噛み砕けば簡単!原価計算基準・第4回講義

原価計算基準

第一章・第四項「原価の諸概念」

第四項は「原価の諸概念」だ。そもそも原価ってなんだ?というのは第三項で説明した。この項では原価をもう少し具体的に説明している。おもに原価という情報を何に使うのかという目的に応じて原価を区分しているといってもいいかもしれない。

ここも試験に出やすいところだからしっかり押さえておこう。

(一)実際原価と標準原価

原文

原価は、その消費量および価格の算定基準を異にするにしたがって、実際原価と標準原価とに区別される。

噛み砕き解説

噛み砕くも何もないよね。そのままだ。原価は、消費量と価格をどう算定するかによって、実際原価と標準原価に区分できると言っている。そして、以下に実際原価と標準原価についてくわしく解説されている。なお、標準原価は、その設定に仕方によっていくつかの種類がある。詳しく見ていこう。

原文

実際原価とは、財貨の実際消費量をもって計算した原価をいう。ただし、その実際消費量は、経営の正常な状態を前提とするものであり、したがって、異常な状態を原因とする異常な消費量は、実際原価の計算においてもこれを実際消費量と解さないものとする。実際原価は、厳密には実際の取得価格をもって計算した原価の実際発生額であるが、原価を予定価格等をもって計算しても、消費量を実際によって計算する限り、それは実際原価の計算である。ここに予定価格とは、将来の一定期間における実際の取得価格を予想することによって定めた価格をいう。

噛み砕き解説

ここのポイントは2点だ。1つは、実際原価=単価×消費量 と計算することを前提として、この消費量が実際消費量なら、単価は実際単価じゃなくても(つまり予定価格でも)それは実際原価である、と定義しているところだ。非常に大切なポイントだ。常識的な解釈とは異なる、原価計算基準ならではの解釈だ。

もう1つのポイントは、「実際消費量は、正常な状態を前提とする」としているところだ。つまり、異常な消費量なら実際消費量とはみなさない、ということだ。この場合、非原価項目となり、財務会計上、営業外費用とか特別損失で処理される。原価ですらなくなってしまうわけだ。

ここで、1点、注意が必要だ。それは、異常な状態というのは、消費量のみに適用されるものであるという点だ。仮に価格が予定より大幅に高くても安くても、それは異常とは解釈されない。それは、価格差異として把握されるものだ、という点に注意しよう。

原文

標準原価とは、財貨の消費量科学的、統計的調査に基づいて能率の尺度となるように予定し、かつ、予定価格又は正常価格をもって計算した原価をいう。この場合、能率の尺度としての標準とは、その標準が適用される期間において達成されるべき原価の目標を意味する。標準原価計算制度において用いられる標準原価は、現実的標準原価又は正常原価である。

噛み砕き解説

標準原価における消費量は、経験や勘にもとづいて決めるのではなく、科学的、統計的調査にもとづいて決めるのだ、という点が大切。そして、それは能率の尺度となるような値、つまり目標になるような値じゃないといけない、ということだ。なお、ポイントを付け加えると、これはあくまでも「消費量」が対象であるということ。価格については言及していない。

原文

現実的標準原価とは、良好な能率のもとにおいて、その達成が期待されうる標準原価をいい、通常生ずると認められる程度の減損、仕損、遊休時間等の余裕率を含む原価であり、かつ、比較的短期における予定操業度および予定価格を前提として決定され、これら諸条件の変化に伴い、しばしば改訂される標準原価である。現実的標準原価は、原価管理に最も適するのみでなく、たな卸資産価額の算定および予算の編成のためにも用いられる。

噛み砕き解説

原価管理にもっと適した原価がこの現実的標準原価だ。噛み砕いていえば「がんばれば現実的に達成できそうな標準原価」という意味だ。「通常生ずると認められる程度の減損、仕損、遊休時間等の余裕率を含む」との表記が現実的に達成できることを示唆している。原価計算基準がもっともおすすめしている標準原価だ。そして、この標準原価は原価管理にもっとも適しているとされている。つまり、この現実的標準原価を採用したさいの原価差異は、今後の業務改善活動の目標として機能するということだ。

原文

正常原価とは、経営における異常な状態を排除し、経営活動に関する比較的長期にわたる過去の実際数値を統計的に平準化し、これに将来のすう勢を加味した正常能率、正常操業度および正常価格に基づいて決定される原価をいう。正常原価は、経済状態の安定している場合に、たな卸資産価額の算定のために最も適するのみでなく、原価管理のための標準としても用いられる。

噛み砕き解説

ざっくりした言い方だけど、原価計算基準では「正常」という言葉を2つの意味で用いている。一つは「異常ではない」という意味。もう一つは「比較的長期の過去実績の平均」という意味だ。ここでいう正常原価の「正常」とは、もちろん後者の意味だ。過去の実績を平均して、それをベースに将来これくらい変化しそうだ、という修正を加えて決めた原価を標準原価として用いてもいいよ、と言っている。
一般的に、標準原価は、上記の現実的標準原価が望ましいのだけれど、業種業界によっては、長期的な景気動向に左右される企業もあるわけで、そういった場合にはこちらの方が適しているかもしれない。そういったことを考慮して設定されている。

