加重平均をマスターしよう

加重平均って何?
簿記1級では、さまざまな論点で加重平均が使われています。今回は、加重平均をしっかりマスターしましょう。
加重平均とは、要するに単なる平均のことです。なぜ、そんな加重平均なんていう仰々しい言い方をするのでしょうか。次の例を考えてみてください。
ある小学校のクラスには男子が3人、女子が2人の計5人います。先日テストを行いました。男子の平均点は60点、女子の平均点は90点でした。さて、クラス全体の平均点は何点でしょうか。
これ、次のように計算した人はいませんか?
(男子60点+女子90点)÷2=75点
これは、正しくありません。実際の点数の内訳を見てみましょう。男子は、Aくん、Bくん、Cくん、女子はDさん、Eさんです。
- 男子(平均60点)
Aくん:50点
Bくん:60点
Cくん:70点 - 女子(平均90点)
Dさん:80点
Eさん:100点
このような結果でした。クラス全体の平均は、次のとおりです。
(50点+60点+70点+80点+100点)÷5人=72点
では、先程の計算(男子60点+女子90点)÷2=75点 は何がまずかったのでしょうか。それは、男子と女子の人数が異なっているのにも関わらず、同等に扱ってしまったからです。(単純に足して2で割るというのは、同等に扱っているということです)
正しい平均を取るのであれば、男子と女子の人数も考慮に入れなければいけません。つまり、次のような計算式です。
(男子60点×3人+女子90点×2人)÷(男子3人+女子2人)=72点
今度は、うまく出来ました。
つまり、男子60点と女子90点は、重みが異なるのです。平均を計算するとき、同じ重み(人数)なら、単に足して2で割ればいいのですが、重みが違うのならそれを考慮して計算しなければならないのです。こうして、重みを考慮して計算した平均のことを加重平均といいます。
ちなみに、(男子60点+女子90点)÷2=75点 という計算方法も無いではありません。平均値としては不正確ですが、計算が簡単なので使われます。これを単純平均といいます。簿記では、一般債権の貸倒引当金の貸倒実績率の算定などで登場します。
簿記で言う所の平均法とは加重平均のこと
例えば、工業簿記の材料勘定の計算で、次のような問題があったとします。
月初材料は、100円/kgで200kg
当月購入材料は、120円/kgで300kg平均法によれば材料の平均単価はいくらでしょう?
この問題をみて、
(月初100円/kg+当月120円/kg)÷2=110円/kg
と計算する人はまずいないでしょう。ほとんどの方は、次のように計算するはずです。
(月初100円/kg×200kg+当月120円/kg×300kg)÷(200kg+300kg)=112円/kg
これ、先程の小学校のクラスの平均点と同じですよね。
このように、私たちは特に意識することなく加重平均を使っています。簿記で一般に平均と言えば、それは加重平均のことです。
加重平均資本コスト率
簿記1級では、設備投資意思決定の論点で「加重平均資本コスト率」が登場します。要は、設備投資を行うにあたっての資金調達のコスト率を求めるわけです。次の問題を考えてみてください。
当社における借入金の支払利息は5%、自己資本のコスト(株主への配当金など)は9%である。当社の資金調達におけるコスト率を求めなさい。なお、調達資金の割合は、借入金が60%、株式が40%である。税金は考えない。
これも、(5%+9%)÷2=7% などとは計算しません。次のように計算します。
借入金5%×60%+株式9%×40%=6.6%
つまり、当社が仮に10億円の資金調達をする場合、10億円×6.6%=6,600万円の資金調達コストが掛かるであろうことが分かるわけです。
なお、本問は1つポイントがあります。それは、加重平均の計算にあたって、重みの部分の合計が100%になるようにしてある点です。このようにしておくと、単にそれぞれの重みを掛けて合算するだけで加重平均を求めることができ、計算が簡単になります。
どういうことかと言うと、今までの計算方法にならえば、加重平均は、次のように計算するべきです。
(借入金5%×60%+株式9%×40%)÷(60%+40%)=6.6%
ここで、太字の ÷(60%+40%) の部分は、1で割るということを意味しているので、結局何もしていないのと同じです。ということで省略出来るわけです。
このように、加重平均を計算するときは、あらかじめ重みの部分を構成割合(各要素が何パーセントづつで構成されているのかという意味。当然足せば100%になる)にしておくと、計算が簡単になります。
加重平均は、こんなふうにも使えます
加重平均は、支払利息の計算にも使えます。次の問題を考えてみてください。
借入金(年利10%、利払日は毎年9/30と3/31)の期首(4/1)残高は100万円であった。このうち40万円を9/30(6ヶ月後)に返済した。当期の支払利息はいくらか。
普通に仕訳を切って計算してみましょう。
9/30の仕訳
(借)借入金40万円(貸)現金40万円
(借)支払利息5万円(貸)現金5万円
*残高100万円×年利10%×6ヶ月÷12ヶ月=5万円
3/31の仕訳
(借)支払利息3万円(貸)現金3万円
*残高60万円×年利10%×6ヶ月÷12ヶ月=3万円
ということで、支払利息は8万円です。これがP/Lに計上されるわけです。
一方で、こうも考えられます。「4/1〜9/30の6ヶ月は100万円を借りていて、10/1〜翌3/31の6ヶ月は60万円を借りていた。年間を通しての平均残高はいくらだろうか?」という考え方です。これは加重平均を取ることで計算できます。
(100万円×6ヶ月+60万円×6ヶ月)÷(6ヶ月+6ヶ月)=80万円
とうことで、平均すると年間を通して80万円の借入残高があったと言えます。そして、年利10%なのですから、支払利息は、次の式で計算できます。
80万円×10%=8万円
このように、加重平均を使うと、複数の値を1つの値に置き換えることができます。そうすることで計算を簡単にすることが出来るのです。
簿記1級では頻繁に出てくる概念ですので、是非、使いこなせるようになってください。
9/30の仕訳は
(借)現金/(貸)借入金
ではないでしょうか?
すみません、レスポンスが超遅くなってごめんなさい。
いえ、あっていると思うのですが…
@@さんの仕訳では、現金が増えることになってしまいます。借入金を返済しているわけですからそれではおかしいと思います。