1級ミニテスト・連結会計の成果連結3(貸倒引当金の修正)

連結会計のミニテスト(貸倒引当金の修正)

連結会計・成果連結で貸倒引当金の修正が分からないという質問が来たので記事にしてみた。これ、棚卸資産の未実現利益の消去仕訳とまるで考え方一緒だ。忘れちゃった人は、以前の記事とあわせて、本記事を読んで欲しい。

問題

P社はS社の発行済株式の80%を取得し支配を獲得している。次の取引にもとづいて、当期の連結F/Sを作成するための連結修正仕訳を示しなさい。なお、法人税等税率を40%として税効果を考慮すること。

【取引】
S社の当期の貸借対照表にはP社に対する売掛金50,000円が計上されている。また、S社の前期の貸借対照表にはP社に対する売掛金30,000円が計上されている。売掛金には毎期5%の貸倒引当金を差額補充法により設定している。

解答

貸倒引当金の修正

(買掛金) 50,000 (売掛金) 50,000
(貸引) 2,500 (利首) 1,500
    (貸繰)  1,000
(利首) 600 (税負)   1,000
(法調) 400    
(利首) 180 (非首) 180
(非PL) 120 (非当) 120

貸引:貸倒引当金
貸繰:貸倒引当金繰入額
利首:利益剰余金当期首残高
税負:繰延税金負債

法調:法人税等調整額
非首:非支配株主持分当期首残高

非当:非支配株主持分当期変動額
非PL:非支配株主に帰属する当期純損益

解説

連結会計のミニテスト1とほとんど同じ考え方で解けるよ。まあ、ミニテスト1は商品が対象で、本問は貸倒引当金が対象だから、貸借が逆になるけど、考え方は一緒。消去する項目の片方がPL科目でもう片方がBS科目のパターンはみんな一緒なんだ。

貸倒引当金の修正

Step.1 売掛金と買掛金の消去

まず、売掛金と買掛金を消去する。これは、両方ともBS科目なので消去するだけでおしまい。

(買掛金) 50,000 (売掛金) 50,000

Step.2 貸倒引当金の修正

売掛金50,000円が消えるなら、貸倒引当金50,000円×5%=2,500円の消去も必要だ。よって、貸倒引当金を減らすから借方に計上する。・・・①

この2,500円の貸倒引当金を取り消す根拠として、全額が当期発生なら、貸倒引当金繰入額で手当すればいいが、前期にも30,000円の売掛金があったのだから、前期末にも貸倒引当金30,000円×5%=1,500円があったはずだ。それで手当できるわけだ。これは前期だから利益剰余金当期首残高で手当する・・・②

それでも足りない分1,000円は、当期の分、つまり貸倒引当金繰入で手当する。・・・③

①(貸引) 2,500 ②(利首) 1,500
    ③(貸繰) 1,000

これ、棚卸商品の未実現利益の消去仕訳の「Step.1 相殺消去」と同じ考え方だからね。売上原価が貸倒引当金繰入額に、商品が貸倒引当金になっただけ。(まあ片方は資産で、もう片方は負債だから貸借は逆になるけど)

もしもダウンストリームで税効果もなければ、ここでおしまいだ。

Step.3 税効果に対応

税効果への対応も、棚卸資産のときと同様だ。借方もしくは貸方に損益が残るような仕訳は、税効果の対象となる。以下の仕訳で言えば、②の利益剰余金当期首残高と③の貸倒引当金繰入額だ。

まず②の利益剰余金当期首残高の40%分、インパクトが弱まる方向に税効果が働く。よって、利益剰余金当期首残高のうち600円が、借方に計上される。・・・④

さらに③の貸倒引当金繰入額の40%分、インパクトが弱まる方向に税効果が働く。よって、400円が、借方に計上される。これは、当期分なので勘定科目は法人税等調整額だ。・・・⑤

そして、税効果会計の相手勘定は貸方残だから⑥繰延税金負債だ。

①(貸引) 2,500 ②(利首) 1,500
    ③(貸繰)  1,000
④(利首) 600 ⑥(税負)  1,000
⑤(法調) 400    

ここも、棚卸商品の未実現利益の消去仕訳の「Step.2 税効果に対応」と全く同じ考え方だからね。腑に落ちない人はちゃんと確認してね。

もしもアップストリームでなければ、ここでおしまいだ。

Step.4 アップストリームに対応

最後にアップストリームの対応だ。これも棚卸資産のときと全く同じだ。借方もしくは貸方に残っている損益のインパクトを弱めるように仕訳を切ればいい。具体的には、次の2つだ。

