147回日商簿記1級・詳細解説【原価計算編】

原価計算全体をとおして

147回、唯一、比較的簡単だったのがこの原価計算だ。

第1問は、総合原価計算における非度外視法の基本論点、副産物の処理、連産品の計算など、ノーマルでバランスの良い出題だった。後半は連産品と業務的意思決定を絡めた定番論点でこれも良問だった。

第2問は、これまた定番のCVP分析だ。試験委員が変わってからは、とにかくよく出題されている。しかも毎回テイストが同じだ。簡単な論点を少しだけクイズテイストにした感じ。

今回の試験は、他の科目がかなり厄介だったので、この原価計算が稼ぎどころだ。ここでミスをしていると合格は厳しいかもしれない。

第1問 連産品の計算

商会とは異なり、ひねりのない問題だった。テキストに載っている基本設例レベルだ。

ただし、若干問題に齟齬があるように感じた。というのも、正常市価基準における連産品の按分計算において、個別販売費の扱いが明確ではなかったからだ。

原価計算基準は、正常市価基準における個別販売費の扱いについて言及していない。つまり見積売価から控除せよとも控除しなくて良いとも書かれてない。しかし、そもそも「それだけの販売費を掛けたからこそ、その見積売価で売ることが出来た」という観点にもとづけば理論的には控除すべきだ。事実、個別販売費を控除して計算する問題は多数存在している。また、日商の過去問(126回)でも連産品は出題されているが、このときは個別加工費という用語は用いず「正常個別費」という用語を用いることで、暗に加工費以外も含まれていることを匂わせている。

その点で、本問は販売費をどうするのか、もう少し明確にして頂きたかった。資料によれば見積売価の隣に見積販売費が明示されており、あたかもそれを考慮すべきかのごとくに見える。また、先にも書いたとおり理論的には控除すべきと考える。しかし、本問は問題文のどこにも「販売費を控除せよ」との指示がなく、また、販売費を控除して計算すると、問5において端数が生じ、他方、販売費を控除しないときれいに割り切れる。そのため、本解答解説は販売費を控除しないものとして計算している。

問1 総合原価計算・正常減損費の計算

減損が平均的に発生、非度外視法、原価配分は平均法の総合原価計算の問題だ。平均法なので、まずは原料費と加工費の単価を出そう。

  • 原料費単価:(1,890,000円+7,680,000円)÷(820kg+80kg+100kg)=@9,570円
  • 加工費単価:(2,672,700円+21,870,000円)÷(820kg+80kg×0.5+100kg×0.5)=@26,970円

ちなみに、こういう総合原価計算では、丁寧にボックス図を書いても良いが、本問では平均法なので借方を省略することができる。こういうショートカットは有用なので覚えておこう。上記の式をよく見て頂きたい。物量は貸方の情報しか使っていない。当月投入などは計算する必要が無いのだ。

続いて、月末仕掛品原価と正常減損費を計算する。

  • 月末仕掛品原価(正常減損費負担前):@9,570円×100kg+@26,970円×50kg=2,305,500円
  • 正常減損費:@9,570円×80kg+@26,970円×40kg=1,844,400円

問2 月末仕掛品原価の計算

非度外視法なので、正常減損費1,844,400円を完成品と月末仕掛品に配賦する。減損は平均的に発生しているので、進捗度は関係なく両者負担。このときの按分割合は、加工進捗度を考慮した完成品換算量を使う。

よって、正常減損費(1,844,400円)を完成品820:月末仕掛品50 に按分すればよい。

このとき、完成品分は計算する必要がない。完成品原価は、いつでも差額で求めるからだ。月末仕掛品への按分計算をして配賦する。

  • 月末仕掛品原価(正常減損費負担後):2,305,500円+1,844,400円×50÷(820+50)=2,411,500円

問3 副産物と連産品の計算

先にも書いたが、完成品原価は貸借差額で求める。借方合計は問題文から判明しており、月末仕掛品原価も問2で判明しているのだから、すぐに計算できる。

完成品原価:1,890,000円+2,672,700円+7,680,000円+21,870,000円−2,411,500円=31,701,200円

さて、これは連産品A連産品Bと副産物Cの合計額だ。まずは、副産物の処理をする。副産物については原価計算基準28に「総合原価計算において,副産物が生ずる場合には,その価額を算定して,これを主産物の総合原価から控除する」とあり、その価額は「そのまま外部に売却できるものは,見積売却価額から販売費および一般管理費又は販売費,一般管理費および通常の利益の見積額を控除した額」とある。この規定はとても大事なので、再確認してほしい。

