連結会計・成果連結って、なんであんな変な仕訳なの?

なぜ、あんな変な仕訳なの?
連結会計の定番論点、未実現利益の消去仕訳。たとえば次のような問題があったとします。
問題
親会社P社は@100円で仕入れた商品を子会社S社に@110円で販売している。S社の期首在庫のうち220万円と、期末在庫のうち330万円が、P社から仕入れた分である。連結修正仕訳を示しなさい。
解答
期首分
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 利益剰余金当期首残高 | 20万円 | 売上原価 | 20万円 |
期末分
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 売上原価 | 30万円 | 商品 | 30万円 |
いまや2級でも当たり前のように出題される論点ですから、「これくらい簡単だよ」という声も聞こえてきそうです。しかしです。仕訳は切れても、この仕訳の意味を説明出来るって方は少ないのではないでしょうか。
例えばですよ、期末分の仕訳は「売上原価30/商品30」ですけど、これ「売上高30/商品30」だと何か問題あるのでしょうか。
例えばですよ、期末分の仕訳の貸方には「商品」って科目が使われていますけど、これ「繰越商品」にしたらマズイのでしょうか?
そもそも、利益剰余金当期首残高って何なんですかね?これ、利益剰余金とは違うのでしょうか。
どうです?説明できます?
「うるせー、意味なんて知らねーよ。とにかくそう暗記すればいいって教わったんだよ」って方。
はい。それもアリです。2級までは。というかむしろ、2級の合格だけを考えるなら、本質がどうの理解がどうの言うよりも、理屈抜きに覚えちゃった方が効率的かもしれません。
でもですね。1級だと、いよいよついてこれなくなるんですよ。あとですね。この仕訳、言うほど難しくないんです。多くのテキストにはあまり詳しい解説が書かれていないので、なんか難しく見えちゃいますが、分かっちゃえば簡単なんです。そして、一度でも理解できちゃえば、ここから先がかなり楽になります。
成果連結の仕訳の意味を知りたい方、お付き合いください。
この記事の対象となる方
一度くらいは、テキストなどで連結会計に関する勉強をしたことがあって、連結会計がどんなものなのかくらいは分かっている方。資本連結とか成果連結と言われて、言葉の意味くらいは分かる方。この記事は、2級の方でも大歓迎です。
なお、この成果連結について、全く異なるアプローチで解説している記事もありますので、こちらもどうぞ。
シミュレーションしてみよう
1年度
設立直後
P社とS社があります。P社は、当期に資本金200で設立されました。P社は、現金100を出資して、S社を100%子会社として設立しました。P社とS社のFSは次のとおりです。
P社
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 100 | 資本金 | 200 |
| S株 | 100 |
S社
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 100 | 資本金 | 100 |
P社からS社へ商品販売
P社は、商品50を現金で仕入れて、全てを60でS社に現金で販売しました。P社とS社のTBは次のとおりです。
P社
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 110 | 資本金 | 200 |
| S株 | 100 | ||
| 売上原価 | 50 | 売上高 | 60 |
S社
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 40 | 資本金 | 100 |
| 商品 | 60 |
決算
さて、P社とS社の取引は、これですべてです。それでは連結財務諸表を作りましょう。まずはP社とS社の財務諸表を単純合算します。
P社とS社の単純合算
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 150 | 資本金 | 300 |
| S株 | 100 | ||
| 商品 | 60 | ||
| 売上原価 | 50 | 売上高 | 60 |
続いて、資本連結「資本金100/S株100」を行います。資本連結をしたあとは次のようになります。
資本連結を行ったあと
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 150 | 資本金 | 200 |
| 商品 | 60 | ||
| 売上原価 | 50 | 売上高 | 60 |
さらに、成果連結「売上高60/売上原価60」を行います。成果連結をしたあとは次のようになります。
成果連結を行ったあと
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 150 | 資本金 | 200 |
| 商品 | 60 | 売上原価 | 10 |
とりあえずは、完成です!
