特殊商品販売を基本から学ぼう

難関論点・特殊商品販売
1級受験生の多くが苦しむ論点、特殊商品販売。一筋縄ではいかない論点だ。ここでは本試験を見据えた特殊商品販売の取り組み方と攻略法を紹介しよう。
そもそもどう取り組むべきか
まず、特殊商品販売は、1級の全論点の中でも1、2を争うほど、受験生が苦手にしている論点だ。あなただけが苦手にしているわけじゃない。
いや、だから安心していいよという意味ではない。そうではなく、そういう論点は本試験で傾斜配点が掛かるから結果として埋没しやすい、ということを言いたいのだ。(傾斜配点のワナについてはこちらを参照)
そして、出題頻度も本試験では5,6回に1度しか出されない。有価証券や固定資産のように必ず出るというわけじゃない。あくまでも数年に1度。
つまり、習得が困難で、たまにしか出なくて、しかも出たとしても埋没して点数になりにくい論点ということだ。
ということは、どういう立ち位置で臨むべきだろうか?
そう。最後に回すべき論点だ。特殊商品販売をやる前に、やるべき論点、重要な論点は、たくさんある。それらが仕上がって、最後にやるべきなのが特殊商品販売だ。まず、そういう位置づけであることを知ってほしい。
商品販売は部分点を狙いにいく
本試験では、特殊商品販売だけが単独で出題されることはあまりない。たいていは、一般商品販売とセットで出題される。すると、特殊商品販売が出来なくても、一般商品販売で取れる部分は必ずあるはずだ。多くの受験生は、もう特殊商品販売で精神的にいっぱいいっぱいになってしまい全体を捨ててしまいがちだ。これはもったいない。
例えば、売上高とか、割引、値引きあたりの意味さえ知っていればすぐに点数になる、という場合が少なくない。期末商品の商品評価損と棚卸減耗損も特殊商品売買には関係なく取れるところだ。委託販売の場合は積送諸掛だけは計算できる、というケースも多いものだ。
とにかく部分点を狙いに行くことが大切だ。ここが合否の分かれ目だ。特殊商品販売の本丸、例えば割賦販売だったら繰延売上利益だったり、委託販売だったら原価率の算定が一番の山場だけれど、そこは捨てても大丈夫な場合がほとんどだ。とにかく意識的に部分点を狙いにいこう。
会計処理方法別に学習する
一般のテキストで特殊商品販売は、割賦販売、委託販売、試用販売といった販売方法別に解説されている。
そして、割賦販売の章では、未実現利益整理法と対照勘定法(これは出題頻度が低いので省略されている場合もある)を学習し、委託販売では、手許商品区分法と対照勘定法を学習し、さらに試用販売も同様に学習する。
最初の段階(1周目)は、素直にテキストの順に学習するのがいい。まずは各販売方法が、具体的にどういった取引なのかを押さえないと始まらないからだ。しかし、2周目は学習方法を変えた方がいい。販売方法と会計処理方法を一覧にすると次のようになる。
| 未実現利益整理法 | 手許商品区分法 | 対照勘定法 | |
|---|---|---|---|
| 割賦販売 | ◎ | × | |
| 委託販売 | ○ | △ | |
| 試用販売 | ○ | ○ |
◎、◯、△、×は出題頻度だ。ここでは、横方向の販売方法別ではなく、縦方向の会計処理方法別の学習がおすすめだ。会計処理方法が同じなら、それが委託販売であろうと試用販売であろうと全く同じように解けるからだ。
だから、2周目は「委託販売をマスターする」ではなく「手許商品区分法をマスターする」という姿勢で取り組むのが良いだろう。
特殊商品販売の問題は勘定分析
なぜ、商品販売系の問題は難しく感じるのだろうか。それは、同じ勘定でも、時と場合によって意味が異なってくるからだ。例えば、もっともシンプルな例は仕入勘定だ。決算整理前の「仕入」は、当期仕入高を意味する。しかし決算整理後は売上原価を意味する。このように、状況によって意味が異なるのだ。特殊商品販売は、これが、複雑になった感じだ。
だから、特殊商品販売の攻略で大切なことは、いま、このタイミングにおける「仕入」とは、何を表しているのか?「積送品」とは何を表しているのか?といった勘定分析力を付けることだ。
講座の受講者は、多分、ボックス図の解法を学習することだろう。正直言って、きちんと勘定分析力が付けば、ボックス図なんてどう書いてもちゃんと解ける。逆に言うと、勘定分析力が無いと、いくらボックス図の解法を暗記しても、少しヒネられただけで訳が分からなくなる。だから、大切なことは、ボックス図の練習ではなく、勘定が何を意味しているのかを瞬時にかつ正確に把握することだ。
