会計の超重要基本概念を超基礎から学ぶ2

会計の超重要基本概念を超基礎から学ぶ2

企業会計原則、読んでる?
「一般原則」「損益計算書原則」「貸借対照表原則」の3つの章があるけど、多分、一般原則をざっとやって、損益計算書原則、貸借対照表原則はサラッと流している感じじゃないだろうか。ここ、結構大事だよ。以下は企業会計原則のお勧めベスト7だ。

  • 損益計算書の本質(損益計算書原則一)
  • 発生主義の原則(損益計算書原則一A)
  • 費用収益対応の原則(損益計算書原則一C)
  • 貸借対照表の本質(貸借対照表原則一)
  • 資産の貸借対照表価額(貸借対照表原則五)
  • 繰延資産(注解15)
  • 引当金(注解18)

もし可能なら、これらは暗記するくらいの気持ちで読んでもいいと思う。私は、暗記反対派だけど、これらは別格。理論問題で出題される可能性もあるし、そもそも、会計の基本概念そのものだ。暗記は辛いとしても、少なくとも、何を言っているのか本質的な意味は知っておこう。今回はこの中から損益計算書原則を噛み砕いてみる。

収益費用アプローチと資産負債アプローチ

ちなみにだけど、企業会計原則って損益計算書と貸借対照表のどちらを大切に考えていると思う?え?優劣あるの?と思った人もいるかもしれない。あるんだよこれが。優劣という言い方が適切かどうかは分からないけど、優先している利益の測定方法というのがある。前提として利益の測定方法には、次の2つがあることは知っているよね?(知らなかったら今、覚えよう。これは知っておいた方がいい。)

  • 収益費用アプローチ
    収益と費用を中心としてその差から利益を測定
  • 資産負債アプローチ
    前期の純資産と当期の純資産の差額から利益を測定

収益費用アプローチは、先に「費用とはこういうもの、収益とはこういうもの」と定義して、費用と収益の差から利益を計算する方法。それをB/Sの純資産にくっつけておしまい、という流れ。普段やっていることだよね。企業会計原則は、まさにこの収益費用アプローチに立脚している。

寄り道するけど、概念フレームワークってあるよね。あれは、資産負債アプローチに近い考え方だ。先に「資産とはこういうもの、負債とはこういうもの」「純資産は資産と負債の差額」と定義する。そして前期と当期の純資産の差額から利益を測定する。これが包括利益。

この時点ではまだ、収益とか費用の定義は出てこない。この包括利益のうち「リスクから解放された投資の成果」部分が純利益。そして、純利益を増加させる項目を収益、減少させる項目を費用と定義している。つまり、B/Sから利益を定義して、その利益から収益と費用を定義しているわけ。さっきと流れが逆でしょ。これが今の時流ね。企業会計原則はちょっと古いんだよね。

でも、現時点における実際の会計処理の多くは、収益費用アプローチに立脚している。だから、まずはベースとして収益費用アプローチをしっかりおさえよう。

損益計算書の本質

さて、企業会計原則は収益費用アプローチに立脚していることは分かった。だから企業会計原則は、損益計算書原則を先に登場させているんだ。では「損益計算書原則一 損益計算書の本質」から見ていこう。

損益計算書原則一、損益計算書の本質
損益計算書は、企業の経営成績を明らかにするため、一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用とを記載して経常利益を表示し、これに特別損益に属する項目を加減して当期純利益を表示しなければならない。

大切なポイントは2つ。「損益計算書は、企業の経営成績を明らかにする」と「一会計期間に属するすべての収益とこれに対応するすべての費用を記載し」の2箇所だ。特に後半が大事。収益と費用を「いつ」認識し「いくら」で測定するか、これが問題なんだ。

発生主義

そこで、登場するのが「発生主義の原則」だ。

損益計算書原則一A、発生主義の原則
すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。・・・

こんな短い文章の中に大事なポイントが2つ詰まっている。

1つは費用と収益を「いくら」で測定するかについてだ。これは「支出及び収入に基づいて計上」しろ、といっている。勘違いしちゃいけないのは「基づいて計上」と言っているだけで、その収支額自体を計上しろと言っているわけじゃないということ。つまり検証出来るちゃんとした記録に基づいて計算してね、くらいのイメージだ。