さて、グループ全体の連結財務諸表として、これは正しいのでしょうか。当期は、P社からS社に商品を販売しただけで、S社から外部には売ってません。つまり、グループ全体と外部との関係性から考えたら、利益10は実現していません。
あと、商品も60が計上されていますが、これもおかしいですよね。外部からは50で買って、いまだグループ内にそのままあるわけですから、本来の価値は50のままのはずです。
となると、商品が60であることと、PL科目である売上原価が10残っているのっておかしいですよね。本来あるべき連結財務諸表は次のとおりです。
本来あるべき連結財務諸表
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 150 | 資本金 | 200 |
| 商品 | 50 |
どうすればいいのでしょうか。商品の価値を10減らして、貸方の売上原価10を消去すればいいわけです。これが「売上原価10/商品10」という仕訳の正体です。
2年度
P社の動き
さて、翌年です。P社は一切の営業活動を行いませんでした。よって、P社の個別FSは次のようになっています。
P社の個別財務諸表
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 110 | 資本金 | 200 |
| S株 | 100 | 利益剰余金 | 10 |
*前年に、原価50の商品を60で販売し利益10を計上した結果、利益剰余金が10になっている。
S社の動き
S社は、P社から仕入れた商品60を90で売りました。営業活動はこれだけだとします。S社の販売前と販売後の個別TBは次のとおりです。
販売前のS社の個別TB
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 40 | 資本金 | 100 |
| 商品 | 60 |
販売後のS社の個別TB
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 40 | 資本金 | 100 |
| 売上原価 | 60 | ||
| 売掛金 | 90 | 売上 | 90 |
決算
さて、P社とS社の取引は、これですべてです。それでは連結財務諸表を作りましょう。まずはP社とS社の財務諸表を単純合算します。
P社とS社の単純合算
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 150 | 資本金 | 300 |
| S株 | 100 | 利益剰余金 | 10 |
| 売上原価 | 60 | ||
| 売掛金 | 90 | 売上高 | 90 |
続いて、資本連結「資本金100/S株100」を行います。資本連結をしたあとは次のようになります。
資本連結を行ったあと
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 150 | 資本金 | 200 |
| 売掛金 | 90 | 利益剰余金 | 10 |
| 売上原価 | 60 | 売上高 | 90 |
当期は、P社とS社の間で取引がありませんから、成果連結は必要ありません。とりあえずは、完成です!
さて、それでは、この連結財務諸表は正しいのでしょうか。
グループ全体で見れば、外から50で仕入れた商品を外へ90で売ったわけですから40の利益が発生しているはずです。確かに、FSを見ると、利益剰余金が10で、当期の利益が30(=売上90-売上原価60)なので合計40ですから、整合しています。
しかしですよ。1年目って、P社からS社に商品を送っただけで、利益出るのおかしいですよね。あくまでも40の利益が出たのって、2年目ですよね。
つまり、利益剰余金(これは過年度の利益を表している)が10っておかしいわけです。0であるべきです。そして、2年目に、すべての商品が売れたのだから、利益40はすべて2年目に計上されるべきです。
つまり、あるべき姿のFSは、次のとおりです。
本来あるべき連結財務諸表
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 150 | 資本金 | 200 |
| 売掛金 | 90 | ||
| 売上原価 | 50 | 売上高 | 90 |
どうすればいいのでしょうか。借方の売上原価を10減らして、貸方の利益剰余金10を消去すればいいわけです。つまり「利益剰余金10/売上原価10」という仕訳を切ればよいのです。
もう1つの疑問
なぜ利益剰余金ではなくて利益剰余金当期首残高なのか
ここまで、成果連結仕訳「売上原価/商品」と「利益剰余金/売上原価」の解説をしてきました。理解できましたか?
