工業簿記の本質基礎講座・第11回(個別原価計算と仕訳)

2級の個別原価計算は1級の土台

日商簿記2級での工業簿記、特に問4の中心テーマは個別原価計算だ。計算問題や財務諸表(製造原価報告書など)作成問題、さらには仕訳問題などがよく出題される。特に、仕訳問題は、ある程度パターン化されており、せいぜい数十種類しかない。だから、あまり意味を理解していなくても、覚えてしまえば何とかなったりする。

2級合格を最終目標にしているのなら、それでもいいと思う。でも、もし1級とか、その先の公認会計士などを目指すなら、是非、この2級の個別原価計算の仕訳をしっかり押さえてほしい。ここは工業簿記の土台となる部分だからだ。

1級になると、個別原価計算は、非常に細かくなる。例えば、材料副費は内部副費と外部副費に分離した処理を求められるし、労務費だって残業代の処理が必要になる。仕損費の計算にしても、直接経費処理と間接経費処理が登場するなど、とにかく細かい。

だから、1級は覚えることがたくさんあるので、どうしてもそちらに目が行きがちだ。でも、実は、1級の個別原価計算を不得意にしている人は、たいてい2級レベルの仕訳問題があまりよく分かっていない。1級の論点の多さにやられちゃっているように見えて、本当は、2級の土台が出来ていないのだ。

今の実力を確認しよう

いや、流石に2級レベルの工簿だ大丈夫だよ、という人、是非、次の問題を解いてみて欲しい。オリジナルで作成した個別原価計算の仕訳問題だ。

論点は、すべて2級の範囲内で作成している。1級の知識は必要ない。でも結構難しいと思う。1級の個別原価計算が苦手という人は、まず、この2級の仕訳問題がしっかり解けるかどうかを確認してほしい。

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設例

下記の一連の取引について仕訳しなさい。勘定科目は次の中から最も適当と思われるものを選ぶこと。なお、当工場では、間接材料費、間接労務費、間接経費に該当する費用は、当該勘定を経由して製造間接費に振り替えている。

原料費 材料内部副費 材料内部副費差異 補助材料費
工場消耗品 賃金・給料 賃率差異 減価償却累計額
間接材料費 間接労務費 間接経費 製造間接費
予算差異 操業度差異 仕掛品 製品
当座預金 現金 買掛金 売掛金
売上 売上原価    

問題

  1. 当月、原料7,500㎏(購入代価4,000,000円)を掛けで購入した。当社は、購入代価に引取費用と材料内部副費予定配賦額(購入代価の5%)を加えて購入原価としている。なお、引取費用は購入時に小切手を振り出して支払っており、その額は300,000円(当社負担)であった。
  2. 当月の材料内部副費の実際発生額は210,000円であったので、(1)の材料内部副費予定配賦額との差額を材料内部副費差異勘定に振り替える。
  3. 工場消耗品260,000円および、補助材料1,540,000円を掛けで購入した。なお、補助材料の月初有高は150,000円、月末有高は190,000円であり、工場消耗品ならびに補助材料消費分を間接材料費勘定に振り替える。
  4. 当月払い出した原料は、製造指図書No.301向け1,950kg、製造指図書No.302向け3,300kg、製造指図書No.303向け1,600kgであった。原材料の計算には先入先出法にもとづく実際払出価格を用いている。なお、製造指図書No.301向けの消費が先であり、その後にNo.302、No.303の順で消費された。 原料の月初在庫は550kg(363,000円)、月末在庫は1,100kgであり、棚卸減耗が100kgは当月購入分から生じたものとする。
  5. 当月の直接工の労務費の実際消費額を計上する。なお、直接工の実際直接作業時間は、製造指図書No.301向けが800時間、No.302向けが700時間、No.303向けが700時間、すべての製造指図書に共通の実際間接作業時間は250時間、手待時間が50時間、休憩時間が80時間であった。当工場の直接工の予定賃率は1時間当たり1,200円である。
  6. 直接工の賃率差異を計上した。なお、前月未払高は900,000円、当月支払高3,200,000円、当月未払高は850,000円であった。
  7. 当月の間接工の労務費の実際消費額を計上する。前月未払高は190,000円、当月支払高1,000,000円、当月未払高は180,000円であった。
  8. 当月発生の減価償却費は500,000円、その他上記で判明している以外の間接経費は900,000円であり現金で支払った。
  9. 間接材料費、間接労務費、間接経費を製造間接費に振り替えた。
  10. 直接作業時間を配賦基準として製造間接費を各製造指図書に予定配賦した。なお、年間の製造間接費予算は、54,000,000円(うち、固定製造間接費予算は24,300,000円)、年間の予定総直接作業時間は27,000時間である。
  11. 当月の製造間接費の実際発生額は上に記載したものが全てである。製造間接費予定配賦額との差額を予算差異勘定と操業度差異勘定に振り替える。なお、製造間接費は公式法変動予算によって設定している。
  12. 製造指図書No.301と製造指図書No.302が完成した。ただし、当月の製造費用(直接材料費、直接労務費および製造間接費配賦額)は、上に記載したものが全てであり、製造指図書No.301には先月の製造費用2,017,000円が繰り越されてきている。
  13. 月初製品在庫はNo.203(製造原価4,000,000円)のみである。当月、No.203とNo.301を掛けにて顧客に引き渡した。販売価格はNo.203が6,000,000円、No.301が8,000,000円である。売上を計上するとともに当該製品を売上原価に振り替える。 

