噛み砕けば簡単!原価計算基準・第6回講義

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検索サイトやSNSから直接こちらに来た方へ。本講義は、原価計算基準講義の第6回目講義です。初めて読む方は1番上の行の「噛み砕けば簡単!原価計算基準・全10回講義 」から順番に読んで頂けると体系的に学べます。

原価計算基準の全体の構成

ここからは第二章以降を解説する。

さて、第一章は目的とか概念的な話が多かったのだけれど、第二章以降は、具体的な計算手続きや会計処理方法の話が中心となってくる。ここで、あらためて、原価計算基準の全47項目がどのように構成されているのかを見てみよう。

第一章 原価計算の目的と原価計算の一般的基準(1〜6)
第二章 実際原価の計算(7〜39)
第三章 標準原価の計算(40〜43)
第四章 原価差異の算定および分析(44〜46)
第五章 原価差異の会計処理(47)

第一章は6項目だったが、第二章は33項目もある。そして第三章から第五章までは合計しても8項目しかない。なんというか、非常にアンバランスな構成だ。

重要性で言えば、第一章が最優先だ。出題頻度の半分以上を占めるだろう。第一章は、噛み砕き講義を読んで、暗記よりなにより理解中心でがんばってほしい。

さて、第二章。ここは33項目もあるけれど、暗記する箇所はさほど多くない。また、概念的な話ではないので、理解が求められる部分も多くない。計算手続きや定義の話が多いのでその流れを押さえることと、重要ワードを押さえることが大切だ。特に前半部分に重要ワードがひしめいている。そこをしっかり押さえよう。

第三章から第五章は、標準原価計算関連だ。全部で8項目あるけれど、重要なのは2項目だけ。あとは切っても大丈夫。

第二章「実際原価の計算」

第2章は5回に分けて解説する。

  1. 実際原価計算の計算手続きと製造原価要素の分類基準(7〜8)
  2. 費目別計算(9〜14)
  3. 部門別計算(15〜18)
  4. 製品別計算(総合原価計算、仕損・減損、副産物、連産品)(19〜29)
  5. 製品別計算(個別原価計算、販管費ほか)(30〜39)

今回は、第1回目の「実際原価計算の計算手続きと製造原価要素の分類基準」だ。

第7項 実際原価の計算手続(重要度B)

原文

実際原価の計算においては、製造原価は、原則として、その実際発生額を、まず費目別に計算し、次いで原価部門別に計算し、最後に製品別に集計する。販売費および一般管理費は、原則として、一定期間における実際発生額を、費目別に計算する。

噛み砕き解説

簡単だけど大切なところだ。この項目では、大きく分けて2つのことを言っている。1つは、原価計算の計算手続きは、3ステップに分かれているよ、ということだ。なお文中に「製造原価は、原則として」とあるが、これは原則は3ステップだけれど、例外的に部門別計算を省略して2ステップにすることも出来るよということを言っている。

  1. 費目別計算
  2. 部門別計算
  3. 製品別計算

もう1つは、後半の「販売費および一般管理費は、原則として、一定期間における実際発生額を、費目別に計算する」だ。ここに書かれているとおり、製造原価は3ステップで計算するけど、販管費は1ステップ目の費目別計算しか行わない。部門別や製品別には集計しないということだ。言われてみれば当たり前だけど、ちゃんと原価計算基準に規定されている、というのもなんだか面白いよね。

第8項 製造原価要素の分類基準①(重要度A)

原文

製造原価要素を分類する基準は次のようである。

(一) 形態別分類

形態別分類とは、財務会計における費用の発生を基礎とする分類、すなわち原価発生の形態による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを材料費、労務費および経費に属する各費目に分類する。 材料費とは、物品の消費によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分する。

1 素材費(又は原料費)
2 買入部品費
3 燃料費
4 工場消耗品費
5 消耗工具器具備品費

労務費とは、労働用役の消費によって生ずる原価をいい、おおむね次のように細分する。

1 賃金(基本給のほか割増賃金を含む)
2 給料
3 雑給
4 従業員賞与手当
5 退職給与引当金繰入額
6 福利費(健康保険料負担金等)

経費とは、材料費、労務費以外の原価要素をいい、減価償却費、たな卸減耗費および福利施設負担額、賃借料、修繕料、電力料、旅費交通費等の諸支払経費に細分する。

原価要素の形態別分類は、財務会計における費用の発生を基礎とする分類であるから、原価計算は、財務会計から原価に関するこの形態別分類による基礎資料を受け取り、これに基づいて原価を計算する。この意味でこの分類は、原価に関する基礎的分類であり、原価計算と財務会計との関連上重要である。