このような仕訳になるのはなぜ?と疑問に思って考えているうちにぐちゃぐちゃになったら、具体的な数値でシミュレーションしてみることをおすすめします。腹に落ちると思います。
さて、ここで次の疑問です。
よく、テキストには期首在庫に含まれる未実現利益の消去仕訳として、「利益剰余金/売上原価」ではなく「利益剰余金当期首残高/売上原価」と書かれています。この「期首残高」っていうのはいったいなんなのでしょうか。
連結修正仕訳は財務諸表をいじっている
そもそもですが。
連結修正仕訳って、仕訳帳に記入されたり総勘定元帳に転記されたりしないってことは分かっています?(意外と、ここが分かってなかったりする)
連結財務諸表っていうのは、記帳、転記、決算整理仕訳や振替仕訳というプロセスを経て作っているものではなくて、財務諸表をいきなり修正して作っているのです。(この意味が分からなければ、そもそも連結を勉強する前に2級の簿記一巡を勉強したほうがいいです)
つまりです。連結修正仕訳っていうのは、すべて、財務諸表を直接いじっているわけです。
そこを踏まえてお聞きします。
単に「利益剰余金」といったら、これは何の財務諸表に表示されている科目ですか。BS(貸借対照表)ですよね。では「利益剰余金当期首残高」といったら、これは何の財務諸表に表示されている科目ですか。SS(株主資本等変動計算書)ですよね。
そうなのです。「利益剰余金」と「利益剰余金当期首残高」では、対象としている財務諸表が違うのです。
連結BSと連結PLだけ作りたいっていうのなら、「利益剰余金/売上原価」でOKです。利益剰余金はBSの科目名ですから。
一方、連結SSも作りたいっていうのなら、「利益剰余金当期首残高/売上原価」とする必要があります。これは、SSにおいて、利益剰余金は、期首残高+当期変動額=期末残高、というフォーマットで表示されているからです。このSSの期首残高をいじろうってことをしているわけです。
期首残高をいじれば、結果として、期末残高も動いて、それがBSの利益剰余金に移記されるので、辻褄があうという仕組みです。
売上じゃなくて売上高、繰越商品じゃなくて商品を使う理由
上記に書いたとおりです。連結修正仕訳は、すべて財務諸表を直接いじっています。
「売上」という勘定は、帳簿に書かれる科目名であって、財務諸表に書かれる科目(表示科目)ではありません。表示科目は売上高です。
同様に、「繰越商品」という勘定は、帳簿に書かれる科目名であって、財務諸表に書かれる科目(表示科目)ではありません。表示科目は商品です。
“連結会計・成果連結って、なんであんな変な仕訳なの?” に対して3件のコメントがあります。
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はじめまして。初めてメール送ります。私は以前予備校の講座を受けたことがあります。その時先生が連結の仕分けはパターンだから暗記でもいいと言われました。ダウンなら借方(利益剰余金)貸方(商品)2行目は借方(繰延税金資産)貸方(法人税等調整額)と、2行目は1行目とは反対側にPL項目が来て、アップになったら1行増えるだけと習いました。こうやって覚えても大丈夫でしょうか?
「大丈夫でしょうか?」
連結修正仕訳はパターンだからそれを暗記するだけで合格できるか?という意味ですか?
人によると思いますが、辛い戦いになると思います。理解しちゃった方が楽な戦いだと思いますよ。まあ、他のスクールにはそのスクールの教え方のポリシーがあるのでしょうから、なんとも言えませんが。
ただ、日商簿記1級って、受験生のほぼ全員が簿記2級合格者であり、さらに会計士受験生も参入していて上位10%しか受からない試験です。意味の理解を伴わず仕訳を暗記してきた人が上位10%に入れると思いますか?
なお、暗記が悪いわけではありません。ちゃんと意味を理解した上で、時短とミス軽減を目指して暗記するのはとても良いことです。
返信有り難うございます。はい、そうです。私は成果連結を暗記で勉強していました。結局1級には落ちました。やっぱり理解しなければと思いました。そうしていくうちにこのサイトにたどり着きました。正直このサイトが無料でいいのか?と思い、助かりました。そして少しずつ理解が深まってきました。理解したほうが勉強も楽しく苦でなくなりました。