噛み砕けば簡単!原価計算基準・第1回講義

原価計算基準

第一章には原価計算基準の概要が書かれている

試験にもっとも出るのは第一章

原価計算基準の第一章は、「一般に原価計算はこんなことを目的にしています」「しかし原価計算基準で言う所の原価計算とはこの部分だけです」「原価計算基準で言う所の原価とはこういうものです」なんてことが書かれている。なお、具体的な計算手順は書かれていない。それは第二章以降だ。

日商簿記1級でもっとも出題可能性の高い論点は、この第一章だ。理論対策をやるなら避けては通れない。ここだけでもがんばろう。

第一章は特に読みにくい

ただし、第一章は読みにくい。なんというか、日本語が古臭いし、一文が長くて修飾語が多い。もう読みにくいったらありゃしない。よって、一度や二度読んだだけでは何を言っているのか理解不能なはずだ。

だからといって意味も分からず暗記に走るのはおすすめしない。ほぼ間違いなく挫折するだろう。やはり意味を理解することが大切だ。ここでは、第一章第一項を噛み砕いてみる。

hiyoko1 わかりやすくお願いします。

第一章・第一項「原価計算の目的」

第一章の中でも第一項の「原価計算の目的」は比較的読みやすいはずだ。5つの目的がある。1つずつ見ていこう。

(一)財務諸表作成目的

企業の出資者,債権者,経営者等のために,過去の一定期間における損益ならびに期末における財政状態を財務諸表に表示するために必要な真実の原価を集計すること。

何しろ原価計算のもっとも大切な目的は、財務諸表作成だ。これは前文でも言っている。

この一文で、あえて注意点をあげるとしたら「経営者等のため」という箇所だろう。財務諸表は出資者と債権者に提供するためのもの、というのは1級受験生ならピンとくるはず。財務諸表って外部公表するものだからね。

一方で、経営者は社内において経営管理を行う人だ。だから経営管理に資する資料を提供するのは財務会計ではなくて管理会計のはずだ。そんな点から財務諸表目的が「経営者等のため」と言われると少し違和感を覚える人もいるのではないだろうか。

でも、考えてみれば社長だって財務諸表は見るわけだ。自社の経営成績、気になるよね。別に出資者と債権者だけが見るわけじゃない。当たり前だ。だから、この一文には「経営者等」も含まれている。穴埋め問題とかで引っ掛けで出るかもしれないなぁ、なんて思っている。ちょっとだけ心に留めておいて欲しい。

(二)価格計算目的

価格計算に必要な原価資料を提供すること。

原価が分かれば、それにいくらか利益を乗せて売価を決めることができる。原価計算はそのために役立つよと言っている。まあ、ざっくり言えば、そういう解釈で覚えてもらって構わない。ただし、厳密には違う。

1級の原価計算(管理会計)では、価格決定の論点を学習すると思う。直接原価計算の章で学習するはずだ。その価格決定と原価計算基準で言っている価格計算目的は意味が違う。

前者の価格決定は、厳密には、これから解説する(四)予算管理目的に含まれる論点だ。要は利益計画の一種なんだ。

それに対して、この(二)価格計算目的というのは少し意味合いが違う。これは、原価計算基準が設定された昭和37年の時代背景を知らないとピンとこないだろう。当時、政府(とくに軍事産業)に民間企業が製品を納める時は、原価に利益をプラスして価格決定をしていたそうだ。その価格計算のもとになる原価の計算に役立つよと言っているわけだ。

現代だと電力会社がイメージしやすいかもしれない。電気の単価ってどうやって決まっているか知っているだろうか。「総括原価方式」といって、発電や送電、その他販管費など、すべての原価に無条件に数%の利益を乗せて販売価格を決定している。だから絶対に赤字にならない。むしろ無駄遣いすればするほど乗せる利益が増えるから、より儲かるという摩訶不思議なルールだ。

話が横道に話がそれたけど、とにかく、当時、政府に納める時の製品価格は、原価に一定の利益を乗せて決定していたんだ。原価計算基準の価格計算目的とはそれを前提としていることを知っておこう。ただし、多分試験には出ないだろう。

(三)原価管理目的

経営管理者の各階層に対して,原価管理に必要な原価資料を提供すること。ここに原価管理とは,原価の標準を設定してこれを指示し,原価の実際の発生額を計算記録し,これを標準と比較して,その差異の原因を分析し,これに関する資料を経営管理者に報告し,原価能率を増進する措置を講ずることをいう。