2つ目のポイントは「その発生した期間に正しく割当てられる」の箇所だ。ここが発生主義と言われるゆえんだ。つまり費用も収益も、現金収支ではなく、発生したという事実に基づいて認識しなさい、と言っている。ここでちょっと問題がある。企業会計原則は、そこまで言っておきながら「じゃあ発生とは何か?」について定義していない。まあ、ここで発生とは、企業活動にともなって経済的価値が増えたり減ったりしたという事実、くらいに思っておけばいい。

まとめると、費用と収益は「額」については、現金収支に基づくけど、それを認識するタイミングは、価値の増減に基づきなさい、ということだ。そして、費用も収益も、その発生した期間に正しく割当てくださいね、と指示している。

具体例としては、1年分家賃を支払ったら、その支払額に基づいて費用の額を計上するけど、半年後に決算がきたら半分だけ費用としてP/Lに載せてね、ということだ。まずは、ここまでの2つのポイントを押さえよう。

実現主義

実は、損益計算書原則一Aには続きがある。

損益計算書原則一A
すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。

この「ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。」は、おいおい、今更何言ってるんだよって感じだ。ちょっと整理しよう。費用は、発生主義でいい。で、収益も、とりあえず発生主義で認識はする。しかし、もしそれが実現されていないなら、P/Lには載せるな、ということらしい。ん?じゃあ実現って何なのよ、ということだ。

実現については、テキストにも載っているし講義でもやっているはずだから、知っている人も多いことだろう。ここで実現とは「財貨やサービスが相手に引き渡されて」「対価(現金や売掛金など)を得たこと」という状態のことだ。こういう状態になっていないなら、その収益は、P/Lには載せるな、ということ。

分かりにくいよね。ちょっと具体例で考えてみよう。

もしも収益が発生主義だったら

あなたは、1個100円で、ある植物の苗を買ってきた。仕訳にすれば (材料)100(現金)100 って感じかな。で、毎日水を上げた。この植物の苗は、最初1cmの大きさで、毎日1cm成長する。10日後には10cmになって出荷できる。これは、1,000円で売れる。

さて、この植物、毎日成長しているわけだ。発生主義に基づけば、これは収益を認識すべきだろう。だって経済的価値、増えているでしょ、毎日、どんどん成長しているんだから。で、10日後には1,000円で売れるんだから毎日100円づつ収益を認識してもよさそうだ。これが発生主義による考え方だ。

でも、この収益はP/Lには載せられない。たしかに経済的価値は増えているから収益は認識出来る。だけど、実現していないでしょ。まだ売れてない。引き渡しもしてないし、対価も得てない。いくら、小さな苗が立派に成長しても、この収益は未実現だからP/Lには載せないよ、と言っているわけ。

ということで、要するに、「発生主義は実質的に費用を認識するための基準」「実現主義は収益を認識するための基準」と考えていい。収益は、発生主義に基づいて認識は出来ても、未実現だとP/Lに載せられないからね。

どうだろう。言ってること、分かる?ここ、超分かりにくいんだよね。文言は暗記しなくていいいけど、是非、どういう意味かは理解してほしい。

費用収益対応の原則

さて、本記事の最後の項目だ。損益計算書原則一Cを読んでみよう。

損益計算書原則一C、費用収益対応の原則
費用及び収益は、その発生源泉に従って明瞭に分類し、各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示しなければならない。

この短い文章のなかに2つのポイントがある。1つは「各収益項目とそれに関連する費用項目とを損益計算書に対応表示」だ。つまり、まずは、収益をP/Lに計上し(実現したものだけね)、それに関連する費用だけをP/Lに載せろと言っている。費用自体は発生主義で認識できたとしても、それが収益に対応していないのなら、P/Lに載せちゃいかんと。

具体的に言えば、どこかの工場の当期製造費用が100万円だったとしよう(期首仕掛品も期末仕掛品も無い)。これは発生主義に基づいて認識されたものだ。だけど作った製品の半分しか売れなかったとする。この場合、100万円は製造費用として認識はしたものの、収益に対応しているのは半分だけだから、50万円しかP/Lに載せちゃいけないよ、ということ。まあ当たり前だよね。商業簿記だったら「しいくりくりしい」のことだね。要するに普段当たり前にやってる会計処理は、この損益計算書原則一Cで定義されていたわけだ。

