第145回日商簿記2級工業簿記の問題から

最近の2級の問題

普段、1級をメインに執筆や授業を行っているため、あまり2級に触れる機会がない。まあ、でも、所詮2級。さほど変わっていないだろうと、そんな感じで軽く見ていた。しかし、それは大きな勘違いだった。

先日、作問リクエストコーナーに「第145回日商簿記2級の工業簿記のような問題を作って欲しい」という主旨の投稿を頂き、これを機会に久しぶりに2級の問題を見てみた。

結構、難しくなっている。以前の2級よりは確実にレベルが上がっている。なんというか、昔ながらのパターン暗記の学習だけじゃ受からせないよ、という意図を感じるね。

全部原価計算と直接原価計算

さて、依頼にあった第145回日商簿記2級問5。全部原価計算と直接原価計算のP/L組替問題。これは良問だと思う。

この論点、1級受験者でも結構苦手にしている人が多いはずだ。きちんと理解するには、そもそも直接原価計算と全部原価計算の損益計算書における構造を理解する必要がある。2級では、このあたりを深くやらないから、そのまま1級に来て苦労する人がたくさんいる。

この点について、まず、第145回日商簿記2級問5を解説した上で、さらに、本質的な理解が出来るようになるためのミニ問題集PDFファイルを公開したので、受験生は是非、参考にしてほしい。

第145回日商簿記2級工業簿記第5問の解き方

第145回日商簿記2級の工業簿記第5問の解き方を紹介しよう。

問題

以下の資料にもとづいて、前々期と前期の直接原価計算のP/Lを作りなさい。

  1. (本試験問題には記載されていたが、使わない資料なので省略)
  2. 固定加工費は、前々期、前期ともに360,000であった。固定加工費は各期の実際生産量にもとづいて実際配賦している。
  3. 変動販売費は、前々期、前期ともに110円/個であった。固定販管費も前々期、前期ともに同額であった。
  4. 生産販売状況と全部原価計算の損益計算書は次のとおり

生産販売状況

  前々期 前期
期首製品 0 0
当期製品 1,000 1,200
当期販売 1,000 1,000
期末製品 0 200

全部原価計算の損益計算書

  前々期 前期
売上高 160万円 160万円
売上原価 102万円 95.5万円
売上総利益 58万円 64.5万円
販管費 39万円 39万円
営業利益 19万円  25.5万円 

解き方1(前々期)

全部原価計算と直接原価計算のP/L組替問題は、次のように解くのが一番簡単。まず、次のような4つ窓を作る。で、判明している数値を入れる。

  製造原価 販管費
変動費 資料3より
@110
(1,000個売れたので総額11万円)
固定費 資料2より
36万円

で、タテの合計(つまり製造原価の合計と販管費の合計)が、全部原価計算の損益計算書だ。
で、ヨコの合計(つまり変動費の合計と固定費の合計)が、直接原価計算の損益計算書だ。
これだけの話。だから、それに基づいて、不明箇所を判明させればいい。

  製造原価 販管費
変動費 タテの差額から
66万円
資料3より
@110
(1,000個売れたので総額11万円)
固定費 資料2より
36万円
タテの差額から
28万円
合計  資料4全部原計P/Lの売上原価
102万円
資料4全部原計P/Lの販管費
39万円

あとは、これをヨコに集計するだけだ。

  製造原価 販管費 合計
変動費 66万円 11万円 77万円
固定費 36万円 28万円 64万円

よって、直接原価計算による損益計算書の変動費は77万円、固定費は64万円だ。

解き方2(前期)

前期は、製造分全てを売りきらなかった(在庫が余っている)ので、少し面倒だけど、ほとんど一緒だ。とにかく、次のような4つ窓を作る。で、判明している数値を入れる。「変動製造原価以外は前々期と同じ」と書かれているので、素直にそれに従う。

  製造原価 販管費
変動費 11万円
固定費 36万円 28万円

ここで、ちょっと注意点がある。固定製造原価の36万円だ。

これ、直接原価計算では、36万円全額を損益計算書に計上する。直接原価計算は販売したかどうか(在庫に残っているかどうか)に関係なく、発生した固定費は、全額、その期の原価とするからだ。(これを期間原価という)

これに対して、全部原価計算では、売れた分だけを損益計算書に計上する。在庫に残っている分は貸借対照表の製品勘定に計上される。つまり、1,200個作って、1,000個売れているのだから、36万円÷1,200個×1,000個=30万円が損益計算書に行って、残りの6万円が貸借対照表の製品勘定に行く、というわけだ。これをさきの4つ窓に書き込むと次のようになる。

  製造原価 販管費 合計
変動費 11万円 ?万円
固定費 30万円(全部原計P/Lへ)
6万円(全部原計B/Sへ)
28万円 64万円
合計 資料4より
95.5万円
39万円  

ということは、差し引きで、変動製造原価は、95.5万円−30万円=65.5万円と判明する。つまり次のようになる。

  製造原価 販管費 合計
変動費 65.5万円 11万円 76.5万円
固定費 30万円(全部原計P/Lへ)
6万円(全部原計B/Sへ)
28万円 64万円
合計 資料4より
95.5万円
39万円  

直接原価計算の本質を理解するためのミニ問題集プレゼント

この4つ窓による解法は、私が開発した方法だ。受講生のみなさんが使うのは大歓迎。是非使ってほしい。さらに、この4つ窓解法をしっかり理解してもらうためのプレゼントを用意したので公開しよう。といっても、今年の1月に、プロ簿記1級合格プログラム受講生に配布したミニ問題集だ。

先にも書いたが、この論点、1級受験生でもちゃんと分かっていない人が少なくない。そういう人は、小手先のテクニックに走りがちだ。すぐに操業度差異とか固定費調整がどうとか、そういう方に走ってしまう。まあ、スクールが良くないんだよね。そういう教え方するから。

そうじゃなくて、ちゃんと、2級レベルの直接原価計算と全部原価計算の損益計算書における構造から理解することが大切だ。結果、その方が早く習得できる。以下に公開する資料は、そういった勉強をするための資料だ。結構ボリュームあるけど、期間限定で提供するので是非参考にしてほしい。

直接原価計算の本質を理解するためのミニ問題集

なお、スクール関係者はダウンロードおよび使用しないでください。

最後に雑感

ちなみにスクールは、この問題をどのように解説しているのだろう?と思い、某社の解説動画を見てみた。うーん、厳しいね。あの解説じゃ、ちょっと理解するのは厳しいだろうね。

たとえば、本問、資料1は使わなくても解ける。それにも関わらず、資料1の不明箇所を分析することを示唆する解き方から入っている。ちょっと、イマイチだな、と思って見ていた。(まあ、それでも遠回りながら解けることは解ける)

でも、良くないなと思ったのは、そもそも全部原価計算と直接原価計算の仕組みに関する話がゼロということ。単に数字をいくじくって解説しようとしている。それでは、伝わらないだろうなあと思って見ていた。

チャットがざーっと流れている。講師の話とは関係ない中田ヒデの話で盛り上がっている。あまり授業を聞いていないようだ。こういうのは、講師としてはきっついだろうなーと思った。

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