1級ミニテスト・連結会計の成果連結1(棚卸資産)

連結会計のミニテスト(棚卸資産・未実現利益)
連結会計の成果連結の作問リクエストを頂いたので作ってみた。これは、私が受験生時代から使ってるとっておきのテクニック。別に減るものじゃないので公開しよう。この解法はなぜかテキストに載っていない。スクールでもやらないようだ。とても優れた方法なのに不思議だ。
一般のテキストの成果連結の解説は、損益の絡まない債権債務の相殺消去から始まって、商品売買のダウンストリームの簡単な例(税効果なし)と進む。そして税効果が入ってきて、最後にはアップストリームで混乱の極み、みたいな感じだ。
本記事では、そういったテキストを一通り読んでる人を対象としている。そのため、連結会計がどういうものかよく分かっていない人には少し難しいかもしれない。
なお、多くの人は、成果連結の仕訳を暗記で乗り切ろうとする。たいした量ではないから、暗記の誘惑に負けてしまう気持ちも分かる。しかし、やめたほうがいい。単なる暗記は、すぐに覚えられるけど、すぐに忘れてしまう。本記事は、そんな覚えのある人には、とっておきのテクニックだ。
では、ミニテストを通して学習しよう。機械的に10分以内に出来てほしい問題だ。
問題
P社はS社の発行済株式の80%を取得し支配を獲得している。次の取引にもとづいて、当期の連結F/Sを作成するための連結修正仕訳を示しなさい。なお、法人税等税率を40%として税効果を考慮すること。
【取引】
P社の期末商品のうち160万円はS社から仕入れたものである。また、P社の期首商品のうち150万円はS社から仕入れたものである。S社は毎期仕入価額に25%を上乗せしてP社に販売している。
解答
棚卸資産の未実現利益の消去仕訳
| (利首) | 300,000 | (商品) | 320,000 |
| (売原) | 20,000 | ||
| (税資) | 128,000 | (利首) | 120,000 |
| (法調) | 8,000 | ||
| (非首) | 36,000 | (利首) | 36,000 |
| (非当) | 2,400 | (非PL) | 2,400 |
利首:利益剰余金当期首残高
売原:売上原価
税資:繰延税金資産
法調:法人税等調整額
非首:非支配株主持分当期首残高
非当:非支配株主持分当期変動額
非PL:非支配株主に帰属する当期純損益
解説
成果連結でも、消去するものがPL科目同士、またはBS科目同士の場合は簡単だ。単に逆仕訳を切ればいいだけだから問題ないだろう。難しいのは、片方がPL科目でもう片方がBS科目の場合だ。これはコツというか鉄則ルールがある。それさえ知っていれば機械的に解けるので、是非マスターしてもらいたい。
棚卸資産の未実現利益の消去仕訳
Step.1 相殺消去
まず、期末商品160万円のうち消去すべき未実現利益を計算する。これは160万円÷1.25×0.25=32万円だ。同様に期首商品のうち30万円(=150万円÷1.25×0.25)は、前期における未実現利益だ。
そこで、期末に存在する商品は32万円分多いわけだからこれを取り消さないといけない。よって、商品の価値を下げるために貸方に計上する。・・・①
これを取り消す根拠として、前期にも同じことが起きていて、その分は利益剰余金当期首残高のうちの30万円だ。そして当期にこれは売却済みだから実現している。よって、この30万円で手当する・・・②
それでも足りない分2万円は、当期の売却分、つまり売上原価で手当する。・・・③
| ②(利首) | 300,000 | ①(商品) | 320,000 |
| ③(売原) | 20,000 |
もしもダウンストリームで税効果もなければ、ここでおしまいだ。
Step.2 税効果に対応
借方もしくは貸方に損益が残る仕訳は、税効果の対象だ。上記の仕訳で言えば、①の利益剰余金当期首残高(利首)と売上原価(売原)だ。勘違いしている人がいるかもしれないので言っておくと、利益剰余金当期首残高は、前期のPL科目だ。前年までは売上原価だったが年度を超えたので、純資産になったにすぎない。もともとPL科目だったという点に注意してほしい。
さて、ここで、税効果の仕訳を起こすさいの基本的な考え方を紹介する。それは、損したときも得したときも、そのインパクトを弱める方向に働くということだ。
ざっくり言えば「やったー100万円儲かった」と思っても、税率40%分、つまり40万円持って行かれるから正味60万円の儲けにしかならない。逆に「あ〜あ、50万円損した」と思っても、そのうち20万円は繰延税金資産として資産扱いされるので正味の損は30万円だ。つまり、損にせよ得にせよ、どのみち、そのインパクトを弱める方向に働くのだ。まず、これを基本コンセプトにおいてほしい。
