講師が出題傾向を本気分析(1級原価計算編)

虫めがね

日商簿記1級・原価計算の出題傾向を本気分析

 原価計算の過去の出題傾向を分析してみる

過去23年間の出題論点を見てみよう。一番左の列(74回〜96回)は8年分の出題実績、それ以外は5年間ごとの出題実績だ。また、出題論点ごと、出題実績の多い順に並べてある。

  74-96 98-111 113-126 128-141 合計
設備投資意思決定 4 3 4 4 15
予算実績差異分析 4 1 1 3 9
CVP分析 4 1 0 3 8
最適PM 3 1 3 1 8
直接原価計算PLなど 1 1 2 2 6
総合原価計算 2 1 2 1 6
戦略的原価計算 2 2 1 1 6
業務的意思決定 3 0 0 2 5
事業部制 0 1 0 1 2
部門別原価計算 0 1 0 0 1
合計 23 12 13 18 66

No.1 は、圧倒的に設備投資意思決定会計

まず目につくのが、一番上の行に鎮座している設備投資意思決定会計だ。全66回のうち15回とダントツだ。しかも数が多いだけじゃない。出題実績が安定している。どの期間においてもコンスタントに出題されている。

各社から出版される予想問題集では、設備投資意思決定会計が第1予想に入っていない場合もある。だけれども、そんなことには関係なく、常に押さえておかなければいけない論点であることが分かるだろう。

No.2 は、予算実績差異分析

No.2は、予算実績差異分析だ。これは出題傾向に若干の偏りが見られる。つまり、98回から126回までの10年間において、たった2回しか出題されていないのに、最近5年間(128回から141回)では3回も出題されているという点だ。(No.3のCVP分析もこの傾向が顕著だ)

これは試験委員が変更したためだと思われる。最近の試験委員は予算実績差異分析とCVP分析が好きなのだ。だから外すことは出来ない。これも予想問題集にあろうがなかろうが、押さえておくべき論点だ。

No.3 以下のうち多くは類似論点

3位以下は、どれも僅差だ。どんぐりの背比べ。それもそのはず。3位以下の多くは類似論点だからだ。3位以下で、他と明確に論点が異なるのは、「総合原価計算」「戦略的原価計算」「部門別原価計算」の3つだ。残りの論点、つまり「CVP分析」「最適PM」「直接原価計算」「業務的意思決定」「事業部制」は全て類似論点と考えていい。

類似論点とはいえ「計算方法」や「解法」に目を向けると、それぞれは、だいぶ異なる。だから、計算方法暗記型の人にとっては別々の論点に見えてしまうかもしれない。

しかし、本質的な考え方、つまり「この論点は何のための計算なのか」「どこに注目すればいいのか」といったことは、ほぼ一緒の論点なのだ。したがって、これらはまとめて学習してしまったほうがいい。

原価計算は3つプラスαの論点に分けて対策をとる

上記の出題実績表にも示したとおり、個別論点として見れば10論点ある。しかし、試験対策として見れば、上記にも書いたとおり、メインは次の3つの論点に分けて対策をとるべきだと思う。

  • 設備投資意思決定会計
  • 予算実績差異分析
  • その他の論点(CVP分析、最適PM、直接原価計算PL、業務的意思決定、事業部制…)

さらに、戦略的原価計算は、プラスα論点としてとらえよう。ひとつひとつ見ていこう。

設備投資意思決定会計

設備投資意思決定会計は、上っ面の計算方法の暗記で対応しようとすると足元をすくわれやすい論点だ。難しい問題を闇雲に解く必要は無い。基本が大事な論点だ。

軸になるのが「キャッシュ・フローの算定」と「投資案の評価」だ。それぞれの基礎をしっかり押さえること。自分のやっている計算の意味を知ること。そうすれば、どうひねられても解くことが出来る。間違っても、「利益には0.6掛けて減価償却費に0.4を掛ければいいんでしょ」みたいな覚え方をしないこと。

自信の無い人は、本ブログでも設備投資意思決定会計の本質講義を開催する予定だから参考にして欲しい。

予算実績差異分析

予算実績差異分析は、出題傾向に特徴がある。この論点は、非常に似通ったパターンの問題が多いのだ。だから、計算方法の暗記学習でもこなせてしまう場合が多い。

ただし、唯一異なるのが会話文形式の出題パターンだ。これは、予算実績差異分析の本質的な意味が分かっていないと解きづらいかもしれない。過去問でいうと、111回、131回に出題されている。手持ちに問題を持っている人は、そのストーリーを読み取れるようになってもらいたい。

その他の論点(CVP分析、最適PM、直接原価計算PL、業務的意思決定、事業部制…)

これらの論点には、ある共通点が存在するのだが、気付くだろうか。それは、どれも直接原価計算をベースにしているという点だ。どの論点も、原価を固定費と変動費に分離し、それぞれを分析しているにすぎないのだ。

だから、計算対象となる利益概念は、どれも貢献利益(売上から変動費を引いた利益)だ。

たとえば、CVP分析は貢献利益が固定費を回収するための販売量(売上高)を分析するものだし、最適PMは貢献利益の最大化を目指すための製品組合わせ(=プロダクト・ミックス)を考えるものだ。直接原価計算PLは、全部原価計算PLを提示し「A製品は黒字だけどB製品は赤字。だからB製品をやめるべき。」なんていう提案がなされ、それを貢献利益ベースで計算しなおすと、B製品も黒字だった、なんていうことがテーマになっている。

こういった大前提を理解せずに、上っ面の計算方法を習得しようとすると、ドツボにはまることになる。「一回は出来るようになったんですけど、しばらくしたら忘れてしまいました」なんていう人は、そういうことだ。

繰り返しになるが、これらの論点を理解するには、そもそも、直接原価計算とはなんぞやという理解がもっとも大切だ。

戦略的原価計算

これは、テキストと問題集をざっとやればそれで十分だ。そもそも出題頻度が低いし、仮に対策を取らずに本試験に立ち向かい、もし出ちゃったとしても現場対応可能な論点だからだ。

上記3つの主要論点をまずしっかり固めて欲しい。そのうえでプラスαとして戦略的原価計算をおさえておく、という感じでいいだろう。

上記を踏まえて出題傾向の本気分析

講師の考える最近の出題傾向

まず、設備投資意思決定会計は外せない。各出版社の直前予想がどうであれ、押さえておくこと。今後もコンスタントに出題されるという傾向は続くだろう。

次に要注意なのが、上記の(直接原価計算をベースにした)その他の論点だ。それも単独で出題されるのではなく、複合問題として出題される傾向が強くなるだろう。

以前の試験委員は1つの論点を深掘りする傾向にあったが、現試験委員は基本論点を複合して出題してくる傾向にある。だから、余計に個々の論点の解き方の暗記では対応しにくくなっている

138回の原価計算などは良い例だろう。まずは、予算編成の段階において、CVP分析によって生産販売量を設定し、続いて実績にもとづいて予算実績差異分析を行わせる。最後に直接原価計算PLから全部原価計算PLへの変換を問うている。全体を通しての流れを理解出来ていないと難しく感じるかもしれない。

特にこのあたり、最近の試験委員は大好きだ、ということを付記しておこう。

工業簿記の本気分析はこちら

日商簿記1級・工業簿記の出題傾向の本気分析

工業簿記も本気分析してみたので、参照してほしい。

講師が出題傾向を本気分析(1級工業簿記編)


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