第165回日商簿記1級・詳細解説【原価計算】

全体をとおしての感想
一見すると、A4用紙2枚分いっぱいに文字が埋められているためボリュームが多く難しそうに見えますが、実際に解いてみると、ごく簡単な取替投資の問題でありボリュームも少なく難易度も低い問題でした。
なお、問われていることは基本的な内容でしたが、日本語が読みにくく、解答が誘導形式である点で解きにくさを感じました。こうした「易しいけれど、本質的ではないところで妙に解きにくい」のは近年の簿記1級工原によく見られる特徴です。
こちらも工簿と同様に、目安解答時間は30分〜40分、目標得点は25点、最低確保ラインは20点くらいだと思います。
理論問題
(a)意思決定会計の種類
意思決定会計は、大きく分けて短期的な意思決定と長期的な意思決定に分けられます。前者を業務的意思決定、業務執行的意思決定、戦術的意思決定などといい、後者を設備投資意思決定、戦略的意思決定といいます。特に基準などで決められた呼び方ではないためどのように解答しても正解です。
(b)正味現在価値法の再投資の仮定
正味現在価値法は、年々のキャッシュ・フローを資本コスト率(加重平均資本コスト率)で再投資をしているという前提に立脚している計算方法です。本問では、それを具体的な数値を使って計算していくことになります。
(c)内部利益率法の再投資の仮定
内部利益率は、正味現在価値がゼロになるような割引率のことを言います。言い換えれば、初期投資額と年々のキャッシュ・インフローの現在価値が釣り合うような割引率のことです。内部利益率が資本コスト率を上回っていれば、その投資案は採用されます。
例えば内部利益率10%の投資案があるとして、資本コスト率が5%なら、その投資案は採用されることになるのですが、その投資案が本当に10%の利回りを実現できるかというと、それは、その投資案で得られた年々のキャッシュ・インフローを内部利益率である10%で再投資をしなければならないという前提条件がつきます。本問はこの点を問うています。
(d)回収期間法
回収期間法は、初期投資額を何年で回収できるかでプロジェクトの優劣を評価する方法です。初期投資額が2,000万円で、年々のキャッシュ・インフローが500万円なら、回収期間は4年(=2,000万円÷500万円)です。
計算問題
前提条件
旧設備
取得原価1,800万円、耐用年数6年、減価償却費300万円
現時点(2年使用済み)の簿価:1,800万円-300万円×2年=1,200万円
現時点(2年使用済み)の売価:900万円
新設備
取得原価2,000万円、耐用年数4年、減価償却費500万円
新設備を導入することによる年々の差額キャッシュ・インフロー:800万円-200万円=600万円
基本的には、上記の条件にもとづいて、取替投資の意思決定を行うだけの問題です。
2023年度末時点の差額キャッシュ・フロー
(ア)新設備取得原価:△20,000,000円
(イ)旧設備売却収入: 9,000,000円
(ウ)旧設備の売却損:12,000,000円-9,000,000円=3,000,000円
(エ)売却損の節税額:3,000,000円×税率30%=900,000円
(オ)2023年度末時点の差額キャッシュ・フロー:(ア)(イ)(エ)の合計△10,100,000円
年々の差額キャッシュ・フロー1年分と正味現在価値
(カ)税引後正味差額キャッシュ・フロー:6,000,000円×税引後70%=4,200,000円
(キ)新設備の減価償却費による節税額:5,000,000円×税率30%=1,500,000円
(ク)旧設備の減価償却費による節税額:3,000,000円×税率30%=(△)900,000円
(ケ)年々の差額キャッシュ・フロー1年分:(カ)(キ)(ク)の合計4,800,000円
(コ)正味現在価値:
4,800,000円×4年5%年金現価係数3.54595-投資額10,100,000円=6,920,560円
再投資の仮定
(サ)再投資しない場合の2027年度末の差額キャッシュ・フロー:4,800,000円×4年=19,200,000円
(シ)再投資しない場合の現在価値:19,200,000円×0.822702=15,795,878円
(ス)再投資しない場合の正味現在価値:15,795,878円-10,100,000円=5,695,878円
(セ)再投資した場合の終価:4,800,000円×(1+1.05+1.1025+1.157625)=20,688,600円
(ソ)再投資した場合の現在価値:20,688,600円×0.822702=17,020,553円
(タ)再投資した場合の正味現在価値:17,020,553円-10,100,000円=6,920,553円