さて、ここで、次の仕訳をみてみよう。
| ②(利首) | 300,000 | ①(商品) | 320,000 |
| ③(売原) | 20,000 |
②の利益剰余金当期首残高は、さきにも言ったが前期PL科目だ。つまり30万円の費用扱いになっているけど、その40%分、インパクトが弱まる方向に税効果が働く。よって、12万円が貸方にくる。勘定科目を何にするかだが、当期なら法人税等調整額(PL科目)だが、前期の修正なので利益剰余金当期首残高だ。・・・④
| ②(利首) | 300,000 | ①(商品) | 320,000 |
| ③(売原) | 20,000 | ||
| ④(利首) | 120,000 |
次に③の売上原価だ。これも税効果のせいで40%分インパクトが弱まる。よって、8,000円が貸方にくる。勘定科目は当期の話だから、法人税等調整額(PL科目)だ。・・・⑤
| ②(利首) | 300,000 | ①(商品) | 320,000 |
| ③(売原) | 20,000 | ||
| ④(利首) | 120,000 | ||
| ⑤(法調) | 8,000 |
最後に相手勘定だ。④と⑤の合計である128,000円は何だろうか。これは、連結会計というある種バーチャルな会計における資産性のある税金だから繰延税金資産だ。・・・⑥
| ②(利首) | 300,000 | ①(商品) | 320,000 |
| ③(売原) | 20,000 | ||
| ⑥(税資) | 128,000 | ④(利首) | 120,000 |
| ⑤(法調) | 8,000 |
もしもアップストリームでなければ、これでおしまいだ。
Step.3 アップストリームに対応
最後にアップストリームの対応だ。これも考え方はさきの税効果とほぼ同じだ。損益が発生したなら、そのインパクトを弱める方向に働くのだ。たとえば100万円儲かったと思っても非支配株主に20万円(=100万円×非支配株主持ち分20%)を取られるのでインパクトが弱くなる。逆の場合つまり100万円損したときも同様だ。
では、さきほどと同じように考えてみよう。②の利益剰余金当期首残高(つまり前期の売上原価)は、まず、税効果によって40%分インパクトが弱まっている。よって残りは18万円(=②30万円−④12万円)だ。この残り18万円の20%分が非支配株主によってインパクトを弱められるのだ。つまり3.6万円(=18万円×非支配株主持ち分20%)が貸方にくる。勘定科目を何にするかだが、当期なら非支配株主に帰属する当期純損益 (PL科目)だが、前期の修正なので利益剰余金当期首残高だ。・・・⑦
| ②(利首) | 300,000 | ①(商品) | 320,000 |
| ③(売原) | 20,000 | ||
| ⑥(税資) | 128,000 | ④(利首) | 120,000 |
| ⑤(法調) | 8,000 | ||
| ⑦(利首) | 36,000 |
さて、相手勘定だ。利益剰余金当期首残高の変動分のうち3.6万円を非支配株主がもってくれるわけだから、これは非支配株主当期首残高だ。・・・⑧
| ②(利首) | 300,000 | ①(商品) | 320,000 |
| ③(売原) | 20,000 | ||
| ⑥(税資) | 128,000 | ④(利首) | 120,000 |
| ⑤(法調) | 8,000 | ||
| ⑧(非首) | 36,000 | ⑦(利首) | 36,000 |
最後にもう1つ忘れちゃいけないのが、売上原価だ。③の2万円についても非支配株主がインパクトを弱めてくれる。ただし、これは⑤の税効果によってすでに40%分インパクトは弱められているので残りは1.2万円だ。この残り1.2万円の20%分が非支配株主によってインパクトを弱められるのだ。つまり2,400円(=1.2万円×非支配株主持ち分20%)が貸方にくる。勘定科目は当期なので非支配株主に帰属する当期純損益 (PL科目)だ・・・⑨
そして、相手勘定は、非支配株主の当期の持ち分がそれだけ変動するので非支配株主持分当期変動額だ。・・・⑩
| ②(利首) | 300,000 | ①(商品) | 320,000 |
| ③(売原) | 20,000 | ||
| ⑥(税資) | 128,000 | ④(利首) | 120,000 |
| ⑤(法調) | 8,000 | ||
| ⑧(非首) | 36,000 | ⑦(利首) | 36,000 |
| ⑩(非当) | 2,400 | ⑨(非PL) | 2,400 |
最後に
