工業簿記の本質基礎講座・第9回(総合原価計算3)

総合原価計算の仕損・減損の総まとめ

前回出題した問題について、いくつかご質問などを頂いた。感じるところがあったので、記事にしたいと思う。

1つ目は、時間が掛かりすぎることだ。正直なところ、20分以内にできてほしいところだ。多分、30分以上掛かるということは、その都度、どう計算すべきかを考えているからだと思う。例えば非度外視法の問題で、「先入先出法・一定点発生」「先入先出法・平均的発生」「平均法・一定点発生」「平均法・平均的発生」の4パターンを出題しているが、相違点は仕損費の配賦額だけで、他の計算は全て一緒だ。だから1問目は7〜8分くらい掛かるとしても、残りは1〜2分で出来ていいはずだ。それを、それぞれ別々にどうするんだっけ?と考えるから時間が掛かるのではないかと思う。非度外視法の計算手順をまとめたのでしっかり確認してほしい。

2つ目は、計算手順に無駄があることだ。本問は、月末仕掛品の額が分かれば、あとは差し引きで完成品原価も計算できる。ということは、月末仕掛品に配賦される仕損費だけ計算すればいいのに、全部計算してしまう。このように計算する必要のない要素まで計算してしまうと時間も掛かるし、ミスも誘発されやすい。いいことは何もない。このあたりの計算テクニックも紹介するので確認してほしい。

3つ目は、金額の算定方法だけに注力してしまい、帳簿上でどのように処理しているかを意識していないのかな、という質問があったことだ。実は、これ、私が受験生時代にも同じような記憶があって、金額を問われると答えられるのだけど、勘定記入が苦手、という覚えがある。このあたりも記事にしたので確認してほしい。

非度外視法の計算手順総まとめ

非度外視法による計算手順は次のルールにもとづく。考えなければいけない要素がいくつもあって混乱するかもしれないけれど、がんばってほしい。これを本試験で、間違えると致命傷を負い兼ね無いのでここだけはしっかりマスターしてほしい。

Step.1 まずは仕損費を次の手順で計算する

  1. 仕損品原価を算定する
  2. 仕損品原価から仕損品評価額を控除して仕損費を算定する

Step.2 次にStep.1で計算した仕損費の負担先を決定する

  • 仕損の発生形態が平均的発生なら、無条件に両者負担
  • 仕損の発生形態が一定点発生の場合「仕損発生点<月末仕掛品」なら両者負担、それ以外は完成品のみ負担

Step.3 上記Step.2で両者負担のときは、仕損費の負担割合を決定する

  • 仕損の発生形態が一定点発生なら物量を基準にする
  • 仕損の発生形態が平均的発生なら完成品換算量を基準にする
  • 原価配分方法が先入先出法なら、(完成品−月初):月末 で按分する
  • 原価配分方法が平均法なら、完成品:月末 で按分する

非度外視法の計算手順のワンポイントアドバイス

まず、前提として上記手順は完全にマスターしてほしい。特に間違いやすいのが次の2点だ。よくよく注意してほしい。

  1. 両者負担で先入先出法のとき、完成品から月初を引くのを忘れる
  2. 両者負担で平均的発生なのに、物量基準で計算してしまう

本来であれば、なぜ、こう計算するのかの記事を書いて、それを読んでもらって理解してもらうのが一番いいのだが、その記事はまたいずれ書こうと思う。本試験3日前の今、そんなことをしている時間的余裕もないと思うので。

計算手順について

総合原価計算の完成品原価算定の鉄則は、貸借差額で計算することだ。これをしっかりマスターしていないと、無駄な計算をするばかりか、ミスも誘引されてしまう。

ちょっと話は変わるけど商会の売上原価の算定を思い出してほしい。あれも直接的に売上原価がいくらかを計算するのではなくて、差し引きで計算するでしょ。売上原価=期首+当期仕入−期末だよね。計算が必要なのは、期末在庫であって、売上原価は差し引きで計算。これと同じ考え方だ。

さらに余談だけど、商会の売価還元法ってあるでしょ。勘違いしている人多いけど、あれって売上原価の算定方法じゃないからね。売価還元法は、期末の棚卸資産の算定方法だからね。繰り返しになるけど、あくまでも算定すべきは期末在庫であって、売上原価は差し引きね。

さて、そのうえでの話。前回の問題を多くの人は、次のように解いたのだろうだろう。
まずボックス図を書く。続いて、月末仕掛品原価と完成品原価と仕損品原価を計算する。仕損品原価から評価額を引いて仕損費を出す。で、仕損品を完成品と月末仕掛品に按分して、それぞれ配賦する。

