1級商会・新株予約権を完全マスター(新株予約権付社債)

新株予約権付社債

はじめに

私と同年代(アラフィフ)以上の方の中には、新株予約権付社債を買ったことある方、いらっしゃるのではないかと思います。バブル期、新株予約権付社債は爆発的な人気がありました。

当時は、新株予約権付社債とは言わず、転換社債(CB)とかワラント債と言っていました。転換社債が、簿記のテキストに書かれているところの「転換社債型新株予約権付社債」のことで、ワラント債が「その他の新株予約権付社債」のことです。まあ、用語はどうでもいいのですが。

当時は、とりあえず社債として買っておいて、クーポンをもらいつつ、株価が上昇したらワラント(新株予約権のことを英語でワラントといいます)を行使すればいい。もし株価が上昇しなくても、社債として償還されるから損は無いという夢のような金融商品として紹介されていました。

まあ、何のことは無い、普通に社債買えば例えば@95円のところをワラントがくっついて@100円で買わされているわけで、別に得でもなんでもないんですけどね。

ということで、今回は、新株予約権付社債の話です。 

2種類ある新株予約権付社債

先にも書いたとおり、新株予約権付社債には2種類あります。1つは「転換社債型新株予約権付社債」、もう1つは「その他の新株予約権付社債」です。

転換社債型は、社債と新株予約権が一体となった社債です。一部または全部を株に換えることが出来る権利のついた社債と考えると理解しやすいと思います。一体ですから、新株予約権だけを行使して、社債を残すようなことは出来ません。

これに対して、その他の新株予約権付社債は、単純に社債に新株予約権がくっついているだけです。新株予約権だけの行使も可能です。このときは、社債とは関係なく現金を払い込む必要があります。なお現金の払込を社債で代用することもできます。

新株予約権付社債の会計処理(発行側)

新株予約権付社債の発行側の会計処理は、基本的に、社債と新株予約権を分けて行います。これを区分法といいます。ただし、転換社債型に限り、社債と新株予約権が一体となっている社債とみなして会計処理することも認められています。これを一括法といいます。これらの相違点は、設例を見るのが分かりやすいでしょう。過去問に最適な問題がありましたので、改題して紹介します。

設例(日商簿記1級131回会計学 改題)

A社(年1回決算,決算日3月末)は、X1年4月1日、次の条件で新株予約権付社債(転換社債型)を発行した。問1から問4まで、「区分法」を適用した場合と「一括法」を適用した場合、それぞれについて答えなさい。

【条件】

  • 額面総額 100,000千円、社債額面 100円につき 100円で発行
  • 社債部分の払込金額 97円、新株予約権の払込金額3円
  • 社債償還期限5年、利率年2%、利払日9月末・3月末。
  • 新株予約権の権利行使価格(転換価格)の総額 100,000千円。
  • 新株予約権の権利行使があった場合に代用払込の請求があったものとみなす旨の条件あり。

【取引】

  1. X2年3月31日、利払日につき社債利息を支払い、決算にあたり,社債を償却原価法(定額法)により評価する。
  2. X3年3月31日、利払日につき社債利息を支払った。また新株予約権の60%の権利行使が行われ、代用払込みにより新株を発行した。新株の発行に伴い計上する資本金は会社法の定める最低額とする。
  3. X6年3月31日、償還日につき社債利息を支払うとともに、残りの新株予約権のすべてについて、株式への転換請求がなされ、金庫株として保有していた自己株式(帳簿価額 30,000千円)を処分して対応した。

問1 社債発行時の社債計上額を求めなさい。
問2 【取引】1における社債利息計上額を求めなさい。
問3 【取引】2における株式への転換請求により生じる資本金組入額を求めなさい。
問4 【取引】3における自己株式処分差額を求めなさい。

解答

  区分法 一括法
問1 97,000千円 100,000千円
問2 1,600千円 1,000千円
問3 30,360千円 30,000千円
問4 11,200千円 10,000千円

解説

問1

区分法は「社債部分97%+新株予約権部分3%」と考えます。したがって、社債として計上されるのは100,000千円×97%=97,000千円です。一括法は、払込額全体を社債(株式に変換する権利を備えた社債)とみなすので、社債として計上されるのは100,000千円です。

問2

区分法

クーポン:100,000千円×2%×(6カ月÷12カ月)=1,000千円
償却原価:100,000千円×3%÷5年=600千円
社債利息:1,000千円+600千円=1,600千円

