153回日商簿記1級・詳細解説【会計学編】

第153回会計学の感想

全体を通しての感想はこちらをどうぞ。

会計学は、難問と簡単な問題が入り混じっていましたが、全体的には難しかったと思います。特に第2問目の連結会計はいくらなんでもやりすぎでしょう。現行の1級の市販テキストでは全く歯が立たないと思います。

しかし、それはみんな同じ条件ですし、1級は相対試験ですから、そこを過度に気にする必要はありません。ただこのような傾向が続くなら会計士受験生に有利な感じはします。

得点の目安は、14点〜16点くらいで十分でしょう。多分配点調整が入ります。

それでは、会計学の解説です。

第1問 理論問題

用語記入問題と計算問題でした。簡易な問題もあれば、これはちょっと無理では?と思うものもありました。

1.
(イ)取引とは、先物取引、先渡取引、(ロ)取引、スワップ取引及びこれらに類似する取引をいう。(イ)取引により生じる正味の債権及び債務は、(ハ)をもって貸借対照表価額とし、評価差額は原則として当期の損益として処理される。

金融商品に関する会計基準
これは、出来ないといけません。(イ)デリバティブ、(ロ)オプション、(ハ)時価ですね。(ロ)の誤答としては、「ヘッジ」「為替予約」などがあげられますが、そう答えた方は勉強不足です。ヘッジ取引はリスクを回避(ヘッジ)するために行われる取引という意味にすぎず、本問の金融商品におけるデリバティブは、ヘッジするための一手段として使われるにすぎません。また、為替予約は、先物取引(将来の為替レートを予約している)の一種です。

2.
当期首現在において繰延税金資産が3,000百万円、繰延税金負債が450百万円あった。当期末現在において、将来減算一時差異が12,000百万円、将来加算一時差異が2,000百万円である場合、当期の法人税等調整額は、(ニ)百万円となる。ただし、将来の法定(ホ)税率は30%、当期首および当期末における将来加算一時差異はその他有価証券の評価差額金について生じたものである。

税効果会計
法人税等調整額は、期首の繰延税金資産と繰延税金負債の差額と、期末のそれの差額で計算されます。ただし、
本問の繰延税金負債は「その他有価証券の評価差額金」のみであることが明示されています。よって、将来減算一時差異と繰延税金資産のみを計算すればよいわけです。
(ニ)将来減算一時差異12,000×30%−3,000=600
(ホ)は実効税率の”実効”ですが、これ「実行」と書いた方もいたと思います。漢字ミスは要注意です。普段から意識しましょう。

3.
当期首における建物の帳簿価額は10,400百万円、当該建物に係る資産除去債務が3,183百万円であった。このとき、当期の減価償却費と利息費用の合計額は、(ヘ)百万円となる。なお、建物の減価償却は、残存耐用年数が8年、残存価額ゼロ、定額法による。資産除去債務の割引率は、年3%とする。

資産除去債務
本問を「当期首に建物を10,400百万円で取得し、当該建物に係る資産除去債務が3,183百万円であった。」と読んでしまうとケアレスミスをしてしまいます。建物の簿価を10,400+3,183=13,583と読んでしまうわけですね。この点はミスをしてしまった方も少なくないでしょう。ちなみにこのミスをしたのは私です。

問題文には「建物の帳簿価額は10,400百万円」とありますから、この価額の中には資産除去債務が3,183百万円が含まれているわけですね。このミスは痛手でした…。

問題を読み間違えなければ、計算は至って簡単です。利息費用3,183×3%+減価償却費10,400÷8年=1,395ですね。

4.
「討議資料 財務会計の概念フレームワーク」によると、会計情報の意思決定(ト)性を支える特性として、意思決定との関連性と(チ)性が挙げられている。

財務会計の概念フレームワーク
(ト)は正解したいところです。意思決定有用性は、150回の過去問でも問われた論点です。詳しくは、こちらのブログ記事の第3問目の解説をご覧下さい。(チ)は「信頼」性です。これは、税理士の財務諸表論を勉強中だとか、たまたま概念フレームワークを読んでいた、とかでないと無理でしょう。信頼性は、要するに会計情報が信頼するに十分であることを示すもので、「中立性」「検証可能性」「表現の忠実性」に支えられています。

