究極にやさしい税効果会計その1

税効果会計インデックス

なぜ税効果会計を苦手にする人が多いのか

なぜ、税効果会計を苦手とする人が多いのでしょうか。

理由は色々と考えられますが、1つには「必要以上に難しいと思い込んでいるだけ」という点があげられるでしょう。

税効果会計は、決して難しい論点ではありません。今までさんざんやってきた見越し繰り延べの1つに過ぎません。3級論点の延長です。ところが聞き慣れない用語が登場するせいか難しく感じやすいのです。

まずは苦手意識、食わず嫌いをなくしましょう

2つめは、テキストがよろしくありません。
市販1級テキストは、会計基準をベースに、これをかみ砕いて書かれています。ところが、こと税効果会計に限っては会計基準があまりよろしくないのです。ちょっと誤解を生みやす表現というかなんというか(これについては後述します)。テキストは、それをそのまま噛み砕いちゃったもんだから分かりにくくなっているのです。

あと、もう一点よろしくないのは、テキストの解説が部分的すぎることです。過去問レベルの問題を解くには、全体像としての税効果会計の理解が必要です。その点で、テキストだけを学習しても、なかなか過去問が解けないのです。それが難しさを感じさせる一因になっています。

勉強の順序を変えるといいです。
ざっくり、全体像と仕組みを知りましょう。それが分かったら、いきなり過去問レベルの問題をやりましょう。やり方さえ知ってしまえば、簡単に解けます(このブログで解き方をお教えします)。とにかく解けること、本試験に対応できることを優先します。すると税効果会計が何をするものなのかが分かります。

そして、そのあとにしっかりと個々の論点、部分的な会計処理を学びましょう。

よくある簿記の学習順序というのは、まずは個々の論点を知り、設例レベルの問題を練習し、最後に総合問題にステップアップするというものです。しかし、こと税効果会計に限っては、逆順をおすすめします。その方が習得しやすいからです。

では、ざっくりと税効果会計の概要から見ていきましょう。

税効果会計は前払家賃と一緒

税効果会計って、要するに3級で勉強する前払家賃と一緒です。いや、正確にはかなり違うのですが、まあ、細かいことはいいです。ざくっとイメージをつかみましょう。

当社は、あるテナントを1年間借りることにしました。家賃は、月額10万円、年間120万円です。6月30日に1年分の家賃を前払いで支払いました。支払日、決算日(3/31)、翌期首の仕訳を示しなさい。

仕訳は以下のとおりです。

日付 借方科目 金額 貸方科目 金額
支払日(6/30) 支払家賃 120 現金預金 120
決算日(3/31) 前払家賃 30 支払家賃 30
翌期首(4/1) 支払家賃 30 前払家賃 30


ちょっと整理してみましょう。

貸主からは120万円の請求をされました。これは払うしかありません。「当社は3月末に決算を迎えるので当期中の費用90万円のみ払いたい」とか通用しません。貸主からすれば、そんなの知るかって話です。

なので、当社はいったん120万円を費用処理しておいて、そのあと、会計上のあるべき費用に修正仕訳をすると。そういう流れになるわけです。それが「前払家賃30/支払家賃30」ですよね。

すると、損益計算書には費用として「支払家賃90」が、貸借対照表には資産として「前払家賃30」計上されるわけです。これには、当期に発生した会計上の費用は90万円ですよという意味と、来期支払うべき家賃30万円を前払いしていますよという意味があるわけです。

ここまで、3級の定番論点、支払家賃の話、しっかり思い出してください。

では税金を前払いするとどうなる?

さて、税効果会計です。

税務署から税金120万円の納付書が送られてきました。しかし、会計上の計算にもとづけば当期の税金は90万円のはずです。30万円は、翌期に発生する税金です。さてどう仕訳しますか?

仕訳

日付 借方科目 金額 貸方科目 金額
当期末(3/31) 法人税等 120 未払法等 120
  繰税資産 30 法税等調 30
翌期末(3/31) 法税等調 30 繰税資産 30


*未払法等:未払法人税等 
*繰税資産:繰延税金資産 
*法税等調:法人税等調整額

さきほどの前払家賃の仕訳と比較しながら考えてみてください。まず税務署から120万円の請求をされました。これは納めるしかありません。「当社の計算によれば税金は90万円のはずなので、90万円のみ払いたい」とか通用しません。税務署からすれば、そんなの知るかって話です。税務署は税務署の理屈で法人税等を計算します。それによれば120万円なのです。

なので、当社はいったん120万円を費用処理しておいて、そのあと、会計上のあるべき費用に修正仕訳をすると。そういう流れになるわけです。それが「繰延税金資産30/法人税等調整額30」です。

