事業分離の4ステップ仕訳

事業分離の仕訳は混乱する
事業分離の仕訳は混乱しがち。
分離元企業と分離先企業で処理が非対称だし、投資が継続しているのか精算されているのか、対価は現金なのか株式なのか、相手との関連性はどうなのかなど、考えることがたくさんあるからだ。
まあ、理屈が分かっている人なら1つ1つ順を追って考えていけばいいのだろうけど、でも、ぱっと聞かれて、ぱっと正確に答えるのはなかなか大変。
考える要素が多いので本試験なんかの緊張するシーンだと、思わぬケアレスミスをしてしまうこともある。そこで、理屈はさておき、機械的に仕訳ができるようなトレーニングをしよう。
なお、事業分離の理屈とか仕組み自体がよく分かっていないという方は、先に以下の記事をどうぞ。
事業分離の4ステップ仕訳
細かい理屈は抜きにして、次の手順で考えると機械的に仕訳が切れる。なお、ここでの会計処理は個別財務諸表を前提にしている。
1.ざっくり仕訳の形を覚える
まずは、おおまかな仕訳の形を覚えよう。
分離元企業(事業を分離する側)
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 事業負債 | XXX | 事業資産 | XXX |
| 受入対価 | XXX |
分離先企業(事業を受け入れる側)
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 事業資産 | XXX | 事業負債 | XXX |
| 支払対価 | XXX |
2.資産・負債の額を決定する
資産と負債の額を決定する。と言っても、簿価で計上するのか時価で計上するかというだけの話。
考え方としては、事業を売った側は無条件で簿価。事業を買った側は、原則、時価だけど、相手が親会社なら簿価。
3.対価の額を決定する
対価の額を決定する。これも、簿価を使うか時価を使うかというだけの話。
考え方としては、対価が現金なら簿価も時価もあったもんじゃないのでその額。
対価が株式なら、グループ企業かどうかを考える。原則、資本関係がないなら時価、グループ企業なら簿価。(ただし、分離元企業と分離先企業が親会社と関連会社の関係にあるとき、分離元企業は受入対価を簿価とするけど、分離先企業は支払対価を時価とする。ここだけややこしい。)
4.貸借差額
貸借差額があれば、分離元企業は移転損益、分離先企業はのれん(もしくは負ののれん発生益)を計上する。
分離元企業の仕訳
それでは、上記の4ステップにもとづいて分離元企業の仕訳を見ていこう。まずは、資産・負債の額を決める。分離元企業は、無条件に簿価にすればいい。
続いて、受取対価の額を決める。現金なら決めるも何もその金額。問題は株式のとき。相手が子会社か関連会社なら簿価(差額)、それ以外なら時価。それだけ覚えればOK.
1.資産・負債の額を決める
分離元企業の分離した資産と負債の額は、必ず簿価
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 事業負債 | 簿価 | 事業資産 | 簿価 |
| 受入対価 | XXX |
2.受取対価の額を決める
2-1 対価を現金でもらった場合
対価を現金でもらったなら、その額を計上する
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 事業負債 | 簿価 | 事業資産 | 簿価 |
| 現金 | もらった額 |
2-2 対価を株式でもらった場合(相手が子会社でも関連会社でもない)
子会社でも関連会社でもない相手から株式を対価としてもらったらなら時価を計上する
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 事業負債 | 簿価 | 事業資産 | 簿価 |
| 投資有価証券 | 時価 |
2-3 対価を株式でもらった場合(相手が子会社または関連会社)
子会社もしくは関連会社である相手から(その会社の)株式を対価としてもらったらなら簿価(資産−負債)を計上する
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 事業負債 | 簿価 | 事業資産 | 簿価 |
| 関係会社株式 | 差額 |
3.移転損益を計上する
上記の仕訳を行って、貸借差額があるなら移転損益として計上する。
分離先企業の仕訳
分離先企業の仕訳も4ステップにもとづいて処理していこう。まずは、資産・負債の額を決める。相手が親会社かどうかだけを考えればよい。親会社なら簿価、それ以外なら時価。
続いて、支払対価の額を決める。現金なら決めるも何もその金額。問題は株式のとき。相手が親会社なら簿価(差額)、それ以外なら時価。それだけ覚えればOK.
1.資産・負債の額を決める
1-1 相手が親会社なら
分離元企業が親会社にあたるなら簿価
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 事業資産 | 簿価 | 事業負債 | 簿価 |
| 支払対価 | XXX |
1-2 相手が親会社以外なら
分離元企業が親会社以外なら時価
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 事業資産 | 時価 | 事業負債 | 時価 |
| 支払対価 | XXX |
2.支払対価の額を決める
2-1 現金を支払った場合
対価を現金で支払ったなら、その額を計上する
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 事業資産 | 簿価/時価 | 事業負債 | 簿価/時価 |
| 現金 | 払った額 |
2-2 株式を発行・交付した場合(相手が親会社)
親会社である分離元企業に株式を発行・交付した場合は簿価(=資産−負債)を計上する
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 事業資産 | 簿価 | 事業負債 | 簿価 |
| 資本金など | 差額 |
2-3 株式を発行・交付した場合(相手が親会社以外)
親会社以外である分離元企業に株式を発行・交付した場合は時価を計上する
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
| 事業資産 | 時価 | 事業負債 | 時価 |
| 資本金など | 時価 |
3.のれんを計上する
上記の仕訳を行って、貸借差額があるならのれんとして計上する。(貸方残なら負ののれん発生益)
関連記事
- 1級商会・事業分離 2016年11月9日
- 事業分離の4ステップ仕訳 2021年2月23日
