委託販売・試用販売(手許商品区分法)の基礎

手許商品区分法

手許の商品と手許を離れた商品を別の勘定で管理する方法が手許商品区分法だ。これは、売れた分の原価の振替処理を行うタイミングで次の2種類に分けられる。

  • 期末一括法:期末に一括して原価を振り替える
  • その都度法:販売の都度、原価を振り替える

ここでは、前回の対照勘定法の記事と同じ取引内容で解説する。仕訳がどう変化するか、そして残高試算表の各勘定がどう変化するのかに注目すると理解が深まると思う。

手許商品区分法(期末一括法)の基本問題

問題

試用販売を、当期首から開始した。手許商品区分法(期末一括法)によって次の各取引の仕訳を行いなさい。

①期首の商品在庫は50万円だった。
②商品150万円を掛けで仕入れた。
③原価50万円分(売価100万円分)を試用品として客先に発送した。
④客先から60万円(原価30万円)の購入の意思確認が取れた。
⑤客先から20万円(原価10万円)の返品があった。残りは引き続き購入検討中である。
⑥決算を迎えた。

仕訳

① 仕訳なし
②(仕入)150万円(買掛金)150万円
③(試用品)50万円(仕入)50万円
④(売掛金)60万円(試用売上)60万円
⑤(仕入)10万円(試用品)10万円
⑥(仕入)50万円(繰越商品)50万円
 (繰越商品)160万円(仕入)160万円
 (仕入)30万円(試用品)30万円

商品ボックス図を追う

上記仕訳と平行して、各勘定がどう動いているか、そして、商品ボックスがどうなっているかを追っていくと、期末一括法の意味がよく分かる。

①期首の商品在庫は50万円だった。
 仕訳:なし
 前T/B:繰越商品 50万円、仕入 0

期首 50

売上原価 0

当期仕入 0
手許残高 0

②商品150万円を仕入れた。
 仕訳:(仕入)150万円(買掛金)150万円
 前T/B:繰越商品50万円、仕入150万円

期首 50

売上原価 0

当期仕入 150
手許残高 200

③原価50万円分(売価100万円分)を試用品として客先に発送した。
 仕訳:(試用品)50万円(仕入)50万円
 前T/B:繰越商品 50万円、仕入 100万円、試用品 50万円

手許商品    試用品  
 期首 50 売上原価 0 期首 0 売上原価 0
当期仕入 100 当期試送 50
手許残高 150 試用品残高 50

④客先から60万円(原価30万円)の購入の意思確認が取れた。
 仕訳:(売掛金)60万円(試用売上)60万円
 前T/B:繰越商品 50万円、仕入 100万円、試用品 50万円、試用売上 60万円

手許商品    試用品  
 期首 50 売上原価 0 期首 0 売上原価 30
当期仕入 100 当期試送 50
手許残高 150 試用品残高 20

⑤客先から20万円(原価10万円)の返品があった。残りは引き続き購入検討中である。
 仕訳:(仕入)10万円(試用品)10万円
 前T/B:繰越商品 50万円、仕入 110万円、試用品 40万円、試用売上 60万円

手許商品    試用品  
 期首 50 売上原価 0 期首 0 売上原価 30
当期仕入 110 当期試送 40
手許残高 160 試用品残高 10

⑥決算を迎えた。

ここでやりたいことは、期末商品有高170万円(手許にある分160万円と試送分10万円)、および試用品の売上原価30万円(勘定科目は仕入)の算定だ。

まず、手許商品有高160万円はいいだろう。実地棚卸をすれば分かる。この仕訳は次のとおりだ。

(仕入)50万円(繰越商品)50万円
(繰越商品)160万円(仕入)160万円

問題は試送分10万円だ。これは手許にない。そこで、帳簿上から推測する。試用売上60万円に原価率を掛ければ売上原価30万円が計算できる。よって試用品勘定から30万円を売上原価(勘定科目は仕入)に振替えれば、結果として売上原価の算定も出来るし、試用品勘定に10万円が残る。