(二) 機能別分類

機能別分類とは、原価が経営上のいかなる機能のために発生したかによる分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを機能別に分類する。この分類基準によれば、たとえば、材料費は、主要材料費、および修繕材料費、試験研究材料費等の補助材料費、ならびに工場消耗品費等に、賃金は、作業種類別直接賃金、間接作業賃金、手待賃金等に、経費は、各部門の機能別経費に分類される。 

噛み砕き解説(形態別分類と機能別分類)

第8項では、原価をどのように分類するのか、その基準が書かれている。大切なところだ。3部に分けて解説しよう。

まず、ここに書かれている形態別分類と機能別分類は、試験での出題可能性も大いにあるので、その用語とともに意味もしっかり押さえてほしい。

形態別分類とは、いわゆる、材料費・労務費・経費のことだ。この形態別分類の特徴は、財務会計と密接に結びついているという点にある。

原価計算制度は、ざっくり言えば、財務会計側から費用の情報をもらって、それに対して費目別計算、部門別計算、製品別計算を行って、財務会計側に売上原価や棚卸資産価額を返すシステムだ。この最初の段階、つまり財務会計側から費用の情報もらうというときに用いられるのがこの形態別分類だ。

機能別分類は、形態別分類が表面的な見た目(形態)だけで分類しているのに対して、”それを何に使ったのか”という観点まで加味して分類したものだ。例えば、工員が作業をしていれば、そこに掛かったコストは、見た目には”労務費”にしか見えない。これが形態別分類だ。これに対して、その作業が特定製品の組立作業なのか、それとも共通材料を運搬するような作業なのかといった”何のために”という視点を加味して分類したのが機能別分類だ。具体的に前者の作業は直接作業だし、後者の作業は間接作業だ。

機能別分類は、直接費と間接費に分類できることから製品別計算を行うのにも役立つし、”何に使ったのか”という観点からは、部門別計算を行うときにも役に立つ。

噛み砕き解説(材料費、労務費、経費)

第8項の前半部分で大切な点をもう1つ紹介しよう。それは、形態別分類の具体的な分類ルールについて書かれている点だ。例えば、工場で工員が移動する自転車を購入したとしよう。この費用は形態別分類で言う所の何だろうか。直感的には材料費という感じはしないだろう。労務費でもなさそうだから経費かな?と思う人が大半だろう。

これは、材料費だ。なぜか。第8項の(一)に「材料費とは、物品の消費によって生ずる原価」と書かれているからだ。つまり、材料というのは、何も製品のもとになるものばかりではないのだ。それが自転車だろうとホワイトボードだろうと、何かしら工場で物品を消費すれば、それは材料費なのだ。これは一般に私達がイメージする”材料”とは異なるものだろう。でも、基準にはそう書かれているのだから、そう覚えるしかない。

労務費は、”労働用役の消費”と書かれている。これは言葉を額面どおりに受け取るだけでは、ちょっとイメージしにくい。それよりも羅列されている具体例を見た方がイメージしやすいだろう。いわゆる人件費というやつだ。

ここで、微妙なのが「福利費(健康保険料負担金等)」と「福利施設負担額」だ。前者は労務費、後者は経費だ。この覚え方は、”個々人のコストが明確か?”という観点で考えると分かりやすい。明確なら労務費、そうでなければ経費だ。健康保険料負担額など、個々人の金額は明確だけど、福利施設負担額は総額しか分からず、それを人数割りするくらいしかないだろう。

最後に経費だけれども、これは、材料費と労務費以外、という定義だ。まあ、そんな抽象的な定義で覚えるよりも、試験でよく出てくる科目で覚えた方がイメージしやすいだろう。減価償却費、水道光熱費、保険料、賃借料といったあたりだ。注意点は棚卸減耗費だろう。これは材料費ではない。形がないからね。物品ではないわけだ。だから経費だ。引っかかりそうなのはこれくらいだろう。

第8項 製造原価要素の分類基準②(重要度A)

原文

(三)製品との関連における分類

製品との関連における分類とは、製品に対する原価発生の態様、すなわち原価の発生が一定単位の製品の生成に関して直接的に認識されるかどうかの性質上の区別による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを直接費と間接費とに分類する。

  1. 直接費は、これを直接材料費、直接労務費および直接経費に分類し、さらに適当に細分する。
  2. 間接費は、これを間接材料費、間接労務費および間接経費に分類し、さらに適当に細分する。

必要ある場合には、直接労務費と製造間接費とを合わせ、又は直接材料費以外の原価要素を総括して、これを加工費として分類することができる。

噛み砕き解説

製品との関連における分類も大切だ。いわゆる直接費と間接費による分類だ。(大丈夫だと思うけど、念のため言っておくと、直接費の”直接”と、直接原価計算の”直接”は、全く意味が異なるので勘違いしないように)