一括法

一括法は、償却原価がありませんので、クーポンだけを社債利息として計上します。したがって、100,000千円×2%×(6カ月÷12カ月)=1,000千円です。

問3

区分法においては、社債発行から2年が経過していますので、2年分の償却原価を行います。この社債部分に新株予約権部分を足した分の60%が払い込まれた金額です。「資本金は会社法の定める最低額とする」とありますので、50%を資本準備金に、残りの50%を資本金に組み入れます。

一括法は、社債部分と新株予約権部分を分離せず、全体を社債とみなします。したがって100,000千円の60%が払い込まれた金額です。

区分法

社債部分:(97%+0.6%/年×2年)×100,000千円=98,200千円
新株予約権部分:100,000千円×3%=3,000千円
合計:98,200千円+3,000千円=101,200千円
資本金組入額:101,200千円×60%×50%=30,360千円

一括法

資本金組入額:100,000千円×60%×50%=30,000千円

問4

区分法にしても一括法にしても償還日を迎えていますので、社債部分は満額40,000千円です。(X3年3月31日に60%分の代用払込がされているため、100,000千円×残り40%=40,000千円)区分法は、これに新株予約権部分が加わります。これが払込額です。一方で、自己株式の簿価は30,000千円ですので、その差額が自己株式処分差額となります。

区分法

社債部分:100,000千円×40%=40,000千円
新株予約権部分:100,000千円×3%×40%=1,200千円
合計:40,000千円+1,200千円=41,200千円
自己株式処分差額:41,200千円−30,000千円=11,200千円

一括法

社債部分:100,000千円×40%=40,000千円
自己株式処分差額:40,000千円−30,000千円=10,000千円

新株予約権付社債の会計処理(取得側)

取得側にしてみれば、それが転換社債型であろうと、その他の新株予約権付社債であろうと、単に有価証券を取得したにすぎません。ですから、どちらにせよ、その他有価証券などで処理します。まず、この点をイメージしてください。

転換社債型新株予約権付社債

取得側からすれば、転換社債型は単に「社債の一部または全部を株式に変換できる権利のついた有価証券」ということに過ぎず、新株予約権部分だけの行使は出来ません。したがって一括法で処理します。社債部分と新株予約権部分を区分して処理する理由がありません。

しかし、発行側は、転換社債型とはいえ、社債部分と株式部分は明確に分けるべきです。片や負債で片や純資産ですから、区分法で処理するのは理にかなっています。ただし、転換社債型については、取得側がどうせ一括でしか権利を行使してこないので、発行側も一括法で処理しても良いというルールになっています。

その他の新株予約権付社債

一方、その他の新株予約権付社債は、単に社債と新株予約権がくっついたものです。新株予約権だけを切り離して行使することも可能です。つまり、取得側にしてみれば、社債と新株予約権を別々に取得したのと同じことです。したがって、区分法で処理します。

会計処理のまとめ

発行側、取得側における会計処理をまとめると以下のとおりとなります。なお、以下の表については、会計学では問われる可能性はありますが、商業簿記では、問題文で指示されると思われます。

  発行側 取得側
転換社債型新株予約権付社債 区分法
または
一括法
一括法
その他の新株予約権付社債 区分法 区分法

設例

次の1から3の取引について、一括法で処理した場合と区分法で処理した場合の仕訳を示しなさい。

  1. 1年1月1日に以下の新株予約権付社債を取得し、払込額は現金で支払った。
    額面金額:1,000円
    払込金額:1,000円
    社債の対価部分:900円
    新株予約権の対価部分:100円
    社債の償還日:×5年12月31日
    クーポン:なし
    定額法による償却原価法を適用すること。
  2. 2年1月1日に新株予約権付社債のうち60%を行使し、社債で払った。
  3. 2年12月31日新株予約件の権利行使期間が満了した。

解答

一括法で処理した場合(転換社債型の場合)

    借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
  1/1/1 (投資有価証券) 1,000 (現金) 1,000
2/1/1 (投資有価証券) 600 (投資有価証券) 600
  2/12/31 仕訳なし    

①は、社債を株式に振り替えています。 

区分法で処理した場合(転換社債以外の場合)

    借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
1/1/1 (投資有価証券) 900 (現金) 1,000
    (投資有価証券) 100    
1/12/31 (投資有価証券) 20 (有価証券利息) 20
2/1/1 (投資有価証券) 612 (投資有価証券) 552
        (投資有価証券) 60
2/12/31 (投資有価証券) 8 (有価証券利息) 8
  (新株予約権失効損) 40 (投資有価証券) 40