副産物の価額を完成品原価から控除する。
完成品原価(連産品AとB):31,701,200円−@1,060円×20kg=31,680,000円

これを連産品AとBに按分する。按分方法としては問題文には「見積売価額を基準として定めた等価係数にもとづき」とあるので従う。

連産品Aの正常市価:@83,600円×200kg=16,720,000円
連産品Bの正常市価:@33,440円×60kg=20,064,000円

連産品Aの原価:31,680千円×16,720千円÷(16,720千円+20,064千円)=14,400千円
連産品Aの単価:14,400千円÷200kg=72,000円/kg

連産品Bの原価:31,680千円×20,064千円÷(16,720千円+20,064千円)=17,280千円
連産品Bの単価:17,280千円÷600kg=28,800円/kg

問4 損益計算書

連産品A、Bともに売価、原価、販売費が判明しているため、単に集計すればいい。簡単。

 連産品A連産品B
売上高16,720,000@33,440円×600kg=20,064,000
売上原価@72,000円×200kg=14,400,00017,280,000
売上総利益2,320,0002,784,000
販売費16,720,000×10%=1,672,0002,006,400
営業利益648,000777,600

問5 連産品の追加加工と業務的意思決定

ここまで(問4まで)は、多くの人が正答していると思われる。もし、本問で差がつくとしたら、この問5であろう。定番論点なので押さえておくこと。

追加加工がある場合の連産品Bの単位原価(①)

素直に問題文に従えばよい。B’は、売価が@48,400円で追加加工費(外注加工賃)が@6,600円なのだから、正常市価は、(@48,400円−@6,600円)×600kg=25,080,000円

一方、Aの正常市価は、問3で16,720,000円と判明しているので、これにもとづき、連結原価31,680,000円を按分すればよい。

連産品Bの原価:31,680千円×25,080千円÷(16,720千円+25,080千円)=19,008千円
連産品Bの単価:19,008千円÷600kg=31,680円/kg

連産品B’の営業利益(②)

売価、追加加工費、売上原価と計算に必要な資料は揃っているのだから素直に計算すればよろしい。

売上高:@48,400円×600kg=29,040,000円
売上原価:(@31,680円+追加加工費@6,600円)×600kg=22,968,000円
販売費:29,040,000円×15%=4,356,000円
営業利益:29,040,000円−22,968,000円−4,356,000円=1,716,000円

業務的意思決定(⑤〜⑦)

これも丁寧に計算するしかない。特に自製案のとき「終点」で10%の仕損が発生する点に注意すること。つまり、加工費は600kg分掛かるけれど、産出量は540kgしかないという解釈をしっかりすること。仮に仕損が工程の始点で発生するなら、加工費は540kg分しかかからない。

 外注案自製案
差額
収益
(@48,400円−@33,440円)×600kg
=8,976,000円(⑤)
@48,400円×600kg×0.9−20,064,000円
=6,072,000円
追加
加工
@6,600円×600=3,960,000円@5,600円×600=3,360,000
追加
販売
29,040,000円×15%−2,006,400円
=2,349,600円
@48,400円×600kg×0.9×15%−2,006,400円
=1,914,000円
差額
利益
2,666,400円(⑥)798,000円(⑦)

第2問 CVP分析

基本的にはかなり簡単な問題だが、こちらも若干の齟齬を感じる。これは、後ほど。

①貢献利益率と②営業利益

X社の単位あたり変動費:200千円÷1万個=@20円
① X社の貢献利益率:(@200円−@20円)÷@200円=90%
② X社の営業利益:(@200円−@20円)×1万個−固定費1,500千円=300千円

③販売量の増減率と④そのときの営業利益の増減額

後段の「一方、販売量が現在よりも③%減った場合、X社の営業利益の減少は④千円であるが、Y社の営業利益は48千円の減少にすぎない」という文章から③を計算する。

Y社は、売価@200円、変動費@140円、固定費300千円で、1万個売っているので営業利益は、
(@200円−@140円)×1万個−300千円=300千円

販売量が③%減ったら営業利益が48千円減るので、
(@200円−@140円)×1万個×(1−③)−300千円=300千円−48千円

これを解いて、③=8%

なお、もう少し機転を利かせるのなら、Y社の現状の貢献利益は(@200円−@140円)×1万個=60万円であり、これがあと何%減ったら営業利益が48千円減るのか、という考え方をすれば、48千円÷60万円=8% と簡単に計算できる。