また、経済状態が安定している、という制限付きではあるものの棚卸資産価額の算定に最も適しているという点も重要だ。

余談だが、この正常原価を採用したさいの原価差異は、年レベルでの景気動向を表す数値であるとも言える。景気の良い年には有利差異になるだろうし、不景気のときには不利差異になるだろう。その観点から考えると、この原価差異の会計処理は、(理論的には)翌期に繰り越すべきものとも言える。しかし、基準にはそこまで書かれてはおらず、当期の売上原価に賦課する。

原文

標準原価として、実務上予定原価が意味される場合がある。予定原価とは、将来における財貨の予定消費量と予定価格とをもって計算した原価をいう。予定原価は、予算の編成に適するのみでなく、原価管理およびたな卸資産価額の算定のためにも用いられる。

噛み砕き解説

予定原価は、上記の現実的標準原価に近い原価だ。ただし、現実的標準原価が「良好な能率のもとにおいて、その達成が期待されうる」とあるのに対して、予定原価は「将来における財貨の予定消費量と予定価格とをもって計算」とある。つまり、努力の匂いがしないのだ。「まあ、来期はこれくらいの原価でいけるんじゃないかな」というニュアンスだ。本来の標準原価計算の趣旨からすれば、あまりお勧めできる原価ではない。

原文

原価管理のために時として理想標準原価が用いられることがあるが、かかる標準原価は、この基準にいう制度としての標準原価ではない。理想標準原価とは、技術的に達成可能な最大操業度のもとにおいて、最高能率を表わす最低の原価をいい、財貨の消費における減損、仕損、遊休時間等に対する余裕率を許容しない理想的水準における標準原価である。

噛み砕き解説

理想標準原価は、一切、減損、仕損が発生せず、故障もせず、フル操業する、という状態を前提としたときの原価のこと。現実的には、ありえないのだからそれは、原価計算基準における標準原価とは認めない、ということ。

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(二)製品原価と期間原価

原文

原価は、財務諸表上収益との対応関係に基づいて、製品原価と期間原価とに区別される。製品原価とは、一定単位の製品に集計された原価をいい、期間原価とは、一定期間における発生額を、当期の収益に直接対応させて、は握した原価をいう。製品原価と期間原価との範囲の区別は相対的であるが、通常、売上品およびたな卸資産の価額を構成する全部の製造原価を製品原価とし、販売費および一般管理費は、これを期間原価とする。

噛み砕き解説

これは、とても重要な原価の概念だ。そもそも原価とは何かしらに集計されるものだ。たとえば「この期間に発生したコスト」「この部門で発生したコスト」「この活動にかかったコスト」といった具合で期間や部門、活動に集計したりする。そして、最終的には、製品に原価を集計して、製品原価を求めるわけだ。

ここで明確に製品に集計できる原価はいいとして、そうではない原価もある。例えば販売促進費などだ。本来はこれらもすべて製品に集計したいのだが、販売促進費などは、そのコストのどの部分が、どの製品のために貢献したのかが明確ではない。こういった場合、販売促進費は製品に無理に紐づけたりしない。例えば1か月間に発生した販売促進費は、その1カ月という期間に販売された製品全体に貢献したのだろう、という仮定のもと、期間に集計したままにしておくのだ。これを期間原価という。

通常、変動製造原価(原料費や直接労務費など)は製品原価だ。また、販管費は期間原価だ。問題は、固定製造原価だ。これを製品原価とする原価計算のことを「全部原価計算」という。一方、これを期間原価とする原価計算のことを「直接原価計算」という。

(三)全部原価と部分原価

原文

原価は、集計される原価の範囲によって、全部原価と部分原価とに区別される。全部原価とは、一定の給付に対して生ずる全部の製造原価又はこれに販売費および一般管理費を加えて集計したものをいい、部分原価とは、そのうち一部分のみを集計したものをいう。部分原価は、計算目的によって各種のものを計算することができるが、最も重要な部分原価は、変動直接費および変動間接費のみを集計した直接原価(変動原価)である。

噛み砕き解説

ここの表記には若干の齟齬がある。この表記によると「全部の製造原価」または「全部の製造原価+販管費」を全部原価といい、そのうちの一部分のみを集計したものを部分原価という、としている。前者はいいとしても、後者はおかしい。「全部の製造原価+販管費」のことは「総原価」と呼ぶのが一般的だ。この論によれば「全部の製造原価+販管費」の一部分のみを集計したものを部分原価というのだから「全部の製造原価」のことを「部分原価」と呼んでもいいことになってしまう。屁理屈のようだが、齟齬には違いないだろう。

通常、全部原価といえば、全部の製造原価のことだ。これには固定製造原価も含まれる。この固定製造原価も含まない製造原価、つまり変動直接費と変動間接費のみを製品原価とする原価計算を直接原価計算という。

なお、勘違いする人はいないと思うが、ここでいう「直接原価計算」の直接と「直接費」の直接では全く意味が異なる。前者は、繰り返しになるが変動直接費と変動間接費のみをさし、後者は製品に直接的に紐づけられるという意味だ。間違えないように。

第五項・第六項の解説はこちら

こちらからどうぞ。

噛み砕けば簡単!原価計算基準・第5回講義



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