これなら分かる割賦販売の基礎

割賦販売は苦手意識をなくすことから

割賦販売で登場する「未実現利益整理法」と「対照勘定法」…漢字だらけで難しそうだ。用語にビビって苦手意識を持つ人も少なくないだろう。

割賦販売は、意味さえ分かれば難しくない。確かに混乱しやすい面はあるけれど、それは、土台がしっかりしていない段階でボックス図などの解法を学ぶからだ。

ここでは、簡単な設例を使って、未実現利益整理法と対照勘定法の本質的な意味を紹介する。分かってしまえば「なんだそんなことか」という程度の論点だ。苦手意識をなくして、フラットな気持ちで読んでほしい。

超簡単な割賦販売の例で考えてみよう

原価60万円の商品を100万円で販売した。10万円の10回払い。現金で2度回収したところで決算を迎えた。さて、P/L作ってみよう。

販売基準

販売基準は、分割払いには関係なく、商品を引き渡したときに売上を認識する。難しく考える必要はない。普通の商品売買と思えばいい。

売上高 100万円
売上原価 60万円
売上総利益 40万円

未実現利益整理法(回収基準)

未実現利益整理法(回収基準)は、基本、販売基準と同じと思えばいい。つまり引き渡したときに売上を認識する。ただし、回収基準なので、回収分で利益を計算したい。では、どうするか。とりあえず、売上高、売上原価、売上総利益までは、販売基準と同じにしておいて、最後に利益を調整するのだ。

本問の場合、100万円の商品を引き渡しているので、売上高は100万円だ。しかし、20万円しか回収できていないのでその分の利益8万円を計上したいのだ。そこで、販売基準のときに計上される売上総利益40万円を8万円に調整するために32万円を控除するという処理をする。これが未実現利益整理法だ。

売上高 100万円
売上原価 60万円
修正前売上総利益 40万円
繰延売上利益控除 32万円
売上総利益 8万円

対照勘定法(回収基準)

対照勘定法(回収基準)は、商品を引き渡しても、それは、単に相手に商品が移動しただけで、売り上げたわけではないと考える。あくまでも回収した時点で売上を計上するのだ。

本問の場合、100万円の商品を引き渡しているけど20万円しか回収出来ていないので売上は20万円だ。原価率は60%なので、損益計算書は次のようになる。

売上高 20万円
売上原価 12万円
売上総利益 8万円

なお、先にも書いたとおり対照勘定法(回収基準)では、商品を引き渡しだだけでは、売上にならない。よって、特に仕訳を切る必要はない。しかし、そうは言っても何も記録しておかないと、引き渡したという事実が帳簿上で分からなくなってしまう。 そこで、メモ書き(備忘記録)として次のような仕訳を切る。

(割賦売掛金)100万円(割賦売上)100万円

これは「100万円分の商品を引き渡している」ということを帳簿上で分かるようにするためだ。そして、10万円回収したら、次のような仕訳を切る。

(割賦売上)10万円(割賦売掛金)10万円
(現金)10万円(割賦売上)10万円

まず先の仕訳の逆仕訳を切って備忘記録を修正する。これで、割賦仮売上(および割賦売掛金)の残高は90万円になった。つまり、まだ、現金で回収していない商品が90万円分あることが帳簿から分かるわけだ。そして、この時点で始めて10万円の売上を認識するのだ。

なお、備忘記録は、あくまでもメモ書きなので、B/SやP/Lに反映されることはない。 そして勘定科目も様々なパターンが考えられる。例えば、割賦売掛金のかわりに、割賦販売契約を使うこともある。所詮メモ書きなので意味が分かれば何でもいいのだ。勘定科目に惑わされないようにしてほしい。 

ここまでのまとめ

収益認識基準について

まず大切なことは「いつ売上を認識するか」だ。つまり、割賦販売の3つの収益認識基準(販売基準、回収基準、回収期限到来基準)を意識することが大切だ。

販売基準は商品を引き渡したとき、回収基準は回収したとき、回収期限到来基準は未回収でも回収期限が到来したときに、売上を認識する。(回収期限到来基準は回収基準の応用なので、まずは回収基準の理解を優先してほしい)

収益認識基準が同じであれば、会計処理方法が異なっても利益は同じだ。さきの例を見てほしい。未実現利益整理法(回収基準)と対照勘定法(回収基準)の利益がともに8万円だ。