このときのX社の営業利益は、
(@200円−@20円)×1万個×0.92−1,500千円=156千円 となり、さきの300千円に比べて④144千円減少している。

⑤X社とY社のどちらがすすんで多額の広告宣伝費を投じるか

X社の経営レバレッジ係数は、貢献利益180万円÷営業利益30万円=6
Y社の経営レバレッジ係数は、貢献利益60万円÷営業利益30万円=2 であり、X社の方がかなりハイリスク・ハイリターン経営をしていることが分かる。

さて、本問ではハイリスク・ハイリターン経営とローリスク・ローリターン経営の企業のどちらがすすんで多額の広告宣伝費を投じるか?と問うている。

はっきりいって愚問である。なぜなら、広告宣伝費を投じる理由は企業によってさまざまであり、そこに経営レバレッジ係数との因果関係を見出すのは、基本的には単なるこじつけだからである。

実務ケースを想定してみよう。経営レバレッジ係数の高い企業とは具体的にどのような企業であろうか。固定費が大きく、貢献利益率が高い企業である。ざっくりではあるが、航空会社などまさに該当する。あと最近ではゲーム開発会社も該当するだろう。ゲームの貢献利益率が90%を超えるのは当たり前だ。しかし初期投資となる開発費(固定費)は莫大だ。こういう企業は好況になったり一発当たるとすごく儲かる。いわゆるレバレッジが効くのだ。しかし不況に弱い。近年、急激に業績を落としているゲーム会社や破綻した航空会社があるのもその証左だ。

では、逆に経営レバレッジ係数の低い企業とは具体的にどのような企業であろうか。これもざっくりではあるが、典型的なのは問屋だ。大きな初期投資はいらない。せいぜい倉庫を借りるくらいだ。商品を右から左に流すのが仕事なので、貢献利益率は決して高くない。こういった企業は不況に強いが、好況になったからといって爆発的に儲かるわけでもない。

さて、ここまで見てきて、X社は前者つまりゲーム会社であり、Y社は後者つまり問屋だとして、どちらが多額の広告費を投じるインセンティブがあるだろう。

私は、これはX社であると答えた。ただ、そもそも先にも言ったがそんなことは企業ごとの事情によるところの方が経営レバレッジ係数によるところよりもはるかに大きく、あえてて言えばX社だろうくらいの理由だ。

さて、各大手スクールの解答速報を見るとY社という見解で足並みが揃っているようだ。まあ、これはみなお互いを見ながら合わせてくるので、何ともいえないが、正直、残念だ。

多分だが、経営レバレッジ係数がどうしたということは関係なく、単に文章の流れ、すなわち前段の「貢献利益率が高いX社の場合、営業利益を増加させるためにはY社ほど販売量を増やす必要はないのである。このことから、X社とY社を比較し⑤の方が、すすんで多額の広告宣伝費を投じ…」という文脈からY社と解答しているものと思われる。

そうだとするなら、これはもはや簿記でも管理会計でもなく、単なる国語の問題だ。齟齬といったのはこのことである。

なお、⑥のハイリスク・ハイリターン型がX社であることは経営レバレッジ係数から明白であり、⑥がX社のリスクが「高い」というのは異論の無いところだろう。

147回日商簿記1級・詳細解説【原価計算編】” に対して1件のコメントがあります。

  1. TG より:

    先生こんにちは。
    147回試験、14-17-18-23の72点で合格していました。

    6月に2級に落ちてからどうせなら1級を目指そうと思い勉強をしていくなかで中々理解できずに困っていたところ、先生のブログを発見しました。
    全ての記事の全てのコメントを腹落ちして理解できるよう、試験前日まで何周も繰り返し読みました。

    自己採点は60点ちょっとだったので全然期待していませんでしたが、ギリギリ合格していて驚きました。(東京会場の合格率は5.6%だったようです)

    全て先生のおかげです。
    本当にありがとうございました!

    1. pro-boki より:

      おめでとうございます。読者の方から合格者が出たこと、とても嬉しいです。
      ここ10年くらいを振り返ってもこれほど合格が難しかった回も無かったと思います。
      そんな中での合格、本当に素晴らしいです。
      TGさんのこれからの活躍をお祈り申し上げます。

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