噛み砕けば簡単!原価計算基準・第10回講義

第二章 第四節「原価の製品別計算」つづき

第30項 総合原価計算における直接原価計算(重要度B〜C)

原文

 総合原価計算において、必要ある場合には、一期間における製造費用のうち、変動直接費および変動間接費のみを部門に集計して部門費を計算し、これに期首仕掛品を加えて完成品と期末仕掛品とにあん分して製品の直接原価を計算し、固定費を製品に集計しないことができる。

 この場合、会計年度末においては、当該会計期間に発生した固定費額は、これを期末の仕掛品および製品と当年度の売上品とに配賦する

噛み砕き解説

直接原価計算に関する規定だ。そもそも原価計算基準の主目的は財務諸表作成(第1項)であり、財務諸表の作成に役立つためには、すべての製造原価要素を製品に集計せよ(第6項)と言っている。つまり全部原価計算を前提としているわけだ。だから、基準は、直接原価計算の採用を原則考えていない。ただし、全く使ってはいけない、ということではなく、総合原価計算において、必要ある場合には(これは予算管理のことを意図していると解釈されている)直接原価計算を使用してもいいよ、としている。

予算管理とは、予算編成と予算統制(=予算実績差異分析)のことだけど、特に予算統制は責任会計と密接に結びついているから、費用を管理可能と管理不能費に分離して把握しようという考えは自然だ。すると、管理不能費の多くは固定費なのだから、費用を変動費と固定費に分けて損益計算を行う直接原価計算を採用しようと考えるのも自然なことだろう。

だから、予算管理などでの直接原価計算の使用を認めているのだろう。ただし、最終的に財務諸表を作成するにあたっては、全部原価計算による必要があるので、固定費を棚卸資産と売上原価に配分せよと言っている。つまり固定費調整をしさなさいということだ。

なお、この規定は総合原価計算に限定しているけれど、別に個別原価計算で直接原価計算を採用しようと思えば(固変分解がかなり手間だけど)出来ないことはない。だから個別原価計算で直接原価計算を使ってはいけない、ということでは無いと思う。しかし、当時、基準は、そこまで想定していなかったのだろう。まあ、このあたりは解釈の仕方になるので完全な正解は無いと思う。したがって、このあたりが理論問題で出題されることは無いと思う。

第31項 個別原価計算(重要度B)

原文

 個別原価計算は、種類を異にする製品個別的に生産する生産形態に適用する。

 個別原価計算にあっては、特定製造指図書について個別的に直接費および間接費を集計し、製品原価は、これを当該指図書に含まれる製品の生産完了時に算定する。

 経営の目的とする製品の生産に際してのみでなく、自家用の建物、機械、工具等の製作又は修繕、試験研究、試作、仕損品の補修、仕損による代品の製作等に際しても、これを特定指図書を発行して行なう場合は、個別原価計算の方法によってその原価を算定する。

噛み砕き解説

個別原価計算を定義している規定だ。大切なポイントは2点。

1つ目は、個別原価計算とは製造指図書に費用を集計する計算であるという点、そして2つ目は、そこに集計するのは直接費と間接費である、という点だ。

総合原価計算と比較するとその相違点は明確になる。総合原価計算は、費用を期間に集計する。一方、個別原価計算は製造指図書に費用を集計する。集計する場所が異なるのだ。この点をしっかり理解してほしい。また、個別原価計算は、直接費と間接費の分類に重きが置かれいる点も意識しよう。総合原価計算にとっては、直接費と間接費の分類は重要ではない。それよりも加工進捗度に比例して発生する費用なのか否かが重要だ。こういった相違点を押さえよう。

なお、最後の段落だが、これは外販製品だけではなく、自家使用の製品においても、個別原価計算は使えるということを言っている。要するに個別原価計算 の採用にあたって、何を作るかは問題ではないということだ。

第32項 直接費の賦課(重要度C)

原文

個別原価計算における直接費は、発生のつど又は定期に整理分類して、これを当該指図書に賦課する。

(一) 直接材料費は、当該指図書に関する実際消費量に、その消費価格を乗じて計算する。消費価格の計算は、第二節11の(三)に定めるところによる。 自家生産材料の消費価格は、実際原価又は予定価格等をもって計算する。

(二) 直接労務費は、当該指図書に関する実際の作業時間又は作業量に、その賃率を乗じて計算する。賃率の計算は、第二節12の(一)に定めるところによる。

(三) 直接経費は、原則として当該指図書に関する実際発生額をもって計算する。

噛み砕き解説

第31項にあるとおり、個別原価計算は、費用を直接費と間接費に分類し集計することが大切だ。そのさい、直接材料費、直接労務費、直接経費をどのように分類集計すべきかが書かれている。第11項から第13項に書かれていることを要約して繰り返して書いているだけなので、それほど重要性は高くない。

