連産品を基礎から応用までしっかり押さえる 理論編

連産品を基礎から応用までしっかり理解しよう

プロフェッショナル簿記1級合格プログラムにご参加頂いている方に「工簿で不得意な論点は何?」というアンケートを取った。理論問題と費目別計算が不得意というのは、まあ想定内。しかし、ほぼ同率で連産品が不得意という結果には驚いた。そうか。連産品か。最初、どこを難しいと感じているんだろうかと不思議だった。計算自体は比較的簡単だからだ。標準原価計算の仕損減損や差異分析の方がよほど分かりにくい。

しばし考えてこう思った。もしかすると、計算方法というより、そもそも何のために計算しているのか納得感が無いのではないかと。

そこで、今回、連産品について基本的な理論(原価計算基準の噛み砕き解説)から、その具体的な計算方法、そして、過去問レベルの応用問題の解き方まで解説してみようと思う。

3回に渡って解説する。まず1回目は理論からだ。これ結構大事だよ。過去にも120回と126回で出題されている。しっかり押さえよう。

原価計算基準での連産品

この記事を読まれている方の多くは、連産品がどういうものか、既に、だいたいのイメージは持っていると思う。多分、原油から、重油や軽油、ガソリン、灯油などが精製されるといった例を学習してきたことだろう。ちなみにだが、岡本清先生の原価計算には、いきなりこう書いてある。

岡本清先生「原価計算」P359 第5節 連産品の原価計算
豚を1頭仕入れてきて, これを殺すと,豚肉の上肉,中肉,並肉,ラードがとれ,また豚皮や豚の毛がとれる。豚肉はさらに加工をすれば,ロースハム,ベーコン,ソーセージなどの食品がえられる。

なんというか、さすが岡本先生。例えが容赦ない。

さて、ここは大事なところだ。まずは、連産品が原価計算基準でどのように規定されているのかを確認しよう。

原価計算基準 二九連産品の計算
 連産品とは、同一工程において同一原料から生産される異種の製品であって、相互に主副を明確に区別できないものをいう。
 連産品の価額は、連産品の正常市価等を基準として定めた等価係数に基づき、一期間の総合原価を連産品にあん分して計算する。
 この場合、連産品で、加工の上売却できるものは、加工製品の見積売却価額から加工費の見積額を控除した額をもって、その正常市価とみなし、等価係数算定の基礎とする。
 ただし、必要ある場合には、連産品の一種又は数種の価額を副産物に準じて計算し、これを一期間の総合原価から控除した額をもって、他の連産品の価額とすることができる。

ひとつひとつ見ていこう。

連産品と組製品と等級製品

まず最初の文の「同一工程において同一原料から生産される異種の製品」が大切だ。ここ、理論問題にも出るかもしれない。重要ポイントだ。

まず「異種の製品」というワードに注目すると組製品(組別総合原価計算)とよく似ているなと思う。ただ、組製品は同一工程、同一原料から作られるとは限らない。

逆に「同一工程において同一原料から生産」というワードに注目すると等級製品(等級別総合原価計算)によく似ていると思う。しかし等級製品は、異種製品ではなく同種製品だ。このあたりの相違点は、しっかりイメージしてほしい。

また、連産品とは「相互に主副を明確に区別できないもの」という箇所も大事。じゃあ、区別出来るものは何なのよ、ということになるが、これは主産物副産物という。このワードも大事だから覚えておこう。

価値移転的原価計算と負担能力主義

さて、2つめの「連産品の価額は、連産品の正常市価等を基準として定めた等価係数に基づき、一期間の総合原価を連産品にあん分して計算する」も大切だ。ここが一番大切かもしれない。

価値移転的原価計算

普通、原価計算というのは、Aが消費されてBが生産された場合、Aの価値がBに乗り移ったと考えて計算する。つまり材料100と労働力200が消費されて製品が出来たら、100と200の価値が製品に乗り移ったから製品は300の価値がある、というふうに考える。これを「価値移転的原価計算」という。なんかものものしい言い方だけど、要するに、普通の原価計算だ。ちょっと、話は飛ぶけど、原価計算基準の 三 原価の本質(二)に次のように記述されている。

