連産品を基礎から応用までしっかり押さえる 計算編

連産品の計算問題の考え方
連産品の計算問題は、基本的には等級別総合原価計算と同じ考え方で解ける。なお、等級別総合原価計算の計算方法は、一般的には次の3つのパターンが考えられる。(どの段階で等価係数を用いるかという観点で分類すると分かりやすい)
- 単純総合原価計算を行い、アウトプット(完成品原価)段階で等価係数を用いて按分
- 投入原価を先入先出法や平均法で原価配分する段階で等価係数を用いて按分
- 原価要素(材料費や労務費など)をインプット(投入)段階で等価係数を用いて按分
ここで、連産品の計算は、上記、パターン1と同じ考え方で解けばよく、具体的には単純総合原価計算を行い完成品原価を等価係数で按分すればいいだけだ。相違点は、等級別総合原価計算が主に物量基準の等価係数を問題文で与えられるのに対して、連産品は、自分で等価係数を計算しなければならないことだ。だから、実質的には、連産品の計算問題は、
等価係数の計算論点 + 2級レベルの等級別総合原価計算
といえる。つまり2級レベルがOKなら、あとは等価係数の計算論点だけを理解すればいいわけだ。
なお、余談だが、等級別総合原価計算の出題は、1級では過去20年以上実績がなく、重要とは言えない。そのため、ここではその計算方法には触れない。しかし、それにしても上記パターン1(単純総合原価計算に近いパターン)とパターン3(組別総合原価計算に近いパターン)だけは出来るようにしておこう。ともに日商簿記2級で学習する論点だ。
連産品の基本問題
それでは、連産品の基本問題を解きながら、その本質を学習しよう。計算量も少なく簡易な問題だが、連産品で良く引っ掛けられるポイントは押さえてある。心して取り掛かってほしい。
問題
当社では分留工程の始点にX原料を投入し、連産品A、B、Cを産出している。連産品Aはそのまま製品として外部に販売されるが、連産品Bと連産品Cは、それぞれ第1工程、第2工程で追加加工したのちに製品B、製品Cとして販売される。
以下の〔資料〕をもとに、【問1】物量(重量)を基準に連結原価を連産品A、B、Cに配賦した場合、【問2】正常市価基準によって連結原価を連産品A、B、Cに配賦した場合それぞれの損益計算書(一部)ならびに貸借対照表(一部)を完成させなさい。
なお、当社は、全部実際原価計算を採用している。また、ここで正常市価とは、分離点における見積正味実現可能価額のことである。
〔資料1〕当期生産データおよびその他見積りデータ
| 当期実際生産データ | 正常販売価格 | 正常追加加工費 | 見積販売費 | |
|---|---|---|---|---|
| 製品A | 900kg | 500円/kg | ||
| 製品B | 600kg | 700円/kg | 100円/kg | |
| 製品C | 500kg | 460円/kg | 60円/kg | 20円/kg |
〔資料2〕当期実際発生額
| X原料費 | 300,100円 |
| 分留工程加工費 | 199,900円 |
| 第1工程加工費 | 72,000円 |
| 第2工程加工費 | 39,000円 |
| 製品C個別販売費 | 8,000円 |
〔資料3〕当期販売データ
- 期首および期末に仕掛品は無かった。
- 期首に製品在庫は無かった。
- 当期、製品Aは全量、製品Bは400kg、製品Cは350kgを販売した。
- 実際販売価格は見積もりどおりであった。
答案用紙
【問1】物量基準(単位:円)
| 損益計算書(一部) | |
| Ⅰ 売上高 | ( ) |
| Ⅱ 売上原価 | ( ) |
| 売上総利益 | ( ) |
| Ⅲ 販管費 | |
| 製品C個別販売費 | ( ) |
| : | |
| 貸借対照表(一部) | |
| 製品B | ( ) |
| 製品C | ( ) |
| : | |
【問2】正常市価基準(単位:円)
| 損益計算書(一部)単位:円 | |
| Ⅰ 売上高 | ( ) |
| Ⅱ 売上原価 | ( ) |
| 売上総利益 | ( ) |
| Ⅲ 販管費 | |
| 製品C個別販売費 | ( ) |
| : | |
| 貸借対照表(一部)単位:円 | |
