いまの時期こそ簿記の基礎を固めよう

緊急じゃないけど重要なこと

本試験までまだ半年以上ある。もちろん、今から本気モードで1級の勉強をガシガシやるのもいいけれど、こういうときこそ、ちょっと基本に立ち返ってみよう。

余談だけど、仕事でも勉強でも、タスクは「緊急度」と「重要度」で次の4つに分けることが出来る。

  緊急度が低い 緊急度が高い
重要性が高い
重要性が低い

 

Aがもっと優先されるべきであることは言うまでもない。重要で今すぐやらなければならないなら最優先でやるべきだ。

一方、Dは場合によっては捨てていい。仕事にしても勉強にしてもそう。ここを捨てることで、より優先度の高いタスクをこなしてトータルでより高いパフォーマンスを目指す。正しい戦略だ。

問題なのは、BとCのどちらを優先するか?だ。多くの人はBを優先する。まあ「急ぎだから」とか言われると、それが重要かどうかよりも「とにかく、やらなきゃ」となってしまうのも分かる。

でも、長期的に見れば、Cが大事。一番大事かもしれない。だって、Aは誰だって最優先でやるのだから、そこでは差がつかない。結局、気付くと出世しているとか、合格しているって人は、Cをやっている人だ。

試験で言うと、重要ではないけど、出題可能性が少しある論点は、とりあえず試験前に押さえておこうとなる。これがBだ。一方、直接試験には出ないけど、簿記の根本的な考え方や基礎を再確認するというのは、Cだ。

結局、受かっている人はCをちゃんとやっている。

ただ、そうは言っても、本試験直前にそんなことをしている余裕がない。Cは今だからこそ出来るのだ。6月受験は、11月受験に比べて、勉強期間に1ヶ月以上の余裕がある。この1ヶ月を使って、基礎を鍛えよう。

今回の基礎簿記のテーマ

今回の基礎簿記テーマは2つだ。

  1. なぜ振替仕訳をするのか?
  2. 連結会計ではなぜ開始仕訳をしなければいけないのか?

関連性が薄いように見えるだろうけど、この2つは密接な関係がある。元をたどっていくと根っこは同じだ。そのためには「簿記一巡」を理解しておく必要がある。

簿記一巡の問題

さて、それでは問題だ。(←唐突だな)
3級レベルの問題だよ。出来るかな?(←煽ってどうする)

【問題】以下は簿記一巡(大陸式)を説明したものである。各問に答えなさい。

【開始手続】

① 開始仕訳
②( a )仕訳

【営業手続】

③ 仕訳
④ 転記

【決算手続】

⑤ 決算整理前残高試算表
⑥ 決算整理仕訳
⑦ 決算整理後残高試算表
⑧( b )仕訳

⑧-1 損益振替仕訳
⑧-2 利益振替仕訳
⑧-3 残高振替仕訳

⑨ 財務諸表

問1 カッコaとbに入る用語を答えなさい。
問2 ③で使われる補助簿の名称を2つ答えなさい。
問3 ④はどこに転記されるのか。転記される帳簿の名称を答えなさい。
問4 いわゆる決算書と呼ばれるものは上記のうちのどれか。該当番号をすべて答えなさい。
問5 帳簿の締切方法として英米式を採用したとする。この時、上記手続きのうち一部が省略される。その番号をすべて答えなさい。
問6 簿記一巡の中で、帳簿外で作成されるものはどれか。その番号をすべて答えなさい。

【解答】

問1 a:再振替 b:決算振替
問2 現金出納帳、当座預金出納帳、商品有高帳、
   仕入先元帳、得意先元帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳など
問3 総勘定元帳
問4 ⑨
問5 ①と⑧-3
問6 ⑤、⑦、⑨

【解説】

問1から問4までは、用語とか知識を問う問題なので、まあ大事と言えば大事だけど、覚えればそれまでなのでどうってことない。(ただ、1級勉強していますというなら問1〜問4は出来てほしい。これが出来ないということは、簿記3級レベルに穴があるってことで少し恥ずかしい。)

問5は、ちょっとマニアックな問題。全経上級とかに出そう。ただほとんどの企業が会計システムをIT化している現代において、帳簿組織はもう趣味的な問題と言える。その点でまあどうでもいいと言えばどうでもいい。

一番大切なのは問6だ。この帳簿上の手続きか帳簿外の手続きかを普段意識しているだろうか。多分していないだろう(そんなこと意識しなくてもたいていの問題は解けるし)。

でも、実はこれがとても大事な概念だ。見ていこう。

簿記一巡のイメージ図

よく簿記一巡といってテキストに示されるのは次のような図表だ。


まあ、これは確かにそのとおりだし何も間違えていないのだけど、どれが帳簿上の手続きでどれが帳簿外なのかが不明瞭だ。簿記の根っこを捕まえるなら、次のような図表で理解した方がいい。

これ、何を示したいかというと、帳簿上の手続きと帳簿外の手続きを完全に切り分けて考えようということだ。

帳簿上の手続きは、イメージとしては社内の経理担当者がもくもくと日々の取引を仕訳して総勘定元帳に転記しているイメージだ。大事なポイントは、帳簿は何十年も前から連綿と続いてきているものということ。今までも、そしてこれからもずっとつながっている。