原価計算基準  三 原価の本質(二)
「原価は、経営において作り出された一定の給付に転嫁される価値であり、その給付にかかわらせて、は握されたものである。」

これは、まさに上記の価値移転的原価計算のことを言っている。

さて、価値移転的原価計算で計算するためには1つ条件がある。それはアウトプットを生産するためにインプットをどれだけ消費したのかを把握できないといけないということだ。

いままで学習してきた総合原価計算も個別原価計算もすべてそうだったはずだ。この製品を作るために、材料を何キログラム、作業時間を何時間消費したといった形で関係性が明瞭だった。

ここにきて、連産品が困るのが、共通の資源から必然的に作られてしまうので、どの製品にどれだけの労力を使ったのか測定できないことだ。豚から産出されたロースとヒレ肉に、それぞれどれほどの労力を掛けたのか、分からないでしょ。さばいたら、出来ちゃうんだから。つまり、連産品は価値移転的原価計算を採用できないのだ。ここのところ、しっかりイメージしてね。

負担能力主義にもとづく原価計算

そこで、仕方なく連産品には別の計算方法が必要になった。それが「負担能力主義」にもとづく原価計算だ。これは、ざっくり言えば「その製品を作るのに何をどれくらい投入したか」にもとづいて原価を計算するのではなく「その製品はいくらで売れるのか」にもとづいて計算しようということだ。つまり、高く売れるなら、たくさん原価を負担する能力あるよね、ということ。だから、「負担能力主義」という。

正常市価以外で計算してもいい

基準の「連産品の価額は、連産品の正常市価等を基準として…」をよくよく読むと「正常市価」と、「等」がついていることに気が付く。つまり、正常市価以外を用いて計算してもいいよ、と言っているのだ。

具体的には、消費した原料の重量なんかを基準に(物量基準という)計算しても構わないということだ。この場合は負担能力主義にもとづく原価計算ではなく、従来どおりの価値移転的原価計算だよね。

ただし、そうすると、上ヒレ肉と並肉の原価が重さだけで決まっちゃったりする。つまり、あまり正確な計算は望めない、ということだ。

正常市価とは何だろう

さて、ここまで、何となく売価のことを「正常市価」と呼んできたが、これ、正確にはどういうものだろう。原価計算基準には次のように書かれている。

加工の上売却できるものは、加工製品の見積売却価額から加工費の見積額を控除した額をもって、その正常市価とみなし

正常市価とは、まあ普通なら、このくらいで売れるだろうという見積売却価額だ。ただし、それは、連産品がそのまま売れる場合だ。加工して売る場合は、その個別加工費の見積もり額を控除した金額が正常市価だからね、と言っている。

ちょっと、ここでワンポイント注意が必要だ。

基準には「個別加工費」のことしか書かれていないけど「個別販売費」が掛かる場合は、どうすべきか、ということだ。これ、理屈から言ったらその販売費を掛けたからこそ、その販売価格で売れているわけだから、控除すべきだと思う。だけど基準にかかれていない。どこかに明示している資料ないかなと思って探したけど見つけられなくて困っていた。1級向けのテキストはもちろんのこと会計士のテキストなどもあたったのだけど明確に書かれていない。と、思ったら、小林先生(大御所の先生です)の本に明示されていた。しっかり、241ページに次のように書いてあった。

小林啓孝先生「現代原価計算講義」P241
ある製品に分離点後その製品固有の加工費がかかったり,その製品に個別に跡づけられる販売費がある場合は,それら個別の加工費・販売費の見積額を正常市価から差し引いた金額をベースとして結合原価を按分する。

例題まで載っていたから間違いない。

ついでに副産物も

最後に「ただし、必要ある場合には、連産品の一種又は数種の価額を副産物に準じて計算し、これを一期間の総合原価から控除した額をもって、他の連産品の価額とすることができる。」を見ていこう。

要するに、連産品だけど、副産物と同じように計算してもいいよ、と言っている。では、副産物とは何だろう。これは、原価計算基準「二八副産物等の処理と評価」に書かれている。

