1級商会・外貨建有価証券(満期保有目的債券)

外貨建有価証券の満期保有目的債券の確認テスト

外貨建有価証券の作問リクエストを頂いてのでちょっと作ってみた。この論点は、1つ1つの要素はそれほど難しくないのだけれど、色々やることがあって混乱しがちだ。特に満期保有目的の債券とその他有価証券がやっかいだ。ただし、慣れれば確実に得点できる論点でもあるので、この機会にマスターしてしまおう。

今回は、満期保有目的債券をテーマにしてみた。本試験では多分、これ以上難易度の高い問題は出ないと思う。だから、このレベルをしっかりスムーズに出来るようにしてほしい。

問題

当社の当期の会計期間はX6年1月1日〜X6年12月31日である。当会計期間の期中平均レートは103円/ドル、決算日の為替レートは105円/ドルであった。

X5年7月1日にA社社債を現金17,600ドル(取得時為替レート100円/ドル)で取得した。保有目的は満期保有目的である。額面金額は20,000ドル、満期日はX8年6月30日、クーポン利率は年6%、利払日は毎年6月30日であり、定額法による償却原価法を採用している。A社社債の時価は、X5年12月31日:18,400ドル、X6年12月31日:18,600ドル であった。

以下の仕訳を示しなさい。

  1. 取得時(X5年7月1日)
  2. 前期決算時(X5年12月31日)
    なお、前期決算日における為替レートは104円/ドル
    X5年7月1日〜X5年12月31日までの平均レートは102円/ドルであった。
  3. 当期利払時(X6年6月30日)
    なお、利払日当日の為替レートは95円/ドルであった。
  4. 当期決算時(X6年12月31日)

解答と解説

答えは・・・(クリックで見えます)

1.取得時(X5年7月1日)

取得時の仕訳は問題ないだろう。取得原価は、(HC)17,600ドル×(HR)100円/ドル=1,760,000円だ。よって、仕訳は、以下のとおりだ。

(満期保有目的債券) 1,760,000 (現金) 1,760,000

2.前期決算時(X5年12月31日)

(償却原価法を適用している)外貨建満期保有目的債券の決算時の仕訳のコツは、とりあえず簿価を計算してしまって、それ以前の簿価との差を出し、それを有価証券利息と為替差損益に分離する、という方法だ。

本問の場合、外貨による償却額は、3年間で2,400ドル(=20,000ドル−17,600ドル)だから、半年だと400ドルだ。よって、決算時の簿価は、17,600ドル+400ドル=18,000ドルになる。これは決算時の為替レートで評価するので、

18,000ドル×(CR)104円/ドル=1,872,000円だ。

それ以前の簿価が1,760,000円だから、その差112,000円を、有価証券利息(償却原価の分)と為替差損益に分ければいいわけだ。
有価証券利息(償却原価の分)は、どの時点の為替レートで評価すればいいのだろう。これはその期間を経ることで少しずつ成長していったわけだから、期中平均レートを使うの妥当だ、という覚え方がいいと思う。したがって次の式になる。

400ドル×期中平均レート102円/ドル=40,800円

よって、為替差損益は、残りの71,200円だ。以上より、仕訳は、以下のとおりだ。

(満期保有目的債券) 112,000 (有価証券利息) 40,800
    (為替差損益) 71,200

さらに、クーポンを忘れてはいけない。クーポンはあくまでも額面に対して付されるものだから、その額は次の式で計算される。

20,000ドル×6%×6カ月÷12カ月=600ドル

問題は、このクーポンをどの時点の為替レートで評価するかだ。これは、期末のレートで評価する。

600ドル×(CR)104円/ドル=62,400円

よって、仕訳は、以下のとおりだ。

(未収収益) 62,400 (有価証券利息) 62,400

3.当期利払時(X6年6月30日)

利払日だ。さきにも書いたが、クーポンは額面に対して付されるものであり、カレントレート(CR)で評価される、ということだけを知っていれば問題ない。

20,000ドル×6%×(CR)95円=114,000円

ただし、本問は、決算日と利払日がズレていため、前期決算日において、未収収益が発生している。それを取り消さないといけない。以上より、仕訳は、以下のとおりだ。

(現金) 114,000 (未収収益) 62,400
    (有価証券利息) 51,600

4.当期決算日(X6年12月31日)

前期の決算日とほぼ同じだ。前期が18,000ドルで、1年の償却額が800ドル(=2,400ドル÷3年)なので、決算時の簿価は、18,000ドル+800ドル=18,800ドルになる。これは決算時の為替レートで評価するので、

18,800ドル×(CR)105円/ドル=1,974,000円だ。

それ以前の簿価が1,872,000円だから、その差102,000円を、有価証券利息(償却原価の分)と為替差損益に分ければいいわけだ。有価証券利息(償却原価の分)は、期中平均レートを使で評価するので

