損益計算書と値引、割戻、割引の意味を本質から理解する

値引、割戻、割引を知るにはまず損益計算書から

別の記事で「割引は事実上の利息」と書いた所「これはどういうことですか?私は機械的に覚えたのでイメージできていません」という趣旨のコメントを頂いた。

安易に書いたこと、ちょっと反省した。そうか、そうだよね。これ、説明されなかったら、なぜ、値引・割戻は仕入や売上から直接控除するのに、割引だけ別扱い?事実上の利息ってどういう意味?って思うよね。

大事なことなので、しっかり解説しようと思う。(ちなみに1級のテキストを確認したけど、どのテキストにも全然詳しく載ってなかった)

まずは大前提となる損益計算書の超基礎からだ。

そもそも損益計算書は何を表しているのか

まず、値引、割戻、割引の話をする前に、損益計算書ってどんなものかの復習をしよう。いまさら?と思う人がいるかもしれないけど、大事なことなので確認の意味をこめて復習しよう。

損益計算書は、企業が会計期間に獲得した利益を表示するものだ。要するに企業の経営成績を明らかにするための通信簿みたいなものだ。ここまでは大丈夫だよね?で、ざっくりだけどその経営成績をより明瞭に表すために2つの特徴がある。

総額主義

1つは、総額主義だ。これは、60円の費用で100円の収益を得たなら、相殺した40円だけを表示するのではなく、60円の費用と100円の収益の両方を表示して、その差額として40円の利益を得た、と表示しなさい、ということだ。(なお、これは、あくまでも原則で例外もある)
ここで、大事なことは、収益成果費用を成果を得るための努力とみなしているということだ。つまり、どれくらい努力をしたから、これだけの成果を得られたのだ、ということが分かるようにしてね、ということだ。

収益・費用の発生源別の分類

もう1つの特徴は、単に利益額を表示するだけではなく、その利益がどのようにして生じたのかも明らかにしてね、ということだ。これによって経営成績がより適切に表示される。
例えば、今期は、前期に比べて増益だったとしよう。そのとき、収益・費用の発生源を明示しておけば、それが本業の営業努力の結果なのか、それとも本業は振るわなかったけど、有価証券で一儲けしたのか、そういったことがひと目で分かるよね。そうすればより一層、会計情報としての価値が出るだろうと。そういうこと。

収益・費用の発生源別の分類とは具体的に何か

では、その収益・費用の発生源の分類というのを具体的に見ていこう。

  1. 営業活動
  2. 金融活動
  3. その他の事柄(突発的に起きたことなど)

もう分かると思うけど、1の営業活動に該当する収益が売上高で、費用が売上原価、販管費だよね。そして2の金融活動の収益が営業外収益で、費用が営業外費用だ。そして、3が特別利益と特別損失だ。

営業活動とは

さらに踏み込んで、じゃあ、具体的に営業活動というのは何かというと、これは、何かを仕入れて、生産して、販売して、売掛金を回収して、といった一連の流れは全て営業活動と考えていい。そして、それを支える企画とか人事とか総務とかも営業活動に含まれるんだ。営業部だけが営業活動じゃない点に注意しよう。

金融活動とは

一方で、資金調達みたいな財務活動は金融活動だ。英語でファイナンスという。よく出てくる言葉なので知っておくといい。ということで、具体的には、有価証券の運用益とか、銀行からの借入利息とか、社債発行に伴う利子の支払いとかの費用と収益は、全てここに入る。

その他の事柄(突発的に起きたことなど)とは

これは、特別利益と特別損失という言葉からも分かるように、経常的には起きないことすべてだね。盗難とか、災害損失なんかはここに入る。あと、リストラ費用とか、減損などもここだ。それから、設備などの有形固定資産を売却したときも、基本はここだと思えばいい。設備なんて、売ることを前提にしていないからね。

では本題のなぜ値引・割戻と割引は扱いが違うのか

さて、ちょっと遠回りしたけど、値引・割戻と割引の違いについて考えてみよう。

たとえば売上値引は、商品に汚損とかキズなどのクレームがあって安くすることだ。これって、何の活動だろう。営業活動だよね。同様に、売上割戻は、たくさん買ってもらえることを条件に安くすることだ。これも営業活動だよね。立派な値段交渉だ。

それに対して、売上割引って、売掛金を早く払ってもらうかわりに、相手の支払額を安くしてあげることだ。これって営業努力だろうか。単純に資金繰りの問題じゃないの?

