153回日商簿記1級・詳細解説【原価計算編】

原価計算の問題全体をとおして

問題集の設例のような問題でした。基本的な問題であり、難易度としては易しめだったと思います。

予算実績差異分析は、ひねりもない上に答案用紙に一部答えが書かれていて、かなり楽に計算できるようになっていました。設備投資意思決定会計の問題は前回の出題(144回)とそっくりで、これは作問するのが面倒だったのでしょうか。

このように難易度が低めのときは、ミスするかしないかが勝負を分けます。

第1問 予算実績差異分析

問1 製品Y1個当たりの標準製造原価

予算実績差異分析で、金額が総額で与えられているときは、何はさておき単価になおす、というのは基本です。本問も資料1の予算額が総額で与えられているため、単価になおします。(計算方法は、資料1の金額を予算販売量で割るだけです。)

  X Y
売上高 @10,000円 @12,500円
売上原価 @5,000円 @7,100円
変動販売費 @1,000円 @900円
貢献利益 @4,000円 @4,500円

さて、問1では、製品Y1個当たりの標準製造原価が問われています。上記にそのまんまの答えが書かれています。直接標準原価計算を採用しているとき、損益計算書の売上原価は、標準製造原価であることを理解しているかどうかを問われているのだと思います。

ついでなので、標準原価カードを作っておきましょう。資料2より推定します。A材料とB材料の単価が書かれていません。このように、標準原価カードの一部を推定させるというのも現試験委員のいつものパターンです。逆算すれば一瞬です。推定しましょう。ただ、もう、いい加減こういうの…。

製品X
A材料 1,000円/kg*1 2kg @2,000円
変動加工費 1,500円/時*2 2時間 @3,000円
      @5,000円

*1(@5,000円−@3,000円)÷2kg=1,000円/kg
*2 変動加工費標準配賦率:1,500,000円÷1,000時間=@1,500円

製品Y
B材料 900円/kg*3 3kg @2,700円
変動加工費 1,100円/時*4 4時間 @4,400円
      @7,100円

*3(@7,100円−@4,400円)÷3kg=900円/kg
*4 変動加工費標準配賦率:1,980,000円÷1,800時間=@1,100円

当然ながら、この材料単価は、後で使います。

問2 当月の実際販売量に見合う予算営業利益

この「当月の実際販売量に見合う予算営業利益」というのも独特の言い回しですが、全く同じ言い回しが、138回で出題されています。

138回原価計算 問2
 年間計画販売量を均等割りした月次予算のもとでの予算営業利益と、10月の実際販売量に見合う予算営業利益の差額を計算しなさい。

これは、単価がすべて予算通りだったとして、もしも、販売数量だけ実際販売量だったとしたら、営業利益はいくらになるか、という意味です。これもそう書いてくれれば、ほとんどの人が出来るわけです。それをわざわざ読みにくい表現をして、それを読み取れないばかりに得点できないというのもなんだかなーとは思います。

ただ、一方で、本問のような標準原価計算にもとづく予算実績差異分析は、単位原価にもとづく差異は標準原価差異に集約されるわけですから、P/L上の差異(販売活動にもとづく差異)は、すべて数量の差異になるわけです。その点で「その計算だけが求められているんだ!」ということを気付かせたいのかな、とも読み取れます。

まあ、とにかく、問1で算定しておいた予算単価にもとづいて、実際販売数での営業利益を求めます。

製品X貢献利益:貢献利益単価@4,000円×530個=2,120,000円
製品Y貢献利益:貢献利益単価@4,500円×390個=1,755,000円
固定費:1,150,000円+1,650,000円=2,800,000円
営業利益:2,120,000円+1,755,000円−2,800,000円=1,075,000円

問3 利益差異分析表

予算実績差異分析の基本問題です。1点、注意点をあげるならば、販売に関する数量差異をもとめるにあたって、売上高をベースにしているのか、貢献利益をベースにしているのかを見極めることが大切だということです。

前者を項目別分析、後者を要因別分析と言ったりしますが、まあ、表現はなんでもいいです。売上高をベースにしているのなら、売上原価についても、変動販売費についても数量差異を算定しなければいけません。一方で、貢献利益をベースにしているのなら、数量差異はこれ1つで事足ります。つまり答案用紙に1箇所しか販売に関する数量差異がなければ後者なのです。

ということは、予算実績差異分析は必ず答案用紙を確認する必要があります。習慣にしておきましょう。本問は、答案用紙に1箇所しか数量差異(答案用紙には販売量差異と書かれている)がないため、貢献利益ベースで算定します。