800ドル×期中平均レート103円/ドル=82,400円

よって、為替差損益は、残りの19,600円だ。以上より、仕訳は、以下のとおりだ。

(満期保有目的債券) 102,000 (有価証券利息) 82,400
    (為替差損益) 19,600

さらに、クーポンは次の式で計算される。

20,000ドル×6%×6カ月÷12カ月×(CR)105円/ドル=63,000円

よって、仕訳は、以下のとおりだ。

(未収収益) 63,000 (有価証券利息) 63,000

講師からのアドバイス

自分なりに計算手順を工夫しよう

多分、この問題がスムーズに解けるようなら、本試験で外貨建有価証券(満期保有目的債券)の問題が出てもおおむね対処できるだろう。本問は、あえて利払日と決算日をずらしたので面倒になっているが、一致していればより簡単だ。

本問は、時系列にそって解説しているが、実際のところ自分が解くなら、まず、ドル建ての簿価だけを時系列に書いていって、その隣に適用されるCRを書き、まずは簿価を確定させると思う。

同様にドル建ての償却原価と適用されるAR、ドル建てのクーポンと適用されるCRを並べて書いて一気に集計すると思う。

なぜなら、本問の解説のように、簿価を考えて、次に償却原価を考えて、さらにクーポン考えて、また、簿価を考えて、償却原価を考えて、というふうに次々といろいろなことを思考すると煩雑だしケアレスミスしやすいからだ。同じ系列の計算は、まとめてやってしまったほうが効率がいい。そしてケアレスミスをしにくい。

こういう、テキストの解説手順とは違うけれど「こうした方が間違いにくい」とか「スピーディだ」とか「覚えやすい」といった工夫を自分なりにした論点は忘れにくい

ぜひ、自分なりの工夫をしてみてほしい。


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1級商会・外貨建有価証券(満期保有目的債券)” に対して1件のコメントがあります。

  1. 匿名でお願いします より:

    どうもありがとうございました。繰り返し解こうと思います。クーポン利子は決算日レートで評価するっていうのは決まり事なのですか?

    1. pro-boki より:

      >クーポン利子は決算日レートで評価するっていうのは決まり事なのですか?
      いえいえ、決算日のレートということではなく、スポットレートで評価します。
      つまり、評価をするその日の直物レートということです。まず、決算日には未収収益として計上しなければいけませんので、その日の直物レートで評価します。そして、実際にクーポンをもらうときは、その日の直物レートで評価します。
      ただ、ざっと、1級の問題集見てみましたけど、外貨建有価証券(満期保有目的債券)の問題で、クーポンまで言及している問題ってないんですね。なので、スルーしてもいいかもしれませんね。それよりも償却原価の処理の方が大事かも。

  2. 匿名でお願いします より:

    富久田先生、どうもありがとうございました。
    クーポンの受払時の直物レートを使うのですね。

    1. pro-boki より:

      こういうのも単に暗記するのではなく「なぜ直物レートを使うんだろう」という理由まで考えると忘れなくていいと思います。クーポンは、利払日にそのもらったドルの全額を日本円に換えることができます。ですから、そのときのレートを使うわけです。一方で、償却原価分は、あくまでも評価です。もっといえば、「償却原価×CR−HC×HR」のうち、いくらが当期償却分でいくらが為替差損益なのかを評価する作業です。つまり当期償却分をどう評価するかが問題なのです。これは、当期償却分は、その期間を経てなしえたものですから、その期間の平均レートを使うというのは合理的だと思います。

  3. きゃろる より:

    問題に
    >A社社債の時価は、X5年12月31日:18,400ドル、X6年12月31日:18,600ドル
    とあったので、あれ?満期保有債権の評価替えってするんだっけ?
    と思いつつ、問2で評価替えをしようとして、
    計算の途中で不要なことに気がつきました。
    実際のテストで余計な計算をしたら、タイムロスになりますよね。
    ちゃんと勉強している人は、問題文を読んだときにちゃんと引っ掛けだって気がつくんですよね。

    1. pro-boki より:

      これ、まあ結局、引掛けということなんですけど・・・
      実は本当はそうではなくて、意図としては、まず、満期保有目的で計算させて、その後に、もし保有目的がその他有価証券だったらどうなるでしょう?みたいな問題にしようかな、と当初の作問意図がそこにあった名残なんです。ただ、そうしちゃうとちょっと難しすぎるかな?と思ってその部分を外したのに、時価の部分を外し忘れたという・・・

  4. 佐藤公一 より:

    満期保有目的債権の二期目の問題はどのテキストを見てもありませんでした。二期目の簿価からスタートすることがすごく参考になりました。

  5. pro-boki より:

    コメントありがとうございます。
    お役に立てて嬉しいです。

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