以上、実際に私が成果連結の問題を解くときに思考する順にしたがってワンステップづつ解説した。単に仕訳を暗記するのではなく、1つ1つの仕訳について、どういう手順で、どう計算し、どのような勘定科目を使うのかその意味までもマスターしてほしい。
繰り返しになるが、要は、だいたい未実現利益の消去というのは、PL科目(つまり損益)を取り消すという作業だ。で、それが前期からのものなら利益剰余金当期首残高で調整すればいいし、当期なら当期のPL科目で調整すればいい。(商品売買なら売上原価、土地の売却で利益が出たなら固定資産売却益)
また、税効果があった場合はPL科目のインパクトを弱めるように調整すればいい。そのさい、当期のPL科目のインパクトを弱める勘定科目は法人税等調整額だが、前期の場合は利益剰余金当期首残高だ。この点だけ注意すれば簡単だ。
さらに、アップストリームの場合も考え方は税効果とほとんど同じだ。PL科目のインパクトを弱めるように調整すればいい。そのさい、税効果があるなら、すでに40%分のインパクトは弱められているので残り60%分について非支配株主にインパクトを弱めてもらえばいい。
以上、1級レベルであれば、Step.3までおさえれば本試験で十分に対応できるだろう。もしダウンストリームならStep.2までで対応できる。是非、この手順を完全にマスターしてほしい。慣れれば本当に瞬殺できるようになる。
なお、異なるパターンとして「償却固定資産の未実現損益の消去仕訳」と「貸倒引当金の修正」の問題を用意した。本記事の手順をマスターしていれば、ほとんど同じ要領でできるので、自信つくはず。是非こちらもチャレンジしてほしい。
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富久田先生
早速、連結会計のミニテストを作問いただき、ありがとうございました。
”税効果もアップストリームもPL科目のインパクトを弱めるように調整”という表現は
はじめて聞きましたが、覚えやすい表現だと感じました。
今回のミニテストを通して、成果連結の解き方の手順を
是非、マスターしたいと思います。
>”税効果もアップストリームもPL科目のインパクトを弱めるように調整”という表現ははじめて聞きましたが、覚えやすい表現だと感じました。
そうなんですよね。これ、なんて表現したらいいんでしょうかね。ピタッとくる表現が思いつかなかったので、伝わるかちょっと不安だったのですが、覚えやすいと言って頂いて嬉しいです。
成果連結は慣れると、ほんと瞬殺です。完全にパターン化されてますから。是非マスターしてください。
富久田先生、こんにちは。
早速問題解きました。
利益剰余金(首)・非株の当期変動や純利益などの貸方・借方がよく理解出来ていませんでした。
先生の解説のインパクトを弱めるというのが、しっくりきました。二回目トライしたらすんなりと仕訳が出来ました。
2月の全経上級受けた時は、連結の仕訳を暗記でいきましたが、6月の日商の時には頭の中に残っていませんでした。先生の仰る通り、すぐに忘れていました。今回の試験も暗記しかないかなーと思っていましたが、この解説で考え方が分かったので暗記はやめます。有難うございます。
次の応用問題も頑張ります!
>先生の解説のインパクトを弱めるというのが、しっくりきました。二回目トライしたらすんなりと仕訳が出来ました。
うれしいです。
これ、コツは「BS科目が不当に儲かっちゃているから」それを消去する。儲けを消去するってことは損するってこと。で、一旦は親会社がその損を全て引き受けるけど、よくよく考えたら、儲けに従って税金払っているんだから、儲けを消去するなら、税金返ってくるはず。さらに、不当な儲けは非支配株主も片棒かついでいるんだから、責任とっていくらか負担させられるよね。というストーリーが頭にあればすんなり入ってくるはずです。
テキストや講義でもこういう風に教えてくれれば分かりやすいのにね、と思います。
次の応用問題も同じパターンで解けます。チャレンジしてみてね。
分かりやすい未実現利益の消去説明ありがとうございます
この説明を読んで、いろいろな問題を見てみましたが、
見た限り、すべてが期首商品より、期末商品の金額が大きいです
もし、逆の場合、下記の考えでいいのでしょうか?
期首未実現利益32、期末未実現利益30の場合、
期末の未実現消去
xxxxxx/商品30
前期未実現
利首32/xxxxxx
差額が当期で、
利首32/商品30
/売原2
貸引も同様に考えて、
期首25、期末15の場合、
期末の消去
貸引15/xxxxxx
前期の消去
xxxxxx/利首25
差額が当期で、
貸引15/利首25
貸繰10/
期首より期末が少ないケースは考えないのでしょうかね?