  • 前期分:②利益剰余金当期首残高1,500円−④利益剰余金当期首残高600円=900円
  • 当期分:③貸倒引当金繰入額1,000円−⑤法人税等調整額400円=600円

まず、前期分の900円のうち、20%分が非支配株主によってインパクトを弱められる。よって利益剰余金当期首残高のうち180円が借方にくる(⑦)。相手勘定は前期分なので、⑧非支配株主持分当期首残高だ。

一方、当期分600円のうち、20%分も非支配株主によってインパクトを弱められる。よって非支配株主に帰属する当期純損益120円が借方にくる(⑨)。相手勘定は当期分なので、⑩非支配株主持分当期変動額だ。

①(貸引) 2,500 ②(利首) 1,500
    ③(貸繰)  1,000
④(利首) 600 ⑥(税負)  1,000
⑤(法調) 400    
⑦(利首) 180 ⑧(非首)  180
⑨(非PL) 120 ⑩(非当)  120

しつこいようだが、これも棚卸商品の未実現利益の消去仕訳の「Step.3 アップストリームに対応」と全く同じ考え方だからね。腑に落ちない人はちゃんと確認してね。

最後に

以上、棚卸資産も、償却固定資産も、貸倒引当金も、ほとんど同じ手順で解けることを理解して頂けただろうか。1級の本試験で出題される成果連結の問題は、ほとんどどれも同じパターンで解くことができる。

この解法をまだ知らない人は、1日掛けてでもマスターすることをおすすめする。

成果連結の黄金の解き方パターン

こういうの書くと「じゃあ、これだけ暗記すればいいのか」と思われちゃうので、本当は、書くのどうしようか迷ったんだけど、まあ連結に限っては、暗記でもいいのかなという思いもあるので書いてみる。今までの解き方をまとめたものだ。

Step.1 まずはBS科目を消す

注意してほしいのは、BS科目同士の消去(例えば、買掛金/売掛金のような仕訳)や、PL科目同士の消去(例えば、売上/売上原価のような仕訳)は問題にならないということ。BS科目をPL科目で消去するパターンが問題となる。

手順としては、まず、BS科目を消去する。つまり、もし資産(商品とか土地とか)なら貸方に、負債(貸倒引当金)なら借方に計上する。

Step.2 続いてPL科目を消す

相手のPL科目を考える。ここは、当期分の影響しかないのか、前期分の影響もあるのか、注意が必要だ。

例えば期中に土地を売却しただけなら、当期分の売却益を消すだけでいい。だけど商品の未実現利益を消すとなると、期末在庫(つまり当期分)と期首在庫(つまり前期分)を考慮しなければいけない。同様に貸倒引当金を消すとなると、当期末の売掛金残高の分と、前期末の売掛金残高の分を考慮しなければいけない。

ここで、当期分のPL科目は各自考えて欲しい。例えば、商品なら売上原価だし、貸倒引当金なら貸倒引当金繰入額、減価償却累計額なら減価償却費だ。

そして、前期分のPL科目は、必ず、利益剰余金当期首残高だ。前期のPL科目はもう決算を超えているので、繰越利益剰余金に振り替えられているからだ。

税効果もなく、ダウンストリームならここでおしまいだ。

Step.3 税効果に対応

税効果もパターン化されている。

Step.2のPL科目のインパクトを弱める方向で仕訳を切ればいい。つまり、税率を40%とすると、前期分と当期分のそれぞれ、40%を貸借逆に計上すればいいだけだ。科目は、前期分は必ず利益剰余金当期首残高、当期分は、法人税等調整額だ。これも必ずだ。

そして、相手勘定は、繰延税金資産か繰延税金負債になる。もしダウンストリームならここでおしまいだ。

Step.4 アップストリームに対応

これもパターン化されている。

Step.3でPL科目のインパクトを40%弱めたわけだが、まだ60%残っている。この残ったPL科目のインパクトをさらに弱める方向で仕訳を切ればいい。つまり、さきほど税金によってインパクトが弱められたわけだが、今度は非支配株主によってインパクトが弱められるのだ。