| 製品B | ( ) |
| 製品C | ( ) |
| : | |
解答
【問1】物量基準(単位:円)
| 損益計算書(一部) | |
| Ⅰ 売上高 | 891,000 |
| Ⅱ 売上原価 | 487,800 |
| 売上総利益 | 403,200 |
| Ⅲ 販管費 | |
| 製品C個別販売費 | 8,000 |
| : | |
| 貸借対照表(一部) | |
| 製品B | 74,000 |
| 製品C | 49,200 |
| : | |
【問2】正常市価基準(単位:円)
| 損益計算書(一部) | |
| Ⅰ 売上高 | 891,000 |
| Ⅱ 売上原価 | 486,800 |
| 売上総利益 | 404,200 |
| Ⅲ 販管費 | |
| 製品C個別販売費 | 8,000 |
| : | |
| 貸借対照表(一部) | |
| 製品B | 84,000 |
| 製品C | 40,200 |
| : | |
解説
まずは、連産品の論点はさておき、普通の総合原価計算として考えてみよう。ボックス図にすると次のようになる。
| 分留工程 | |
| 期首仕掛品 0 |
①完成品 |
| 当期製造費用 X原料費300,100 加工費199,900 |
|
| 期末仕掛品 0 |
|
| 第1工程 | |
| 期首仕掛品 0 |
④製品B |
| 当期製造費用 ②連産品B ? 加工費 72,000 |
|
| 期末仕掛品 0 |
|
| 第2工程 | |
| 期首仕掛品 0 |
⑤製品C |
| 当期製造費用 ③連産品C ? 加工費 39,000 |
|
| 期末仕掛品 0 |
|
ここで①の完成品原価が連結原価だ。これが、連産品A、B、Cに配賦される。この配賦額さえ分かってしまえば、あとは簡単だ。工程別総合原価計算と同じ要領で、②から⑤まで芋づる式に判明する。つまり、ネックは①の連結原価を求めることと、これを連産品に何対何で按分すればいいか、ということだけだ。ここまでは全ての連産品の問題に共通する考え方なので、しっかり押さえよう。
問1 物量基準
連結原価の算定
まずは、連結原価を求めよう。本問は、期首、期末の仕掛品が無い設定だが、本試験レベルでは仕掛品があるケースも考えられる。その際は、普通に総合原価計算として計算して、完成品原価を求めてほしい。本問は、単純に分留工程の原料費300,100円と加工費199,900円の合計で、①は50万円だ。
連結原価を何対何で按分するか
あとは、この50万円を連産品A、B、Cに配賦すればいい。問1は、物量(重量)基準なので、連産品A、B、Cの重量を基準に配賦すればいい。
連産品A:①50万円×900kg÷(900kg+600kg+500kg)=225,000円
連産品B:①50万円×600kg÷(900kg+600kg+500kg)=②150,000円
連産品C:①50万円×500kg÷(900kg+600kg+500kg)=③125,000円
総合原価を求める
製品A:225,000円(個別加工はしないので)
製品B:②150,000円+72,000円=④222,000円
製品C:③125,000円+39,000円=⑤164,000円
単位原価を求める
製品A:225,000円÷900kg=@250円
製品B:④222,000円÷600kg=@370円
製品C:⑤164,000円÷500kg=@328円
損益計算書を作成する
| 単価 | 数量 | 金額 | ||
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 製品A | @500円 | 900kg | 450,000円 |
| 製品B | @700円 | 400kg | 280,000円 | |
| 製品C | @460円 | 350kg | 161,000円 | |
| 総売上高 | 891,000円 | |||
| 売上原価 | 製品A | @250円 | 900kg | 225,000円 |
| 製品B | @370円 | 400kg | 148,000円 | |
| 製品C | @328円 | 350kg | 114,800円 | |
| 総売上原価 | 487,800円 | |||