無駄だよ。私の計算手順は次のとおりだ。
まずボックス図を書く。続いて、月末仕掛品原価と仕損品原価を計算する(完成品原価は計算しない)。仕損品原価から評価額を引いて仕損費を出す。で、仕損品を月末仕掛品に配賦する(完成品への配賦額は計算しない)。残りは差し引きで計算する。

完成品原価に関する計算は一切していないのだ。あくまでも最後に差し引きで出す。真似してみてほしい。速いしミスしにくいから。

金額計算だけではなくて勘定記入を意識する

問題を再掲する。

問題

仕損費を非度外視法、原価配分が先入先出法である場合の月末仕掛品原価と完成品原価を求めなさい。なお、仕損は一定点で発生し、仕損は全て当月投入分から発生したとみなす。また、仕損品には1個あたり401.4円の評価額がある。

生産データ

月初仕掛品 300個 (40%)
当月投入 1,300個
合計 1,600個
正常仕損品 100個 (50%)
月末仕掛品 500個 (60%)
完成品 1,000個

原価データ

  月初仕掛品 当月投入 合計
材料費 230,400円 936,000円 1,166,400円
加工費 223,740円 2,177,100円 2,400,840円
合計 454,140円 3,113,100円 3,567,240円

まず、先入先出法から、月末仕掛品原価と仕損品原価を算定する。
月末仕掛品:936,000円÷1,300×500+2,177,100円÷1,230×300=891,000円
仕損品原価:936,000円÷1,300×100+2,177,100円÷1,230×50=160,500円

ここまでを仕掛品勘定で表すと次のようになる。
(以下、?の部分は計算できるが、計算する必要がないということ)

仕掛品勘定

月初

454,140円 完成品
当月 3,113,100円
仕損品原価 160,500円
月末 891,000円

次に、仕損品に評価額があるので、それを差し引く。
仕損費:160,500円−仕損品評価額40,140円=120,360円
ここまでを仕掛品勘定で表すと次のようになる。

仕掛品勘定

月初

454,140円 完成品
当月   3,113,100円  
仕損費 120,360円
仕損品評価額 40,140円
月末 891,000円

ここで、この仕損費120,360円を完成品と月末仕掛品に按分し配賦する。
月末仕掛品への配賦額は次のとおり。
120,360円÷(1,000−300+500)×500=50,150円
ここまでを仕掛品勘定で表すと次のようになる。

仕掛品勘定

月初

454,140円 完成品
当月    3,113,100円   
完成品が負担すべき仕損費 120,360円−50,150円=?
仕損品評価額 40,140円
月末 891,000円+50,150円=
941,150円

残りの仕損費はどうせ完成品が負担するので、いくら配賦するかは計算する必要がない。
つまり、完成品は、次の式で計算できる。
月初454,140円+当月3,113,100円−月末941,150円−仕損品評価額40,140円=2,585,950円
以上を仕掛品勘定で表すと次のようになる。

仕掛品勘定

月初

454,140円 完成品 2,585,950円
当月    3,113,100円   
完成品が負担すべき仕損費
仕損品評価額 40,140円
月末 941,150円

もちろん本番では、以上のプロセスをいちいち下書きに書く必要はない。ただ、勘定が頭の中にあるとミスをしにくいので、いつもそれを意識して解くのはお勧めだ。


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工業簿記の本質基礎講座・第9回(総合原価計算3)” に対して1件のコメントがあります。

  1. きゃろる より:

    詳しい解説ありがとうございます。
    以前に先生が同じような説明をされているの思い出し、
    上記解説と合わせて、工原の2回目の授業をみて、わからないといったん戻して、
    と、かなり時間をかけて観たので、内容は理解できました。
    仕損の処理は最後にもう一度見直そうと思っていた時に、
    先生に取り上げて頂き大変助かりました。
    ありがとうございます。
    まだあと2日あるので、まだまだ頑張ります。

    1. pro-boki より:

      きゃろるさんへ

      今回、本試験ラスト1週間前になったら、このブログを普段御覧頂いているみなさまに工業簿記の次の論点を確認用におすすめしようと思っていました。
      ・工業簿記全体の勘定連絡
      ・総合原価計算の仕損減損
      ・費目別計算の再確認
      ・標準原価計算の基本問題

      もちろん、違う論点が出るかもしれません。でもですね、繰り返しますが、題意がつかめないような難問が出来ることより、こういう基本問題を落とさないことの方がはるかに大事です。
      あとまだ2日あります。最後の追い込みがんばりましょう。

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