委託販売特有の論点

委託販売特有の論点

ここまで、未実現利益整理法、対照勘定法、手許商品区分法と、会計処理別に特殊商品売買を紹介してきた。繰り返すが、特殊商品売買の攻略には、会計処理方法の理解が大切なのであって、販売形態自体はそれほど重要ではない。問題が試用販売であっても委託販売であっても、例えば対照勘定法を採用しているのなら、全く同じ解法を用いるからだ。

しかし、委託販売に限っては、特有の論点がある。収益認識基準と積送諸掛の論点だ。どちらも難しくはない。ここまで学習してきた様々なパズルチックな解法に比べれば断然簡単だ。そしてここはほぼ確実に配点が来るだろう。だからこそ、是非、ここは押さえて欲しい。

収益認識基準

委託販売の収益認識基準が計算問題として出ることはあまり無いだろう(ゼロとは言えないけど)。ただし、理論問題で出題される可能性は十分あるので注意しておこう。

販売基準

委託販売、受託者が販売したときに売上を認識する。これを販売基準という。収益認識基準としては、これが原則だ。

仕切精算書到達日基準

委託しているアイテム数や販売量が大量だと、販売時点を都度把握することは、実務上とても困難だ。厳密にやろとすれば相応のコストも掛かってしまう。そこで、この負担軽減を目的に、仕切精算書が販売の都度送付されているなら、その到着時点をもって売上収益とする方法も認められている。これを仕切精算書到達日基準という。こちらは容認規定だ。

積送諸掛

これは、重要論点だ。この記事にも書いたのだけど「商品を仕入れた時の付随費用(送料など)は取得原価に算入する。これはなぜなのか?」という内容と本質的には同じ論点だ。この問題に自信の無い人は先にリンク先の記事を読んでほしい。

委託販売における委託者負担の諸費用のことを積送諸掛という。この積送諸掛は2種類ある。1つは、発送諸掛といって、積送するときに掛かる発送費や荷造費など。もう1つは、販売諸掛といって受託者が販売時に立て替えてくれた費用と受託者の手数料だ。それぞれの会計処理を見ていこう。

発送諸掛の会計処理

発送諸掛は、積送品原価に含めてしまう方法と、積送諸掛(販売費)という別勘定を設けて処理する方法のどちらも認められている。

シンプルかつ合理的なのは積送品原価に含めてしまうことだ。仕入原価に付随費用を含めてしまうのと同じ考え方であり、これで何の問題もない。一方で、積送諸掛(販売費)という別勘定を設けて処理すると多少面倒なことになる。

なぜか。たとえば100個の商品を積送して、100円の発送費が掛かったとしよう。
もし当期中にすべての積送品が売れてしまえば、問題は生じない。発送費100円は全て当期の費用となる。しかし、もし70個しか売れなかったらどうなるのだろう。発送費も70円だけを当期の費用とするべきだ。

もし、発送諸掛を積送品原価に含めていればこの計算は自動的に行われる。決算整理仕訳で積送品の売上原価を算定する段階で、発送諸掛も自動的に販売分のみが売上原価に算入されるのだ。しかし、発送諸掛という別勘定を設けていると、そこには100円が計上されているわけだから、何もしないと、そのまま100円が当期の損益計算書に載ってしまう。それではマズイ。そこで、この100円のうち30円は翌期に繰り延べないといけないわけだ。言ってみれば前払費用(前払発送費みたいなイメージ)に振り替えるようなものだ。仕訳にすると次のようになる。

(繰延積送諸掛)30(積送諸掛)30

なお、ほとんどのテキストには、上記のようなシンプルな例の解説しか書かれていないけど、もし、期首分の積送諸掛があったり、何度も積送していて、そのたびに発送費の単価が異なる場合などは、どうすればいいのだろう。これは、普通の棚卸資産と同じ考え方で計算すればいい。つまり、原価配分方法(先入先出法、平均など)にもとづいて、期末棚卸資産に含まれている積送諸掛分を繰り延べればいいわけだ。

本試験でも、この部分は出題される可能性があるので押さえておこう。

販売諸掛の会計処理

発送諸掛に比較して、販売諸掛の処理は簡単だ。これは、単純に売上をグロス(総額)で表示するか、ネット(純額)で表示するか、という話と思えばいい。例えば、お客さんへの販売額100円で受託者手数料20円のとき「売上100円と販売費20円」として処理するか「売上80円」と処理するかの違いということだ。