これは、イコール標準原価計算のことと思って間違いない。あえて重要ワードをピックアップすれば「経営管理者の各階層」だろう。原価管理は誰のためか、といえばそれは、社長であり、工場長であり、工場の班長さんだったりするよ、ということだ。

ここはそれほど難しくないだろう。

ちなみに、原価管理という表現には若干の注意点がある。それは原価管理という言葉には2つの意味があるからだ。1つは原価マネージメント、もう1つは原価コントロール。両方とも日本語にすると原価管理だが意味が違う。

原価マネージメントは「原価企画」も含めたトータルでの原価の管理だ。つまりそもそも原価を作り込む段階から管理していこうよ、という意味が含まれている。

一方、原価コントロールは、決められた原価を守るという意味で「原価維持」の意味しかない。これは「原価統制」とも言う。ほぼ同じ意味だ。

そして、原価計算基準で言うところの原価管理とはイコール「原価維持」のことだ。つまり原価コントロールのことであって「原価企画」は含まれない。多分試験には出ないけど知っておいて損は無いだろう。

 ながいなぁ。

(四)予算管理目的

予算の編成ならびに予算統制のために必要な原価資料を提供すること。ここに予算とは,予算期間における企業の各業務分野の具体的な計画を貨幣的に表示し,これを総合編成したものをいい,予算期間における企業の利益目標を指示し,各業務分野の諸活動を調整し,企業全般にわたる総合的管理の要具となるものである。予算は,業務執行に関する総合的な期間計画であるが,予算編成の過程は,たとえば製品組合せの決定,部品を自製するか外注するかの決定等個々の選択的事項に関する意思決定を含むことは,いうまでもない。

ざっくり「予算を作るのに原価計算は役立ちますよ」ということだ。長々と書かれているけど、それだけ理解できれば十分。ちなみに予算を作ることを予算編成という。そして予算と実績の比較のことを予算統制という。これらの言葉は大切なので覚えておこう。

ここから先に書くことは試験に出ない。だから深く突っ込む必要はない。でも知っておいて損はないのでざっと読んで欲しい。

実は、この(四)予算管理目的は、後段部分に若干の矛盾があると言われている。「予算編成の過程は,たとえば製品組合せの決定,部品を自製するか外注するかの決定等個々の選択的事項に関する意思決定を含む」の箇所だ。

これ何のことか分かる?製品組合せの決定って、まさに最適セールスミックスのことだ。部品を自製するか外注するかって、まさに業務的意思決定のことだ。これらは「特殊原価調査」といい、随時断片的に行われるものだ。

一方で、予算編成というのは随時断片的に行われるものではない。毎期継続的に行われる。それにもかかわらず「予算編成の過程は<中略>意思決定を含むことは,いうまでもない」とまで言っている。うーむ。どうしたことか、と。ちょっと変だよねと言われている。まあ、試験には出ないでしょう。

(五)基本計画設定目的

経営の基本計画を設定するに当たり,これに必要な原価情報を提供すること。ここに基本計画とは,経済の動態的変化に適応して,経営の給付目的たる製品,経営立地,生産設備等経営構造に関する基本的事項について,経営意思を決定し,経営構造を合理的に組成することをいい,随時的に行なわれる決定である。

これは、戦略的意思決定会計(設備投資意思決定会計)のことを言っている。「原価計算は管理会計にも役立ちますよ」ということだ。それだけ理解できれば十分。

hiyoko8 けっこう分かりやすかった。

第一章・第一項「原価計算の目的」の試験対策

次の5つのキーワードは是非暗記して欲しい。それくらい重要だ。

  1. 財務諸表作成目的
  2. 価格計算目的
  3. 原価管理目的
  4. 予算管理目的
  5. 基本計画設定目的

どうやって覚えてもいいけれど、私の場合は頭の漢字を一文字づつ強引に覚えた。つまり「財価原予基」を暗記した。コツは「ざいかげんよき」と読むこと。「財貨といえば現金預金だよね」というイメージを頭に焼き付けた。

未だに、原価計算の目的は?と言われると「ざいかげんよき」とつぶやいてしまう。

まあ、何でもいいから、とにかくこの5つのキーワードだけは是非覚えてしまって欲しい。

第一章・第二項「原価計算制度」の解説はこちら

第一章・第二項「原価計算制度」の解説はこちらからどうぞ。

噛み砕けば簡単!原価計算基準・第2回講義


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