工業簿記の本質基礎講座・第3回(部門別計算1)

部門別計算を基礎から学んで本質をつかもう

そもそも部門別計算は製造間接費の配賦方法の計算

部門別計算は、簿記2級で学習する論点だ。直接配賦法と簡便な相互配賦法を学習するはずだ。この2つの配賦法の計算方法ばかりに目がいってしまって、実は、そもそも何の計算をしているのか分からない、という人もいることだろう。

当たり前すぎてあまり話題にもならないけど、部門別計算は、製造間接費の配賦方法の計算のことだ。まず前提として、そこを押さえていないとマズイ。実は部門別計算って何の計算しているのか分からない・・・思い当たる節があるならこの機会にしっかりマスターしよう。

製造間接費の配賦をシンプルな例で考えてみよう

たとえば、製品Aを100個、製品Bを200個作って製造間接費が600万円掛かったとしよう。じゃあ、この600万円を製品AとBにそれぞれいくら配賦すればいい?というのが、この計算がテーマだ。

  • 製造間接費は600万円
  • 製品Aは100個、製品Bは200個

シンプルに考えれば、600万円を100個:200個で按分すればいいだろう。つまり、製品Aは200万円、製品Bは400万円だ。しかし、これは「製品AとBが同じような製品だ」ということが前提の計算だ。

実は製品AはBに比べて倍の手間が掛かる製品だとしたらどうだろう。例えばAは1個あたり2時間、Bは1時間の直接作業時間がかかるとする。つまり、Aは延べ200時間(=2時間×100個)、Bも述べ200時間(=1時間×200個)かかっている。

  • 製造間接費は600万円
  • 製品Aは1個2時間掛かかってそれが100個(200時間)
  • 製品Bは1個1時間掛かかってそれが200個(200時間)

この場合は、600万円を200時間:200時間で按分した方が正確だ、という話になる。つまり、製品Aは300万円、製品Bは300万円だ。しかし、これは「製造間接費は作業時間に比例して発生している」ということが前提の計算だ。

そもそも製造間接費は、製品に直接紐付けできない費用(だから間接費という)の合算だ。それを製品に配賦するのだから、「製造間接費は、いったい何に比例しているのか」という点に注目することが必要だ。

一般的なのが直接作業時間だ。まあ妥当だろう。しかし業種や業態によっては製造間接費が消費した直接材料に比例して発生していることが明らかな場合もある。それなら直接材料費を基準に配賦した方が正確だろう。だから、製造間接費は直接作業時間で配賦するものだと決めて掛かるのはよくない。業種業態によって色々な配賦基準があるというのは知っておこう。(日商の本試験では90%以上が直接作業時間基準だけど)

 カエルはい。

もっと正確に配賦する方法はないものか

この製造間接費600万円の内訳を調べてみたところ、400万円は加工機械の減価償却費で、残り200万円は水道光熱費とか間接労務費であることが分かったとする。そして、この工場には機械加工部と組立加工部という2つの部門があり、機械加工部では500万円(減価償却費400万円とその他もろもろで100万円)、組立加工部では100万円を使っていたとする。

そして、製品Aの作業時間の2割は機械加工部で加工され、残り8割が組立加工部で加工され、製品Bは逆で、作業時間の8割は機械加工部で加工され、残り2割が組立加工部で加工されたとする。

  • 製造間接費は600万円(機械加工部門500万円、組立加工部門100万円)
  • 製品Aは機械加工部門の2割の時間を使い、組立加工部の8割の時間を使っている。
  • 製品Bは機械加工部門の8割の時間を使い、組立加工部の2割の時間を使っている。

この場合は、製品Aには、機械加工部500万円の20%と、組立加工部100万円の80%を配賦し、製品Bには、機械加工部500万円の80%と、組立加工部100万円の20%を配賦するのが筋ってもんだろう。つまり、製品Aは180万円、製品Bは420万円だ。これがまさに部門別計算だ。いままでの配賦計算の中でもっとも正確だろう。

いや本試験はもっと複雑なんですけど・・・

2級といえども本試験では、こんなレベルの問題は出題されない。当たり前すぎるし簡単すぎるからだ。でも、だからこそ大事なんだ。まず部門別計算とは何かという基本を押さえよう。その上で、もう少し複雑なケースを考えていこう。

工場には様々な部門がある。機械加工部門と組立加工部門だけということはない。事務処理を行う部門もあるだろうし、機械加工部門や組立加工部門などのメインで製造を行う部門に対してサポートをする部門もある。機械を修繕する部門や電気設備の維持管理をする部門(電設部なんていう)なんかだ。

製造間接費は、こういった様々な部門で発生する費用の合算だ。であれば、これら様々な部門で発生した費用を製品に配賦すればいいんじゃないか、そうすれば正確に配賦出来るんじゃないか、ということになる。

ここで問題がおきる。何だと思う?
それは、機械加工部門や組立加工部門といった直接的に製品を作っている部門は、配賦基準が明確(直接作業時間や機械作業時間など)だからいいけど、例えば事務部門なんかは、直接製品には携わっていないので、いくらを製品Aに配賦すべきか、とか、決めようが無いわけだ。つまり、配賦のしようがないわけ。

そこで、部門を2種類に分けることにする。

  • 直接製品の製造に携わっている部門(製造部門
  • 直接製品の製造には携わっていない部門(補助部門

前者を製造部門といって、後者を補助部門という。
で、補助部門は製造部門とはお付き合いがあるけど、製品には携わっていないわけだ。だったら、補助部門の費用は、いったん製造部門にあずけてしまったらどうでしょう?という考え方になる。これが補助部門費の配賦だ。