②の借方は900が社債、100が新株予約権の分です。
③は償却原価です。
④は借方は株式、貸方の552は社債、60は新株予約権の分です。
⑤は償却原価です。
⑥は権利行使期間が満了したことにともなう新株予約権の無効になってしまった部分です。

上記では、勘定科目をすべて「投資有価証券」としていますが、実務的には「投資有価証券(A社社債)」とか「投資有価証券(A社新株予約権)」などのように区分して取扱います。これは、試験では、「現金預金」で一括して扱いますが、実務では銀行口座ごとに「◯◯銀行普通預金」とか「◯◯銀行当座預金」のように区分して扱うのと同じです。

なお、ここまで書いておいて言うのもなんですが、過去10年分の出題実績を調べたところ、新株予約権付社債の取得側の処理は一度も出題されていません。したがって、覚える必要も無いですし、試験対策としては後回しとすべき論点です。

しかし、取得側がどのような会計処理をしているのかを知ることは、新株予約権付社債の本質的な理解に有用です。そういった点では、一読し、理解していただきたいと思います。


関連記事

1級商会・新株予約権を完全マスター(新株予約権付社債)” に対して1件のコメントがあります。

  1. きゃろる より:

    上記問題をやってみました。3つ質問があります。

    1.問3:区分法の一行目
    >社債部分:(97%+0.6%/年×2年)×100,000千円=98,200千円
    とありますが、この0.6%はどこからきたのですか?

    2.新株予約権付社債の会計処理(取得側)の解答の
     2/1/1 (投資有価証券) 612 (投資有価証券) 552
                   (投資有価証券) 60
    とありますが、
    貸方下の投資有価証券60は新株予約権の対価分の60%は権利を行使したのでなくなるからというのはわかります。
    借方の投資有価証券612は1,000x60%+100/5年x60%=612
    という計算で、権利を行使して購入した有価証券の分だと思いますが、なぜ600ではなく、100/5年x60%を足すのですか?
    貸方の投資有価証券552は貸借差だと思って書いたのですが、
    もしかしたら、これは貸借差でなく逆に借方の投資有価証券612が貸借差だったりするのでしょうか?
    ここの計算方法の説明をお願いします。

    3.新株予約権付社債の会計処理(取得側)の解答の
      2/12/31 (投資有価証券) 8 (有価証券利息) 8 ⇒(償却原価)

    とありますが、この8は残りの40/5=8でしょうか?
    この時点では、すでに1年分は償却されていますので、40/4=10にはならないのでしょうか?
    多分、この辺りの計算はここに限らず、社債等の償還後の利息や固定資産の修繕後の減価償却の計算等と同じような考え方だとは思うのですが、なぜこのような計算になるのか腑に落ちないので、説明して頂けないでしょうか?
    宜しくお願いします。

    1. pro-boki より:

      >1.問3:区分法の一行目
      >社債部分:(97%+0.6%/年×2年)×100,000千円=98,200千円とありますが、この0.6%はどこからきたのですか?

      この社債はもともと額面100円につき、97円だったわけですね。で、償却期限は5年で、償却原価法(定額法で)処理せよと書かれています。
      ということは、取得時点では97%だったものを5年掛けて償却原価していって100%にするわけ(3%増やす)です。ということで、1年あたりの償却原価の率は、3%÷5年=0.6%です。

      本問は、97,000千円を100,000千円にするわけですが、社債の償却原価の問題は、金額ではなくて、率で計算したほうが簡単・確実です。もし、償還までの間に売却などが無ければ、別にどちらで計算してもいいのですが、本問のように途中で償還や権利行使が入ると、額での計算は途端に面倒になります。この場合「率」で計算すると式もシンプルですし間違いにくいのでおすすめです。

      >2.新株予約権付社債の会計処理(取得側)の解答の
      > 2/1/1 (投資有価証券) 612 (投資有価証券) 552
      >               (投資有価証券) 60
      >借方の投資有価証券612は1,000x60%+100/5年x60%=612という計算で、権利を行使して購入した有価証券の分だと思いますが、なぜ600ではなく、100/5年x60%を足すのですか?