5.
企業が開示する報告セグメントの利益に含まれる項目のうち、開示が要求されているものには、外部(リ)への売上高、事業セグメント聞の内部売上高又は振替高、減価償却費、(ヌ)の償却額、受取利息及び支払利息、(ル)投資利益(又は損失)、特別利益及び特別損失、税金費用、重要な非資金損益項目がある。

セグメント情報等の開示に関する会計基準
(リ)顧客、(ヌ)のれん、(ル)持分法(による)です。セグメント情報等の開示に関する会計基準は出題頻度も低く、理論対策をしている方でも優先順位低目論点ですから、まずもって出来ないでしょう。ただし、(ヌ)と(ル)は勘で答えられるところです。特に、科目の名称で、○○投資利益といったら「持分法による」くらいしか無いわけですから、これは出来てほしいところでした。

講師の感想

11箇所設問箇所がありました。少なくとも7問は確実に正解したいところです。9問取れれば上出来です。

第2問 連結会計

講師の感想

一見すると簡単そうで、かなり難易度の高い問題でした。こちらにも書きましたが、実は本試験2週間前に実施したプロ簿記模擬試験でよく似た問題を出題していました。いわゆる「その他有価証券評価差額金があるケース」での「一部売却」と、そのときの連結S/S(株主資本等変動計算書)、包括利益計算書の作成をテーマにした問題です。その点で本問とそっくりでした。

しかし、本試験はその上を来ました。上記論点に加えて「取得関連費用」と「評価差額の実現」を入れてきたのです。これは、いくらなんでも無理でしょう。

「取得関連費用」は会計士ではおなじみですが、1級テキストではあまり扱われていません。プロ簿記では、講義で取り扱いましたがさらっと流したので、忘れてしまった方も少なくなかったと思います。ここでミスをすると、のれんが間違えます。当然のれん償却額も間違えます。となると、利益関連は全滅です。ちょっと厳しい問題設定だったと思います。

また、「評価差額の実現」も過去(第141回の会計学第3問目)に1度出題されているため、まあ、対応している人もいるとは思いますが、1級だけを勉強しているとなかなかここまで手が回らないのが実情でしょう。会計士受験生なら話は別ですが。そして、ここを間違えると子会社の資本の計算(タイムテーブル)が間違えますから、期末の非支配株主持分も間違えるわけですし、一部売却の仕訳も間違えるわけです。ここも、ちょっと厳しい問題設定だったと思います。

あと「その他有価証券評価差額金があるケース」で「一部売却」をすると、通常の一部売却の処理に加えて、親会社が子会社の支配を獲得してから一部売却するまでの間に獲得したその他有価証券評価差額金における売却持分を資本剰余金に振り替えるという処理が必要になります。(言葉で書くと長いな…)つまり、次の仕訳が生じるということです。

通常の一部売却の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
S株 XXX 非株 XXX
子株売却益 XXX 資本剰余金 XXX

 

その他有価証券評価差額金があるケースで一部売却したときに上記に加えて行う仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
その他有価証券評価差額金 1,000 資本剰余金 1,000

*この金額は、親会社が子会社の支配を獲得してから一部売却するまでに得た含み益(その他有価証券評価差額金)のうちの売却持分。本問の場合だと、子会社のその他有価証券評価差額金は、支配獲得時が10,000で、一部売却時が15,000なので、(15,000−10,000)×一部売却分20%=1,000と計算する。

この仕訳も知らないとなかなか出来ません。プロ簿記では本当に偶然たまたま直前の模擬試験で取り扱いましたが、そこでも「まあ、試験には出ないからスルーOKだよ」と話してしまっています。(余計なこと言わなければよかった)