一方、帳簿外の手続きというのは単発だ。連続していない。ここが大事。

たとえば、決算をする前に、ちゃんと総勘定元帳に転記できたかな?ということをチェックしたい。そのために、単発で作るのが決算整理前残高試算表だ。これを今後どうこうすることはない。使い終わったら捨てるイメージ。

財務諸表だって同じようなものだ。外部の人に経営成績と財政状態を公表するために単発で作るもの。これも外に出すために見栄えを整えてレポートとして出す。使い終わったら捨てるイメージ。

これとは別に、帳簿は連綿と続いている。単発ではない。企業のあらゆる取引を記録してずっと続いている。いま計上した数値は10年後にも影響を与える。このイメージを持ってほしい。

もし財務諸表を作らなくていいなら

さて、もし財務諸表を作らなくていいなら、やらなくていい会計処理はたくさんある。決算整理仕訳のほとんどはやる必要がない。

たとえば、こんな例を考えてみてほしい。

1/4/1〜3/3/31の2年間のプロジェクトがある。設備投資に1,000万円(2年終わったら価値は0)、材料費、労務費、経費に1,000万円、販管費に1,000万円かけて、製品を製造し、すべてを5,000万円で販売できたとする。仕入と売上は全て掛取引だが、2年以内にすべて現金決済するものとする。財務諸表を作りなさい。

さて当社の決算日は3/31だ。もし2/3/31に財務諸表を作らなくていいよと言われたとしよう。プロジェクトの終わる3/3/31に財務諸表を作ればいいよということだ。こうなると、極めて話は簡単になる。

  • P/Lは、収益5,000万円、費用3,000万円、利益2,000万円
  • B/Sは、借方:現金2,000万円、貸方:利益剰余金2,000万円

以上だ。仕訳なんて1つもやらずに財務諸表が作れてしまう。だけど、もし2/3/31という中途半端なタイミングで、財務諸表を作れと言われたらかなり面倒くさい。

たとえば、経費の中に保険料があるとして1/10/1に1年分の保険料を支払って「保険料12万円/現金12万円」と仕訳を切っていたとする。

さて、2/3/31の時点で財務諸表を作ると、保険料12万円全部が1年目の費用みたいに見えてしまう。外部の人に誤解を与えてしまうので、半分だけが費用ですよということを分からせる処理をしなければいけない。それが「前払保険料6万円/保険料6万円」という繰延処理の仕訳だ。面倒くさい。

設備だってそうだ。買ったときは、機械1,000万円/現金1,000万円として資産計上している。このまま2/3/31を迎えたとすると全く費用計上がされていない。財務諸表を作ると1年度の利益がやけに多く見えてしまう。この機械は2年で使い切るので、1年あたり500万円は費用なんですよと示したい。それが減価償却だ。正直面倒くさい。

つまり、繰延処理や減価償却は、あくまでも途中経過を財務諸表というレポートで示すために仕方なく行っている処理であって、もし、プロジェクトが終わるまで財務諸表を作らなくていいのなら、これらの処理なんて必要ないのだ。

本来、帳簿というのは、企業で起きた取引を淡々と記録していればいいわけで、それが連綿とつながっていることが大事だ。それなのに外部にレポートをするという余計な仕事が入ってきたばかりに、決算整理という処理を仕方なく行っている。そんなイメージを描いてほしい。

さきの保険料の繰延処理なんてその最たるもので、くどいけど最初から2年間のプロジェクトという視点でみれば別に「前払保険料6万円/保険料6万円」なんて仕訳は必要ない。むしろ、こんな仕訳を切ると、総勘定元帳の保険料の残高は6万円になっちゃっているので逆に分かりにくい。「このプロジェクトで支払った保険料って12万円だったよね?なぜ6万円?」となりかねない。

つまり、財務諸表という帳簿外のレポートを作るために仕方なく決算整理仕訳をしたけれど、連綿と続く帳簿を保持するという観点からは、そんな処理は無かったことにしたい。それが再振替仕訳だ。

再振替仕訳は、財務諸表を作るために仕方なくやった処理(取引を連綿と記録するという目的からみるとイレギュラーな処理)を無かったことにする処理だ。なぜ再振替仕訳をするか理解出来ただろうか。

連結会計ではなぜ開始仕訳を行うのか

連結会計における開始仕訳も先の図で説明できる。

連結会計は、あくまでも財務諸表に対して連結修正仕訳を施している。つまり、帳簿外の手続きだ。

ここで、日々、取引を仕訳して総勘定元帳に転記している企業内の経理の人の気持ちになってほしい。帳簿外で財務諸表に対して連結修正仕訳を施して連結財務諸表を作ったところで、そんなこと知ったこっちゃない。

で、翌年になって「連結するから財務諸表出して〜」って言われたらその時点での最新の帳簿から財務諸表作って出すわけだから、前年までに帳簿外でやった連結修正仕訳なんて反映されているわけがない。

だから、もう一度、前年までにやった連結修正仕訳を再度やり直さなければならない。これが開始仕訳だ。イメージつかめるだろうか。

どちらも概念的な話なのでなかなか伝えるのが難しい。この話が直接的に試験に出るかと言われれば、まあ出ないわけだけど、簿記の根っこのところの話だから是非理解してほしい。このあたりのイメージが頭の中で構成されていると、理解がすこぶる早くなる。

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