149回日商簿記1級・詳細解説【原価計算編】

商業簿記の詳細解説はこちら、会計学の詳細解説はこちら、工業簿記の詳細解説はこちらです。

原価計算の問題全体をとおして

今回、唯一、これはマズイのでは?と思ったのがこの原価計算です。いくらなんでも簡単すぎます。

大学の会計の授業における練習問題としては良問だと思います。ストーリーを感じて面白いです。よく出来てます。いわゆるプロダクト・アウトとマーケット・インにもとづく価格決定の違いを教えようとしています。

しかし、そうであるなら理論問題として出すべきだったと思います。試験委員さまに対して大きなお世話ですが。何しろ論点は面白いのですが、計算問題として出したばっかりに、あまりに簡単すぎて、どれだけ丁寧に解いても15分から20分くらいで終わってしまうのです。

そして解答時間ばかりではなく難易度にも問題があります。当受講生の中には、ほぼ知識がない状態の初学者でも70%取れていました。つまり、作問者が意図している価格決定における理論的な理解をまったくしていなくても、勘による計算だけで合格点が取れてしまうのです。

これで検定試験としての役目を果たしていると言えるのでしょうか。多分、作問した後のレビューや学生に試しに解かせての難易度チェックなどをしていないのではないでしょうか。

そして、出題範囲がかなり偏っています。前回に引き続きです。試験委員が、ご自分の興味ある分野から出題されるのは当然としてもそれがあまりに偏っていることに困惑します。

ま、それも含めて試験、と言ってしまえばそれまでですが。

前提知識

プロダクト・アウト

改良型製品V-2はプロダクト・アウトを志向して価格決定を行っています。これは、原価に利益分を上乗せして価格を決定する方法のことです。もちろん、その後、価格の修正は行われますが、基本的には、企業目線で価格が決められます。技術的に優れていて競争力がある製品の場合に適用されます。近年ではアップル社などはこの方式で価格決定をしています。問題文ではこれを「コスト・プラス」という言葉で表現しています。つまり、先にコスト(原価)が決まっていて、これに利益をプラスして販売価格を決めるという意味です。

マーケット・イン

新製品Xはマーケット・インを志向して価格決定を示唆しています。これは、いくらなら顧客に受け入れられるか、つまり競合に勝てるかという視点をスタートとした価格決定の方法です。そして、その価格から目標となる利益を差し引いて目標となる原価を算定します。問題文ではこれを「マーケット・ベースの価格決定」という言葉で表現しています。

総原価

製造原価+販管費=総原価です。

マーク・アップ率

付加率ともいいます。同じ意味です。80円の原価に20円の利益を付加して100円で販売する場合、付加率は20円÷80円=25%です。この場合、利益率は、20円÷100円=20%です。

バリュー・エンジニアリング

マーケット・ベースの価格決定を採用した場合、先に販売価格が決定されて、そこから目標利益を差し引いて、原価を決めます(この原価を許容原価といいます。市場に許される原価という意味です)。一方で、実際にどれくらい原価が掛かるのだろうというのを積み上げていくと(これを成行原価といいます)、許容原価とはかけ離れていたりするわけです。さて、困りました。そこで、この成行原価をいかにして許容原価に近づけるかという活動が行われるわけです。そこで使われる原価管理手法がバリュー・エンジニアリングです。VEとも略されます。ざっくり言えば費用対効果にもとづいてコスト削減をするのです。(技術者のこだわりではなく)顧客にとっての価値ある機能は何かを追求し、それをコストで割ったものを”価値”と定義しそれが最大になるように機能やコストを調整します。その結果、成行原価と許容原価の間で、最終的に落とし所の原価が決まります(これを目標原価といいます)。

原価企画、原価改善、原価維持

標準原価計算は、まず原価標準がありきで、それに基づいて標準原価を算定し、実際原価と比較して差異を分析します。で、差異が出たらその原因を分析して次回からは出ないようにがんばります。これ、どこで行われる活動でしょうか。工場(製造現場)です。つまり、原価標準という絶対的に守るべきものを設定して、それを維持するよう工場でがんばる活動です。これを原価維持といいます。

一方で、いやいや、そもそも原価標準って本当に絶対的なものなの?例えば機械の配置をちょっと変えればもっと効率よく動けて直接作業時間が減らせられるんじゃないの?それで原価標準自体をもっと少なく出来るんじゃないの?みたいなことを製造現場で話合う活動があるんです。この活動を原価改善といいます。そしてこの活動を行うグループをQCサークルっていいます。