ここも点数獲得は難しいでしょう。

ということで、本問は、普通に1級のテキストで基礎問題が満点取れるくらいに仕上げてきたとしても、全く歯が立たない問題です。ですから、出来なくても全然気にする必要はありません(現時点ではですよ)。1級は相対試験ですから、みんなが出来ない問題に力を注ぐのは悪手です。ここは軽く流して、誰でも取れる箇所(売掛金とか棚卸資産のような箇所)をいかに落とさなかったかが大事です。

解き方

1.タイムテーブルの作成
  20X1   20X2   20X3
資本金 400,000   400,000   400,000
資本剰余金 100,000   100,000   100,000
利益剰余金 220,000   280,000   300,000
その他有価証券評価差額金 10,000   14,000   15,000
評価差額 15,000*1   14,000*2   13,000*3
  745,000   808,000   828,000
非株(0.2→0.4) 149,000
(20%)
  161,600
(20%)
  331,200
(40%)
持ち分 596,000        
取得 650,000*4        
  54,000 5,400 48,600 5,400 43,200
  1. 支配獲得時の評価差額:土地10,000+建物5,000=15,000
  2. 評価差額の実現仕訳「減価償却費1,000/建物1,000」を反映して15,000−1,000=14,000
  3. 評価差額の実現仕訳「減価償却費1,000/建物1,000」を反映して14,000−1,000=13,000
  4. 個別財務諸表上では有価証券の取得関連費用は取得原価に算入するが、連結財務諸表上では当期の費用として処理し、取得原価には算入しない。なお、以前は連結でも個別と同様、取得原価に算入していたが不正会計を防ぐ観点や国際的な会計基準にあわせる観点から、ルール変更された。
2.タイムテーブルにもとづいて開始仕訳をおこす
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
利益剰余金
(取得関連費用)
20,000 S株 20,000
土地 10,000 評価差額 15,000
建物 5,000 S株 650,000
資本金 400,000*1 非株 161,600*1
資本剰余金 100,000*1 建物 1,000*4
利益剰余金 238,200*2    
そ有評価差額金 10,800*3    
評価差額 15,000    
のれん 48,600*1    
  1. タイムテーブルの数値を移す
  2. 貸借差額で算定
  3. タイムテーブルのその他有価証券評価差額金より
    10,000+(14,000−10,000)×非株持分20%=10,800
  4. 建物の評価差額5,000÷5年=1,000
3.期中仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
のれん償却額 5,400*1 のれん 5,400*1
非株PL 6,000*2 非株 6,000*2
受取配当金 8,000*3 剰余金の配当 10,000
非株 2,000*4    
そ有評価差額金 200*5 非株 200
  1. タイムテーブルが数値を移す
  2. タイムテーブルの利益剰余金と配当金より
    (300,000−280,000+配当金10,000)×非株持分20%=6000
  3. 配当金10,000×親株持分80%=8,000
  4. 配当金10,000×非株持分20%=2,000
  5. タイムテーブルのその他有価証券評価差額金より
    (15,000−14,000)×非株持分20%=200
4.成果連結仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
買掛金 50,000*1 売掛金 50,000*1
売上原価 2,000*2 棚卸資産 2,000*2
減価償却費 1,000*3 建物 1,000*3
非株 200*4 非株PL 200*4
  1. 問題文資料3より
  2. 問題文資料3より
  3. 建物の評価差額5,000÷5年=1,000
  4. 上記建物の評価差額の実現は子会社の利益に影響を与える(利益を減額させる)ため、非株の持分を減らす
    1,000×非株持分20%=200
5.一部売却の仕訳
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
S株 167,500*1 非株 165,600*2
子株売却益 1,2500*3 資本剰余金 14,400*4
そ有評価差額金 1,000*5 資本剰余金 1,000*5
  1. (個別F/S上でのS株簿価)670,000÷80%×20%=167,500
  2. (連結上での子会社の資本)828,000×20%=165,600
  3. 売却価額180,000−個別F/S売却原価167,500=12,500
  4. 売却価額180,000−連結F/S売却原価165,600=14,400
  5. 上記「講師の感想」より(15,000−10,000)×一部売却分20%=1,000
6.集計(連結B/S)

