噛み砕けば簡単!原価計算基準・第2回講義

原価計算基準

第一章・第二項「原価計算制度」

第二項は第一章の中でも一番解釈が難しいところだと思う。前提となる知識がないとなかなか理解しにくいところだ。噛み砕いて説明しよう。

原価計算と原価計算制度、似ているようで微妙に違う

まずは前半部分を見ていこう。

この基準において原価計算とは,制度としての原価計算をいう。原価計算制度は財務諸表の作成,原価管理,予算統制等の異なる目的が,重点の相違はあるが相ともに達成されるべき一定の計算秩序である。かかるものとして原価計算制度は,財務会計機構のらち外において随時断片的に行なわれる原価の統計的,技術的計算ないし調査ではなくて,財務会計機構と有機的に結びつき常時継続的に行なわれる計算体系である。原価計算制度は,この意味で原価会計にほかならない。

長くて読みくいのは重々承知だ。だけど、ちょっと頑張って読んでみて欲しい。特に「原価計算制度は財務諸表の作成,原価管理,予算統制等の異なる目的が,重点の相違はあるが相ともに達成されるべき一定の計算秩序である」が大切だ。

ここ、先に学習した「第一項 原価計算の目的」と比べて、微妙に差があることにお気付きだろうか。まあ、普通は気付かないよね。実はそこがポイントだ。

「第一項 原価計算の目的」には、①財務諸表作成目的、②価格計算目的、③原価管理目的、④予算管理目的、⑤基本計画設定目的の5つが書かれていた。それが「第二項 原価計算制度」では微妙に変化している。「原価計算制度は財務諸表の作成,原価管理,予算統制等の異なる目的が…<中略>…」と書かれている。

あれ、②価格決定目的と⑤基本計画設定目的はどこへいったの?と思わないだろうか。さらに④も「第一項 原価計算の目的」では、予算編成と予算統制をあわせた予算管理を目的としています、といっていたのに、第二項では「予算統制」に限定している。うーん、この微妙な違いは何だろう。

ここを深堀すると、この章が理解できるようになるんだ。

よくよく読むと、第一項は「原価計算の目的」だけど第二項は「原価計算制度」だ。方や「制度」の2文字がついているけどもう方にはついていない。ここがポイント。

つまり、単に原価計算というと5つ目的があるけど、原価計算制度というと、そのうちの一部に限定されるんだ。制度が付くか付かないかでえらい違いだ。あくまでも第二項は「制度」の話をしている。原価計算と原価計算制度は似ているようで微妙に違うもの。まずは、この前提がわかっていないと、第二項は読みこなせない。

では原価計算制度とは何か

では、原価計算制度とは何だろうか。これについては、後段に「原価計算制度は,…<中略>…財務会計機構と有機的に結びつき常時継続的に行なわれる計算体系である」と書かれている。

つまり、原価計算制度といったら、あくまでも財務会計と結びついて常時継続的に行われる(これは、毎日、経理の人が伝票を整理しているイメージがわかりやすいと思う)計算のことを指すよ、と言っているんだ。さらに、「原価計算制度は,この意味で原価会計にほかならない」とまで言っている。つまり、あくまでも財務会計に結びつく原価計算のルールのことを原価計算制度といいますよ、と宣言しているんだ。

特殊原価調査

では、原価計算制度に入れなかった原価計算はどういう扱いなのだろうか。これについては「財務会計機構のらち外において随時断片的に行なわれる原価の統計的,技術的計算ないし調査」と表現されている。つまり、財務会計(イメージとしては経理の人が日々記帳している様子)とは関係なく、随時断片的に(つまり普段はやらないけど、必要になったらその都度)やる統計的で技術的な計算ですよ、という扱いだ。

これが、第一項では入っていたのに、第二項では省かれた目的だ。具体的には②価格決定目的と⑤基本計画設定目的と④予算管理目的のうちの予算編成だ。(②価格決定目的は、正確には少しニュアンスが違う。詳細は第一項の解説を参照のこと。)

これ、日商簿記の試験科目で言えば主にCVP分析とか意思決定会計のことだよね。そういうイメージで読んでほしい。これらについては、第二項の最終部分に、次のように書かれている。

広い意味での原価の計算には,原価計算制度以外に,経営の基本計画および予算編成における選択的事項の決定に必要な特殊の原価たとえば差額原価,機会原価,付加原価等を,随時に統計的,技術的に調査測定することも含まれる。しかしかかる特殊原価調査は,制度としての原価計算の範囲外に属するものとして,この基準に含めない。

つまり、CVP分析とか意思決定会計のことを原価計算基準では「特殊原価調査」と呼んでいるんだ。そして、なんと「この基準には含めない」と書かれている。つまり、CVP分析とか意思決定会計は、少なくとも原価計算基準で「こういう風に計算せよ」と規定されているわけではないんだ、この前提はとても大事なのでしっかり押さえてほしい。

つまり原価計算基準でいうところの原価計算とは

原価計算=原価計算制度+特殊原価調査

ということだ。そして、原価計算基準では、特殊原価調査について規定しないとしている。よって、原価計算基準において単に「原価計算」といったら、それは「原価計算制度」のことですよ、と冒頭で宣言しちゃっている。混乱するよね。