練習問題(一般商品販売編)
では、ここで、勘定分析の簡単な練習問題をやってみよう。まずは一般商品販売編だ。
問1 一般商品販売の勘定分析(2・3級レベル基本)
決算整理前T/Bにおける繰越商品勘定(三分法)は、何を表しているか。次の中から選択しなさい。
- 前期末の帳簿上の商品在庫金額
- 前期末の実地の商品在庫金額
- 当期末の帳簿上の商品在庫金額
- 当期末の実地の商品在庫金額
- 当期中に仕入れた商品の金額
- 当期の売上原価
- 解答(クリックで開きます)
-
2「前期末の実地の商品在庫金額」2,3級レベルだから、大丈夫だよね。
問2 一般商品販売における仕入値引・仕入割引・仕入戻し
決算整理前T/Bにおける繰越商品は20万円、仕入は100万円であった。期中の仕入値引5万円と仕入割引10万円は控除済みである。期末に実地棚卸をしたところ、50万円の在庫があった。在庫が多すぎるので、30万円分を返品(仕入戻し)とすることにした。当期の売上原価はいくらか。
- 解答(クリックで開きます)
-
まず、仕入値引と仕入割引の意味をおさえよう。仕入割引は事実上の利息(営業外収益)であって、仕入れから控除してはいけない。よって正しい仕入れは110万円(=100万円+10万円)だ。一方、仕入値引は、キズや色違いによる値引きだから控除済みで正しい。よって、売上原価は次の式で計算される。
期首20万円+当期仕入110万円−期末50万円=80万円
なお、返品は売上原価に影響を与えないので無視して構わない。もし、返品を考慮すると、当期仕入れは80万円(=110万円−返品30万円)、期末在庫は20万円(=50万円−30万円)になるので、売上原価は次の式で計算される。
期首20万円+当期仕入80万円−期末20万円=80万円
問3 一般商品販売における売上値引・売上割引・売上戻り
決算整理前T/Bにおける売上高は100万円であった。期中の売上値引5万円と売上割引10万円は控除済みである。取引先より20万円分の売上の戻りの依頼があり、受け入れたが未処理である。当期の原価率は60%である。当期の売上総利益はいくらか。
- 解答(クリックで開きます)
-
まず、売上値引と売上割引の意味をおさえよう。売上割引は事実上の利息(営業外費用)であって、売上から控除してはいけない。一方、売上値引は、キズや色違いによる値引きだから控除済みで正しい。また、売上戻りも反映させなければいけないので、当期の正しい売上は次の式で計算される。
売上高:帳簿上売上100万円+売上割引10万円−売上戻り20万円=90万円
さて、ここで、売上原価の算定だが、この売上90万円に原価率60%を掛ければいいかというと、そうはいかない。この原価率60%が曲者だ。これは、あくまでも値引きなどのトラブルが無いことを前提にした事前原価率だ。現実には売上値引が生じてしまい90万円の売上しかないけど、原価率を算定している時点では、売上値引は考慮していない。つまり、95万円(=90万円+売上値引5万円)を前提とした原価率だ。よって、売上原価と売上総利益は次の式で計算される。
売上原価:95万円×60%=57万円
売上総利益:90万円−57万円=33万円事前原価率について、今ひとつ納得感が持てない人は、この記事に詳しく解説してあるので参照して欲しい。
練習問題(特殊商品販売編)
続いて、特殊商品販売編だ。といってもボックス図の解法とかの話ではない。それ以前の問題だ。
問1 積送品の勘定分析
決算整理前T/Bにおける積送品勘定は以下のボックス図のどの部分を表しているか?該当箇所を番号で示しなさい。
- 手許商品区分法(一括法)を採用している場合
- 手許商品区分法(その都度法)を採用している場合
- 対照勘定法を採用している場合
| 一般商品売買 | 委託販売 | |||
| 期首在庫 ① |
売上原価 ③ |
期首在庫 ⑤ |
売上原価 ⑦ |
|
| 当期仕入 ② |
当期仕入 ⑥ |
|||
| 期末在庫 ④ |
期末在庫 ⑧ |
|||
- 解答(クリックで開きます)
-
- 手許商品区分法(一括法)・・・⑤+⑥(もしくは⑦+⑧)
- 手許商品区分法(その都度法)・・・⑧