「P社とS社の個別F/Sを合算し、上記修正仕訳を反映させれば答えがでます。」

・・・といった解説をよく聞きますが、そう言っている講師は、本当に本試験中にご自分でもそうやっているのでしょうか。疑問です。

少なくとも私は、そのような解法は採用しません。時間も掛かるしミスもしやすいからです。ずばり、連結は、上記のように全部の仕訳を切って集計をするようなやり方では、合格は遠のくばかりです。ピンポイントで、答案要求された科目の金額を計算できるようにしておかなければなりません。

現金預金、投資有価証券、長期借入金

まず、現金預金、投資有価証券、長期借入金の3つは、個別F/Sを単純合算するだけです。開始仕訳にも影響を受けませんし、PとSの間での取引もないためです。

売掛金、買掛金、棚卸資産

PとSの個別F/Sを単純合算したうえで、成果連結の相殺仕訳を反映させます。売掛金と買掛金はそれぞれ単純合算後、双方ともに50,000を控除します。また、棚卸資産は、単純合算後2,000を控除します。

資本金、S株

資本金は、増資などをしていない限り、Pの資本金が答えです。S株は投資と資本の相殺消去によって消え去ります。どちらも2級レベルの話です。今更ですが。

有形固定資産

通常であれば、評価差額分を加減するだけ(本問なら15,000を足すだけ)でおしまいですが、本問は評価差額の実現により1,000が2回償却されていますから、15,000を足したうえで2,000を引きます。これは少し難しいですね。

のれんと非株

タイムテーブルから書き写すだけです。タイムテーブルが正しく書けていればですが。

その他の包括利益累計額

ここからが勝負です。これ、出来た方は立派です。まず出来ないでしょう。答えから書くと、次の式で一発で算定できます。
P社のその他の包括利益のうちP株主分:30,000
S社のその他の包括利益のうちP株主分:(15,000−10,000)×0.6=3,000
合計:33,000
S社のその他の包括利益のうちP株主分の算定のポイントはPが支配を獲得してから、増加した含み益(5,000)のうち、Pの持分60%を掛けた額です。これ、含み益だから60%なのです。もし、実現利益(利益剰余金)なら、当期末まで80%を維持していたのですから80%を掛けます。こんなの会計士講座じゃないとやらないと思いますので、1級だけを勉強していた方は出来ないでしょう。

利益剰余金

上記をすべて正確に計算できていたなら、利益剰余金以外はすべて確定しますので、最後に利益剰余金を貸借差額で算定します。

7.集計(連結C/Iほか)

ワークシートを用いると簡単に集計できます。

  PP PS S非
当期純利益 20,000 30,000  
    -6,000 6,000*1
配当金 -10,000 -10,000  
    2,000 -2,000
のれん -5,400    
子株売却益 -12,500    
売上原価 -2,000    
減価償却費   -1,000  
    200 -200*1
その他の包括利益 3,000 1,000  
    -200 200
    19,100 6,000
  • PPとは、P社株主に帰属するP社の利益のことです
  • PSとは、P社株主に帰属するS社の利益のことです
  • S非とは、非株に帰属するS社の利益のことです
  • 青字の合計が連結P/Lに計上される当期純利益21,100です。なお、グレーの網掛けになっている部分は計算から除外します。配当金の支払いは、持分所有者との直接的な取引だからです
  • *1の6,000−200=5,800が非株PL(非支配株主に帰属する当期純利益)です。
  • よって、当期純利益21,100−非株PL5,800=15,300が親会社株主に帰属する当期純利益です。
  • 包括利益は、上記表のすべて(グレーの網掛けになっている部分以外)を合計した25,100です。

上記のワークシートの使い方については、以下の記事を参照してください。かなり役立つと思います。

包括利益

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