第33項 間接費の配賦(重要度B)

原文

(一) 個別原価計算における間接費は、原則として部門間接費として各指図書に配賦する。

(二) 間接費は、原則として予定配賦率をもって各指図書に配賦する。

(三) 部門間接費の予定配賦率は、一定期間における各部門の間接費予定額又は各部門の固定間接費予定額および変動間接費予定額を、それぞれ同期間における当該部門の予定配賦基準をもって除して算定する。

(四) 一定期間における各部門の間接費予定額又は各部門の固定間接費予定額および変動間接費予定額は、次のように計算する。

  1. まず、間接費を固定費および変動費に分類して、過去におけるそれぞれの原価要素の実績をは握する。この場合、間接費を固定費と変動費とに分類するためには、間接費要素に関する各費目を調査し、費目によって固定費又は変動費のいずれかに分類する。準固定費又は準変動費は、実際値の変化の調査に基づき、これを固定費又は変動費とみなして、そのいずれかに帰属させるか、もしくはその固定費部分および変動費率を測定し、これを固定費と変動費とに分解する。
  2. 次に、将来における物価の変動予想を考慮して、これに修正を加える。
  3. さらに固定費は、設備計画その他固定費に影響する計画の変更等を考慮し、変動費は、製造条件の変更等変動費に影響する条件の変化を考慮して、これを修正する。
  4. 変動費は、予定操業度に応ずるように、これを算定する。

(五) 予定配賦率の計算の基礎となる予定操業度は、原則として、一年又は一会計期間において予期される操業度であり、それは、技術的に達成可能な最大操業度ではなく、この期間における生産ならびに販売事情を考慮して定めた操業度である。 操業度は、原則として直接作業時間、機械運転時間、生産数量等間接費の発生と関連ある適当な物量基準によって、これを表示する。 操業度は、原則としてこれを各部門に区分して測定表示する。

(六) 部門間接費の各指図書への配賦額は、各製造部門又はこれを細分した各小工程又は各作業単位別に、次のいずれかによって計算する。

  1. 間接費予定配賦率に、各指図書に関する実際の配賦基準を乗じて計算する。
  2. 固定間接費予定配賦率および変動間接費予定配賦率に、それぞれ各指図書に関する実際の配賦基準を乗じて計算する。

(七) 一部の補助部門費を製造部門に配賦しないで、直接に指図書に配賦する場合には、そのおのおのにつき適当な基準を定めてこれを配賦する。

噛み砕き解説

個別原価計算における間接費の規定だ。ここは大切だ。

まず、(一)で間接費は、原則として部門別計算をせよと言っている。そして、(二)で間接費は原則として予定配賦しなさいと言っている。これが何故かという理由までは日商簿記1級では問われないと思うけど、公認会計士レベルでは必須なので押さえておこう。(実際配賦では、歴日による操業度の変動やたまたまの操業度の変動が、原価に影響を与えてしまい原価の比較性を困難にするし、正確な原価計算も阻害されてしまう。また、間接費は実際額の集計に時間が掛かるので、迅速な記帳が出来なくなるなど)

(三)では、部門別計算における予定配賦率の設定について、単一基準配賦もしくは複数基準配賦法(間接費を固定費と変動費に分離して、それぞれを配賦する方法)を用いなさい、ということが書かれている。

(四)では、(三)の内容を受けて、では、具体的にどのようにして固定間接費予定額と変動間接費予定額を計算すべきかが書かれている。費用の固変分解(固定費と変動費に分解すること)については費目別精査法によることを指示している。

(五)では、予定操業度の設定について書かれている。これについては、「技術的に達成可能な最大操業度ではなく」という記述により実際的生産能力を除外し、続けて「生産ならびに販売事情を考慮して定めた操業度」ということで、期待実際操業度を採用するよう指示している。また、操業度は基本的に何を選択しても構わないけれど、原則は間接費の発生と関連がある指標が望ましいわけで、それは直接作業時間であったり機械作業時間、生産量などの物量であるとしている。ということは、例えば直接材料費基準など金額を基準とするのはおすすめしていない、ということだ。