  製品X 製品Y 合計
予算営業利益     1,000,000
販売活動差異      
 販売量差異 ( ① ) ( ② ) ( ③ )
 販売価格差異 -100,000 -25,000 -125,000
 変動販売費差異 5,000 ( ④ ) ( ⑤ )
製造活動差異      
 直接材料価格差異 ( ⑥ ) ( ⑦ ) ( ⑧ )
 直接材料消費量差異 -10,000 18,000 8,000
 加工費予算差異 ( ⑨ ) ( ⑩ ) 9,500
 加工費能率差異 ( ⑪ ) ( ⑫ ) -3,500
実際営業利益     ( ⑬ )

 

【販売活動差異】

①:貢献利益単価@4,000×(実際530−予算500)=120,000(有利差異)
②:貢献利益単価@4,500×(実際390−予算400)=−45,000(不利差異)
③:120,000−45,000=75,000(有利差異)
④:標準変動販売費@900円×390個−実際変動販売費358,000=−7,000(不利差異)

【製造活動差異】

ここでの差異分析は標準原価差異の分析です。予算実績差異分析(損益計算書上での差異分析)との相違点を意識しましょう。標準原価差異分析は、仕掛品勘定における当月投入量を標準として使用します。そこであらかじめ製品Xと製品Yの生産データを作成しておきます。

製品Xの生産データ
月初仕掛品
120個(60個)

当月完成品

500個

当月投入
480個(490個)
月末仕掛品
100個(50個)
製品Yの生産データ
月初仕掛品
100個(50個)

当月完成品

420個

当月投入
440個(430個)
月末仕掛品
120個(60個)
⑥、⑦、⑧について(直接材料費差異)

A直接材料費差異:標準1,000円/kg×2kg×480個−実際990,000=−30,000円
答案用紙のA直接材料消費量差異:−10,000円の記載より、
⑥:−30,000円−(−10,000円)=−20,000円(不利差異)

B直接材料費差異:標準900円/kg×3kg×440個−実際1,200,000=−12,000円
答案用紙のB直接材料消費量差異:18,000円の記載より、
⑦:−12,000円−18,000円=−30,000円(不利差異)

⑧:−20,000円−30,000=−50,000(不利差異)

⑨と⑪について(製品Xの変動加工費差異)

差異分析の時短テクを用いて算定します。(この時短テクをご存知無い方は、こちらをどうぞ)

  単価 数量 金額 差異
標準 1,500円/時間 980時間*1 1,470,000円  
      1,462,500円*2 7,500円*3
(能率差異)
実際 975時間 1,456,000円 6,500円*4
(予算差異)

*1 2時間/個×490個=980時間
*2 1,500円/時間×975時間=1,462,500円
*3 1,470,000円−1,462,500円=7,500(有利差異)⑨
*4 1,462,500円−1,456,000円=6,500(有利差異)⑪

⑩と⑫について(製品Yの変動加工費差異)
  単価 数量 金額 差異
標準 1,100円/時間 1,720時間*1 1,892,000円  
      1,903,000円*2 −11,000円*3
(能率差異)
実際 1,730時間 1,900,000円 3,000円*4
(予算差異)

*1 4時間/個×430個=1,720時間
*2 1,100円/時間×1,730時間=1,903,000円
*3 1,892,000円−1,903,000円=−11,000(不利差異)⑩
*4 1,903,000円−1,900,000円=3,000(有利差異)⑫

⑬について

合計:912,000

第2問 設備投資意思決定会計

設備投資意思決定会計でよく問われるのは以下4つの論点です。

    1. CFの推定
    2. 投資案の評価方法
    3. 貨幣の時間価値
    4. 投資案のタイプ(独立投資案か相互排他的投資案か)による適した評価方法

4つを並列に書いていますが、重要性から言えば圧倒的にCFの推定を理解することが大切です。そして、学習上の難易度もCF推定がもっとも高いといえます。従来の試験委員の出題する設備投資意思決定会計は、このCFの推定に重きが置かれていました。

現試験委員の出題は、CFの推定にはあまり重きが置かれていません。一方で、上記2の投資案の評価方法で一工夫があったり、上記4の相互排他的投資案における評価方法を聞いてくるなど、従来型とは大きく異なります。

このあたりの特徴を踏まえて取り組むと高得点が取れます。まあ、基本的にはテキストの設例レベルですので特に応用的な学習は必要はなく、基本問題をしっかり解いておけば十分対応可能です。