基本的には、発送諸掛のような繰延処理を考える必要はない。なぜなら、費用収益対応の原則は、収益に対応した分だけ費用を計上するルールであって、販売時の費用(販売諸掛)は全額計上すればいいだけだからだ。

ただし、若干の注意点がある。ヒネった問題だと、販売諸掛の中に積送品の引取費用の立て替え代金が含まれていることがある。積送品の引取費用は、販売数ではなくて、引取量に比例して生じる。つまり事実上の発送諸掛と同じ意味なのだ。したがって、売れ残りがあれば、発送諸掛と同様に繰延処理をしなければいけない。これは、引っ掛かりやすいので注意してほしい。

積送諸掛のサンプル問題

問題

次の取引について各問に答えなさい。なお、手許商品区分法(期末一括法)を採用している。

  1. 期首商品は200,000円(=@200円×1,000個)であった。この商品を全て積送し運賃10,000円を現金で支払った。
  2. 上記積送品のうち800個が販売され、受託者から次の仕切精算書を受け取った。
売上高 800個   240,000円
諸掛      
 引取費用 1,000個 5,000円  
 手数料 800個 30,000円 35,000円
手取額     205,000円
  1. 決算を迎えた。上記積送品のうち200個は未販売である。

設問

  1. 発送時の積送諸掛を積送品原価に算入し、売上高は受託者の手取り額で計上するものとする。各取引の仕訳と決算整理後残高試算表を作成しなさい。
  2. 発送時の積送諸掛ならびに受託者側で発生した諸掛は、すべて積送諸掛勘定で処理するものとする。各取引の仕訳と決算整理後残高試算表を作成しなさい。

答案用紙

 問1

(    )      (    )     
      (    )  
(    )   (    )  
(    )   (    )  
  (    )   (    )  

 問2

(    )      (    )     
  (    )   (    )  
(    )   (    )  
  (    )      
(    )   (    )  
  (    )   (    )  
  (    )   (    )  

解答

 問1

(積送品) 210,000 (仕入) 200,000
      (現金) 10,000
(売掛金) 205,000 (積送品売上) 205,000
(仕入) 210,000 (積送品) 210,000
  (積送品) 42,000*1 (仕入) 42,000
決算整理前残高試算表(単位:円)
売掛金 205,000 積送品売上 205,000
積送品 42,000    
仕入 168,000    

*1:積送品210,000円÷1,000個×200個=42,000円

  問2

(積送品) 200,000 (仕入) 200,000
  (積送諸掛) 10,000 (現金) 10,000
(売掛金) 205,000 (積送品売上) 240,000
  (積送諸掛) 35,000    
(仕入) 200,000 (積送品) 200,000
  (積送品) 40,000*1 (仕入) 40,000
  (繰延積送諸掛) 3,000*2 (積送諸掛) 3,000
決算整理前残高試算表(単位:円)
売掛金 205,000 積送品売上 240,000
積送品 40,000    
繰延積送諸掛 3,000    
仕入 160,000    
積送諸掛 42,000    

*1:積送品200,000円÷1,000個×200個=40,000円
*2:運賃10,000円÷1,000個×200個+引取費用5,000÷1,000個×200個=3,000円


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委託販売特有の論点” に対して1件のコメントがあります。

  1. cafe より:

    お世話になっております。

    積送諸掛のサンプル問題の問2で、
    1.繰延積送諸掛は、200個は未販売なので、2,000では?
    2.その結果、積送諸掛は、43,000では?
    3.引取費用の200個は未販売で、繰延なくてよいのでしょうか?

    1. pro-boki より:

      コメントありがとうございます。

      >1.繰延積送諸掛は、200個は未販売なので、2,000では?
      >3.引取費用の200個は未販売で、繰延なくてよいのでしょうか?

      そのとおりです。この1と3をまとめてた上で解答としています。
      つまり、1.は、おっしゃるとおり2,000円であり、3.は、1,000円です。よって合計の3,000円を解答としました。

      解説が無かったので、不親切でしたね。簡単な解説を付記しましたのでご確認ください。

    2. cafe より:

      ありがとうございました。

      理解不足でした。

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