割賦販売(未実現利益整理法)の基本問題解法

割賦販売(未実現利益整理法)の基本問題

個人的な感想だが、割賦販売に限らず特殊商品売買の問題は、推定箇所が多くまるでパズルのようだ。問題のための問題といった感じであまり良問とは思えない。多くの場合、推定箇所は、実務では判明しているわけで、それをわざわざ隠し、ありえない設定(期中1種類の商品しか販売せず、かつ、原価率は一切変わらない)のもと、パズルが解けるかどうかを試される。誰が得なのこれ?と思う。

まあ、確かに帳簿や勘定の仕組みを知るという点で、全く意味が無いわけではない。でも、それなら他にもっと優れた方法はいくらでもある。現に、このパズルの解法を知ったところで実務ではほぼ役立たない。

ということで、これから学ぶことはパズルだと割り切ろう。出来ないからといって決して簿記が向いてないとか、そういうことじゃない。関係ない。試験のためにパズルを練習する、という考え方でいいと思う。

ただし、とは言っても、解き方を暗記するというやり方はおすすめしない。それでは、すぐに忘れるし、少し条件設定が変わると出来なくなってしまうからだ。前回の記事でも書いたけど「この会計処理において、この勘定は何を意味しているんだろう」を意識する、これがもっとも大切だ。それさえ理解出来れば、あとはなんとかなる。そんなイメージを持つといい。では、基本問題を解いてみよう。

割賦販売の基本問題

次の資料にもとづいて損益計算書と貸借対照表(一部)を作成しなさい。

決算整理前残高試算表(単位:円)
割賦売掛金 160,000 繰延売上利益 63,000
繰越商品 77,500 一般売上 450,000
仕入 430,000 割賦売上 250,000
  1. 期中に、売上割戻34,000円、売上割引16,000円があり、一般売上から控除済みである。
  2. 期中の仕入値引27,000円、仕入割引15,000円、返品24,000円は仕入から控除済みである。
  3. 商品の帳簿棚卸高は、@450円(取得原価)の商品が150個であったが、実地棚卸によれば良品@440円(正味売却価値)が130個、品質低下品@200円(正味売却価値)が15個であった。商品評価損は売上原価の内訳科目とし表示すること。
  4. 割賦販売の収益認識基準は回収基準とし、未実現利益整理法を採用している。
  5. 当期の割賦売価は一般売価の25%増に設定してある。
  6. 割賦売掛金の期首残高は140,000円であり、うち、100,000円は当期に回収している。

答案用紙

(クリックで開きます)
損益計算書(単位:円)
Ⅰ 売上高   (    )
Ⅱ 売上原価    
 1.期首商品棚卸高 (    )  
 2.当期商品仕入 (    )  
  合計 (    )  
 3.期末商品棚卸高 (    )  
  差引 (    )  
 4.商品評価損 (    ) (    )
  修正前売上総利益   (    )
  繰延売上利益戻入   (    )
  繰延売上利益控除   (    )
  売上総利益   (    )
Ⅲ 販管費    
 1.棚卸減耗費   (    )
  営業利益   (    )
Ⅳ 営業外収益    
 1.仕入割引   (    )
Ⅴ 営業外費用    
 1.売上割引   (    )
  経常利益   (    )
貸借対照表(単位:円)
割賦売掛金 (    ) 繰延売上利益 (    )
商品 (    )    

解答

(クリックで開きます)
損益計算書(単位:円)
Ⅰ 売上高   716,000
Ⅱ 売上原価    
 1.期首商品棚卸高 77,500  
 2.当期商品仕入 445,000  
  合計 522,500  
 3.期末商品棚卸高 67,500  
  差引 455,000  
 4.商品評価損 5,050 460,050
  修正前売上総利益   255,950
  繰延売上利益戻入   45,000
  繰延売上利益控除   57,600
  売上総利益   243,350
Ⅲ 販管費    
 1.棚卸減耗費   2,250
  営業利益   241,100
Ⅳ 営業外収益    
 1.仕入割引   15,000
Ⅴ 営業外費用    
 1.売上割引   16,000
  経常利益   240,100
貸借対照表(単位:円)
割賦売掛金 160,000 繰延売上利益 75,600
商品 60,200    

解説

(クリックで開きます)

解答の方針

典型的な割賦販売の問題だ。どのテキスト、問題集にも同じような問題が収載されていることだろう。ここでは、ステップ・バイ・ステップで、超懇切丁寧に解説したいと思う。未実現利益整理法の問題を解く際は、次のポイントを押さえて欲しい。

  • 繰延売上利益に関係する計算以外は、一般商品売買と解き方は同じであり、優先に解くこと。その部分だけでほとんどの点数は取れる。
  • 繰延売上利益に関係する計算は、ある種パズルのようなものと割り切る。
  • (未実現利益整理法に限らず対照勘定法も)割賦売掛金の動きを追えるかどうかが鍵。
  • 原価率の算定が難しい。出せなければ捨ててもいい。