つまり、最初の仕訳(Step.2の仕訳)に対して、前期分と当期分のそれぞれ、0.6×非支配株主持分を貸借逆に計上すればいいだけだ。科目は、前期分は必ず利益剰余金当期首残高、当期分は、非支配株主に帰属する当期純損益だ。これは必ずだ。

そして、利益剰余金当期首残高の相手勘定は非支配株主持分当期首残高、非支配株主に帰属する当期純損益の相手勘定は非支配株主持分当期変動額になる。これも必ずだ。

まとめ

以上をまとめると、勘定科目で考えなければいけないのは、Step.2で消去するBS科目に対応するPL科目だけで、あとは全て決まっているということだ。特にStep.3の税効果とStep.4のアップリストームは完全に勘定科目が決まってしまっている。よって、仕訳の理屈をおさえた後は暗記してしまった方が効率がいいかもしれない。


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1級ミニテスト・連結会計の成果連結3(貸倒引当金の修正)” に対して1件のコメントがあります。

  1. ひろりん より:

    Step3の⑤の解説の箇所ですが、600ではなく、400ではないでしょうか?

    1. pro-boki より:

      ひろりんさん
      そのとおりですね。ありがとうございます。修正しました。

    2. ひろりん より:

      pro-bokiさん

      訂正ありがとうございます。

      ところで、このやり方だとテキストなどに記載されてるやり方と比較して、シンプルで驚きました。試しに手元の問題集で、他の問題を解いてみましたが、すぐに仕訳をおこすことができました。

      期末はともかく、期首(前期末)が絡んでくるといつも混乱してました。

  2. きゃろる より:

    解説ありがとうございます。
    この方が覚えやすいです。
    N社のテキストには期首と期末が両方ある成果連結・貸倒引当金バージョンがなく、
    T社のテキストには期首と期末の仕訳を別々に処理する方法で覚えづらかったです。
    ちなみにT社のやり方で仕訳すると以下のようになるのですが、やっているうちにわけがわからなくなります。
    買掛 50,000            売掛 50,000
    貸倒引当金 1,500          利益剰余金当期首残高 1,500
    利益剰余金当期首残高 600   繰延税金負債 600
    利益剰余金当期首残高 180   非支配株主持分当期首残高 180
    貸倒引当金 1,000  貸倒引当金 1,000
    法人税等調整額 400  繰延税金負債 400
    非支配株主に帰属する当期純損益 120 非支配株主持分当期変動額 120

    1. pro-boki より:

      できれば、このT社のやり方の意味を理解すると、応用が効くようになって、よりいいかもしれません。でも、厳しいですよね。私も受験生のときはよく分かってなくて、暗記で乗り切りました。それでも何とかなります。連結に限っては。合格して、講師になってからですね、連結の本質的な意味が分かるようになったのは。

  3. ひろりん より:

    過去問を解いていて基本的なところにつまづいてしまい、改めて記事を読んでいます。

    上記取引の中の「S社の前期の貸借対照表にはP社に対する売掛金30,000円が計上されている」の部分ですが、これは当期に回収済み(実現した)と考えて、当期の売掛金に30,000円をプラスする、のは間違いですよね?

    期末に計上されている分は「買掛金/売掛金」で相殺消去するのはもちろんですが、期首の計上分でつまづいてしまいました。
    具体的には144回の会計学 問2で20,000を連結B/S作成時にプラスしてしまいました。

    それと、誤植かどうか確認していただきたいのですが、解説の貸倒引当金の修正 step2 で貸倒引当金を減らすから「貸方」に計上するとなってますが、これは「借方」の誤植でしょうか?
    ご確認お願いいたします。

    1. pro-boki より:

      >上記取引の中の「S社の前期の貸借対照表にはP社に対する売掛金30,000円が計上されている」の部分ですが、これは当期に回収済み(実現した)と考えて、当期の売掛金に30,000円をプラスする、のは間違いですよね?

      はい、間違いです。
      というか、結構、忘れちゃっている感じですかね?