ここで押さえておきたい点としては、2点だ。

1つは「必要ある場合」という文言について。この文言があるということは”選択適用”ということだ。つまりその方法を選んでもいいし、選ばなくていいということ。この文言は、多くの場合、コスト・ベネフィット(費用対効果)を前提としている。

本来、正確な製品原価計算という観点からは、なるべく費用を細かく分類して、どの製品のためにどれくらい消費したのかを精密に測定したほうがいい。精密なら精密なほど正確な製品原価の計算が行える。しかし、そうすると膨大な手間とコストが掛かってしまうわけで、果たして、それはコスト・ベネフィットの観点から適切なのか?という問題が生じてくる。

たとえば、家具を作るとして、最終工程でニス塗装をするとしよう。ニスは購入時期によって微妙にコストが異なるかもしれない。すると正確に計算するなら、まず、購買部は、平均法なり先入先出法なりの計算が必要だろう。また、棚卸減耗損を計算したいなら、その出入記録を正確にとる必要があるだろう。さらに工場でもどの家具に何グラムのニスを塗ったのか正確に測定するべきだろう。これらを徹底すれば確かに正確な製品原価計算は行えるけど、それにどれほどの意味があるというのか、ということだ。

それよりも、ニスは、もう購入した時点で、その買入額を消費金額としてしまって、間接費(間接材料)として配賦計算をしたらどうだろう。多分ほとんど、製品原価は変わらないだろう。変わっても誤差レベルだ。一方で、計算コストや手間は激減だ。だから、必要があるなら、そういうふうに計算してもいいよ、ということを基準は言っているのだ。

もう1点は、加工費についてだ。これは先のコスト・ベネフィットとの関連でもあるのだけれど、例えば製品別計算で、総合原価計算を採用すなら、もうその時点で(個別原価計算を採用する場合に比べて)計算の正確性よりも計算の簡便性を選択しているわけだ。

だったら、費用の分類についても、大雑把でいいよということだ。つまり、直接材料費とそれ以外というものすごく大雑把な分類でも構わないと、そういうことだ。この場合、直接材料費以外の費用のことを加工費という。

第8項 製造原価要素の分類基準③(重要度A)

原文

(四)操業度との関連における分類

操業度との関連における分類とは、操業度の増減に対する原価発生の態様による分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを固定費変動費とに分類する。

ここに操業度とは、生産設備を一定とした場合におけるその利用度をいう。固定費とは、操業度の増減にかかわらず変化しない原価要素をいい、変動費とは、操業度の増減に応じて比例的に増減する原価要素をいう。

ある範囲内の操業度の変化では固定的であり、これをこえると急増し、再び固定化する原価要素たとえば監督者給料等、又は操業度が零の場合にも一定額が発生し、同時に操業度の増加に応じて比例的に増加する原価要素たとえば電力料等は、これを準固定費又は準変動費となづける。 準固定費又は準変動費は、固定費又は変動費とみなして、これをそのいずれかに帰属させるか、もしくは固定費と変動費とが合成されたものであると解し、これを固定費の部分と変動費の部分とに分解する。

(五)原価の管理可能性に基づく分類

原価の管理可能性に基づく分類とは、原価の発生が一定の管理者層によって管理しうるかどうかの分類であり、原価要素は、この分類基準によってこれを管理可能費管理不能費とに分類する。

下級管理者層にとって管理不能費であるものも、上級管理者層にとっては管理可能費となることがある。

噛み砕き解説

操業度との関連における分類とは、ざっくり言えば変動費と固定費のこと。管理可能性に基づく分類とは、管理可能費と管理不能費のことだ。

これらは、これまで解説してきた分類とはたいぶ趣きを異にする分類だ。これまでの分類は、費目別、部門別、製品別の計算を行うにあたり必要な分類といった趣きだったが、この「操業度との関連における分類」と「管理可能性に基づく分類」は、管理会計上において必要な分類と言った感じだ。(といっても100%、カチッと分けられるわけでもない。趣きという言葉を使っているのはそのため。)

「操業度との関連における分類」では、”原価発生の態様(コスト・ビヘイビア)”という用語を覚えておくとよい。これは操業度が変化すると、原価はどのように変化するのか、その様子という意味だ。

「原価の管理可能性に基づく分類」では、”誰にとって”、”いつ”、という視点が重要だ。例えば同じ経費でも、工員にとっては管理不能でも、工場長にとっては管理可能である、ということはよくあることだ。また、設備を除却するまで減価償却費は管理不能だけれど、除却後は管理可能である、ということもよくあることだ。こういった意味合いを押さえておけば十分だろう。

第二章 第二節「原価の費目別計算」の解説はこちら

こちらからどうぞ。

噛み砕けば簡単!原価計算基準・第7回講義


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