まずは値引・割引・返品に関する処理をしておく

資料1と2によれば、期中に値引・割引・返品が発生しており処理済みである。ここで問題なのは、割引だ。これは営業外費用(収益)だから、直接、売上や仕入から控除してはいけない。したがって、その誤った処理を戻す必要がある。正しい、前T/Bは以下のとおりだ。

決算整理前残高試算表(単位:円)
割賦売掛金 160,000 繰延売上利益 63,000
繰越商品 77,500 ①一般売上 466,000
②仕入 445,000 割賦売上 250,000
①売上割引 16,000 ②仕入割引 15,000

① (売上割引)16,000 (一般売上)16,000 
② (仕入)15,000 (仕入割引)15,000 

なお、値引、割戻、返品に関しては、処理済みであることは問題ないので、特に処理をする必要はない。

商品ボックス図を作る

商品ボックス(単位:円)
①期首 77,500 ④売上原価 455,000
②当期仕入 445,000  ③期末 67,500
  1. 前T/Bの繰越商品
  2. 前T/Bの仕入430,000円+仕入割引15,000円
  3. 資料3より@450×150個=67,500円
  4. 貸借差額より

棚卸減耗費と商品評価損の計算

商品評価損と棚卸減耗費についてはボックス図を書くような解き方は、オススメしない。手間が掛かるし、時間の無駄だし、間違いやすいからだ。

講義でも繰り返し話しているが、簿記における差異分析は、工業簿記の標準原価計算だろうと、原価計算の予算実績差異分析だろうと、商業簿記の商品評価損と棚卸減耗費の計算だろうと、全て、共通のルールで計算できる。そのルールに従えば電卓だけで一瞬だ。詳しくは別の記事に書くけれど、とにかくこれだけは覚えてほしい。

鉄則1:価格(率)の差には、いつでも実際数量を掛ける
鉄則2:数量の差には、いつでも予定(標準・帳簿)の価格(率)を掛ける

具体的には、良品の価格差は@10円(=@450円−@440円)で、この実際数量が130個ある。そして、品質低下品の価格差は@250円(=@450円−@200円)で、この実際数量が15個ある。だから、これらを掛ければいいのだ。

@10円×130個+@250円×15個=5,050円

これが、商品評価損だ。繰り返すが、工業簿記の材料価格差異も賃率差異も、予算実績差異分析の販売価格差異も全て同じルールで計算できる。いちいち、ボックス図を書く必要は全くない。

同様に、鉄則2から、数量差は5個(=150個−130個−15個)だ。数量差には、帳簿価格を掛けるのだから、@450円を掛ければいい。

@450円×5個=2,250円

これが、棚卸減耗費だ。工業簿記の材料消費量差異、作業時間差異、販売数量差異なども全く同じルールで計算できる。知らなかった人は、是非、この機会にマスターしてほしい。ボックス図書いたいすると2,3分、人によっては5分くらい掛かるけど、電卓でいきなりやれば30秒で出来るから。

ここまで割賦販売の処理はしていないけど

さて、ここまで、割賦販売に関する処理は一切していない。だけれども、答案用紙の多くの部分を埋めることができる。埋めてみよう。

損益計算書(単位:円)
Ⅰ 売上高   ①716,000
Ⅱ 売上原価    
 1.期首商品棚卸高 77,500  
 2.当期商品仕入 445,000  
  合計 522,500  
 3.期末商品棚卸高 67,500  
  差引 455,000  
 4.商品評価損 5,050 460,050
  修正前売上総利益   255,950
  繰延売上利益戻入   (    )
  繰延売上利益控除   (    )
  売上総利益   (    )
Ⅲ 販管費    
 1.棚卸減耗費   2,250
  営業利益   (    )
Ⅳ 営業外収益    
 1.仕入割引   15,000
Ⅴ 営業外費用    
 1.売上割引   16,000
  経常利益   (    )
貸借対照表(単位:円)
割賦売掛金 160,000 繰延売上利益 (    )
商品 ②60,200    

1.前T/B一般売上450,000円+売上割引16,000円+割賦売上250,000円=716,000円
2.@440円×130個+@200円×15個=60,200円

結局、繰延売上利益戻入と繰延売上利益控除以外の箇所は、全て埋まるわけだ。

本試験の得点テクニック的に言えば、ここまでの計算に(値引・割戻・割引あたりは少しだけ難しいけど)難所はほとんど無く、時間にしても5分も掛からないはずだ。これで、ほぼ合格点に届く。一方で、ここから先の計算は、慣れていても7,8分近く掛かるし、手探りでやったら15分以上掛かるかもしれない。それでいて正答率は低く、埋没する可能性もある。