さらに混乱を招くのは、特殊原価調査(CVP分析とか意思決定会計など)は、日商簿記では「原価計算」と呼ばれる試験科目で出題される。これらは、原価計算基準では原価計算から仲間はずれにされた目的だ。「おまえらは特殊原価調査であって、原価計算制度じゃないからね」と。なのに試験科目名は「原価計算」なのだ。このあたりをきちんと分かっていないと混乱することだろう。

まあ、その意味では、日商簿記の試験科目名「原価計算」は「管理会計」とすべきだよなぁ、と個人的には思うのだが…まあいろいろ事情があるのだろう。

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第二項の原価計算制度にはもう1つ大事なことが書かれている

この項のもっとも言いたいことは、原価計算は、原価計算制度と特殊原価調査からなっている、そして、原価計算基準は原価計算制度だけを相手にするよ、ということなのだが、もう1つ大事なことが書かれている。

それは、原価計算制度(つまり財務会計機構と結びついている方)が、財務会計機構がどう結びついているのか、ということについて書かれているのだ。

上記には「有機的に結びつき」と書かれているが、正直、それだけだと、なんじゃそりゃという感じだ。これについて、誤解を恐れずに噛み砕いてみよう。

つまり、イメージとしては、こうだ。もともと原価計算制度は財務会計側から情報をもらわないと何もできない。つまり、材料はいついくらでどれだけ買ったといった情報が無いと計算のしようがない。そして、財務会計側からもらった情報を、こねくり回して、製品原価なり仕掛品原価を計算するわけだ。これをまた、財務会計側に戻してあげないといけない。こういう風に、財務会計側から情報をもらって、出来上がった情報を財務会計側に返しますよ、さらにその途中過程も、ちゃんと帳簿に残しますよ、という状態を「有機的に結びついている」と言っているのだ。

さて、ここで、じゃあ、どうやって財務会計側から情報をもらって、財務会計側に情報を返すのか、という点について第二項では次のように書かれている。

原価計算制度において計算される原価の種類およびこれと財務会計機構との結びつきは,単一ではないが,しかし原価計算制度を大別して実際原価計算制度と標準原価計算制度とに分類することができる。

つまり、実際原価計算制度または標準原価計算制度を使って、財務会計側とやりとりしますよ、ということだ。

実際原価計算制度について

実際原価計算制度についてはこう書かれている。

実際原価計算制度は,製品の実際原価を計算し,これを財務会計の主要帳簿に組み入れ,製品原価の計算と財務会計とが,実際原価をもって有機的に結合する原価計算制度である。原価管理上必要ある場合には,実際原価計算制度においても必要な原価の標準を勘定組織のわく外において設定し,これと実際との差異を分析し,報告することがある。

つまり、製品原価は実際原価で計算して、これを帳簿に書くよ、ってことだ。こういう風に実際原価によって財務会計側と結びつく原価計算制度のことを「実際原価計算制度」といっている。

なお、とても細かいことなんだけど、「実際原価計算」と「実際原価計算制度」は違うってこと、分かるだろうか。実際原価計算は、その名のとおり、実際原価を使って計算することだ。だから、標準原価計算制度を用いていても、当然に実際原価計算は行っている。そうしないと原価差異とか出せないし。そして「実際原価計算制度」は、あくまでも財務会計側とどう結びつくかという点で、原価計算制度を規定したものだ。まあ、試験には出ないと思うけど、ちょっと意識しておくといいかもしれない。

後段の「原価管理上必要ある場合には,実際原価計算制度においても必要な原価の標準を勘定組織のわく外において設定し,これと実際との差異を分析し,報告することがある」は気にしなくていい。これは、つまり帳簿には残さないけど、原価管理のため「本来これだけの量でできるはずなのに、こんなに無駄があったよ」なんてことを記録しておくこともあるよね、と言っている。でも、帳簿に残さないのでこれは標準原価計算じゃなくて実際原価計算だよと言っている。これは、たぶん日商の試験では出ないのでスルーしていい。

パンダ ありがたい。

標準原価計算制度について

標準原価計算制度についてはこう書かれている。

標準原価計算制度は,製品の標準原価を計算し,これを財務会計の主要帳簿に組み入れ,製品原価の計算と財務会計とが,標準原価をもって有機的に結合する原価計算制度である。標準原価計算制度は,必要な計算段階において実際原価を計算し,これと標準との差異を分析し,報告する計算体系である。

製品原価は標準原価で計算して、これを帳簿に書くよ、ってことだ。こういう風に財務会計側と結びつく原価計算制度のことを「標準原価計算制度」といっている。

そして、最後にこう書かれている。

企業が,この基準にのっとって,原価計算を実施するに当たっては,上述の意味における実際原価計算制度又は標準原価計算制度のいずれかを,当該企業が原価計算を行なう目的の重点,その他企業の個々の条件に応じて適用するものとする。

つまり、どっちを使ってもいいよと。それは、個々の企業の原価計算を行うメイン目的とか条件によって決めてね、ということだ。

第一章・第三項「原価の本質」の解説はこちら

第一章・第三項「原価の本質」の解説はこちらからどうぞ。

噛み砕けば簡単!原価計算基準・第3回講義


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