繰延税金資産≒前払家賃、法人税等調整額≒支払家賃と読み替えれば、さきほどの仕訳とよく似ていることが分かるでしょう。

損益計算書では「法人税等120−法人税等調整額30=90」が、貸借対照表には資産として「繰延税金資産30」が計上されるわけです。これには、当期に発生した会計上の法人税等は90万円(=120万円−30万円)ですよという意味と、来期支払うべき税金を30万円分前払いしていますよ、という意味があるわけです。

先ほどの仕訳との相違点は、科目名と仕訳をするタイミングです。あとはほぼ同じです。細かいことはさておき、まずは、大枠でざくっと税効果会計のイメージをつかんでください。

税効果会計の超簡単な問題

では、簡単な問題を。

決算日において、課税所得に対して50,000円の法人税等を計上する。当期末の将来減算一時差異は20,000円、法定実効税率は30%である。仕訳を示しなさい。

仕訳

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
法人税等 50,000 未払法等 50,000
繰税資産 6,000 法税等調 6,000


さっきの仕訳と考え方は同じですよね。ただ1点違うのは「将来減算一時差異」という謎の用語が出てくること。これも細かいことは後述しますが、とりあえず「将来減算一時差異 × 税率」が翌期に繰り延べる前払費用の額だと思ってください。ということで上記の問題を読み替えるなら、

決算日において、税務署から50,000円の法人税等を納付しなさいと言われた。当社の会計上の利益から税金を計算すると当期44,000円、来期6,000円のはずなのだが、税務署は全て当期の税金という見解のようだ。

ということです。これなら、上記の仕訳も納得できるでしょう。

さて、なぜ6,000円ズレたのでしょうか。
これは、会計上、当期の費用として処理した20,000円を、税務署が認めてくれなかったことで生じています。ただし、税務署も翌期以降には認めてくれます。そこで、20,000分×税率30%=6,000円分だけ余計に税金を納めておいて、それを繰延税金資産(前払税金)として処理するわけです。なぜ、税務署が認めてくれなかったのかは、後述します。

ちょっと視点を変えて貸倒引当金の話

ここで、ちょっと視点を変えて、貸倒引当金の設定を考えてみましょう。え、全然関係なくね?と思った方も、ちょっとお付き合いください。関係ありますから。

貸倒引当金って、要するに売上債権について、これくらい貸し倒れそうだなっていう金額を引き当てておくってことですよね。で、ですね、売上債権なんていうのは日々、発生しては回収してを繰り返しているわけです。ですから、今日100万円掛けで販売したとして、その直後に別の債権100万円を回収したなんてこともあるわけです。

このケース、貸倒実績率が1%なら、次のような仕訳になります。

 売掛金 100/売上 100
 貸倒引当金繰入 1/貸倒引当金 1

で、回収した分は次の仕訳です。

 現金 100/売掛金 100
 貸倒引当金 1/貸倒引当金戻入 1

でもね。実際は、そんないちいち掛販売したり回収するつど貸倒引当金なんて動かさないでしょ。どうやります?

期末に一括して、いくら売上債権があるかによって貸倒見積額を算定するじゃないですか。さらにですよ。期首時点でそもそも貸倒引当金が設定されていたら、その額との差額をとって、それを当期の費用なり収益にするでしょ?つまり、決算時に1回しか、貸倒引当金の設定ってしないでしょ?

これ、よく覚えておいてください。

税効果会計も同じく決算時に行う

で、税効果の話に戻って。

テキストでは、会計上と税務上で費用認識の異なる項目を取り上げて個別に解説をしています。例えば、会計上は費用だけど、税務上は損金として認めてくれない項目(貸倒引当金繰入の超過額とか退職給付費用とか、ほかにもたくさんあります)を1つ1つ取り上げて、解説し、それぞれに仕訳と設例が用意されているのです。

こういうのは、いったん忘れてください。こういう設例やって、そのあといきなり本試験問題やると訳わからなくなります。

なぜか。
実際は、会計上と税務上で費用認識の異なる項目が発生したからといって、その都度仕訳なんてしないからです。

貸倒引当金と一緒です。貸倒引当金は、決算時にまとめて貸倒見積額を算定して処理しますよね。そして、すでに期首の時点で貸倒見積額(=前TBの貸倒引当金)があるなら、期首と期末の差額をとって貸倒引当金繰入(ないしは戻入)で処理しますよね。税効果会計もこの貸倒引当金の差額補充法と全く同じ考え方をするのです。

ここ、大事なのにテキストにはあまり書かれていません。個々の処理の解説ばかりが中心になっちゃっている。だから分かりにくいのです。

実践的にも、試験的にも大切な考え方は、個々の処理の話はいいから、要するに、会計上と税務上で期末時点でいくらズレている?期首時点では?というのを計算することなのです。そして差額を法人税等調整額で計上すればいいだけです。