解答  

解答と解説(クリックで開きます)
  借 方 科 目 金  額 貸 方 科 目 金  額
1 原料費   4,500,000 買掛金 4,000,000
    材料内部副費 200,000
    当座預金 300,000
2 材料内部副費差異 10,000 材料内部副費 10,000
3 工場消耗品 260,000 買掛金 1,800,000
補助材料費 1,540,000    
間接材料費 1,760,000 工場消耗品 260,000
    補助材料費 1,500,000
4 仕掛品 4,143,000 原料費 4,203,000
間接経費 60,000    
5 仕掛品 2,640,000 賃金・給料 3,000,000
間接労務費 360,000    
6 賃率差異 150,000 賃金・給料 150,000
7 間接労務費 990,000 賃金・給料 990,000
8 間接経費 1,400,000 減価償却累計額 500,000
    現金 900,000
9 製造間接費 4,570,000 間接材料費 1,760,000
    間接労務費 1,350,000
    間接経費 1,460,000
10 仕掛品 4,400,000 製造間接費 4,400,000
11 予算差異 125,000 製造間接費 170,000
操業度差異 45,000    
12 製品 10,000,000 仕掛品 10,000,000
13 売掛金 14,000,000 売上 14,000,000
売上原価 9,780,000 製品 9,780,000

解説

材料費の計算

原料
月初有高 @660円×550kg
=363,000円
当月消費額
仕掛品勘定へ
 1,203,000円*1
1,980,000円*2
960,000円*3
当月購入 @600円×7,500kg
=4,500,000円
月末有高  @600円×1,100kg
=660,000円 
棚卸減耗費 @600円×100kg
=60,000円

*1. No.301 @660円×550kg+@600円×1,400kg=1,203,000円
*2. No.302 @600円×3,300kg=1,980,000円
*3. No.303 @600円×1,600kg=960,000円

材料内部副費
諸口 210,000円 原料勘定へ 4,000,000円×5%
=200,000円
    材料内部副費差異勘定へ 貸借差額より
10,000円

 

工場消耗品
買掛金 260,000円 間接材料費勘定へ 260,000円

 

補助材料費
月初在庫 150,000円 間接材料費勘定へ 貸借差額より
1,500,000円
買掛金 1,540,000円 月末在庫  190,000円 

 

間接材料費
工場消耗品
補助材料費
260,000円
1,500,000円
製造間接費勘定へ 1,760,000円

労務費・経費の計算

賃金給料(直越工)
当月支払 3,200,000円  前月未払 900,000円
当月消費
仕掛品勘定へ
960,000円*1
840,000円*2
840,000円*3
当月消費
間接労務費勘定へ
360,000円*4
当月未払 850,000円  賃率差異 貸借差額より
150,000円 

*1. No.301 @1,200円×800時間=960,000円
*2. No.302 @1,200円×700時間=840,000円
*3. No.303 @1,200円×700時間=840,000円
*4. 共通 @1,200円×300時間=360,000円

賃金給料(間接工)
当月支払 1,000,000円 前月未払 190,000円
当月未払 180,000円 当月消費
間接労務費勘定へ
貸借差額より
990,000円

 

間接労務費
賃金給料(直接工)
賃金給料(間接工)
360,000円
990,000円
製造間接費勘定へ 1,350,000円

 

間接経費
原料(棚卸減耗費)
減価償却累計額
現金
60,000円
500,000円
900,000円
製造間接費勘定へ 1,460,000円

製造間接費の計算

製造間接費
間接材料費 1,760,000円 仕掛品勘定へ 1,600,000円*1
1,400,000円*2
1,400,000円*3
間接労務費 1,350,000円  予算差異 125,000円 *4
間接経費 1,460,000円 操業度差異  45,000円 *5

*1. No.301 @2,000円×800時間=1,600,000円
*2. No.302 @2,000円×700時間=1,400,000円
*3. No.303 @2,000円×700時間=1,400,000円
*4. 予算差異の求め方
 配賦率:54,000,000円÷27,000時間=@2,000円
 固定費率:24,300,000円÷27,000時間=@900円
 変動費率:@2,000円-@900円=@1,100円
 実際時間:800時間+700時間+700時間=2,200時間
 予算許容額:@1,100円×2,200時間+24,300,000円÷12ヵ月=4,445,000円
 実際発生額:1,760,000円+1,350,000円+1,460,000円=4,570,000円
 予算差異:4,445,000円-4,570,000円=△125,000円
*5. 操業度差異の求め方
 @900円×(2,200時間-27,000時間÷12ヵ月)=△45,000円

製品別計算と売上の計上

  No.301 No.302 No.303 合計
月初仕掛品 2,017,000     2,017,000
原料費 1,203,000 1,980,000 960,000 4,143,000
直接労務費 960,000 840,000 840,000 2,640,000
製造間接費 1,600,000 1,400,000 1,400,000 4,400,000
合計 5,780,000 4,220,000 3,200,000  
  完成
引渡済
完成 仕掛中  

 

仕掛品勘定
月初仕掛品 No.301
2,017,000円
完成 No.301
5,780,000円
No.302
4,220,000円
当月投入
 原料費
 直接労務費
 製造間接費
4,143,000円
2,640,000円
4,400,000円
月末仕掛品 No.303
3,200,000円

 

製品勘定
月初製品 No.203
4,000,000円
売上原価 No.203
4,000,000円
No.301
5,780,000円
当月完成 No.301
5,780,000円
No.302
4,220,000円
月末製品 No.302
4,220,000円

 

損益勘定
売上原価 9,780,000円 売上 14,000,000円

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