噛み砕けば簡単!原価計算基準・全11回講義

原価計算基準

原価計算基準は読みにくい

原価計算基準を暗記しようとするのは辞めたほうがいい

昭和37年から50年間以上改訂がなされていない原価計算基準。言い回しは古臭く、一見、何を言っているのか分からない原価計算基準。

「もうしょうがない暗記するしかない」なんて思っている人はいないだろうか。ちょっと待って欲しい。多分それは無駄な努力になるだろう。意味が分からないものの暗記なんて苦痛以外の何者でもないし、なにしろ覚えてもすぐ忘れちゃう。

原価計算基準を読み解くには、その大前提を知ることが大切だ。意味さえわかればそれほど理不尽なことは言ってない。だから無理に覚えようとしなくても自然と覚えてしまう。

ここでは、原価計算基準を分かりやすく噛み砕いて解説しよう。

原価計算基準は概要部分と計算手続きの部分がある

原価計算基準は全部で5章

原価計算基準は、まず前文があって、続いて第一章から第五章まである。まずは全体をざっと眺めてみよう。

前 文 原価計算基準の設定について
第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準
第二章 実際原価の計算
第三章 標準原価の計算
第四章 原価差異の算定および分析
第五章 原価差異の会計処理

各章は細かく分かれていて全部で47個の文章がある。文字数にしてだいたい2万文字くらい。普通の文庫本が10万文字くらいなので、そこそこの量があることが分かるだろう。

一番大切なのは第一章

この中で、試験上もっとも大切なのは第一章だ。ここは、原価計算基準全体の概要が書かれている。とりあえず試験対策だけなら第一章だけでもいいくらいだ。

で、第二章から第五章までは、具体的な計算手続きが書かれている。このあたりはもうすでに1級を学習している人ならスムーズに読めるはずだ。

読みやすさ、馴染みやすさから言えば、第二章から第五章はおすすめだ。計算問題をやったあとに該当部分を探して読んでみれば、理論学習が出来るだけではなく、計算の理解も深まるので一石二鳥だろう。

一番読みにくいのも第一章

さて、試験上もっとも大切な第一章だが、これが読みにくい。第一章は次の構成になっている。

一  原価計算の目的
二  原価計算制度
三  原価の本質
四  原価の諸概念
五  非原価項目
六  原価計算の一般的基準

この中でまあ何とか理解出来るのは「一 原価計算の目的」と「五 非原価項目」だろう。あとは、一体何を言ってるんだよおいおい、レベルだ。特に「二 原価計算制度」「三 原価の本質」「四 原価の諸概念」は本気で意味不明だ。しかし、試験に出やすいのも、そこだ。なんとかしたいよね。

分からない

原価計算基準の心意気は前文に書かれている

まずは前文を噛み砕いてみる

前文はないがしろにされがちだけど、結構大事なことが書かれている。ざっくりポイントを押さえてみよう。まずは最初の一文だ。

わが国における原価計算は,従来,財務諸表を作成するに当たって真実の原価を正確に算定表示するとともに,価格計算に対して資料を提供することを主たる任務として成立し,発展してきた。

ここでの重要ワードは「真実の原価」だ。真実の原価とは何かといえば、財務諸表に表示される原価のことだ。もともと、原価計算はこの真実の原価を算定するために行われてきたのだ。続いて次の一文。

しかしながら,近時,経営管理のため,とくに業務計画および原価管理に役立つための原価計算への要請は,著しく強まってきており,今日,原価計算に対して与えられる目的は,単一ではない。すなわち,企業の原価計算制度は,真実の原価を確定して財務諸表の作成に役立つとともに,原価を分析し,これを経営管理者に提供し,もって業務計画および原価管理に役立つことが必要とされている。したがって,原価計算制度は,各企業がそれに対して期待する役立ちの程度において重点の相違はあるが,いずれの計算目的にもともに役立つように形成され,一定の計算秩序として常時継続的に行なわれるものであることを要する。ここに原価計算に対して提起される諸目的を調整し,原価計算を制度化するため,実践規範としての原価計算基準が,設定される必要がある。

長いけど結構大事なこと言っている。ざっくり噛み砕いてみる。

先にも書いたとおり、本来、原価計算は財務諸表に表示する原価を計算するためのものだったけど、最近(といっても50年以上前だけどね)はそれだけじゃない。原価計算を業務計画(ざっくり予算管理と思えばいい)や原価管理(ざっくり標準原価計算と思えばいい)なんかにも使いたいなんて声もある。つまり、原価計算の目的は単一ではないよね、ということ。

だから、原価計算制度をそのいずれの目的にも役立つように設定しよう、ということだ。続けよう。

原価計算基準は,かかる実践規範として,わが国現在の企業における原価計算の慣行のうちから,一般に公正妥当と認められるところを要約して設定されたものである。しかしながら,この基準は,個々の企業の原価計算手続を画一に規定するものではなく,個々の企業が有効な原価計算手続を規定し実施するための基本的なわくを明らかにしたものである。したがって,企業が,その原価計算手続を規定するに当たっては,この基準が弾力性をもつものであることの理解のもとに,この基準にのっとり,業種,経営規模その他当該企業の個々の条件に応じて,実情に即するように適用されるべきものである。