設備投資意思決定会計の解き方

以下のような一覧表を作るのがスピーディかつ確実です。

  T1 T2 T3 T4 T5 合計
売上高 1,000*1 1,050 1,080 990 720 4,840
現金支出費用 750 770 860 820 610 3,810
減価償却費 160*2 160 160 160 160 800
利益 90 120 60 10 -50 230
税金 27*3 36 18 3 -15 69
利益 63 84 42 7 -35 161
CF 223 244 202 167 125 961

*1 250万円/台×4万台=1,000億円
*2 800億円÷5年=160億円
*3 90億円×税率30%=27億円

最後の行のCFは以下3通りの算定方法があります。どの算定方法も大切です。

  1. CIFとCOFを集計する方法
    CIF:売上高1,000、COF:現金支出費用750+税金27=777
    CF:1,000−777=223
  2. 税引後利益+非現金支出費用で算定する方法
    税引後利益63+減価償却費160=223
  3. タックスシールドを用いる方法
    (売上高1,000−現金支出費用750)×(100%−税率30%)+減価償却費160×30%=223

上記のようにPLを作成した場合、CFは2番めの方法にもとづくのがもっとも手間なく集計できます。

解答と解説

①:投資時点での現金流出額

旧設備売却によるCF:売却収入10億円−税額3億円=7億円
新設備購入によるCF:800億円
投資時点での現金流出額:800億円−7億円=793億円

②:第1年度の売上高

上記表のとおり1,000億円

③:第1年度の法人税等

上記表のとおり27億円

④:税引後純増分現金流入額の第1年度から第5年度までの単純合計

上記表のとおり961億円

⑤:資本コスト率4%のときの正味現在価値

−793+223×0.962+244×0.925+202×0.889+167×0.855+125×0.822=72億円

⑥,⑦:内部利益率

本来、内部利益率は単純回収期間法にもとづいてあたりをつけて、さらに正確に計算するために補間法を用いるのが筋ですが、かなり計算工数がかかります。本問で、そのような無駄なまねはしてはいけません。

答案用紙に候補が載っているのですから、適当に割引率をチョイスしてNPVを算定し、それが0になる割引率を探せばいいのです。そういう機転が効くかどうかも問われています。

たとえば7%をあてはめると、NPVは−9.136です。ということはもう少し割引率は大きいわけです。7.5%で計算すると、0.3でほぼ0です。よって、これが内部利益率があると考えられます。7.5%が答えです。

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153回日商簿記1級・詳細解説【原価計算編】” に対して1件のコメントがあります。

  1. にの より:

    問1でつまづきました。
    標準製造原価=変動売上原価=直接材料費+変動加工費予算 (✳︎)と考え、
    Yの標準製造原価2,840,000円-変動加工費予算1,980,000円=860,000円(a)。
    これを400個で割って、1個あたりの直接材料費を2,150円。
    変動加工費予算÷1,800時間×4=4,400円(b)。
    Yの1個あたりの標準製造原価=(a)+(b)=6,550円 としてしまいました。
    たぶん、上記の(✳︎)のところが変なのだと思いますが、どう変なのかが分かりません。
    ご説明いただけないでしょうか。

  2. pro-boki より:

    (a)の式がおかしいです。

    変動売上原価2,840,000円は、400個製造したときの製造原価。
    変動加工費1,980,000円は、1,800時間作業した時の金額。
    前提となる単位が違いますでしょ?そこのあたりがごちゃまぜになっています。

    にのさんの考え方に基づくなら、
    製品Yは1個作るのに4時間掛かるんですよね。ということは、400個製造したときは1,600時間掛かるんです。
    変動加工費は1,800時間作業することを前提(正常作業時間)とし、そのときの費用が1,980,000円ですから、1,600時間なら、1,980,000円÷1,800時間×1,600時間=1,760,000円です。

    となると、400個分の直接材料費は、2,840,000−1,760,000=1,080,000円
    1個あたりの直接材料費は、1,080,000円÷400個=2,700円です。

    変動加工費は、1個あたり4,400円ですから、4,400+2,700=7,100です。

    ただ、こんな遠回りするより、そもそも400個作ったときの直接材料費と変動加工費の合計額が変動売上原価の2,840,000円なのですから、それを400個で割ってしまうのが、もっとも簡単です。

  3. にの より:

    変動売上原価は400個製造した時の原価、
    変動加工費は1,800時間作業した場合の金額、
    というところがあやふやでした。的を射たご快答、ありがとうございます。

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