第201回全経上級・商業簿記レビュー

問題1 連結会計
解いた感想
基本的な連結精算表の問題です。のれんなし、アップストリームなし、手形なし、未達なし、と非常に簡単です。また、評価差額の実現、持分の変動、その他有価証券などの包括利益がらみも一切ありませんでした。大げさではなく現在の日商簿記2級よりも簡単な問題でした。
目標は20分以内で満点です。ないしは15分以内で1〜2箇所のミスです。(特に今回は会計学が難しかったので、こういった商簿のサービス問題は落としてはいけません)
また、このくらいの問題であれば、いちいち仕訳を書かないで解きたいところです。
仕訳を書いて、それを精算表の修正欄に反映して、集計して解答を記入、という手順を取るとそれだけで30分近くかかります。この問題にそんなに時間を掛けてはいけません。もう1つの大問である総合問題を解く時間が足りなくなります。
仕訳を書かずにダイレクトに答えれば、時間が短縮されるだけでなく、ミスも減ります。これは普段から練習をしておくべきでしょう。
解答と解説
タイムテーブルのみ書いて、仕訳は書きません。いきなり解きます。以下、実践的な解き方として計算式を示します。上から下に行くに従って計算が面倒になります。簡単なところから取っていきましょう。
ただ足すだけのところ(多分配点来ない)
- 現金預金:4,000+1,000=5,000
- その他資本:460,000+299,000=759,000
- その他負債:336,000+421,000=757,000
- その他費用:456,000+199,000=655,000
ゼロクリアされるもしくは移記するだけのところ(多分配点来ない)
- S社株式:0
- 資本金:P社分のみ1,600,000
- 受取配当金:64,000−64,000=0
評価差額関連
- 土地:1,000,000+500,000+200,000=1,700,000
タイムテーブルから移すだけのところ
-
のれん:なし
-
のれん償却額:なし
-
非支配株主持分:138,000
* 実践的には本問のようにのれんが生じないならタイムテーブルすらも必要ありません。
成果連結で相殺消去するだけのところ
- 売掛金:700,000+200,000−20,000=880,000
- 買掛金:500,000+150,000−20,000=630,000
- 売上高:3,000,000+800,000−80,000=3,720,000
未実現利益と税効果関連
- 商品:450,000+125,000−7,500*2=567,500
- 売上原価:2,200,000+500,000−80,000+750*3=2,620,750
- 貸倒引当金:14,000+4,000−400*4=17,600
- 貸倒引当金繰入:8,000+1,000-400*4=8,600
- 繰延税金資産:7,500*2×0.3=2,250
- 繰延税金負債:200,000×0.3+400*4×0.3=60,120
- 法人税等調整額:750*3×0.3−400*4×0.3=105
*1 期首商品に含まれる未実現利益:18,000÷1.6×0.6=6,750
*2 期末商品に含まれる未実現利益:20,000÷1.6×0.6=7,500
*3 当期に増加した未実現利益:7,500−6,750*1=750
*4 貸倒引当金消去額:売掛金20,000×2%=400
利益関連
- 利益剰余金:連結BSの差額から算定 711,030
- 当期純利益:連結PLを集計 435,755
- 非支配株主当期純利益:当期純利益100,000×20%=20,000
- 親会社株主当期純利益:435,755−20,000=415,755
おまけ
利益剰余金は、以下の式でダイレクトに求められます。上記では連結BSの貸借差額で計算していますが、時間に余裕があるなら以下の計算もして検算しましょう。
P社の利益剰余金:700,000
S社の利益剰余金のうちのP社の持分:(150,000−130,000)×80%=16,000
未実現利益の消去:△7,500×税効果後0.7=△5,250
貸倒引当金の消去:400×税効果後0.7=280
上記の合計で711,030
あと、1点、気になるのが、連結精算表の修正仕訳記入欄に配点が来るか否かです。原則、精算表はただの計算作業用のワークシートですから、途中経過には配点をしないのが一般的だと思われますが、採点者がどう採点するかは不明です。なお、日商は連結精算表の修正仕訳記入欄に配点しないことを明言していますので、多分ですが、全経も同様だと思われます。
問題2 総合問題
解いた感想
良問です。基本を重視したとても良い問題です。(大事なことなので2回言った)