ここで重要なワードがある。それが「実践規範」だ。要するに法律みたいに守らないと罰せられるほど厳しいものではない。実践的に業務を行う上で守って欲しいルールという感じの意味合いだ。なぜ、実践規範かといえば、それは企業の目的はさまざまだろうし、事情も色々あるだろうから、守って欲しいけど、守らなければ罰する、とまではしたくない、そんなニュアンスが「実践規範」だ。「この基準が弾力性をもつ」という箇所にもニュアンスが表れている。続けよう。

この基準は,企業会計原則の一環を成し,そのうちとくに原価に関して規定したものである。それゆえ,すべての企業によって尊重されるべきであるとともに,たな卸資産の評価,原価差額の処理など企業の原価計算に関係ある事項について,法令の制定,改廃等が行なわれる場合にも,この基準が充分にしん酌されることが要望される。

前文の最後だ。原価計算基準は企業会計原則の一環だと言っている。だからすべての企業によって尊重されるべきだと言っている。重要なワードは最後の「しん酌」だ。しん酌は辞書によれば「相手の事情や心情をくみとること」だそうだ。つまり、原価計算基準に絶対的な拘束力は無いけれど、その思いは尊重されるべきだし、その心情をくみとって企業経営に役立てて欲しいと、そういうことだ。

どうだろう。前文を読んだだけでも、原価計算基準の位置づけが、なんとなく分かるんじゃないだろうか。

前文のポイント

  • そもそも原価計算に求められる役割は財務諸表に表示するための原価(=真実の原価)を計算することだった。
  • 最近(といっても50年以上前)は、業務管理や原価管理なんかにも使いたいという声がある。だからそういった目的にも対応できるように設定する。
  • とはいえ、企業には様々な事情があるだろうから、法律のように厳しいものではなく、実践規範とし、弾力性のあるものとする。
  • 原価計算基準は、企業会計原則の一環であり、今後とも十分にしん酌してほしい。

分かった

第一章・第一項「原価計算の目的」はこちら

第一章・第一項「原価計算の目的」の解説はこちらからどうぞ。

噛み砕けば簡単!原価計算基準・第1回講義


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噛み砕けば簡単!原価計算基準・全11回講義” に対して1件のコメントがあります。

  1. いちきろう より:

    先生こんばんは。

    まだ一級の勉強に入れておりませんが、書店で一級のテキストを眺めて検討しています。T社の「合テキ」を見てみますと、最初の部分に「原価計算」とはなんぞやとか原価計算基準に従って延々説明があります。
    私が思ったのは「なんで早く教えてくれなかったのだ」ということです。実際原価計算と標準原価計算にわけられます、などはじめに書いてあり、原価計算基準てなんて分かりやすいのかと思い、前文から一章まで素読みしました。4年前2級を取ったときは、恥ずかしながら工簿はイマイチ分かりませんでした。差異分析とかなんでしてるのか、とりあえずこうやれば解けるのだとしかやりませんでした。

    勉強を開始しても工原は少し先になりますが、楽しみにしたいとおもいます。

    1. pro-boki より:

      こんにちは。

      >最初の部分に「原価計算」とはなんぞやとか原価計算基準に従って延々説明があります。私が思ったのは「なんで早く教えてくれなかったのだ」ということです。

      うーん、これは、まあしょうがないかなぁと個人的には思います。
      というのも、簿記は、実学ですので、理屈はさておき、計算できる、手を動かせる、ということも大事だと思うからです。

      例えば、中小企業の製造業の経理職に就きたい、という目的で簿記の資格を取るなら、2級レベルの工簿で十分だと思います。なぜなら、どう計算すべきかは各企業で既に決まっているわけで、その用語の意味などが理解できて、計算できれば(仮に理解は出来ていなくても)日常の経理業務は、十分にこなせるからです。

      しかし、1級、さらには公認会計士というのは、その工場の生産形態や稼働状況などを把握したうえで、そもそも、どう計算すべきかを提案する立場なのです。となると、そもそも、何のために計算をするのか、その計算結果をどう活用すべきかが分からないといけないわけです。
      そうなると、理論的な背景をきちんと学ぶ必要が出て来るわけで、その前提となるのが、原価計算基準というわけです。ですから、まあ、原価計算基準を含む理論的背景は、1級から学ぶ、というのでいいんじゃないかな、と個人的には思っています。

      >原価計算基準てなんて分かりやすいのかと思い…

      まじですか。私が始めて読んだ時は、「なんて古臭いんだ!読みにくいし、何言ってるか分からないよ!」という感じでした。というか、未だに「こんなもん、早く改訂すればいいのに」と思っています。

      >差異分析とかなんでしてるのか、とりあえずこうやれば解けるのだとしかやりませんでした。

      2級合格者のほとんどの人は、そうですね。でも、そのままだと1級はつらいですね。このあたりは、記事も書いてあるので、よろしかったら読んでみてくださいね。

      https://pro-boki.com/koubo-5

    2. いちきろう より:

      先生コメントありがとうございます。

      私の原価計算基準がわかりやすい、という表現は色々なことを割引すぎました。基本的に表現は硬いし、古いとはおもいます。先生のように噛み砕いて説明していただけるとわかりやすいです。私が硬い表現を言い換えや置き換えをして、多分たまたま腑に落ちたんだと思います。

      また簿記会計自体が決め事や理論といっても、経済活動や世界の真理みたいなものについて明らかにしているというより、「こうしたほうがいいと思う」というものに感じるのです。なので最近は「なぜこうなるか」だけではなく「なぜこうしたいのか」という視点が持てるようになりました。勉強してよかったと思える点です。

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