(仕入)30万円(試用品)30万円

まあ、これ、「しいくりくりしい」のルールに則れば、次の仕訳になるのだけど、1級の試験で、この仕訳自体が問われることはまずないので、別にどちらでもいい。

(仕入)40万円(試用品)40万円・・・試用品の期首分+試送分を一旦仕訳勘定に戻す
(試用品)10万円(仕入)10万円・・・期末在庫を試用品勘定に振り替える

この結果、決算整理後残高試算表は、次のとおりとなる。

  • 繰越商品 160万円
  • 試用品 10万円
  • 仕入 30万円(これは決算整理後だから売上原価の意味)
  • 試用売上 60万円

よって損益計算書に表示されるのは、売上高が60万円、売上原価が30万円、そして、繰越商品160万円と試用品10万円はB/Sに表示されるとともに翌期に繰り越される。

手許商品区分法(その都度法)の基本問題

問題

試用販売を、当期首から開始した。手許商品区分法(その都度法)によって次の各取引の仕訳を行いなさい。

①期首の商品在庫は50万円だった。
②商品150万円を掛けで仕入れた。
③原価50万円分(売価100万円分)を試用品として客先に発送した。
④客先から60万円(原価30万円)の購入の意思確認が取れた。
⑤客先から20万円(原価10万円)の返品があった。残りは引き続き購入検討中である。
⑥決算を迎えた。

仕訳

① 仕訳なし
②(仕入)150万円(買掛金)150万円
③(試用品)50万円(仕入)50万円
④(売掛金)60万円(試用売上)60万円
 (仕入)30万円(試用品)30万円
⑤(仕入)10万円(試用品)10万円
⑥(仕入)50万円(繰越商品)50万円
 (繰越商品)160万円(仕入)160万円

商品ボックス図を追う

上記仕訳と平行して、各勘定がどう動いているか、そして、商品ボックスがどうなっているかを追っていくと、その都度法の意味がよく分かる。

①期首の商品在庫は50万円だった。
 仕訳:なし
 前T/B:繰越商品 50万円、仕入 0

期首 50

売上原価 0

当期仕入 0
手許残高 0

②商品150万円を仕入れた。
 仕訳:(仕入)150万円(買掛金)150万円
 前T/B:繰越商品50万円、仕入150万円

期首 50

売上原価 0

当期仕入 150
手許残高 200

③原価50万円分(売価100万円分)を試用品として客先に発送した。
 仕訳:(試用品)50万円(仕入)50万円
 前T/B:繰越商品 50万円、仕入 100万円、試用品 50万円

手許商品    試用品  
 期首 50 売上原価 0 期首 0 売上原価 0
当期仕入 100 当期試送 50
手許残高 150 試用品残高 50

④客先から60万円(原価30万円)の購入の意思確認が取れた。
 仕訳:(売掛金)60万円(試用売上)60万円
 仕訳:(仕入)30万円(試用品)30万円
 前T/B:繰越商品 50万円、仕入 130万円、試用品 20万円、試用売上 60万円

手許商品    試用品  
 期首 50 売上原価 0 期首 0 売上原価 30
当期仕入 100 当期試送 50
手許残高 150 試用品残高 20

⑤客先から20万円(原価10万円)の返品があった。残りは引き続き購入検討中である。
 仕訳:(仕入)10万円(試用品)10万円
 前T/B:繰越商品 50万円、仕入 140万円、試用品 10万円、試用売上 60万円

