工業簿記の本質基礎講座・第4回(部門別計算2)

部門別計算を基礎から学んで本質をつかもう その2

部門別計算のもう一つの目的

前の記事で、部門別計算は製品原価を正確に計算するために行っているということは分かってもらえたと思う。実は部門別計算にはもう1つ大切な役割がある。それは、原価管理だ。原価管理っていうと標準原価計算を思い浮かべる人が多いと思う。そのとおりだ。その原価管理だ。無駄なコストを削減すること、そのために部門別計算を行っている。

なぜ部門別計算が原価管理につながるのか。ここに原価管理の一つの本質がある。それは、結局いくら差異が算定できてもそれが人と結びつかないと、結局は改善されないということだ。「予算より10万円多いですよ!」とだけ言っても、みんな「へぇ。そうなんだ。残念だねぇ。」ってな具合でみんな自分のこととは思わない。それが「◯◯部門は予算を10万円オーバーしていますよ」と言われれば◯◯部門の部門長の面目丸つぶれだ。「こりゃいかん、なんとかせねば」となる。

だから、部門別計算と原価管理は密接な関係があるんだ。つまり、難しく言えば「部門別計算を採用すると、原価を責任区分ごとに把握することができて、各部門の管理者が原価責任をどれだけ果たしているかが明らかになってしまう」のだ。まず、この前提を知っておこう。

製造部門費の予定配賦

原価管理を行うためには、あらかじめ各部門に予算が設定されていないといけない。つまり、◯◯部門は1カ月に使えるお金はこれだけですからね!という金額を設定しておくわけだ。それに対して実際にはこれだけ使ってしまった。◯◯円オーバーだ!みたいな計算をするということ。

さて、ここで問題が生じる。予算を設定するといったって、例えば製造部門(製品を直接製造加工している部門)にしてみれば「そんなの作る個数によっていくら掛かるかなんて分からんがな」ということになる。そりゃそうだ。そこで「1個製造するたびにいくら」とか「1時間加工するたびにいくら」みたいに決めておこうということになる。これが製造部門費の予定配賦率だ。

例えば第1製造部門の予定配賦率は加工時間1時間あたり2,000円だとしよう。製品Xは、1個あたり1時間で作れる。今月は1,000個作った。ということは、1,000時間掛かったはずだ。1時間2,000円だから@2,000円×1,000時間=200万円が第1製造部門の予算だ。

でも、実際に第1製造部門の人件費やら水道光熱費やらを集計したら210万円掛かったとする。おいおい、第1製造部長さん、予算オーバーですよ、ボーナス減らしますよと、社長に突っ込まれると、そんな感じだ。

2級で学習するのはここまでだ。まずは、ここまでの全体の概要を完全に把握して欲しい。1級は、これらの完全な理解の上に乗っかるものだ。

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1級の世界をちょっとのぞいてみよう(補助部門費の配賦)

1級になると2つの論点で、より深く部門別計算を学習する。1つは、前の記事でも学習した補助部門費の配賦法のバリエーションが増えるのだ。

  • 2級で学習する補助部門費の配賦法
    直接配賦法
    簡便な相互配賦法(1回のみ相互配賦してあとは直接配賦)
  • 1級で学習する補助部門費の配賦法
    階梯式配賦法
    連続配賦法による相互配賦法
    連立方程式による相互配賦法

前の記事でも紹介したとおり、補助部門同士がサービスを提供しあっていると、補助部門費は小さくなるものの、いつまでたってもゼロにはならず、配賦計算が終わらない。それを補助部門費が十分小さくなるまで繰り返し行って(こんなもんでいいか、まあゼロとみなせるだろうくらい)配賦計算を行うのが、「連続配賦法による相互配賦法」だ。表計算ソフト(エクセルとか)を使うと簡単に出来る。1行だけ計算式を書いて、あとは、100行くらいコピーすると一瞬で計算できちゃう。なかなか便利だ。手計算だったら大変だろうけど。

それをさらに進化させたのが連立方程式による相互配賦法だ。これは、連続配賦法を無限にやったら最終的に配賦額はいくらになるのかを連立方程式によって解いてしまおうというものだ。試験にもたまに出る。まあ、数学チックなので苦手意識のある人には難しく感じる論点かもしれない。

1級の世界をちょっとのぞいてみよう(予定配賦)

1級でより深く学習するもう1つの論点は予定配賦だ。2級では製造部門の予定配賦率しか計算しなかったけれど、1級になると補助部門においても予算を決めて予定配賦率を計算することになる。そして、その補助部門の予算の決め方というのが、さらに複雑になる。変動費と固定費に分けて予算管理をするのだ。単一基準配賦と複数基準配賦という。このあたりは、1級講座でいずれ執筆しようと思っている。

続きはこちら

工業簿記の本質基礎講座・第5回(標準原価計算1)


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工業簿記の本質基礎講座・第4回(部門別計算2)” に対して1件のコメントがあります。

  1. ブレイク より:

    だんだんと動いていなかった頭が動き始めました。
    ただ、計算すればいいんでしょ状態だったから、頭がほぐれてきましたよ。感謝してます。

    予定配賦は、製造部門で差異を把握するのか、仕掛品勘定には予定配賦率を記入するから、製造間接費勘定で差異を把握するのかとか。
    結構いろいろな論点がありますね。

    1. pro-boki より:

      >だんだんと動いていなかった頭が動き始めました。ただ、計算すればいいんでしょ状態だったから、頭がほぐれてきましたよ。

      いいですねぇ。その調子です!

      >予定配賦は、製造部門で差異を把握するのか、仕掛品勘定には予定配賦率を記入するから、製造間接費勘定で差異を把握するのかとか。結構いろいろな論点がありますね。

      なるほど。このあたりも記事にしたいですね。

  2. 佐藤公一 より:

    部門別計算の第3回目以降はいつ頃になるでしょうか?特に複数基準配賦法がどうも馴染めません。連立計算式法も理屈はわかりますが、根本的に理解できていないと思います。よろしくお願いいたします。

  3. pro-boki より:

    返信が遅くなり申し訳ありません。

    本シリーズ「工業簿記の本質基礎講座」は、2級論点の本質を解説し、基礎力をしっかりつけて頂くことを目的にしています。
    ご要望の複数基準配賦法や相互配賦法(連立方程式法)は、1級論点、中でも応用論点ですので、このシリーズとして第3回目を執筆する予定はありません。ご了承下さい。

    まだまだ執筆した論点は山ほどあるのですが、現在、物理的に執筆時間が取れず、あまり記事を投稿できないでいます。ご訪問頂いている方には申し訳なく思っています。

    10月中旬以降には、時間が取れそうで、その頃から執筆を再開したいと思っています。申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

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