本問を初見でどれくらい出来たかが、そのままその人の実力といえると思います。実力チェックに最適です。これぞ検定試験にふさわしい問題でしょう。
嫌らしいひねりや隅っこすぎる論点などなく、どれも王道の典型論点。だけど、少しだけひねってある。そのひねり具合が適度で心地よい。
ただ、連結と合わせてちょっとボリューム多いかなとは思います。
連結と合わせて実測で39分掛かりました。かなり頑張って時短テク駆使して本気で解いてです。まあ、最初から満点狙わずに8割でいいやって思えればもう少し時間短縮出来ますが、それにしてもボリューム多いなと感じました。
解答と解説
基本、プロ簿記では、必要のある場合しか仕訳を書きません。一般の過去問題集のようにすべての仕訳を書き並べて、あとは各自集計してくださいね、というスタイルではなく、実際に私が解いたときの思考を言語化しています。仕訳を書かずに、ダイレクトに答案用紙に記入したものはそのまま書いてます。その点ご了承ください。
1.収益認識
一瞬、おお、新会計基準の問題か?と思いましたが、全然違いました。2級ですね。出荷基準を着荷基準に変更するということで、一部、売上を取り消す処理です。
商品QとRが着荷基準だと売上にならないので、これらの売上合計45,100円を取り消します。
売上45,100/売掛金45,100
実は、最初はこの仕訳を頭の中で切って、前TBに書き込んでいったのですが、後に(だいぶ後)税抜処理だってことに気づいて仕訳を切り直しています。
売上41,000/売掛金45,100
仮受消費税4,100
が正解です。
4.期末商品
売上の取り消しをしたので、ついでに忘れないうちに、期末商品の処理もやっちゃいます。売上を取り消したということは、その売上原価相当分はまだ当社の在庫です。 つまり商品Qと商品Rの原価分の在庫を期末在庫に戻してあげないといけないわけです。これ、忘れがちなんですよね。
| 期首 110,000 |
売上原価(差額)
|
| 当期仕入 800,000 |
|
| 期末 158,000* |
*期末商品
120,000+@500×40個+@600×30個=158,000
続いて棚卸減耗損と商品評価損も算定しておきます。 もし、商品評価損と棚卸減耗損を算定するためのボックス図を書いているなら、よりスピーディな方法があるので練習することをおすすめします。 商品評価損は、価格差に実地数量を掛けるだけだし、棚卸減耗損は数量差に帳簿単価を掛ければ算定できます。慣れると瞬殺です。
棚卸減耗損 10個×@300+5個×@500=5,500
商品評価損 @40円×115個=4,600
なお、問題文に「財務諸表上売上原価に算入するが、総勘定元帳上は棚卸減耗損勘定と商品評価損勘定に計上したままとする」 という指示があります。
これを見て、あれ答案要求何だっけ?と思って確認して「ああ、後TBか。じゃあ売上原価には算入せずに独立した勘定で計上すればいいんだよね」という思考をしています。
これ、良い指示です。財務諸表と後TBをふわっと似たようなものとして捉えている受験生は一瞬躊躇すると思います。一方、このあたりの基礎ができている受験生にとってはなんでも無い指示です。こういうところで差をつけるのは良問だと思います。
2.売上債権(CF見積法)
問題文の指示により、売掛金のうち20,000円を長期貸付金に振り替えて、CF見積法によって貸倒引当金を設定します。 まずは、科目を振り替えましょう。
長期貸付金20,000/売掛金20,000 です。
続いて、CF見積法を使うわけですが、毎年5,000円ずつの支払いという設定が良いですね。私も以前同じ設定で模擬試験作ったことあります。これ、パターン暗記の受験生をふるい落とすのにいいんですよね。まあ、本問は、年金現価係数が与えられていますから勘でも答えられちゃいますけど。いずれにしても良問だと思いました。
CF見積法による貸倒引当金を設定します。20,000−5,000×3.902=490ですね。
営業外貸倒引当金繰入490/貸倒引当金490
最後に、その他の売掛金について貸倒引当金を設定します。残りはすべて一般債権とありますから、期末残高に2%を掛けて貸倒引当金を設定するだけです。 なお、売掛金は、前TBから動いていますから注意しましょう。
期末売掛金残高:前TB170,000-45,100-20,000=104,900
CF見積法による貸倒引当金:104,900×2%=2,098
差額補充法なので、補充額は、2,098-前TB1,000=1,098
仕訳にすると次のとおりです。
貸倒引当金繰入1,098/貸倒引当金1,098
3.オプションと売買目的有価証券
ここは、問題の読み取りが出来るかどうかがすべてです。読み取れれば一瞬で終わるところです。
@1.5円×1,000口=1,500円で取得したオプションが、期末に@0.8円×1,000口=800円となっていますよと。