はい、そのとおりです。仕訳、あってます。
仮に棚卸資産の問題を、税効果とアップストリームまで行うと、次のようになります。
でも、まあ、このパターンは出ないでしょう。というのも、テキストや問題集に一切載っていないパターンを出題すると、だいたいの人は出来ないので、埋没問題になっちゃうんです。そのことを日商も分かっているので、出しにくいんですよね。
持分法の成果連結も同じやり方で解けることが分かりました。
ただ、ダウンストリームとアップストリームで勘定科目が違うのでちょっと迷います。
cafeさんへ
そうですね。基本的な考え方は一緒ですね。ただ、連結と違って、F/S合算をしないのでちょっと注意が必要です。税効果など売った側にしか適用されません。ですから、ダウンストリームのときはいいとしても、アップストリームのときは、関連会社側で税効果が起きているんですよね。それが間接的に、投資会社側に影響してくるというイメージが分かりにくいのではないかなという気がします。まあ、とは言っても、勘定科目が変わるだけですけどね。計算と考え方は自体は一緒ですね。
いつも有難うございます。
上記問題は
(利首)300,000 (売原)300,000
(法調)120,000 (利首)120,000
(非首)36,000 (利首)36,000
(非PL)36,000 (非当)36,000
(売原)320,000 (商品)320,000
(繰資)128,000 (法調)128,000
(非当)38,400 (非PL)38,400
テキスト解説ですとこのようになると思いました。
これは先生ががおっしゃっていた上級向けの考えからくる
解き方なのですね。
「前期未実現が当期実現する」という流れからくる仕訳だと
思いますが、ある程度腹にはまりながらも暗記に半分は走って
いたように思います。
ですので先生のような仕訳解き方は非常に新鮮にうつりました。
非株も上記解き方ですと、あっちへ行ったりこっちへ行ったりで
時間のロスにもなるのではと考える次第です。
>上記問題は
(利首)300,000 (売原)300,000
(法調)120,000 (利首)120,000
:
確認しました。はい、正解です。
多分どのテキストでもスクールでも、このように解説されていると思います。もちろん、これが正統的な解き方なのですが、とにかく時間が掛かるうえに混乱します。
私のやり方なら半分以下の時間で処理できるはずです。もちろん理論的な裏付けがありますので、私のやり方でも大丈夫です。是非、使ってください。
はじめまして。分からないことがあるとネットサーフィンして探しています。そんなこんなでたどりつきました。これ本当にすごいです!テキスト通りやると仕訳が多すぎて、うんざりしていました(>_<)けど、これならすっきりととけますね!
集計するときのコツもぜひ知りたいです(^^♪特に利益剰余金とか当期純利益がよく分からなくなります(なのに導き方が何個もあるし、基本は全部できなきゃまずいとききましたが…。)
あとさらに質問で、この膨大な範囲をどのように復習したらいいのでしょうか?
簿記1級レベルまでくると、覚えなきゃならないことが多く、復習もたくさん回数回せないし(3級とかなら毎日全範囲総復習可能なんですけど…)すぐ学習した論点を忘れて、毎回嫌な気持ちになります(笑)
なにかアドバイスを頂けると嬉しいです。
>簿記1級レベルまでくると、覚えなきゃならないことが多く、復習もたくさん回数回せないし
そもそも「簿記は覚えるものだ」、「それを回数回せばなんとかなる」という考え方自体を変えないと厳しいのではないかと思います。それで通用するのは2級までかと。
「当期のPL科目のインパクトを弱める勘定科目は法人税等調整額」の意味するところは
=税引前当期純利益-法人税・住民税・事業税+法人税等調整額と理解して間違いはありませんでしょうか。
すみません、ご質問の意図がつかみきれないため、回答がご希望に沿うものではないかもしれません。
「当期のPL科目のインパクトを弱める勘定科目は法人税等調整額」が意味するのは、
たとえば、「売上原価XX/商品XX」という仕訳を切るとすると、売上原価という費用がXX円だけ増加しますよね。これに対して、収益側(貸方側)に法人税等調整額を計上しますよ、という意味です。
逆に「利益剰余金XX/売上原価XX」という仕訳を切るなら、売上原価が減額されますから収益の増加、つまり利益の増加につながりますよね。このときは、費用側(借方側)に法人税等調整額を計上します。
パンハンドル さんの書かれている「税引前当期純利益-法人税・住民税・事業税+法人税等調整額」は、税引後当期純利益の算定式ですよね。これ自体は「当期のPL科目のインパクトを弱める勘定科目は法人税等調整額」とは無関係に思えます。
先生、ご丁寧に返信頂きましてありがとうございました。取り急ぎ御礼申し上げます。
内容についてはもう一度この章の最初から読み返して消化中です。