会計処理方法について

未実現利益整理法(回収基準)は、売上、売上原価、売上総利益の計算まで販売基準と同じだ。販売基準と異なるのは、売上総利益を調整するという点だけだ。

一方、対照勘定法(回収基準)は、回収した時点で売上を計上する方法だ。

だから、未実現利益整理法(回収基準)の方が対照勘定法よりも必ず売上高が大きくなる。しかし、どちらも利益は同じだ。この点のイメージをしっかり持っておこう。

本試験対策について

未実現利益整理法(回収基準)の問題は、利益調整額(繰延割賦売上利益控除・戻入)の計算がもっとも難しい。一方、利益調整額の計算以外は、普通の商品売買と変わらない。だから、本試験で出題されたら、まずは、容易に得点出来る箇所(例えば売上高や商品評価損の算定など)を拾って、最後に利益調整額の計算をするべきだ。もし、利益調整額の計算が出来なくても致命傷にはならない。

一方、対照勘定法(回収基準)は、簡単な問題も出るけれど、多くの場合、パズルチックになっていて、これはもう解き慣れていないと手こずること必至だ。だから、自信が無ければ捨てる判断も必要だろう。

勘定分析

収益認識基準と会計処理方法ごとに、売上高(割賦売上)、売上原価、売上総利益、さらに繰越商品(割賦商品)が、それぞれ何を意味しているのかを理解することが大切だ。本設例を一覧にまとめたので確認してほしい。

  販売基準 回収基準
未実現利益整理法
回収基準
対照勘定法
売上高 100万円 100万円 20万円
売上原価 60万円 60万円 12万円
(修正前)売上総利益   40万円  
繰延売上利益控除   32万円  
売上総利益 40万円 8万円 8万円

なお、繰越商品勘定(割賦商品)は、販売基準と未実現利益整理法(回収基準)では手許商品有高を意味し、対照勘定法(回収基準)では、手許商品有高と未回収分の合計を意味する。

なぜか。
まず、販売基準と未実現利益整理法(回収基準)では、商品引渡時に売上を認識しているのだから、引き渡した分はお客様のものであって、当社商品ではない。よって当社の商品と言えるのは手許商品だけだ。(本設例の場合、ゼロ)

一方、対照勘定法(回収基準)では、現金を回収して始めて売上として認識しているのだから、引き渡したとはいえ、現金未回収分は当社商品だ。よって当社の商品と言えるのは手許商品と未回収分の合計だ。(本設例の場合48万円)

このように、収益認識基準と会計処理方法の意味をおさえておけば、各勘定が何を意味しているかも理解しやすくなる。そして、それがボックス図の理解につながる。是非、この土台となる部分をしっかりマスターしてほしい。

次回は、割賦販売(未実現利益整理法)のボックス図を使った実践解説


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これなら分かる割賦販売の基礎” に対して1件のコメントがあります。

  1. ニュートリノ より:

    明けましておめでとうございます。

    いつもながら、自分の勉強の仕方の弱点に気付かされています。

    これまでは、特殊商品販売の論点は、仕訳を暗記してボックス図を見よう見まねで書いてみても、本当に分かったという納得感が得られず、頭の悪さを理由に半ば諦めておりました。
    今回の記事で、「収益認識基準」と「会計処理方法」の組み合わせ、「利益の調整」という視点での解説をいただき、とても分かりやすく新鮮に感じました。
    おかげさまで、テキストを読み返してみると、思いのほか頭にスッと入ってくるようになった気がします。

    先生、アシスタントの弟子1号様、それからこのサイトの常連の皆様にとって、今年が素敵な飛躍の年になりますよう、お祈り申し上げます。

    1. pro-boki より:

      ニュートリノさま

      本年もよろしくお願いいたします。

      >特殊商品販売の論点は、仕訳を暗記してボックス図を見よう見まねで書いてみても、本当に分かったという納得感が得られず

      そういう方、多いと思います。私も受験生のときはそんな感じでした。スクールで受講していたのですが、授業内容がそんな感じでしたから。
      でも、それだと、本試験レベルの応用問題が解けないんですよね。結局、近視眼的に解き方を覚えるより、ちょっと一歩引いてみて、そもそも何をしたいのかを見るようにした方が、納得感も出るし、本試験で応用が効くように思えます。

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