噛み砕けば簡単!原価計算基準・第5回講義

もうすぐ本試験

もうすぐ本試験。1級受験生のみなさん。調子はどうだろうか。ラスト2週間とちょっと。今日は、短期学習でも得点を稼ぐことが出来る理論学習対策を紹介しょう。

近年、工原は理論問題が頻出だ。そしてその多くは原価計算基準から出題される。となると、いきおい、原価計算基準を暗記しようとする人が出て来るけど、それはおすすめしない。そんな単純に暗記出来るような代物ではないからだ。

なにしろ、原価計算基準は50年以上前に制定されて以来、一度も改訂されていない。とにかく読みにくい。何を言っているのかさっぱり頭に入ってこない。それを力づくで暗記しようとしても、時間ばかり掛かって効果は薄いだろう。

でも、意味が分かってしまえば結構、覚えられるものだ。そこで、原価計算基準を徹底的に噛み砕いた記事を紹介しよう。もともとは半年以上前に書いた記事だけど、まさに今読めばタイミング的にピッタリだと思う。是非活用してほしい。

(なお、本記事は第5回講義だ。初めて読む方は1番上の行の「噛み砕けば簡単!原価計算基準・全10回講義 」から順番に読んでほしい)

ちなみに、明日からも頑張って毎日記事書いて全10回をちゃんと完成させるので乞うご期待。

第一章・第五項「非原価項目」

第五項は「非原価項目」だ。これは、第三項「原価の本質」(三)(四)と密接な関係がある。ここは試験においてはそれほど重要ではない(この部分が直接、試験に出るという感じではない)しかし計算においては知っておくべき点もあるので、簡単にまとめてみよう。

(一)経営目的に関連しない価値の減少

原文

  1. 次の資産に関する減価償却費、管理費、租税等の費用
    (1)投資資産たる不動産、有価証券、貸付金等
    (2)未稼働の固定資産
    (3)長期にわたり休止している設備
    (4)その他経営目的に関連しない資産
  2. 寄付金等であって経営目的に関連しない支出
  3. 支払利息、割引料、社債発行費償却、株式発行費償却、設立費償却、開業費償却、支払保証料等の財務費用
  4. 有価証券の評価損および売却損

噛み砕き解説

ほぼ、そのままだ。ここに書いている項目は、経営目的に関連しないので、非原価項目だよと言っている。特に重要性が高いのが「未稼働の固定資産」「長期にわたり休止している設備」といったあたりだ。過去問でも出題されている。具体的には「35.工場減価償却費のうち長期休止設備の減価償却費90万円(141回工簿)」といった形だ。これと、「支払利息」を押さえておけば十分だろう。 

(二)異常な状態を原因とする価値の減少

原文

  1. 異常な仕損、減損、たな卸減耗等
  2. 火災、震災、風水害、盗難、争議等の偶発的事故による損失
  3. 予期し得ない陳腐化等によって固定資産に著しい減価を生じた場合の臨時償却費
  4. 延滞償金、違約金、罰課金、損害賠償金
  5. 偶発債務損失
  6. 訴訟費
  7. 臨時多額の退職手当
  8. 固定資産売却損および除却損
  9. 異常な貸倒損失

噛み砕き解説

ここも特に注意するところはないだろう。異常な項目は全て非原価項目という覚え方で十分だ。

あえて言うなら、原価計算基準は、何が正常かということについては言及していない、という点は意識してもいだろう。つまり企業の形態は様々なわけで、いちいち何が正常か、といったことは定義しきれないのだ。その代わりに何が異常かということを定義しておいて、正常とはそれ以外というアプローチで正常性を定義しているわけだ。

なお、3の臨時償却費は、会計基準の変更により現在では廃止されている。この点は注意しよう。

(三)税法上とくに認められている損金算入項目

原文

  1. 価格変動準備金繰入額
  2. 租税特別措置法による償却額のうち通常の償却範囲額をこえる額

噛み砕き解説

特に注意点はない。試験での出題可能性も低いので気にしなくてよい。

(四)その他の利益剰余金に課する項目

原文

1 法人税、所得税、都道府県民税、市町村民税
2 配当金…

噛み砕き解説

ここも特に注意点はない。試験での出題可能性も低いので気にしなくてよい。  

第一章・第六項「原価計算の一般的基準」

第六項は「原価計算の一般的基準」だ。ざっと読むと、なんだか第一章・第一項「原価計算の目的」と同じような内容が書かれている気がする。

第一項の原価計算の目的では「財務諸表作成目的」「価格計算目的」「原価管理目的」「予算管理目的」「基本計画設定目的」の5つが目的としてあげられていた。

それが、第六項の原価計算の一般的基準では「財務諸表の作成に役立つために」「原価管理に役立つために」「予算とくに費用予算の編成ならびに予算統制に役立つために」の3つに絞られている。

