すると、臨時注文製品を2個生産できますが、臨時注文製品の1個あたりの貢献利益は@400円ですから2個生産しても800円にしかなりません。
したがって、現時点での余剰生産能力の範囲内の注文であれば、臨時注文の製品は受注した方が有利ですが、通常製品の生産を断念するくらいなら、臨時注文は受けない方が良いと判断できます。
よって、もっとも利益が大きくなる臨時注文製品の注文履行数は、現時点での余剰生産能力の範囲内で受注することができる4,000個です。
そのときの差額利益は、@400円×4,000個=1,600,000円です。