補助部門費の配賦

そこで、製造部門がどれくらい補助部門のお世話になっているか、その具合によって補助部門の費用を製造部門に配賦するわけだけど、またここで問題が生じる。なんだろう・・・
それは、補助部門が製造部門に対してのみサービスを提供しているなら問題が無いんだけど、もし補助部門が別の補助部門にサービスを提供していたら、どう計算すればいいのか、という問題だ。

例えば、製造部門として機械加工部門(2,000万円)と組立加工部門(1,000万円)、補助部門として修繕部門(180万円)と電力部門(240万円)があるとする。

  • 配賦前
    機械加工部門(2,000万円)
    組立加工部門(1,000万円)
    修繕部門(180万円)
    電力部門(300万円)

そして修繕部門(180万円)は、機械加工部門と組立加工部門と電力部門に平等にサービスを提供しているとする。同じく電力部門(300万円)も機械加工部門と組立加工部門と修繕部門に平等にサービスを提供しているとする。さて、補助部門費を配賦すると、各部門の持っている費用は、いくらになるだろう。

  • まずは修繕部門費の配賦後
    機械加工部門(2,000万円+60万円=2,060万円)
    組立加工部門(1,000万円+60万円=1,060万円)
    修繕部門(0円)
    電力部門(300万円+60万円=360万円)
  • 続いて電力部門費の配賦後
    機械加工部門(2,060万円+120万円=2,180万円)
    組立加工部門(1,060万円+120万円=1,180万円)
    修繕部門(0円+120万円=120万円)
    電力部門(0円)

気付いただろうか。修繕部門の費用は、他の部門に配賦するので、いったんはゼロになる。だけど、その直後に電力部門から配賦されちゃうのでまた120万円の負担を持つことになる。なので、この120万円をまた他の部門に40万円ずつ配賦しなければいけない。

  • 続いて修繕部門費の配賦後
    機械加工部門(2,180万円+40万円=2,280万円)
    組立加工部門(1,180万円+40万円=1,280万円)
    修繕部門(0円)
    電力部門(40万円)

そうすると修繕部門の費用は再びゼロになるけれど、今度は、せっかく一端ゼロになった電力部門に費用が配賦されてしまう。ね、キリがないのよ。これって。つまり補助部門が他の補助部門にサービスを提供していると、補助部門費の配賦って永久に終わらないわけ。いつまでも補助部門に費用が残り続ける。

そこで、何かしら仮定が必要になる。

 カエル なるほど。それで?

ここでようやく2級の直接配賦法と相互配賦法の話になる

ここまできて、ようやく、2級で学習する直接配賦法と相互配賦法の話になるんだ。つまり、補助部門が他の補助部門にサービスを提供していると、補助部門費の配賦ってキリがないから何か仮定をおこうということになる。その1つが、補助部門が他の補助部門にサービスしていてもそれは一切無視ね、という仮定。もう1つが他の補助部門へのサービス提供を1回だけ考慮して配賦するけど、2回めは無視ね、という仮定だ。前者を直接配賦法、後者を(簡便な)相互配賦法という。

  • 他の補助部門へのサービス提供は一切無視:直接配賦法
  • 他の補助部門へのサービス提供は1回だけ考慮して2回目以降は一切無視:相互配賦法

試験に出る直接配賦法と相互配賦法は、ほんの一部分の話

部門別計算の概要は理解できただろうか。試験に出るのは、直接配賦法と相互配賦法の計算が多い。でもこれは、部門別計算の全体像から見ればほんの一部分の話だ。あくまでも補助部門費をどう配賦するか、ということにすぎない。

それ以前にそもそも、なぜ部門別計算をしているのか、という根本的な概念が大切だ。それは、正確な製品原価の計算をしたいから。これにつきる。そのために色々工夫をしているわけだ。ただ工夫をすれば工夫するほど、計算や情報の収集に掛かる手間が大変になってくる。

例えば製造数量で按分なら、超簡単。何個作ったのかだけ分かればいいのだから。それに比べて直接作業時間で按分となると、直接作業時間を測定しなければならない。少し面倒。部門別計算に至っては、どの部門がどの製品にどれくらいの労力を掛けたのかを記録しておかなければいけない。さらにどの補助部門が他の部門に対してどれくらいサービスを提供したのか、それも全て記録しておかなければならない。かなり面倒くさい。

もちろん、そこまでやった方が正確な製品原価計算は出来るんだけど、そこまで手間暇掛けて計算しても、実は、結構いい加減に計算しても、それほど原価計算の結果に相違がない、ということもよくある。そういう場合は、手を抜いた計算をすることも多い(つまり部門別計算を省略するわけだ)。

そういったことで、原価計算基準には、どちらでもいいよ(部門別計算をやっても省略してもいいよ)と書かれている。

カエル

続きはこちら

工業簿記の本質基礎講座・第4回(部門別計算2)


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工業簿記の本質基礎講座・第3回(部門別計算1)” に対して1件のコメントがあります。

  1. ブレイク より:

    富久田先生、こんばんは!
    解説、ありがとうございます。
    2級工簿論点のおかげで自発的に勉強するリハビリになりました。
    あの、10個の論点以外にもあればお願いします。

    ところで、階梯式配賦法の補助部門費の配賦基準の表の見方がよくわからないのですよ。
    何となく解けるのですが、避けている論点でもあります。
    よろしくお願いします。

    1. pro-boki より:

      >2級工簿論点のおかげで自発的に勉強するリハビリになりました。
      いいですねぇ!

      >階梯式配賦法の補助部門費の配賦基準の表の見方がよくわからないのですよ。
      了解。解説記事書きますよ。ただ、あまり見方にはこだわらないほうがいいかもしれませんよ。ちなみに私が自分で解く時は、あの表使ってないし・・・(T勘定でやってます)。

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