連結会計・一番やさしい成果連結の話

成果連結の素朴な疑問

質問掲示板に素朴な疑問を頂いた。(一部誤字や数値などを改変)

棚卸資産の未実現利益の消去仕訳の勘定科目に関する質問です。ダウンストリームで、未実現利益 50の消去は、

(借)売上原価 50(貸)商品 50

という仕訳をしますが、なぜ借方が売上原価なのかわかりません。「未実現利益を消去する」ということから考えると、

(借)売上高 50(貸)商品 50

として「売り上げを消す」というほうが正しいような気がするのですが、根本的な考え方が間違っているのでしょうか。

本題とは離れるけど、この人は伸びると思う。こういう素朴な疑問は大切だ。テキストは案外こういう本質的な疑問に答えていない。だから、受験生の多くは、よくわからないけど、まあそういうもんだろうと覚えて済ます人がほとんどだ。でも、ふと立ち止まって「なぜこう処理するの?」と、疑問を持つのはいいことだ。本当に力が付くのは、そういう時だ。

実際に数値を入れてシミュレーションしてみる

こういう疑問が生じたら、あれこれ悩むより、実際に数値を入れてシミュレーションしてみるといいと思う。それが一番腹落ちしやすい。本問は、次のようなシンプルな例で考えてみよう。

P社は、S社を設立し100%子会社とした。P社は商品に10%の利益を上乗せして、S社に売りつけた。S社は外部に全く販売しなかった。

x0年期末

P社の決算整理後T/Bは次のとおりだった。

P社
借方 金額 貸方 金額
現金 250 資本金 300
商品 50    

x1年期首

P社は現金100万円でS社を設立し発行済株式の100%を取得して完全子会社とした。

P社
借方 金額 貸方 金額
現金 150 資本金 300
商品 50    
S株 100    
S社
借方 金額 貸方 金額
現金 100 資本金 100

x1年期中

P社は保有している商品50万円を55万円でS社に現金で売り渡した。期中、S社は仕入れた商品を全く外部に販売しなかった。P社もS社に商品を販売した以外の取引を一切行っていない。

P社
借方 金額 貸方 金額
現金 205 資本金 300
売上原価 50 売上 55 
S株 100    
S社
借方 金額 貸方 金額
現金 45 資本金 100
商品 55    

x1年期末(連結決算)

さて、連結F/Sを作るわけだけど、これは連結の会計処理を行うまでもなく分かるよね。だって、取引と言ってもP社からS社に商品売っただけで外部との取引ゼロだから、グループ全体で見れば、何もしていないのと同じだ。

つまり、前期末のP社と比較して、F/Sには何の変化も生じていないはず。よって連結F/Sはx0年期末時点のP社のT/Bと同じだ。

連結F/S
借方 金額 貸方 金額
現金 250 資本金 300
商品 50    

連結の会計処理をワンステップづつ見ていく

一方で、P社とS社のx1年期末のT/Bを単純合算すると次のようになる。

P社+S社
借方 金額 貸方 金額
現金 250 資本金 400
売上原価 50 売上高 55
S株 100    
商品 55    

このT/Bに対して、連結修正仕訳をほどこして、上記の連結F/Sを作ればいいわけだ。どういった修正を加えればいいのだろうか。ワンステップづつ修正仕訳を加えて、それによって、T/Bがどのように変化するかを見ていこう。

資本連結

まず資本連結をしてみよう。
(借)資本金 100 (貸)S株 100

P社+S社・資本連結後
借方 金額 貸方 金額
現金 250 資本金 300
売上原価 50 売上高 55
商品 55    

成果連結(売上消去)

さらに売上高を全額取り消そう。
(借)売上高 55 (貸)売上原価 55…①

P社+S社
資本連結・売上消去後
借方 金額 貸方 金額
現金 250 資本金 300
商品 55 売上原価 5

成果連結(未実現利益消去)

最後に未実現利益を消去しよう。
(借)売上原価 5 (貸)商品 5…②

P社+S社
資本連結・売上消去後
未実現利益消去後
借方 金額 貸方 金額
現金 250 資本金 300
商品 50    

うまくいった!

なぜ未実現利益消去は売上原価/商品か

まず上記の成果連結を再度確認しよう。これは次の2つの仕訳からなっている。
 ①売上消去:(借)売上高 55 (貸)売上原価 55
 ②未実現利益消去:(借)売上原価 5 (貸)商品 5 

ここで①の仕訳に注目してほしい。売上高を55万円消去するのはいいとして、売上原価も55万円消してしまっている。これは本来おかしい。だって、P社にとって消去すべき売上原価は50万円のはずだからだ。残りの5万円はS社の仕入れた商品に利益として混入しているわけで、その行く末が分からないのに、売上原価として消去するのはおかしい。

もちろんS社がその商品をグループ外部に売っていれば問題ない。売上原価だ。しかしそうでないならその5万円の利益は商品に混入したままグループ内部に残ってる。となると、売上原価ではなくて、商品から5万円を控除すべきだ。そこで、その分の修正仕訳をしなければいけない。それが②の仕訳だ。

つまり、上記仕訳は、P社がS社に卸した商品が、グループ外部に売れたかどうだか分からないけど、一旦、売れたものとして全部消去して(それが①の仕訳)、だけど、実際にはグループ外部に売れていなかったから、売上原価ではなくて商品に修正したというのが②の仕訳だ。

さて、冒頭の質問の回答だ。実はこの質問は、非常に良い線をついている。

上記の①と②の仕訳は次のようにも考えられる。つまり、売上のうち確実に消去できるのは、50万円だけだから、とりあえず(借)売上高 50 (貸)売上原価 50 という仕訳をしておいて、残りの5万円は、その行く末に応じて消去仕訳を起こすという方法だ。

もし商品が全てグループ外部に売れたのなら、この5万円の利益は全て売上原価に転じるわけだから、(借)売上高 5 (貸)売上原価 5 という仕訳をすればいい。

そして、もしグループ外部に売れずS社内に残っているのなら、5万円の利益は未実現のままであり、商品に乗っているままなので、消去仕訳は次のようになる。
 未実現利益消去:(借)売上高 5 (貸)商品 5

こうすれば、質問をくださった方の望んだ回答となるわけだ。結局、未実現利益消去の仕訳を単独で考えるから分かりにくいのだ。売上消去の仕訳とセットで考えれば理解できるだろう。

最後に

連結会計の仕訳は、よく分からなくなったら、このように簡単な例を使ってシミュレーションしてみるといい。数字を触っているうちに、腹落ちするだろう。

ただ、もう本試験まで1ヶ月だ。次回の本試験を受験するなら、そろそろ実戦モードに入らないと間に合わない。

連結は、本質をつかもうと色々試行錯誤する事自体楽しいものだから、ついついハマってしまうのも分かる。だけど、それには結構な時間が取られるのも事実だ。

あと1ヶ月。本質を学ぶお楽しみはちょっとおいといて、今は、本試験でミスなくスピーディに得点するための練習をしよう。連結はパターン化されているのである程度は暗記に頼ってもいいと思う。たくさん実践演習を行おう。過去問を使うのがもっとも効果的だと思う。


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