原価計算基準 二八副産物等の処理と評価
総合原価計算において、副産物が生ずる場合には、その価額を算定して、これを主産物の総合原価から控除する。副産物とは、主産物の製造過程から必然に派生する物品をいう。
副産物の価額は、次のような方法によって算定した額とする。

(一)副産物で、そのまま外部に売却できるものは、見積売却価額から販売費および一般管理費又は販売費、一般管理費および通常の利益の見積額を控除した額。
(二)副産物で、加工の上売却できるものは、加工製品の見積売却価額から加工費、販売費および一般管理費又は加工費、販売費、一般管理費および通常の利益の見積額を控除した額。
(三)副産物で、そのまま自家消費されるものは、これによって節約されるべき物品の見積購入価額
(四)副産物で、加工の上自家消費されるものは、これによって節約されるべき物品の見積購入価額から加工費の見積額を控除した額

軽微な副産物は、前項の手続によらないで、これを売却して得た収入を、原価計算外の収益とすることができる。

作業くず、仕損品等の処理および評価は、副産物に準ずる。

副産物の原則的な処理

大事なのは、最初の「副産物が生ずる場合には、その価額を算定して、これを主産物の総合原価から控除する」の部分。つまり、材料費や加工費の合計が100万円でも、副産物が産出されて、それが10万円の価値があるなら、製品原価は90万円しか掛かってないとみなしていいよ、ということ。
で、その副産物の価値については、(一)から(四)にごちゃごちゃ書いてある。まあ、割と当たり前のことなので一応読んでおいて欲しい。

軽微な副産物の場合

で、もう1つ覚えて欲しいことがある。試験での出題頻度は高く無いかもしれないけど、出ないとも限らないくらいの部分だ。それが最後から1つ前の「軽微な副産物は、前項の手続によらないで、これを売却して得た収入を、原価計算外の収益とすることができる。」だ。

これ、どういうことかと言うと、もう、副産物自体を一切無視する、ということだ。先の例で言えば、材料費や加工費の合計が100万円で、いくらで売れるか分からないほど低価値の副産物が産出されたする。仮に1,000円としよう。すると、本来は、製品原価は99万9千円なんだけど、もう、面倒だから、無視していいよ、ということ。つまり、副産物自体の計算処理は一切行わないということだ。

でも、実際には副産物は存在するわけで、売却もできるのだけど、それは売ったときに、売上として計上すればいいだけで、原価計算外の収益だよ、と言っている。もし、問題文に「この副産物は軽微であり、売却収入は原価計算外の収益とする」と書かれていたら、このことを言っているので、注意してほしい。

副産物については、これだけ知っていれば十分だろう。

最後に意外な盲点

今更なんだけど、そもそもなぜ連産品の計算をするのか知っているだろうか。これ、実は、財務諸表作成目的なんだ。もっと言えば貸借対照表の棚卸資産の額を算定するためだ。

連産品の計算は、あくまでも、連結原価(連産品を作るために掛かったトータルコスト)を連産品に按分するための計算だ。全て売りきってしまえば「売上総利益=総売上-連結原価-個別加工費」で計算されるので、そもそも連結原価の按分計算は必要がないのだ。ただし、在庫が余ると、それを貸借対照表に記載しなければならない。そこで、連結原価の按分計算が必要となるわけだ。

だから、たまに、問題集で、期首期末の在庫が無くて財務諸表と無関係の連産品の問題なんていうのを見るとイマイチだなぁと思ってしまう。まあ、練習問題なら別にいいんだけどね。余談でした。

本の紹介

上記で紹介したのは以下の書籍です。小林先生の本は、中古ならそこそこ安い(この記事を執筆している時点で2,000円くらい。)のでおすすめです。もちろん岡本先生の本もおすすめなのですが、中古でも高いからね。まあ、無くても大丈夫です。

次回予告

多分だけど、連産品が苦手な人は、こういった基本的な連産品の意義を知らずに、いきなり計算方法を暗記するからじゃないだろうか。次回からは、計算問題に入るけど、その前に、今一度、記事をしっかり読んで、その意味を理解してほしい。


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