だから、ここまでを落とさないように慎重にやって、ここから先は捨てるというのも本試験におけるとても有用なテクニックだろう。

いよいよ未実現利益控除法

とはいえ、上記で終わってしまったら、何の記事なんだか分からないので、この先もしっかり丁寧に解説しようと思う。商簿の総合問題の一部として出題されるのならまだしも、会計学でガッツリ出されたら、やはり上記で終わるわけにはいかないし。

さて、出したいのは、繰延売上利益関連の額だ。要するに売上にしているけど、一部未実現(つまり現金回収出来ていない)なので、その利益を控除しましょう、ということだ。ということは、そもそも、売上のうち未実現部分がいくらなのかが判明しないと始まらない。これ、いくらだか分かるだろうか。

そう。160,000円だ。だって、割賦売上のうち、現金回収出来ていない部分って何かと言えば、これは割賦売掛金のことでしょ。だから160,000円だ。簡単。じゃあ、160,000円に今期の利益率を掛ければいいのか、といえば、惜しいけど違う。160,000円は、あくまでも割賦売上のうちの未回収の部分っていうだけ。内訳としては、前期販売分と当期販売分が混在している。だから、その内訳を分析して、それぞれ、前期と当期の利益率を掛けないといけない。

すでに、スクールで割賦販売を学習している人やテキストを独習している人は、ボックス図の使い方を知っているだろう。すると計算は出来る。だけど、案外、自分が何をしているのかを分かっていない。それじゃダメ。

大事なことだから繰り返すよ。要するに割賦売掛金は未実現の売上のことで、そこに含まれている利益が知りたい。だけど、前期と当期で利益率が違うから、分析するしかないと。そういうこと。で、ボックス図を使うと分析しやすいよ、というだけの話。

ではボックス図

割賦売掛金を分析しよう。次のようなボックス図を使うと分かりやすい。

割賦売掛金(単位:円)
期首(前期繰越)   ①  回収済
未回収
当期発生分   ②  回収済
未回収

さて、数値を埋めていこう。まず、資料6に「割賦売掛金の期首残高は140,000円、うち100,000円は当期回収」とある。これにより、あっさり、①と③が判明する。また、④も差額で判明する。

割賦売掛金(単位:円)
期首(前期繰越)  140,000 回収済 100,000
未回収 40,000
当期発生分  回収済
未回収

ちなみに、前T/Bの割賦売掛金160,000円がどこを表しているかは分かるだろうか。これは未回収の部分の話なので、つまり、40,000円と⑥の合計ということだ。よって、⑥も120,000円と判明する。

問題は、②だ。前T/Bのどこを見れば分かるのだろうか。当期に発生している割賦売掛金とは、要するに当期の割賦販売の額ということだ。割賦販売勘定はPL科目だから当然前期分は入っておらず当期発生分だけだ。だから、②は前T/Bの割賦売上の額250,000円だ。ここまで分かれば⑤も差額で判明する。

割賦売掛金(単位:円)
期首(前期繰越)  140,000 回収済 100,000
未回収 40,000
当期発生分  250,000 回収済 130,000
未回収 120,000

まずは、ここまで、ボックスを作れるかどうかがファーストステップだ。

次は利益率が知りたい(当期分)

さて、割賦売掛金のボックス図を作ったことで、前期と当期の内訳が判明した。あとは、前期と当期の利益率が判明すれば、繰り延べる利益が判明する。まずは、当期の利益率から考えてみよう。

いま、分かっていることは、売上原価(455,000円)と、一般売上466,000円、それに割賦売上250,000円だ。そして、資料5には「当期の割賦売価は一般売価の25%増に設定してある」と書かれている。ここから原価率を計算しよう。原価と売上が分かっているのだから、簡単に出せそうなものだけど、ちょっとヒネリがあるので、慎重に計算しよう。

原価率の異なる一般販売と割賦販売が混在しているままでは、計算しにくい。そこで、全部、一般販売で売れたと仮定して計算しよう。割賦販売は一般販売の25%増しなのだから、その分を割り戻せば、一般販売の売上になる。つまり、割賦売上250,000円は一般販売で言うところの200,000円(=250,000円÷1.25)に相当するわけだ。よって、原価率を計算すると、

455,000円÷(466,000円+200,000円)=0.6813… あれ、割り切れない。

こういうときは、だいたい、どこかで間違えている。本試験で、原価率が割り切れず、かつ、端数処理の指示が無ければ、どこかで間違えていると思った方がいい。

 ここは、ちょっと難しいというか引っかかるよね。前回の記事でも書いたけど、今、求めたいのは事前原価率だ。現実には売上割戻が生じて、34,000円分減った売上を計上しているけど、原価率を算定している時点では、売上割戻なんてイレギュラーなことは考慮していない。つまり、売上割戻34,000円を控除する前の売上を前提として原価率を計算しないといけないのだ。よって、原価率は次の式で計算される。