      いえいえ、違います。
      まず、社債は、もともと②の時点では900だったのが、③の償却原価で20足されたので、④の時点では、920ですよね。このうちの60%を代用したのですよ。ですから、920×0.6=552 です。これが先です。

      そして、新株予約権分も考慮します。これは、当初よりずっと100のままですから、100×0.6=60 です。

      よって、 612は、552+60 の結果にすぎません。

      >3.新株予約権付社債の会計処理(取得側)の解答の
      >  2/12/31 (投資有価証券) 8 (有価証券利息) 8 ⇒(償却原価)
      >とありますが、この8は残りの40/5=8でしょうか?

      もともと、900→1,000にしようとしていたわけですよね。5年間掛けて。
      つまり年間20づつ増やそうとしていた。しかし、④の時点で60%分が権利行使されてしまって、今残っているのは、40%ですね。
      よって、20×40%=8です。

      社債部分に注目すれば、次のとおりです。腑に落ちましたか?

      ■ 1/1/1、もともと、900(あと5年で1,000を目指す。よって年間20づつ増やす予定。)
      ■ 1/12/31、1年経って償却原価されて、920(あと4年で1,000を目指す。よって年間20づつ増やす予定。)
      ■ 2/1/1、6割が代用払込されて残り4割になるので、368(これはあと4年かけて400を目指す。よって年間8づつ増やす予定。)
      ■ 2/12/31、1年経って償却原価されて、376(あと3年で400を目指す。よって年間8づつ増やす予定。)

    2. きゃろる より:

      解説ありがとうございます。
      今まで償却原価を率で考えたことがありませんでした。
      また、今まで社債と償却額を別々に考えて計算していて、さらにその償却額の計算を勘違いをしていたということに気が付きました。
      先生の考え方はシンプルでわかりやすいです。
      もしかしたら、問題の解き方はわかっていて覚えられないだけと思っていても、実は根本が間違えいてるからヒネラれると解けないのだと思いました。
      なので最初からすべて見直してみます。
      上記のような的外れな質問をこれからもすると思いますが、その時は宜しくお願いします。

  2. cafe より:

    CBとかワラントは、買ったことがないです
    (株、投資信託、FXはありますが・・)

    ところで、
    下記の権利行使期間が満了の年が違うのでは?

    新株予約権付社債の会計処理(取得側)
    設例
    3.2年12月31日新株予約件の権利行使期間が満了した。→5年12月31日

    一括法
    2/12/31→5/12/31

    区分法
    ⑤⑥が2/12/31→5/12/31

    1. pro-boki より:

      新株予約権の行使期間って発行側が任意に決められるんですよ。本問のように2年間でも、償還日まででも、特に制約は無いんです。(ただ、税制適格といって、ストックオプションの株式報酬費用を損金扱いにしたければ、また話は別です。権利行使期間を付与決議日後2年から10年以内とする、などの制約があります。しかし、それは税法の話であって、会計的には特に制約はありません。)ですので、本問の条件でも特に問題はないと思います。

    2. cafe より:

      ⑥の、新株予約権失効損というのも、2年間で発生するのでしょうか?まだ、3年チャンスはあるような気するのですが?

    3. pro-boki より:

      >⑥の、新株予約権失効損というのも、2年間で発生するのでしょうか?まだ、3年チャンスはあるような気するのですが?

      行使期間が満了していれば、失効損です。社債の償還までの期間と、新株予約権の行使期間は全く別物です。社債の償還まで残り3年あっても、権利行使期間が満了していればチャンスはありません。

      ただ、現実のマーケットにおいて、社債の償還期間が5年、転換の行使期間が2年の新株予約権付社債があるのか?といえば、ごめんなさい、知りません。一般には、償還日までを転換請求期間とする新株予約権付社債が多いとは思います。しかし、これは決まりではありません。銘柄によって異なります。

      (2/6追記)
      実際の新株予約権付社債について調べてみました。一部例外はあるものの、ほとんどの銘柄で、償還期限の少し前(数日から数週間前)に新株予約権の行使期間が満了するという設定がされていました。考えてみれば、企業側は、社債を償還するとキャッシュの払出しになるところが、株式に転換してもらえれば払出しが無い(場合によっては払い込まれる)わけですから、なるべく株式に転換してもらいたいのだと思います。(まあ、あまり株式を発行しすぎるのも株式の希薄化など、別の意味で問題が生じますが)そのため、なるべく株式に転換してもらうべく、権利行使期間を償還ギリギリに設定しているのだと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です