もう少し実践的な問題

では、さきの問題をもう少し難しくします。

決算日において、課税所得に対して50,000円の法人税等を計上する。当期末の将来減算一時差異は20,000円、法定実効税率は30%である。なお、決算整理前残高試算表には繰延税金資産が1,500円計上されている。仕訳を示しなさい。

仕訳

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
法人税等 50,000 未払法等 50,000
繰税資産 4,500 法税等調 4,500


もう、分かりますよね。期末時点に計上すべき繰延税金資産は20,000×30%=6,000です。しかし、期首時点ですでに1,500計上済みです。ですから、差額を取って、
繰延税金資産4,500/法人税等調整額4,500」という仕訳になるのです。

「期末の売掛金は20,000円で貸倒実績率30%、決算整理前残高試算表の貸倒引当金は1,500円である」というケースで「貸倒引当金繰入4,500/貸倒引当金4,500」と仕訳切るのと同じです。

長くなったので、とりあえずこの辺でいったん終わり。

続きは明日以降書きます。

税効果会計講義インデックス

全部で6回の講義です。

究極にやさしい税効果会計その1” に対して1件のコメントがあります。

  1. たろ より:

    簿記一級も超直前期であれもこれもと迷っています。難問と言われる回の過去問を除き、基本的な回の過去問を1から3つくらい完璧にすることに力を注ぐのが一番でしょうか。。どの回もだいたい7.8割は取れてるので中途半端なんですよね、、今の状況がものすごく、、。

    そうすると、残るは事業分離の連結だのストックオプションの難しい回だのと、そこまでは自分でもやらなくていいような気がしてるものが残るので合格率の高い回とかでやはり満点とれる回の過去問を増やすべきですかね。予想問題はやりません、記事読みました

    1. pro-boki より:

      たろさんの現時点での進捗状況や実力、そしてウィークポイントなどが分かりません。そんななか、適当なアドバイスはちょっと出来かねます。ごめんなさい。

      ですから、たろさんに向けてではなく、あくまでも一般論として過去問に対する取り組み方をお話しますね。

      過去問演習で、なんといっても一番良くないのが「解く作業」をこなすというモードに入ることです。これでは何周してもあまり効果はありません。

      そもそも、本試験問題ができるようになるまでには、次の3つのステップをクリアする必要があります。

      ステップ1 テキストで論点についての知識を持つ

      例えば、標準原価計算であれば、どういう概念で、計算処理や記帳方法にはどのような方法があって、差異分析のやり方はどうで、といった知識です。まず、これがないと何も始まりません。

      ステップ2 基本問題や設例を通して理解をする

      いくら知識があっても、理解を伴っていないと上っ面のやり方を覚えるだけになってしまいます。テキストと全く同じ問題が出ればいいでしょうけれど、少しでもひねられたり、問われ方がいつもと異なるだけで解けなくなってしまいます。なぜ、そういう計算をするのかを基本問題や設例を通して学びます。

      ステップ3 本試験レベルの問題を解く

      知識があって、理解しているからといって問題が解けるかというとそうでもないわけです。問題文はたいてい長文です。読み落としもあるでしょう。いざ解こうと思っても、問題のどこから手をつければよいのか分からない(糸口が見つからない)ということもあるでしょう。
      解き方がわかっても、どう整理して下書きを書けばいいのか分からない、下書きがグチャグチャということもあります。また、仮に解けたとしてもやたら時間がかかってしまってタイムオーバーになることもあります。ケアレスミスをしてしまうとかも考えられます。
      時間内に正解にたどりつくためには、自分の解き方や下書きの”型”を作り、何度も練習する必要があります。


      論点ごとに、いま自分の実力は、上記のどのステップにあるのかを分析しましょう。そして、レベルにあった学習をしましょう。基礎知識もあやしい(=ステップ1レベル)のに、本試験問題(=ステップ3レベル)に取り組んでもあまり良い効果は出ないのです。

      ここまでは一般論です。

      ここからは、超直前期である現時点でのおすすめ学習法です。

      まず、ステップ1レベルにある論点は切った方がいいです。今からやってもほぼ間に合いませんし、中途半端に不安がつのるだけだと思うからです。

      現時点でやるべきは、だいたい理解しているけど、ちょっと不安という論点を強固にすることです。ただし頻出論点と重要論点だけでいいです。出ない論点やっても意味薄いです。
      それから、得意だけどちょっと時間かかるかなという論点を瞬殺できるように練習するのもおすすめです。自信もつきますし。

      頻出論点・重要論点ベスト3は、1.連結、2.企業結合、3.純資産会計です。

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