自分が経営者だと思って考えてみてほしい。売掛金ってなるべく早く回収したいわけよ。そうすれば、こちらも資金繰りが楽になる。それを銀行に預ければ受取利息がもらえる。借入金の返済にあてれば、その分、支払利息が減る。だから、早く回収できるなら、利息分くらいは安くしますよ、という取引が起きるのだ。これが、売上割引の実態だ。

ということで、割引というのは、事実上の利息なのだ。だから、営業活動ではなくて、金融活動であり、売上割引は営業外費用、仕入割引は営業外収益なんだ。

商簿を前提に書いたけどこれは工簿でも大切な話

この損益計算書の3つの分類「営業活動」「金融活動」「その他の事柄(突発的に起きたことなど)」というのは、工業簿記でも大切な概念だ。1級になると非原価項目というのを学習する。原価計算基準では「五 非原価項目」に記載がある。

五 非原価項目
非原価項目とは,原価計算制度において,原価に算入しない項目をいい,おおむね次のような項目である。
(一)経営目的に関連しない価値の減少,たとえば
 1 次の資産に関する減価償却費,管理費,租税等の費用
  (1)投資資産たる不動産,有価証券,貸付金等
  (2)未稼働の固定資産
  (3)長期にわたり休止している設備
  (4)その他経営目的に関連しない資産
 2 寄付金等であって経営目的に関連しない支出
 3 支払利息,割引料,社債発行割引料償却<略>
(二)異常な状態を原因とする価値の減少,たとえば・・・<以下略>

この(一)経営目的に関連…の「経営」というのが、さきの損益計算書の「営業活動」のことだ。つまり、損益計算書の営業活動に関連しないものは、非原価だよと言っている。さらに、(二)異常な状態を原因とする…というのは、さきの損益計算書の「その他の事柄(突発的に起きたことなど)」のことだ。

このように、損益計算書の3分類は工業簿記とも密接に関係していることを知っておこう。


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損益計算書と値引、割戻、割引の意味を本質から理解する” に対して1件のコメントがあります。

  1. ひろりん より:

    わざわざ記事にしてくださり、ありがとうございました。

    ようやくわかりました。

    例えば売上割引なら、単に売上を減らすということではなくて、売掛金を早期に回収して、それをもって借入金を早期に返済して借入金の利息を減らすってことなんですね。

    そうなると、P/Lでは費用に見えていても、実際には利息を相殺しているようなもので費用じゃないって見方もできますよね?
    この辺がわかっていれば、売上割引も「頑張って売掛金の回収を早めましたよ」ってことで企業の努力の成果とも言えるでしょうか?

    1. pro-boki より:

      >この辺がわかっていれば、売上割引も「頑張って売掛金の回収を早めましたよ」ってことで企業の努力の成果とも言えるでしょうか?

      実務的には、何をもって努力というのかは微妙です。たしかに売掛金の回収を頑張った、ということも、企業活動の一環であり、努力の一種と言えなくもないですね。ただし、それは、一般社会での話です。会計的にはこれを努力と成果の話とは考えません。

      会計で言う所の「努力」と「成果」というのは、営業活動(≒生産活動と販売活動、一般管理活動)における費用と収益を比喩的に言っているのです。そして、ここで言う営業活動の中には財務活動は含まれません。
      「いやいや、財務活動だって立派な企業における仕事だし、努力と言えるじゃないか」というのももっともですけどね。でもそれは一般社会の話です。会計の世界はそうは捉えないのです。もう、これは決まりごとなのでしょうがないです。

      ざっくり言えば、会計は、企業活動をモデル化しているのです。つまり、
       1.資金を調達する(おもにB/Sの貸方の話)
       2.それを投資する(おもにB/Sの借方の話)
       3.その結果、投資額より多くの額を回収する。1に戻る。
      と、こういうサイクルを繰り返すものだ、というモデル化です。
      そして、会計は、この1と2を明確に分けて考えているのです。

      そして、1に関する費用と収益は、企業の営業活動とはみなさず、財務活動だから別に表示するというルールです。

      このあたりは、本当に、会計を学ぶ上での基礎概念であり、最初に知っておくと、その後の学習がとてもスムーズになります。資格スクールの講義やテキストには載っておらず、私自身、会計士のテキストや基本書を読んで知ったことです。

      この会計の超基礎に該当するところを、噛み砕いて解説しているのが、何回か紹介していますが、「会計のことが面白いほどわかる本< 会計の基本の基本編>」という本です。まだ読まれていないようでしたら是非、読んで頂ければと思います。

    2. ひろりん より:

      ありがとうございます。

      その本は一読したのですが、まだまだ身に付いてませんね。。
      きちんと身に付くまで読んでみます。

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