なぜか?それは、この第六項は「原価計算の一般的基準」の冒頭に次のように書かれているからだ。

六 原価計算の一般的基準

 原価計算制度においては、次の一般的基準に従って原価を計算する。

つまり、第一項「原価計算の目的」では(特殊原価調査も含む)原価計算全般の目的について語っているのだが、この第六項「原価計算の一般的基準」では、(財務会計と有機的に結びついている)原価計算制度について語っているのだ。まず前提としてこういった相違点があることを理解してほしい。

また、この一般基準は基準というより”注意事項”とか”補足”といった感じだ。噛み砕いてみよう。

(一)財務諸表の作成に役立つために

原文

  1.  原価計算は、原価を一定の給付にかかわらせて集計し、製品原価および期間原価を計算する。すなわち、原価計算は原則として
     (1) すべての製造原価要素を製品に集計し、損益計算書上売上品の製造原価を売上高に対応させ、貸借対照表上仕掛品、半製品、製品等の製造原価をたな卸資産として計上することを可能にさせ、
     (2) また、販売費および一般管理費を計算し、これを損益計算書上期間原価として当該期間の売上高に対応させる。
  2. 原価の数値は、財務会計の原始記録、信頼しうる統計資料等によって、その信ぴょう性が確保されるものでなければならない。このため原価計算は、原則として実際原価を計算する。この場合、実際原価を計算することは、必ずしも原価を取得価格をもって計算することを意味しないで、予定価格等をもって計算することもできる。また必要ある場合には、製品原価を標準原価をもって計算し、これを財務諸表に提供することもできる。
  3. 原価計算において、原価を予定価格等又は標準原価をもって計算する場合には、これと原価の実際発生額との差異は、これを財務会計上適正に処理しなければならない。
  4. 原価計算は、財務会計機構と有機的に結合して行なわれるものとする。このために勘定組織には、原価に関する細分記録を統括する諸勘定を設ける。

噛み砕き解説

原価計算を財務諸表の作成に役立たせるためには、こんなことに注意してね、という内容が書かれている。これまでの記述の繰り返しの部分も多く、出題頻度もさほど高くはない。 その中でも比較的重要と思われる箇所を解説しよう。

まず、1.(1)の「すべての製造原価要素を製品に集計し」という箇所だ。これは要する財務諸表に載せるからには、直接原価計算ではなくて全部原価計算を使ってねということを言っている。そして、この1.(1)の製品原価とは、第四項「原価の諸概念」(二)で言う所の製品原価のことであり、1.(2)の販管費は期間原価のことだ。繰り返し説明がされているわけだ。

2.についても第四項「原価の諸概念」(一)「実際原価と標準原価」と部分的にかぶっている。要は、財務諸表に載せる製品原価には、実際原価または標準原価を用いるよう要請している。そして、実際原価は、厳密に言えば実際の取得原価×実際消費量なのだけれども、仮に予定価格を使ったとしても実際消費量で計算したのなら、それも実際原価だと言っている。

3.は、予定原価又は標準原価を用いると原価差異が発生するわけだけれど、これを財務会計上適正に処理してくれと言っている。そうしないと、財務諸表に載せられないよと。ちなみに、この会計処理については、第四七項「原価差異の会計処理」に具体的な計算手続きが載っている。

(二)原価管理に役立つために

原文

  1. 原価計算は、経営における管理の権限と責任の委譲を前提とし、作業区分等に基づく部門を管理責任の区分とし、各部門における作業の原価を計算し、各管理区分における原価発生の責任を明らかにさせる。
  2. 原価計算は、原価要素を、機能別に、また直接費と間接費、固定費と変動費、管理可能費と管理不能費の区分に基づいて分類し、計算する。
  3. 原価計算は、原価の標準の設定、指示から原価の報告に至るまでのすべての計算過程を通じて、原価の物量を測定表示することに重点をおく。
  4. 原価の標準は、原価発生の責任を明らかにし、原価能率を判定する尺度として、これを設定する。原価の標準は、過去の実際原価をもってすることができるが、理想的には、標準原価として設定する。
  5. 原価計算は、原価の実績を、標準と対照比較しうるように計算記録する。
  6. 原価の標準と実績との差異は、これを分析し、報告する。
  7. 原価計算は、原価管理の必要性に応じて、重点的、経済的に、かつ、迅速にこれを行なう。