原価率:455,000円÷(466,000円+34,000円+200,000円)=65%

ここで、よくやるケアレスミスが、割賦販売の利益率を35%(=1−65%)としてしまうことだ。それは、あくまでも一般販売の利益率だからね。つまり、一般販売の原価が65%、売価が100%、割賦販売の売価が125%ということだから、割賦販売の当期利益率は、次の式で計算される。

割賦販売の当期利益率:(125%−65%)÷125%=48%

さらに、前期の利益率が知りたい

さて、もう一息だ。前期分の利益率を算定しよう。これは、どこを見れば分かるのだろうか。知らなければなかなか難しいよね。

まず、資料6に「割賦売掛金の期首残高は140,000円」とある。で、これに含まれている利益の額が分かれば利益率が判明するわけだ。どこかに書いてないだろうか。これ、前T/Bの繰延売上利益63,000円なんだよね。

だって、そうでしょ。前T/Bの繰延売上利益って、前期の未実現(=未回収)の売上に対する利益を繰り延べたものなんだから。だから、前期の利益率は、次の式で計算される。

割賦販売の前期利益率:63,000円÷140,000円=45%

では、ボックス図に戻ろう

利益率が判明しているので、利益の額を計算できる。では、ボックス図に戻って、利益の額を書き入れよう。

割賦売掛金(単位:円)
期首(前期繰越) 
利益率45%
140,000 回収済 100,000 ①(45,000)
未回収 40,000 ②(18,000)
当期発生分 
利益率48%
250,000 回収済 130,000 ③(62,400)
未回収 120,000 ④(57,600)

ここで、ポイントは、前期から繰り越されてきた利益は①+②の63,000円であって、それが前T/Bの繰延売上利益ということだ。で、このうち①の45,000円は回収したのだから、もう未実現利益ではなくなったわけだ。つまり残っているのは②の18,000円だけだ。

そして、当期の利益のうち③62,400円は、当期に発生して、当期に回収したので、未実現利益じゃない。関係ないということ。そして、④が当期に発生して未回収の分だから、これは未実現利益だ。よって、来期に繰り越さなければいけない未実現利益は、次のとおりだ。

来期に繰り越すべき未実現利益(=繰延売上利益):②18,000円+④57,600円=75,600円

仕訳にすると

さて、これ、仕訳にするとどうなるか。

前T/Bには、繰延売上利益63,000円が計上されているわけだ。このうち、①の45,000円が実現したのだから戻し入れなければいけない。さらに新規に発生した未実現利益が④の57,600円だから、これは控除しなければいけない。仕訳にすると次のようになる。

(繰延売上利益)45,000(繰延売上利益戻入)45,000
(繰延売上利益控除)57,600(繰延売上利益)57,600

すると、繰延売上利益勘定は、次のようになる。

前T/B 63,000円−45,000円+57,600円=75,600円

上記の来期に繰り越すべき未実現利益(=繰延売上利益)と一致していることが分かるだろう。

P/Lには、繰延売上利益戻入45,000円と、繰延売上利益控除57,600円を売上総利益の調整項目として計上する。これで、P/Lの全ての項目が埋まったわけだ。


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割賦販売(未実現利益整理法)の基本問題解法” に対して1件のコメントがあります。

  1. ひろりん より:

    質問です。

    このさらに先、来期の期首の割賦売掛金勘定は160000円、繰延売上利益勘定は75600円になると思うのですが、ここには前々期と前期の分が含まれてるってことですよね?

    だとすると、75600円÷160000円で今回は割り切れる数値が出ますが、これが来期から見た当期の利益率ではないってことですよね?

    あと、質問ではありませんが、「棚卸減耗費と商品評価損の計算」の鉄則2の計算のあたり(150-130-5)になってますが、(150-130-15)でしょうか?
    ご確認お願い致します。

    1. pro-boki より:

      >このさらに先、来期の期首の割賦売掛金勘定は160000円、繰延売上利益勘定は75600円になると思うのですが、ここには前々期と前期の分が含まれてるってことですよね?

      そのとおりです。

      >だとすると、75600円÷160000円で今回は割り切れる数値が出ますが、これが来期から見た当期の利益率ではないってことですよね?

      そのとおりです。75,600円÷160,000円=47.25%ですが、これは「来期から見た当期の利益率」ではなく、「来期から見た過去の利益率の加重平均」です。

      >あと、質問ではありませんが、「棚卸減耗費と商品評価損の計算」の鉄則2の計算のあたり(150-130-5)になってますが、(150-130-15)でしょうか?

      ご指摘ありがとうございます。誤植ですね。修正しました。助かります!

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