ちなみに、ここは、ちょっと注意点がある。収益に対応した費用だけをP/Lに載せろ、と言う点についてだ。上記のような売上原価は対応関係が明確(これを個別的対応という)だからいいよね。では、販管費はどうだろう。例えば事務員の給料とか広告費のうち、いくらが収益に対応しているんだろう。そんなの分かるわけない。ということで、これは、どうせ分からないから、その収益が発生したのと同じ期間に発生した費用は、対応しているとみなしましょう、というルールがある。これを期間的対応という。

2つ目のポイントは「発生源泉に従って明瞭に分類し」だ。利益が本業から得られたのか、それとも投資からなのかを発生源泉別に示しなさいね、ということ。いつものP/L見れば分かるよね。営業利益と経常利益のことね。ここまで押さえておけば、損益計算書原則一Cの費用収益対応の原則は大丈夫だろう。

最後に

ここまで、損益計算書原則の発生主義、実現主義、費用収益対応の原則について解説してきた。最後に、なぜ、こんなに七面倒臭いことをしなければいけないのかを考えてみよう。

それは、期間損益計算をしているからだ。発生主義も実現主義も、費用と収益を「いつ」認識するかという話だよね。言い換えればその費用と収益は、どの会計期間に帰属しているのか、という話だ。これ、もし、期間限定プロジェクトなら、どの会計期間に属しているかなんて問題にならない。プロジェクトが終わってから、収入と支出を精算すればおしまいだからだ。

期間限定プロジェクトじゃなくて企業は未来永劫続くと仮定しているからこそ、期間損益計算をしなければいけないわけだよね。これ、覚えている?会計公準の「継続企業の公準」のことだよ。こんな風にちゃんとつながっているんだ、ということを意識してほしい。 

会計の基本となる考え方の理解の答え

前々回の記事の「会計の基本となる考え方の理解」では、9つの課題を提示した。今回は、そのうちの3つについて解説した。

  • 2.発生主義と実現主義とは何か。費用収益対応の原則とは何か。損益計算書原則に用いられている用語ではなく、自分の言葉で噛み砕いて説明できる?
  • 5.会計公準を自分の言葉で説明できる?発生主義を採用するのは会計公準のどれのせい?
  • 7.論点の多くは「いつ」認識するか、「いくら」で測定すべきかをテーマにしているということを分かっている?では、発生主義と実現主義というのは、「いつ」と「いくら」のどちらの話をしている?

自分の言葉で人に説明できるレベルで腹落ちしただろうか。次の記事は、「1.そもそも会計とは何か、誰に何を知らせたいのか、自分の言葉で説明できる?」について書いてみる。


関連記事

会計の超重要基本概念を超基礎から学ぶ2” に対して1件のコメントがあります。

  1. きゃろる より:

    会計の基本概念に関し2回渡り説明して頂きありがとうございます。
    デリバティブ取引(ヘッジ会計)のところでの私の解答が勘違いどころか、ポイントがずれていて恥ずかしくなりました。ちゃんと理解していないから、質問の意図も理解できていなかったんだと思いました。
    でも、恥ずかしい思いをしたところは、記憶に残りやすいので、恥ずかしいとか気にせず、今後もコメント(ネタ提供!?)させていただきます。

    1. pro-boki より:

      >でも、恥ずかしい思いをしたところは、記憶に残りやすいので、恥ずかしいとか気にせず、今後もコメント(ネタ提供!?)させていただきます。

      講師としては、きゃろるさんくらいのレベルは、やりやすいというかネタにしやすくていいです。ああ、こういうふうに勘違いしているんだなぁ、っていうのが分かって、ありがたいです(笑)

      ちなみに、「こんなこと聞いたら恥ずかしいかな」っていうふうにいかに思わせないかっていうのは、講師として一番心がけているところです。積極的に質問しない人は、やっぱり伸びないですから。でも、あんまり親切にしすぎると「自分で考えるのが面倒だから聞いちゃえ」になっちゃう人も出てくる。そうなると、これまた力が付かない。質問対応は、なかなか難しいんです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です