      連結は、当期末の個別F/Sの合算に対して修正を加えるものです。
      前期のF/Sがどうなっているのかという途中経過は、基本的には関係ありません。
      そりゃあ、売掛金は動きますから、途中経過を見れば色々な金額になっていることでしょう。
      でも、たまたま前期末の売掛金が3万円だったからといって、当期末のF/Sに3万円加えるという処理は、理論的におかしいですよね。

      ただし。
      全く関係無いかというと、実は、関係する項目も一部ですが存在します。
      それが、棚卸資産の未実現利益や貸倒引当金です。

      本問の貸倒引当金について言えば、当期末の2,500円を消したいわけですが、
      これを全額、当期の貸倒引当金繰入で消していいか?という問題があるわけです。
      つまり、(借)貸倒引当金2,500(貸)貸倒引当金繰入2,500 としていいか?ということですね。

      違いますよね。貸倒引当金は、累積された結果ですから、前期末にも、いくらか設定されていて、それに当期分が繰り入れられた結果として2,500円になっているわけです。
      ですから、当期分の費用と、前期末における利益剰余金の両方を修正しないといけないのです。
      で、前期末の時点ではいくら設定されていたの?というのを計算する必要があり、そこで、前期末時点での売掛金の額が必要になるのです。

      連結の大前提は、当期末のF/Sに修正を加える、ということです。
      前期末のF/Sの額30,000円を直接、修正仕訳として使うことはありえません。

      ————————

      >それと、誤植かどうか確認していただきたいのですが、解説の貸倒引当金の修正 step2 で貸倒引当金を減らすから「貸方」に計上するとなってますが、これは「借方」の誤植でしょうか?

      はい、誤植ですね。修正しました。ご指摘ありがとうございます。

    2. ひろりん より:

      ありがとうございます。

      過去問も比較的安定して得点できるようになったものの、まだ基本的な
      ところにひっかかってしまってもどかしいです。
      連結も期首関連が絡むとまだ弱いです。

      期末に個別B/Sを合算するときの売掛金は、期中の取引の結果の
      金額なので、期首の連結間の売掛金の金額は連結修正仕訳には
      関係ないということですね。
      ただし、その売掛金に貸倒引当金が設定されていれば、それは
      累積的なものなので修正する必要がある、と。

      売掛金のことは納得できましたが、期首の貸倒引当金の修正が
      まだまだ苦手なので、こちらの記事をもう少し読み込んでみます。

  4. 茨木童子 より:

    pro-boki 様
    成果連結の仕訳で日が経つとすぐに忘れて困っておりました。
    記事を拝見させていただき、解答まで導き出せるようになりました。

    お礼を言いたく書き込みさせていただきました。
    ありがとうございました!

  5. にし方 より:

    はじめまして。
    半年前にこちらのサイトを見つけ、大変助かっております。
    今回は質問させて頂きます。

    某専門学校の教え方ですと、税効果の仕訳で

    「個別上で引当金を設定した際に繰延税金資産を計上してあるので、繰延税金資産を減額する」

    と教わったため、今の今までルーティーンで繰延税金資産を減額しておりました。
    しかしこちらの問題では繰延税金負債を計上していたため、迷ってしまったので質問させて頂きます。

    ・繰延税金資産を減額する→引当金が損金として認められない場合
    ・繰延税金負債を計上する→引当金が損金として認められる場合
    という考え方で良いでしょうか?

    もし本試験で出題された場合は、問題文から繰延税金資産と繰延税金負債のどちらを減額もしくは計上するか判断すべきでしょうか?

    どうぞよろしくお願いいたします。

    1. pro-boki より:

      >・繰延税金資産を減額する→引当金が損金として認められない場合
      >・繰延税金負債を計上する→引当金が損金として認められる場合
      >という考え方で良いでしょうか?

      はい、そのとおりです。

      >もし本試験で出題された場合は、問題文から繰延税金資産と繰延税金負債のどちらを減額もしくは計上するか判断すべきでしょうか?

      まあ、そういう問題が出たら対処すべきでしょうね。
      ただし、出ないような気はします。確か、前者タイプ(個別上で損金不算入があるケースの連結)は日商の過去問では出題実績ないはずです。大原の問題で見たことがあります。気のせいかもしれませんが。

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