(六)では、(五)までで算定した予定配賦率を用いて製造指図書に間接費を配賦するよう指示している。

(七)は例外規定で、補助部門の一部は製造部門を経由せずに直接、製造指図書に配賦してもいいよとしている。これは、第17項に書かれている「部門共通費であって工場全般に関して発生し、適当な配賦基準の得がたいものは、これを一般費とし、補助部門費として処理することができる」とも関連している。こういった補助部門費(工場長の給料など)は、製造部門に配賦する適切な基準がないので、無理して恣意的な配賦基準を用いて製造部門を経由するよりも、むしろ、直接、製品に配賦してしまったほうが正確な原価計算に資するということを言っている。

第34項 加工費の配賦(重要度C)

原文

 個別原価計算において、労働が機械作業と密接に結合して総合的な作業となり、そのため製品に賦課すべき直接労務費と製造間接費とを分離することが困難な場合その他必要ある場合には、加工費について部門別計算を行ない、部門加工費を各指図書に配賦することができる。部門加工費の指図書への配賦は、原則として予定配賦率による。予定加工費配賦率の計算は、予定間接費配賦率の計算に準ずる。

噛み砕き解説

例外的なケースにおける対処法が書かれている。通常、個別原価計算では、直接労務費は直接、製品への賦課が可能だから、部門別計算を行う必要性がない。しかし、例外的に製造間接費と分離することが困難な場合は、仕方ないので、直接労務費と製造間接費をあわせて(=加工費)、部門別計算を行ってもいいよ、ということだ。試験的には、重要性は低くスルーしてOK。 

第35項 仕損費の計算および処理(重要度A)

原文

 個別原価計算において、仕損が発生する場合には、原則として次の手続により仕損費を計算する。

(一) 仕損が補修によって回復でき、補修のために補修指図書を発行する場合には、補修指図書に集計された製造原価を仕損費とする。

(二) 仕損が補修によって回復できず、代品を製作するために新たに製造指図書を発行する場合において

  1. 旧製造指図書の全部が仕損となったときは、旧製造指図書に集計された製造原価を仕損費とする。
  2. 旧製造指図書の一部が仕損となったときは、新製造指図書に集計された製造原価を仕損費とする。

(三) 仕損の補修又は代品の製作のために別個の指図書を発行しない場合には、仕損の補修等に要する製造原価を見積ってこれを仕損費とする。

 前記(二)又は(三)の場合において、仕損品が売却価値又は利用価値を有する場合には、その見積額を控除した額を仕損費とする。

 軽微な仕損については、仕損費を計上しないで、単に仕損品の見積売却価額又は見積利用価額を、当該製造指図書に集計された製造原価から控除するにとどめることができる。

 仕損費の処理は、次の方法のいずれかによる。

(一) 仕損費の実際発生額又は見積額を、当該指図書に賦課する。

(二) 仕損費を間接費とし、これを仕損の発生部門に賦課する。この場合、間接費の予定配賦率の計算において、当該製造部門の予定間接費額中に、仕損費の予定額を算入する

噛み砕き解説

個別原価計算の仕損費の計算と処理について書かれている。総合原価計算の仕損費の計算は、度外視してね、くらいの簡単なものだったけれど(それは総合原価計算がそもそも簡便法であるという認識から来ている)個別原価計算については、かなり細かく規定されている。

前半の(一)と(二)の規定は、日商簿記2級の工業簿記ですでに学習済みのはずだ。テキストにも記載がある重要な内容だ。

ちなみにだけど、(一)も(二)も”何を仕損費とするか”という内容について書かれている。たとえば、#101に集計された原価が100万円だとして、そのうち10%に仕損が生じて、#101-1を発行して補修したとする。#101-1に集計された原価が15万円だとしよう。このケースは(二)の2に相当するわけだけど、このとき、良品の製造原価は100万円で、仕損費は15万円ですよ、ということを言っている。

なぜ、こんな一見当たり前のようなことをわざわざ規定しているかと言えば、これ、よくよく考えたら当たり前ではないからだ。だって、#101に集計された原価は100万円で、その10%に仕損が生じたなら、100万円×10%=10万円を仕損費と考えてもよさそうなものだ。そして、#101-1に集計された15万円は良品の原価なのだから、良品の製造原価は90万円+15万円=105万円とするのが本筋だろう。そして、この105万円が仕損費10万円を負担するのだ。理論的にはこちらの方があっている気がする。

しかし、それは実務上、面倒なので(つまり上記のように明瞭に10%と認定出来るようなケースならいいだろうけど、実際は補修してみないとどれくらい掛かるかは分からなかったりする)、#101-1に集計された製造原価15万円を仕損費としていいですよ(それなら簡単に計算できるよね)という意味だ。