噛み砕き解説

ここは、結構大切だ。原価計算を原価管理に役立たせるための要請事項だ。特に大切なのは7と8だろう。そもそも何のために原価管理をしているのか。それは、原価の標準を設定して、原価の物量を測定表示するためだと言っている。つまり、ざっくり言えば、価格差異はあまり重要ではなく、数量差異が大事だと言っているわけだ。

標準的にはこれくらいの消費量でいけるはずだというのを設定して、それに対して実際は何キロとか何時間消費してしまった、という”物量”の測定に重点が置かれている、というのは是非知って欲しい。金額ではなく物量だ。日商簿記の本試験でもこの部分は過去に2回くらい出題されている。重要だ。

そして、この原価標準を設定するのは、原価発生の責任を明らかにして原価能率を判定するためだ、というのを押さえておこう。いわゆる責任会計のことだ。これは、5の記述からも読み取れる。

ちょっと理解しにくいのが、8の「原価の標準は、”過去の実際原価”をもってすることができるが、理想的には、”標準原価”として設定」という箇所だろう。

ここで言う”過去の実際原価”というのは、つまり過去の実績としてどれくらいの原価だったから、原価標準はこれくらいだろう、というニュアンスだ。つまり勘にもとづく見積りに近い。努力の匂いがしないのだ。それに対してここで言う”標準原価”とは、いわゆる「科学的、統計的調査にもとづいて、能率良くやればこれくらいで出来るはず」という前提で設定された原価のことだ。

当然、標準原価の方が、原価管理には有用なのだけれど、当時(50年以上前)の時代背景を考えるとあまり厳しいことを言うと、そもそも原価管理を面倒がってやらない企業が増えてしまうので、少しゆるくしている(見積レベルの原価も許容している)のだ。

(三)予算とくに費用予算の編成ならびに予算統制に役立つために

原文

  1. 原価計算は、予算期間において期待されうる条件に基づく予定原価又は標準原価を計算し、予算とくに、費用予算の編成に資料を提供するとともに、予算と対照比較しうるように原価の実績を計算し、もって予算統制に資料を提供する。

噛み砕き解説

ここも、そこそこ大切だ。用語とその意味するところを押さえよう。まず、予算編成と予算統制という用語の意味は大丈夫だろうか。予算編成というのは、予算を組むこと、予算統制というのは、いわゆる予算実績差異分析のことだ。

予算を組むにあたっては、予算期間(短期なら数ヶ月とか、通常は1年間とか、中期経営計画だと5年とか)において、ある製品がだいたいいくらの原価で製造できて、それをいくらでどれくらいの量、販売するのかを決めないといけない。そのさいに、原価計算は役立つよと言っている。

さらに、実績が判明したら、予算と比較して、その差異を分析して、レポートすることが出来るよと言っている。原価計算はそんなことにも役立つからね、ということだ。

ここは、予算期間、予算編成、予算統制といったあたりの用語をきちんと押さえよう。 

ここまでが第1章

ここまでの6項目が第1章だ。原価計算基準は全部で47項目あるけれど、ここまでの6項目が最重要だ。ここまでをしっかり押さえれば、これだけで、原価計算基準全体の半分くらいは終わったようなものだ(試験対策上の意味合いで)。

ここまでで紹介した6項目は、重要ワードを押さえることはもちろんのこと、その本質的な意味もあわせて理解する必要がある。単純な暗記に走らないで(いや、暗記を否定しているわけではないよ。理論対策に暗記は必須だよ)、必ず意味を押さえるようにしよう。理解は暗記を大いに助けてくれる。

なお、第2章以降は、具体的な計算処理や手続きが中心となる。重要箇所は決まっているから、キーワードを押さえれば十分だ。これまでよりはだいぶ楽になるはずだ。

第2章の解説はこちら

こちらからどうぞ。

噛み砕けば簡単!原価計算基準・第6回講義


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