そして、@101円×1,000口=101,000円で取得した売買目的有価証券が、期末に@102円×1,000口=102,000円となっていますよと。それだけの話です。
オプション差損700円と有価証券運用益1,000円を計上しておしまいです。
5(1).有形固定資産・資産除去債務
資産除去債務の問題です。まず、前TBを確認しましょう。
建物は586,135ですね。取得原価500,000で、15年後の除去費用が100,000なので、試しに1%の割引計算をしてみます。 100000÷1.01===============(シャープの電卓です) 86,134.94…と表示されますね。はい、OKです。
本問は期首に資産除去費用の見積りに変更が生じています。50,000増えていますね。 新たに除去費用が生じている場合は、その時点の割引率を使うことになっているのですが、問題文に書かれていません。 書かれていないなら書かれている情報から解くしかありません。1%を使いましょう。 期首時点で残り7年で、そのときの現価係数が0.9327ということで、50,000×0.9327=46,635を算定します。
ちなみに、前TBの資産除去債務も整合しているかどうか一応チェックしておきます。 100,000×0.9327=93,270で整合していますね。 ということで、建物と資産除去債務を46,635ずつ増額します。
この時点で、後TBの建物:586,135+46,635=632,770は答案用紙に書いてしまいましょう。
続いて資産除去債務の算定です。期首残高を1%増額すればいいわけです。後TBの利息費用(本問では資産除去債務調整額)は、(前TB93,270+46,635)×1%=1,399、後TBの資産除去債務は、(前TB93,270+46,635)×1.01=141,304です。これも答案用紙に記入しましょう。
最後に減価償却費の計算です。
残存価額が0なので期首簿価を残存年数で割るだけで計算できます。建物の期首簿価は、(586,135-312,605)+46,635=320,165なので、減価償却費は、320,165÷7年=45,738ですね。どこかにメモっておきましょう。
ちなみに、前TBの減価償却累計額312,605の正当性をチェックしたところ、少しズレていたのであれ?っと思いました。
減価償却費は586,135÷15=39,075.67≒39,076なので減価償却累計額は39,076×8年=312,608になっているはずです。しかし、前TBは312,605となっており、多分これは、586,135×8年÷15年=312,605で計算したのだと思われます。
ああ、全経やっちゃったね、と思いましたが、まあこれくらいはご愛嬌でしょう。
5(2).有形固定資産・除却の処理
備品の減価償却と除却の処理です。
プロ簿記では、総合問題を解くさいにほとんど仕訳を書きません。多くの場合、わざわざ仕訳を書くほどの必要性がないからです。
しかし、 純資産会計と有形固定資産の除却・売却・買い替えだけは、仕訳を書くことをおすすめしています。これらの論点に関しては、下手に時短テクを使うより結局仕訳が一番確実で一番速いからです。備品Aについて除却の仕訳をしましょう。
備品減価償却累計額 19,200/備品 30,000
減価償却費 2,880*1
貯蔵品 1,000
除却損 6,920*2
*1 (30,000−19,200)×0.4×8÷12=2,880
*2 貸借差額
備品Bについては、減価償却費を算定するだけです。
(120,000−52,500)×0.25=16,875
先の5(1)でメモしておいた減価償却費45,738と、備品Aの2,880と備品Bの16,875を合計した65,493を答案用紙に記入しましょう。
6.退職給付引当金
ワークシートで一発解決です。もし、ワークシートを使わずにT勘定使って解いているなら、今からでもワークシートに切り替えることをおすすめします。圧倒的に効率が良いです。ワークシートを勉強したい方はこちら。
| 期首実際 | 費用 | 拠出など | 期末予測 | |
| 退職給付債務 | -400,000 | -9,000 | -409,000 | |
| 年金資産 | 320,000 | 6,400 | 4,000 | 330,400 |
| 差異 | 14,000 | -2,000 | 12,000 | |
| -66,000 | -4,600 | 4,000 | -66,600 |
なお、前TBの退職給付引当金が62,000となっているのは、期首の引当金に対して拠出額4,000が反映されているからです。
つまり上記ワークシートの△66,000+4,000=△62,000が前TBに表示されているわけです。