なお、製品原価を計算するにあたって、直接経費処理を前提とするなら、結局、良品の製造原価と仕損費は合計されてしまうので、別に何を仕損費とするかは大した問題ではない。ちなみに日商簿記2級では、仕損費の処理は直接経費処理(仕損費を当該指図書に直課する方法)しか学習しないので、この規定の意味を理解するのは困難だろうと思われる。

しかし、1級では、間接経費処理(仕損費をあらかじめ間接費の予定額の中に算入しておいて、全ての製品にまんべんなく負担させる方法)を学習するので、どの額を仕損費とするかは重要な論点だ。

(三)の規定はスルーで構わない。要するに指図書を発行するまでも無いような仕損の場合は見積りでもいいよと言っている。

後半の(一)と(二)は、仕損費の処理方法だ。さきほど解説した直接経費処理間接経費処理について書かれている。繰り返しになるけれど、直接経費処理なら、仕損費は当該指図書に賦課する。間接経費処理なら発生部門に賦課する。基準には書かれていないが、もし部門別計算を行っていないなら、発生部門ではなく、製造間接費勘定に賦課するというのは当然だろう。

第36項 作業くずの処理(重要度A)

原文

 個別原価計算において、作業くずは、これを総合原価計算の場合に準じて評価し、その発生部門の部門費から控除する。ただし、必要ある場合には、これを当該製造指図書の直接材料費又は製造原価から控除することができる。

噛み砕き解説

個別原価計算における作業くずの処理規定だ。作業くずは、総合原価計算の場合に準じて評価せよとある。これは第28項の「作業くず、仕損品等の処理および評価は、副産物に準ずる」のことを言っている。つまり仕損品評価額や副産物も作業くずと同様に評価して、ということだ。

その処理方法だが、総合原価計算のときは、主産物の総合原価から控除だったけれど、個別原価計算では発生部門の部門費から控除しろとある。この点に注意が必要だ。

ただ、よくよく考えると、なぜ発生部門の部門費から控除するのか、理論的ではない気がする。本来であれば、作業くずが発生した製造指図書の製造原価から控除するべきだろう。それをなぜ部門費から控除するのか。

これは、実務上、作業くずがどの製造指図書からどれだけ発生したのかを測定するのが困難であるためと解釈されている。しかし、作業くずがどの場所で発生したのかを特定するのは容易だ。場所が判明しているなら、部門を特定するのも容易だ。よって部門費から控除という規定になったのだ。

もちろん、当該製造指図書が判明しているなら、そこから控除しても構わない。また、作業くずが発生した製造指図書も部門も分からないなら、直接材料費から控除しても構わないことになっている。

第五節 販売費および一般管理費の計算

第37項 販売費および一般管理費要素の分類基準(重要度C)

原文

 販売費および一般管理費の要素を分類する基準は、次のようである。

(一) 形態別分類

販売費および一般管理費の要素は、この分類基準によって、たとえば、給料、賃金、消耗品費、減価償却費、賃借料、保険料、修繕料、電力料、租税公課、運賃、保管料、旅費交通費、通信費、広告料等にこれを分類する。

(二) 機能別分類

販売費および一般管理費の要素は、この分類基準によって、たとえば、広告宣伝費、出荷運送費、倉庫費、掛売集金費、販売調査費、販売事務費、企画費、技術研究費、経理費、重役室費等にこれを分類する。 この分類にさいしては、当該機能について発生したことが直接的に認識される要素を、は握して集計する。たとえば広告宣伝費には、広告宣伝係員の給料、賞与手当、見本費、広告設備減価償却費、新聞雑誌広告料、その他の広告料、通信費等が集計される。

(三) 直接費と間接費

販売費および一般管理費の要素は、販売品種等の区別に関連して、これを直接費(120)と間接費(120)とに分類する。

(四) 固定費と変動費

(五) 管理可能費と管理不能費

噛み砕き解説

販管費の分類基準についての記載だが、第8項とほぼおなじなので、スルーして問題ない。

第38項 販売費および一般管理費の計算(重要度B)

原文

 販売費および一般管理費は、原則として、形態別分類を基礎とし、これを直接費と間接費とに大別し、さらに必要に応じ機能別分類を加味して分類し、一定期間の発生額を計算する。その計算は、製造原価の費目別計算に準ずる。

噛み砕き解説

販管費は、原則、費目別計算しか行わないという点だけ押さえておけばOK。

第39項 技術研究費(重要度C)

原文

 新製品又は新技術の開拓等の費用であって企業全般に関するものは、必要ある場合には、販売費および一般管理費と区別し別個の項目として記載することができる。

噛み砕き解説

試験での出題可能性は低く、スルーでOK。 


関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です