- 対照勘定法・・・⑤
この問題がスムーズに出来た人は、特殊商品売買(特に委託販売と試用販売)の基本が出来ている。逆に「何だこの問題?」と思った人はマズイ。先にも書いたが「この勘定はボックス図のどこを意味する?」ということを常に意識してほしい。
問2 割賦販売の勘定分析
割賦販売の収益認識を回収基準、未実現利益整理法にて処理している。次の問に答えなさい。
a.決算整理前T/Bの割賦売掛金勘定は何を表しているか。次の中から選びなさい。
- 期首の割賦売掛金残高
- 期首の割賦売掛金残高+当期割賦販売
- 「期首の割賦売掛金残高+当期割賦販売」のうち回収した金額
- 「期首の割賦売掛金残高+当期割賦販売」のうち未回収の金額
- 解答(クリックで開きます)
-
4「期首の割賦売掛金残高+当期割賦販売」のうち未回収の金額
割賦売掛金は、未実現利益整理法を採用していても対照勘定法を採用していても、回収基準なら、常に未回収額を表す。
b.決算整理前T/Bの繰越商品は何を表しているか。次の中から選びなさい。
- 期首の手許商品有高
- 期末の手許商品有高
- 期首の手許商品有高+割賦販売の未回収分の原価
- 期末の手許商品有高+割賦販売の未回収分の原価
- 解答(クリックで開きます)
-
1「期首の手許商品有高」
これは、少し難しい。未実現利益整理法(回収基準)は、商品を引き渡したら売上として認識する。つまり、もう当社の商品ではない。当社の商品と言えるのは手許にある商品のみ。よって、繰越商品とは手許商品有高のことだ。なお、もし、問題が対照勘定法(回収基準)なら、解答は3「期首の手許商品有高+割賦販売の未回収分の原価」となる。対照勘定法(回収基準)は、仮に相手に引き渡した商品でも、現金を回収していなければ当社の商品と認識するからだ。
c.決算整理後T/Bの「割賦売掛金勘定−繰延売上利益勘定」について、これが何を表しているか。一言で簡潔に答えなさい。
- 解答(クリックで開きます)
-
未実現利益整理法の本質に迫る問題だ。まず、割賦売掛金は未回収の売上のこと、そして、繰延売上利益勘定は、その売上に含まれる利益のことだ。つまり、「割賦売掛金勘定−繰延売上利益勘定」は、売上から利益を引くのだから、原価を意味する。つまり、未回収分の原価だ。
本年はありがとうございました
本記事が本年の最後の記事となります。
2016年はいろいろなことがありました。このブログを通じてたくさんの方々と知り合えたこと、それが、一番嬉しく、そして、一番大切な出来事でした。ありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
プロフェッショナル簿記
富久田文昭とアシスタントの弟子1号
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“特殊商品販売を基本から学ぼう” に対して7件のコメントがあります。
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富久田先生
本年は、いろいろとお世話になりました。
来年もよろしくお願いいたします。
よいお年をお迎えください。
熱男さん、
コメント、ありがとうございます。
本年もがんばってまいりましょう。
いつも先生の記事にお世話になっています。ありがとうございます。
先生の言葉で[特殊商品販売をやる前に、やるべき論点、重要な論点は、たくさんある。それらが仕上がって、最後にやるべきなのが特殊商品販売だ。まず、そういう位置づけであることを知ってほしい。]
凄く参考になりました。
自分はテキストに時間をかけすぎてしまう傾向があるみたいで…。今読んでいるところが割賦販売.回収基準-未実現利益整理法で、特殊商品売買の論点に入ったばかりでテキスト1周もしていない状態なのですが、読んだ所はしっかり理解をしたいなと思う気持ちがあるので(そのせいでテキストに時間をかけすぎています)この記事を読まなければ特殊商品売買を理解するためにおそらく膨大な時間を使っていたと思います。
商業簿記・会計学はたくさんの論点があり自分にはどれが重要なのかあまり分かりません。「これとこれとこれ!、ここは理解するのに時間かかるだろうけどしっかり理解した方が良いよ」など優先するべき論点をお教えいただけないでしょうか?