日商の問題だと拠出額は仮払金だったり営業費だったりして 反映されていないことが多いので、逆に、普段日商の問題ばかりやっていると混乱するかもしれませんね。
7.新株予約権付社債
いい問題ですね。アイデアがいいですよね。作問の参考にさせていただきます。
前提として、転換社債型新株予約権付社債は、一括法と区分法が認められていることを知らないといけません。本問は一括法で計上しているけれど、これを区分法に直してくださいねという問題です。
要するに、額面100,000の新株予約権付社債を社債部分の90,570と残りの新株予約権部分の9,430に分けなさいって話です。
そして1年経過しているから利息法で償却原価すればいいわけです。すると、社債は、90,570×1.02=92,381になって、社債利息が90,570×0.02=1,811になりますねって話です。
8.地代
日商簿記3級(2級?)の定番論点ですね。今でも定番かは知りませんが。私が3級受験生だった12年前は定番でした。
これ「繰延とか見越しがからむもの(例えば利払日と決算日の異なる支払利息の計算など)は、 払った時点におけるTBの額が期間損益計算と整合している」ってことを知っていると応用が効きます。
例えば、本問の場合、10月1日に地代を払っているので、このタイミング(払う直前)のTBの金額が期間損益的に整合しているわけです。 わかりにくいかな。
つまり、10月1日の地代を支払う直前のTBの金額は4月1日~9月30日までの6ヶ月間分なんですね。期間損益と整合しているのです。ここで、さらに1年分払っちゃうわけですから、TBの金額は18ヶ月分になっているはずですよね。これが、36,000円だよっていうことですから、発生主義にもとづく地代は、36,000×12ヶ月÷18ヶ月=24,000で、残りの12,000円は前払地代です。
9.消費税
実践的には「あれ、消費税なんてどこかであったっけ?」と思って見直したら、はるか昔の資料2-1で売上の取り消しをしていて、ああ、ここかと気づいた次第です。
売上41,000/売掛金45,100
仮受消費税4,100
この仕訳を反映させます。よって、仮受消費税は、120,000-4,100=115,900ですね。一方、仮払消費税は90,000ですから、差額の25,900が未払消費税です。
10.法人税等
問題文にあるとおり12,800が法人税等です。答案用紙に書こうと思ったらすでに記入済みでした。そして、中間納付(仮払法人税等)が6,200ありますから、未払法人税等は差額の6,600ですね。
さいごに
繰り返し書いていますが、全体的に良問です。検定試験に最適です。
ただ、全体的にボリュームが多いので、単に理解しているだけでは合格点が取りにくいかもしれません。理解とともに、処理能力も問われています。いかに正確かつスピーディに解くかということですね。
この点については、普段からそういった練習をしていて、自分なりの解法を身に付けている人が有利になる試験でした。税理士試験の簿記論ライクですね。
そして、会計学が財務諸表論ライクでしたから、ああ、全経上級が目指しているのって、こういうことなんだというのがよく分かる試験問題でした。
“第201回全経上級・商業簿記レビュー” に対して3件のコメントがあります。
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こんにちは。ご無沙汰してます。
問題は全経のサイトから入手できたんですね、今回受験しなかったので初めて知りました。
(火曜日に入手して解いてみました。)
商業簿記が全体で1問ミスで9割、会計学が6割ちょいで無事全体としては8割前後を確保できたのでほっと一安心してます。理論と、それに付随する記述の練習をやってこなかったので、案の定思ったように書けませんでした。まだまだ練習が必要みたいです。
(工業簿記とか特に、日商よりいい問題だったなーというのが全体を通した個人的な感想です。)
週末はいよいよですね。
プロ簿記生の健闘を願ってます。
おお、いけちゃん。ちょうど、連絡しようと思ってたところです。すごいタイミング。
今、講義直前でちょっと時間無いので、講義終わったら連絡します。なんか、ブログが業務連絡みたいになってるけど、まあいいか。
記事の執筆お疲れ様です。
連結精算表の修正消去欄ですが、配点来たみたいですよ。
こちらに書いてありました。
http://www.zenkei.or.jp/wp-content/uploads/pdf/bookkeeping/201saitenwooete.pdf
PDFが開けるかわからないので、掲載されている場所も書いておきます。
全経のホームページ→能力検定試験→簿記能力検定→出題趣旨→採点を終えて