| 売上総利益 | 403,200円 |
なお、製品Cの個別販売費は、実際発生額8,000円を計上する。
貸借対照表の棚卸資産の額を計算する
製品A:@250円×(900kg−900kg)=0
製品B:@370円×(600kg−400kg)=74,000円
製品C:@328円×(500kg−350kg)=49,200円
問2 正常市価基準
正常市価基準とは何か
問2は、正常市価基準だ。問題文には「正常市価とは分離点における見積正味実現可能価額のこと」と書かれている。ということで、分離点における見積正味実現可能価額を計算しよう。
これは、ざっくり言えば、各連産品の見積売価のことだ。ただし、連産品Aは、そのまま製品として売れるからいいとしても、連産品BとCは追加加工するから直接的に売価は判明しない。そこで、加工後の製品BとCの売価から、追加加工費を控除して、間接的に連産品BとCの売価を求めるのだ。それが「分離点における見積正味実現可能価額」だ。用語が仰々しいからといってビビらないようにね。
ここで、問題なのは、個別販売費を控除すべきかどうかだ。これは控除する。つまり、加工費か販売費かに関わらず、個別費は控除すると覚えておこう。なお、過去問126回では、単に「正常個別費」という表記を用いている。
分離点における見積正味実現可能価額
連産品A:@500円×900kg=45万円
連産品B:(@700円−@100円)×600kg=36万円
連産品C:(@460円−@60円−@20円)×500kg=19万円
連結原価を何対何で按分するか
あとは、連結原価①50万円を連産品A、B、Cに配賦すればいい。分離点における見積正味実現可能価額で按分する。
連産品A:①50万円×45万円÷(45万円+36万円+19万円)=225,000円
連産品B:①50万円×36万円÷(45万円+36万円+19万円)=②180,000円
連産品C:①50万円×19万円÷(45万円+36万円+19万円)=③95,000円
総合原価を求める
製品A:225,000円(個別加工はしないので)
製品B:②180,000円+72,000円=④252,000円
製品C:③95,000円+39,000円=⑤134,000円
単位原価を求める
製品A:225,000円÷900kg=@250円
製品B:④252,000円÷600kg=@420円
製品C:⑤134,000円÷500kg=@268円
損益計算書を作成する
| 単価 | 数量 | 金額 | ||
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 製品A | @500円 | 900kg | 450,000円 |
| 製品B | @700円 | 400kg | 280,000円 | |
| 製品C | @460円 | 350kg | 161,000円 | |
| 総売上高 | 891,000円 | |||
| 売上原価 | 製品A | @250円 | 900kg | 225,000円 |
| 製品B | @420円 | 400kg | 168,000円 | |
| 製品C | @268円 | 350kg | 93,800円 | |
| 総売上原価 | 486,800円 | |||
| 売上総利益 | 404,200円 |
なお、製品Cの個別販売費は、実際発生額8,000円を計上する。
貸借対照表の棚卸資産の額を計算する
製品A:@250円×(900kg−900kg)=0
製品B:@420円×(600kg−400kg)=84,000円
製品C:@268円×(500kg−350kg)=40,200円
最後にひとこと
多分、ここまでの話で混乱するとしたら、次の2点だと思う。これらについて触れておこう。
見積額を使うべきか実際額を使うべきか
本問は、実際原価計算なので損益計算書の作成においては、実際額を使用する。これは普通の総合原価計算と変わらない。ただし、正常市価(分離点における見積正味実現可能価額)を計算するときのみ、見積額を使用する。この点に注意してほしい。なぜか。
正常市価とは「正常な状態だったら、これくらいの額で売れるはず」という金額のことだ。つまり見積額だ。もし、見積額ではなく、実際額を按分基準に使ってしまうと少々まずいことになる。