では、私の考える重要論点ランキングをざっくり大枠で。
最重要(Sクラス)
・連結の基本(資本連結、成果連結の基本)
・有価証券全般
・固定資産全般(特にリース、減損など、近年、基準に変更があった論点)
・外貨換算関連(在外子会社、在外支店含む)
・税効果会計
重要(Aクラス)
・連結の応用(持分法、持分の変動、成果連結の難しい論点)
・組織再編(取得、株式交換、事業分離など)
・固定資産の一般的論点(減価償却、買い換え、除却など)
・退職給付会計
・純資産関連(自己株式、新株予約権、ストックオプション含む)
・金銭債権(特に利息法)
・金融商品
・デリバティブ、ヘッジ関連
・理論(近年改訂のあった基準)
普通(Bクラス)
・連結(包括利益)・・・最近の動向からはAクラスかも
・理論(企業会計原則)
・工事進行基準
・ソフトウェア
・貸倒引当金関連
・誤謬と訂正の理論
・繰延資産、無形固定資産みたいな昔からある資産関連の論点
・社債や◯◯引当金などの昔からある負債関連の論点
あとまわし(Cクラス)
・キャッシュフロー計算書の作成(Bクラスかも)
・特殊商品売買
・総記法
・分配可能額
・特殊な社債の処理(抽選償還など)
・特殊な固定資産の処理(減耗償却とか総合償却とか級数法による減価償却とか)
・帳簿組織に関する論点全般
ご丁寧にありがとうございます。
今まではどうせ全部やるのだから、という考えで優先順位をつけず1つ1つ理解をしていこうと全てじっくり勉強していたのですが、昨日このまま同じ勉強をしたらどうなる?と計画を少し見直したら、インプットに比べアウトプットに使える時間が圧倒的に少なかったです。
傾斜配点のワナの記事もいずれ読まなければなと思っていたのですが後回しにしてしまい、この記事にリンクが貼ってあり今のタイミングになってしまいました。1番最初に読むべきだった…と凄く後悔をしています。
以前先生にいただいたアドバイスの[とりあえず1周して全体のボリュームを掴む。そしてどこが得意で、どこが苦手か、そこをマスターするのにどれくらいの時間を割くべきかを検討し、次に何をすべきかを考えるのがいいでしょう。]のアドバイスの重みが今になり理解できました。
これからは少しでもテキストにかける時間を減らす為に先生に教えていただいた優先順位度も考えて勉強したいと思います。
質問にお答えいただきありがとうございました。
こんにちは。税理士試験を目指し、過去に何度かコメントさせていただいた者です。
特殊商品売買の問題で教えていただきたいことがあります。
販売形態は未着品、一般、割賦、試用、委託販売を行っている者の損益計算書を作成する問題で、解答では「期首商品棚卸高」と「期末商品棚卸高」に割賦売掛金の未回収原価が含まれていないのです。
割賦販売については未実現利益控除法で、当期首の割賦売掛金10,200円(原価60%・6,120円)、当期末の割賦売掛金14,070円(原価62.5%・8,730円)というところまでは計算できるのですが、損益計算書の「期首商品棚卸高」に6,120円が、「期末商品棚卸高」に8,730円が含まれていないのです。
問題文には「割賦販売の収益認識は回収基準によっている」と記載があり、割賦売掛金はまだ回収できていないのだから、棚卸に含まないといけないのではないかと思い、腑に落ちません。
その他の販売形態は、未着品→分記法、一般→三分法、試用→対象勘定法、委託→総記法(手許区分法)ですが、期首期末のそれぞれの残高の原価が棚卸高に含まれています(これについては理解できます。)。なぜ割賦販売のみ棚卸に含まれないのか、ご教授くださいますと、有難く存じます。
末尾になりましたが、日々ブログを活用させていただき、計算問題については、ある程度点数が取れるようになってきました。財務諸表論の理論の暗記が課題ではありますが、残り2か月強、最後まで頑張りたいと思います。
こちらのご質問は、れいさんがどちらか他社さんの税理士向け問題集を解いていて、分からない箇所についてのご質問でしょうか?もしそうなら、申し訳ないのですがこちらでは対応しておりません。ご了承ください。
あと、割賦販売の未実現利益控除法は、新しい収益認識基準にもとづいて日商簿記では出題範囲から外れました。税理士試験では試験範囲に入っているのでしょうか?ご確認されたほうが良いかもしれません。
最後に、問題文を読んだわけではないのでよくわからないのですが、未実現利益控除法は、あくまでも現金で回収できていない分に係る利益を当期の売上総利益から控除し翌期に繰り延べる処理であって、売上と売上原価自体は販売基準に準じていたと記憶しています。よって現金を回収したかしていないかに関わらず、商品を引き渡しているなら棚卸資産は売上原価に振り替わっているはずです。