手許商品    試用品  
 期首 50 売上原価 0 期首 0 売上原価 30
当期仕入 110 当期試送 40
手許残高 160 試用品残高 10

⑥決算を迎えた。

ここでやりたいことは、期末商品有高170万円(手許にある分160万円と試送分10万円)、および試用品の売上原価30万円(勘定科目は仕入)の算定だ。

まず、手許商品有高160万円はいいだろう。実地棚卸をすれば分かる。この仕訳は次のとおりだ。

(仕入)50万円(繰越商品)50万円
(繰越商品)160万円(仕入)160万円

この時点の帳簿残高は次のとおりだ。

  • 繰越商品 160万円
  • 試用品 10万円
  • 仕入30万円(これは決算整理後だから売上原価の意味)
  • 試用売上60万円

この時点で、試用品勘定は10万円であり、売上原価(勘定科目は仕入)は30万円になっているのだ。つまり、もうこれ以上何もする必要はない。なぜか。一般販売や手許商品区分法の期末一括法は、販売の都度ではなく、決算時に売上原価の算定をする。それが、その都度法は、販売の都度、売上原価の算定をしている。だから、あらためて決算時には何もしなくていいわけだ。

期末一括法とその都度法の相違点

さて、大切なのは、ここからだ。期末一括法とその都度法の相違点を注意深くみていこう。

仕訳で、異なるのは、販売時と決算時のみだ。つまり、販売分の売上原価への振替仕訳を、期末一括法では決算時に行うけど、その都度法では、それを販売時に行っているのだ。相違点はここだけ。あとは全く一緒だ。それが、残高試算表にどのような違いとして表れるのか。上記例の④の販売後の前T/Bの各勘定と商品ボックスの状態を確認してみよう。

期末一括法の前T/B:繰越商品 50万円、仕入 100万円、試用品 50万円
その都度法の前T/B:繰越商品 50万円、仕入 130万円、試用品 20万円

手許商品    試用品  
① 期首 50 売上原価 0 ③期首 0 ⑤売上原価 30
②当期仕入 100 ④当期試送 50
手許残高 150 ⑥試用品残高 20

お分かりだろうか。まず、一番簡単なところから確認しよう。前T/Bの繰越商品は、期末一括法だろうがその都度法だろうが50万円であり、①を示している。

問題は、仕入と試用品だ。期末一括法では、仕入100万円は②を示し、試用品50万円は、③+④を示している。これが、その都度法では、仕入130万円は②+⑤を示し、試用品20万円は、⑥を示している。大切なので繰り返そう。図示すると次のとおりだ。グリーンが繰越商品を、ピンク色が仕入勘定を、水色が試用品勘定を示している。

期末一括法

手許商品    試用品  
① 期首 50 売上原価 0 ③期首 0 ⑤売上原価 30
②当期仕入 100 ④当期試送 50
手許残高 150 ⑥試用品残高 20

その都度法

手許商品    試用品  
① 期首 50 売上原価 0 ③期首 0 ⑤売上原価 30
②当期仕入 100 ④当期試送 50
手許残高 150 ⑥試用品残高 20

ある意味、この勘定分析さえ分かっていれば、手許商品区分法の問題は、ほとんど難なく解ける。というか、これを理解していないと、ほぼ解けない。

それからもう1点、大切なポイントは、期末一括法にせよ、その都度法にせよ、「仕入勘定+試用品勘定」は常に同額であるということだ。上記の図をみれば一目瞭然だろう。さらに言えば、「繰越商品+仕入勘定+試用品勘定」は常に2つの商品ボックスの借方合計(もちろん貸方合計でも)の額と一致する。これも知っていると問題を解く上での助けになるだろう。

決算整理後

さて、決算整理仕訳を行うと、期末一括法もその都度法も以下に図示したとおりとなる。つまり仕入勘定は、売上原価を示し、繰越商品勘定は手許商品残高150万円を示し、試用品勘定は試用品の残高20万円を示すのだ。

手許商品    試用品  
① 期首 50 売上原価 0 ③期首 0 ⑤売上原価 30
②当期仕入 100 ④当期試送 50
手許残高 150 ⑥試用品残高 20

繰り返すが、ここまでの一連の流れと、勘定分析さえ押さえてしまえば特殊商品売買はどうってことない。つまり、タイミング(決算整理前なのか後なのか)と会計処理法(対照勘定法、期末一括法、その都度法)ごとに、この勘定科目は何を意味しているのかを理解しているかどうかで勝負が決まると言える。

具体的な試験問題の解法は、次回紹介。乞うご期待。


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