例えば第2工程の工員さん(製品Bの追加加工の工程)が超頑張り屋さんで見積より加工費が少なくて済んだとしよう。逆に製品Cの追加加工の工員さんはいい加減で見積より加工費が多くなり、さらに販売員さんもドジでのろまで余計な販売費が掛かったとしよう。
すると、実際額を基準に連結原価を配賦すると、製品Cはあまり儲からなかったから少ない額しか配賦されず、製品Bは儲かったからたくさん原価を押し付けられる。これっておかしくない?という話だ。分離後の加工のがんばりとか、販売のがんばりによって、分離点の原価が変わるのっておかしいでしょ。だから見積額を使うのだ。
それから、まあ実務的にも実際額は判明するのが遅いし計算が面倒だ。だから計算が遅れてしまう。その面からも見積額を使うのだ。
個別販売費があるときの処理
正常市価(分離点における見積正味実現可能価額)を計算する際、個別加工費が必要だったり、個別販売費が必要なら、どちらも控除すべきだ。その加工のお陰で高く売れるわけだし、販売費を掛けたからこそ、高く、そしてたくさん売れるからだ。
ただし1点注意がある。当たり前のことなのだけど、売上原価を解答要求されたときは、そこに販売費を入れてはいけないという点だ。販売費は、販管費なのだから、売上原価に算入しないのは当たり前だ。
だけど、正常市価の算定にあたって、加工費と販売費の両方を控除していると、つい、両方を足し戻したくなっちゃうものだ。このケアレスミスに注意してほしい。
今日は、ここまで。次は、本試験レベルの連産品の問題を解説する。
関連記事
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“連産品を基礎から応用までしっかり押さえる 計算編” に対して4件のコメントがあります。
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富久田先生
本年もどうぞよろしくお願いします。
連産品の記事をありがとうございました。
正常市価基準の算出がこれまであいまいでしたが、基礎編まではよく理解できました。
>正常市価の算定にあたって、加工費と販売費の両方を控除していると、つい、両方を足し戻したくなっちゃうものだ。このケアレスミスに注意してほしい。
→これは、この問題で言うとCの個別販売費8,000円だけのことでしょうか?
それと、解説の第2工程のBOXで加工費8,000になっていますが、39,000ですよね?
ご確認お願いいたします。
ファイティンさんへ
本年もよろしくお願いいたします。
>→これは、この問題で言うとCの個別販売費8,000円だけのことでしょうか?
はい、そのとおりです。
>それと、解説の第2工程のBOXで加工費8,000になっていますが、39,000ですよね?
ありがとうございます。誤植でしたので修正しました。
先生、ご確認ありがとうございました。
連産品の計算ですが、「理論編」の方に「最後に意外な盲点」⇒ 財務諸表作成目的のためとあり、
なるほど!と思いました。
財務諸表作成はそれを問う問題である時しか考えませんが、
工簿でも様々計算する時は常に意識しておこうと思いました。
これまでも先生のブログの記事にはテキストにない「そもそもなぜなのか?」が書かれているので
とても勉強になります。
本年度も先生の記事を読んで本質を理解していきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
実務で本当に使えるスキルって解き方ではなくて「そもそもなぜそんなことしているのか」なんですよね。だいたい実務は、試験みたいにカチッと条件が定まっていることなんてほとんど無いわけで手探りで計算しているわけです。
例えば設備投資なら、ほとんどの企業は自社の資本コスト率なんて分からないし、将来の売上予測だってほとんど分からないんですよ。そんなときに「条件となる数値が揃ってないから計算できません」じゃ話にならないですよね。
そんなとき役立つのが、細かい計算方法はさておき、各投資案の評価方法の長所と短所だったりするわけです。このあたりを皆さんにお伝えできるのは、実務で経験しているからこそかもしれません。