以上は製造現場での話です。しかしですよ、そもそも、もう製品の仕様が決定されてしまった後で、いくら製造現場で原価を削ろうとしても、なかなか限界があるわけです。そこで、もっとも効果が高いのが、そもそも企画設計段階での原価削減です。

例えば何か部品があって、現在、デザイン重視で金属を使用しているけど、顧客がその部品に求めているのはデザインではなく、衝撃に強いことであると判明したとします。それなら金属と同程度の衝撃耐久力のある硬質プラスチックに素材を変更してもいいのではないか?などを検討するわけです。その素材の変更が成功すればコストが大幅に削減できます。これが先に書いたバリュー・エンジニアリングであり、この設計企画段階で、原価を作り込むことを原価企画といいます。

原価管理について

原価管理には2つの意味があります。良く標準原価計算とか原価計算基準を勉強していて登場する原価管理は、先に書いた原価維持のことです。同じ意味です。

これに対して、原価企画、原価維持、原価改善の3つを総称して原価管理ということもあります。つまり単に原価管理といっても伝統的な原価計算ではいわゆる原価維持をさして、近年流行した戦略的原価計算では原価企画、原価維持、原価改善の3つを総称しているのです。

分かりにくいですね。これ、もともと英語では違っていたのです。標準原価計算の原価管理はコスト・コントロール、原価企画などを含む原価管理は、コスト・マネージメントです。誰かが日本語に訳す時に両方とも原価管理としてしまったのです。いい加減にしてほしいです。

第1問の解説

本問の計算は極めて簡単です。計算式自体をだらだら説明してもあまり意味がないでしょう。それよりも本問は、上記「前提知識」をどれだけ理解しているかが肝要です。

今回の試験では、上記を理解していなくても、なんとなく勘で数値をあわせれば回答出来る程度の問題でした。しかし、将来的にはどうなるか分かりません。計算自体よりも上記の前提知識をしっかり押さえておきましょう。

問1 製品V-2

  製品V-2 新製品X
研究開発費 500,000 2,452,000
設計費 800,000 1,025,000
直接材料費 3,500,000 5,500,000
直接労務費 500,000 250,000
間接費 2,000,000 3,273,000
総原価 ①7,300,000 12,500,000

 

②マークアップ率

製品V-2の単位原価は7,300,000円÷5,000単位=@1,460円
販売単価は利益率20%より、@1,460円÷80%=@1,825円
よって上乗せしている利益は、@1,825円−@1,460円=@365円
マークアップ率は、@365円÷@1,460円=25%

もしくは、利益率が20%ということは、原価率は80%なので、20%÷80%=25%としても計算可能。こちらの方が簡単。

③コスト・プラスの単位あたり販売価格

上記②で計算しているとおり@1,825円

問2 新製品X

④単位あたり目標原価、⑤総原価、⑥削減すべき原価総額
  単価 総額
目標原価 ④@1,500円 12,000,000円
成行原価 12,500,000円÷8,000単位
=@1,562.5円
⑤12,500,000円
販売価格 問題文より
@2,000円
16,000,000円

:販売価格@2,000円×(1−利益率25%)=@1,500円
:成行原価12,500,000円−目標原価12,000,000=500,000円

問3

⑦上記「前提知識」を参照

⑧売上高16,000,000円−総原価12,500,000円=3,500,000円

⑨新製品Xの利益率:(@2,000円−@1,562.5円)÷@2,000円=21.875%
 製品V-2の利益率:問題文より20%
 利益率の差:21.875%−20%=1.875%

⑩、⑪上記「前提知識」を参照

第2問の解説

費目別計算の極めて基本的な問題。2級レベル。出来なかった人は、こちらの記事の「費目の分類が苦手なら」をしっかり読んでおくこと。

 

プロ簿記講座の第4期生募集します

日商簿記1級合格に焦点を絞ったプロ簿記講座の第4期がはじまります。学習計画の立て方、暗記ではなく本質の理解にこだわった授業、実際の解き方を見せるライブ講義、合格までに読んでおくべき会計書籍の紹介などなど、合格するのに必要なことは全て提供します。とにかく合格してもらいます。

コースと価格はさまざまです。カタログはこちらです。より詳しい内容とお申込みは以下をクリックしてください。

プロ簿記講座のご案内

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です